獣医師解説!猫白血病ウイルス感染症〜原因、症状、治療法〜

動物病院で、自分の猫が猫白血病ウイルス感染症と診断された...

愛猫が猫白血病ウイルス感染症と診断されたけど、

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結論から言うと、猫白血病ウイルス感染症は猫白血病ウイルス(FeLV)感染により、持続性ウイルス血症を呈した猫に様々な疾患が発生する予後不良の感染症です。

免疫抑制、貧血、骨髄異形成症候群、リンパ腫や白血病のほか、免疫介在性疾患慢性腸炎、繁殖障害および末梢神経障害がまれにみられます。

診断には信頼性の高い検査法があります。

治療には支持療法と献身的な看護が必要です。

感染猫は非感染猫との接触を避けるように飼育しなければなりません。

FeLVワクチンが市販されており、感染防御の一助となります。

この記事では、猫白血病ウイルス感染症についてその原因、症状、診断方法、治療法までをまとめました。

限りなく網羅的にまとめましたので、猫白血病ウイルス感染症と診断された飼い主、猫を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。

✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。

今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

✔︎本記事の内容

獣医師解説!猫白血病ウイルス感染症〜原因、症状、治療法〜

猫白血病ウイルス感染症の病原体

猫白血病ウイルス感染症の病原体

猫白血病ウイルス Feilne leukemia virus(FeLV)は、

レトロウイルス科 Retro viridae

オルソレトロウイルス亜科 Orthoretro virinae

ガンマレトロウイルス属 Cammaretrovirusに属している。

FeLVはエンベロープをもつRNAウイルスですが、ウイルス複製時にはDNAに依存します。

猫白血病ウイルス感染症の疫学

猫白血病ウイルス感染症の疫学

FeLV感染症は全世界の猫に認められます。

FeLVの場合、ダニや蚊など節足動物による感染の媒介が起こらないので、ウイルスの感染は飼育環境と猫の行動パターンに依存します。

日本での感染率は2006~2010年の調査では4.5%という報告あがあります。

さらに2008年度の調査では、週に1日以上外出する猫を対象とした場合、12.2%がFeLV陽性を示しています。

このうち、FeLV単独感染は8.1%、FIVとの混合感染は4.1%と報告されています。

温暖な気候の地域ではFeLV陽性率が高い傾向にあり、これは猫の行動と関連します。

欧米の一部ではFeLVの発生頻度がこの数十年間で著しく低下しており、日本とは状況が異なります。

この低下の要因には、信頼性の高い検査法の確立とワクチンの普及、FeLVに対する意識向上が挙げられます。

猫白血病ウイルス感染症の宿主

猫白血病ウイルス感染症の宿主

FeLVはイエネコの間で伝播し流行します。

そのほかチーター、フロリダパンサー、スペインオオヤマネコ、ヨーロッパヤマネコ、スナネコ、ボブキャット、オセロット、ジャガーネコなどの野生ネコ科動物で感染が報告されています。

猫白血病ウイルス感染症の感染経路

猫白血病ウイルス感染症の感染経路

FeLVの伝播は感染猫の唾液、糞便、尿、鼻汁に存在するウイルスによって成立します。

胎盤・経乳感染はあり得ます。

特に、猫同士の親密な接触(相互の舐め合い)が原因でウイルス伝播が起こります。

また、食事や食器の共有などによっても成立します。

猫白血病ウイルス感染症のリスク要因

猫白血病ウイルス感染症のリスク要因

FeLV感染は年齢抵抗性がみられるが、成猫を中心にケンカによってFIVとともにFeLVの混合感染が生じる感染様式があります。

その他の感染リスク要因は、高い個体群密度および劣悪な衛生環境が挙げられます。

日本における2008年の調査で、猫の年齢とFeLV保有率の関係を調べると、保有率は2歳齢でピークを示し加齢とともに減少します。

持続性ウイルス血症の猫の多くは、診断後2~3 年以内に死亡します。

猫白血病ウイルス感染症の感染の特徴

猫白血病ウイルス感染症の感染の特徴

感染猫の唾液などに含まれるウイルスの経口・経鼻感染によります。

最初、口腔咽頭部のリンパ組織においてウイルスの増殖が起こります。

持続性ウイルス血症

FeLVに対する免疫応答が不十分な場合には、引きつづき血液中のウイルス抗原が陽性となり、ウイルス血症の状態を示します。

FeLVが全身のリンパ系組織や骨髄において増殖することによって持続性ウイルス血症となります。

持続性ウイルス血症となる確率は、3ヶ月齢の子猫で約70%、成猫で約20%とされています。

潜伏感染

骨髄細胞に感染後、免疫系のはたらきによって血液中のウイルス抗原が陰性になる場合があります。

これは潜伏感染の状態であり、骨髄細胞にはプロウイルスが検出されます。

体内からのウイルス排除

感染初期に有効な免疫応答がはたらいた場合には.、ウイルスを体内から完全に排除することができます。

猫白血病ウイルス感染症の臨床症状

猫白血病ウイルス感染症の臨床症状

持続性ウイルス血症が認められる猫が、どのような 病気や疾患を引き起こすかを予測することはできません。

しかし最も認められる臨床症状は造血器系腫瘍、免疫抑制、貧血です。

また、持続性ウイルス血症であっても発症せずに無症候性キャリアのままでいる場合もあります。

造血器系腫瘍

リンパ腫

リンパ腫瘍は代表的な腫瘍性疾患で、解剖学的な好発部位によって、前縦隔型(胸腺型)、消化器型、多中心型または非定型に分類されます。

前縦隔型リンパ腫は頻度が高く、胸水の貯留、呼吸促迫や呼吸困難などの症状が認められます。

ときに食道の圧迫による消化管内容物の逆流や、胸郭内における交感神経の圧迫によるホルネル症候群が認められます。

消化器型リンパ腫は消化管に認められる腫瘍で、嘔吐と下痢の症状を示すが、食欲不振と体重減少のみを示す場合が多いです(消化器型リンパ腫はFeLVと関連しない傾向がある)。

多中心型リンパ腫は複数のリンパ節で発生するリンパ腫で、頻度が高く認められます。

非定型リンパ腫は、鼻腔、腎臓、中枢神経、眼、喉頭、皮膚などで発生するリンパ腫です。

急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群

FeLV感染による急性骨髄性白血病(AML)は様々な血夜の骨髄球系細胞(赤血球系、頼粒球系、 単球系、血小板系)の悪性腫瘍です。

また、前白血病段階と考えられる骨髄異形成症候群(MDS)は、造血幹細胞の異常で、血液細胞の異形成所見がみられ、末梢血液では複数系統の血球減少症が認められます。

急性リンパ芽球性白血病の発生も認められます。

免疫抑制

FeLV感染による免疫抑制は重篤です。

胸腺の萎縮、リンパ球減少症、好中球減少症、好中球機能異常、 CD4陽性T細胞やCD8陽性T細胞の減少がみられます。

臨床症状の有無にかかわらず、一次および二次抗体応答の遅延や減少が起こります。

ゆえに、FeLV感染猫における他のワクチン接種は健康猫の場合と同程度のものとはならないので、ワクチン接種の頻度を考慮する必要があります。

免疫抑制の状態になると、ほかの病原体に感染する可能性があります。

慢性口内炎や慢性鼻炎の素因となり、長期化や再発を認める場合があります。

貧血

再生性貧血

FeLVによる貧血の約10%は再生性貧血で、網状赤血球の増加、赤血球大小不同などの所見がみられます。

FeLVによる再生性貧血では、通常は治療に対して好反応を示します。

非再生性貧血

FeLVによる貧血は、ほとんどの場合がウイルスによる骨髄抑制効果によって引き起こされる非再生性貧血です。

FeLVサブグループC(FeLV-C)は赤芽球のへム輸送蛋白質の輸送を阻害し、重症の非再生性貧血である赤芽球癆を引き起こします。

FeLV-Cの日本における発生は確認されていないが、このウイルスの出現頻度は1%以下です。

その他の貧血

その他の貧血として、猫ヘモプラズマ症と関連する溶血性貧血、免疫介在性溶血性貧血などがあります。

また、腫瘍細胞が骨髄に浸潤することによって貧血が発生する場合があります。

多発性線維肉腫

多発性線維肉腫はウイルス血症を伴う猫において認められ、猫肉腫ウイルス(Feline sarcoma  virus FeSV)が関与する場合が多いです。

FeSVとは、細胞性癌遺伝子を保持した猫白血病ウイルスのうち線維肉腫を引き起こすものの総称です。

生体内でFeLVのゲノムに細胞性癌遺伝子が取り込まれたことにより出現します。

猫ワクチン関連性肉腫とは関係ありません。

その他の疾患

免疫介在性疾患

免疫介在性疾患として溶血性貧血、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、多発性関節炎が挙げられます。

これらは抗原抗体複合体の沈着や抑制性T細胞の不全などが原因となり起こります。

感染猫は腸陰窩の壊死および絨毛萎縮を伴った慢性腸炎や、肝疾患が認められる場合があります。

繁殖障害

母猫の胎盤を介してウイルスが胎子に伝播することで.、胎子再吸収、流産、新生子死が発生します。

また,Fading kitten syndromeと言われる消耗性症候群によって誕生後に死亡することもあります。

神経障害

FeLV感染でみられるほとんどの神経症状は、脳や脊髄へのリンパ腫やリンパ球浸潤によります。

腫瘍が関与しない神経障害として、瞳孔不同、散瞳、ホルネル症候群、尿失禁、異常な鳴き声、知覚過敏、麻痩が報告されています。

猫白血病ウイルス感染症の診断

猫白血病ウイルス感染症の診断

抗原検査

臨床的には血漿などを検体とし、循環血液中に遊離しているウイルス抗原をイムノクロマト法や ELISA法を用いて検出します。

組織検査

腫瘍細胞や白血球に感染しているウイルスは、組織切片や骨髄塗抹を用いて免疫染色法により検査できます。

腫瘍細胞にウイルス抗原が検出される場合は、その腫瘍がFeLVによって発生していることが判明します。

補助診断として、PCR法により生体材料中に特定の遺伝子再構成が生じた細胞集団を検出することにより、リンパ系腫瘍の診断が可能です。

ウイルス分離、遺伝子検査

FeLVの感染の有無が確定できない場合や輸血用の血液はPCR法によるプロウイルスDNAの検出もできます。

そのほか、血漿や血球材料を用いてウイルス分離を行うことができます。

猫白血病ウイルス感染症の治療

猫白血病ウイルス感染症の治療

治療は、二次感染のリスクを低減し、疾患を発症している場合にはその対症療法を行います。

FeLV猫の管理

FeLV陽性猫の一般的な管理は、まずウイルスの伝播を広げないために、屋外に出さないよう注意する必要があります。

FeLVでは免疫抑制が起こることがあるため、ほかの動物から病原体の感染を受けないようにする意義もあります。

また、細菌や寄生虫感染のリスクを避けるために生肉などの摂取も避けます。

FeLV陽性猫は外見上健康であっても.、6カ月ごとに健康診断を受けることを推奨します。

対症療法

何らかの疾患を伴う場合は、それぞれの疾患に対して対症療法を行います。

治療は積極的に行い、長期間の治療を必要とする傾向にあります。

貧血を示す場合は輸血が効果を示すかもしれません。

好中球減少症を示す場合はG-CSF製剤の処方を考慮します。

造血器系腫瘍は治療に反応する場合もあるが、一般には難治性です。

抗ウイルス療法

抗ウイルス療法では猫組換えインターフエロンω (1 MU/kg 1日1回 5日間連続を3クール 皮下投与)の投与によって臨床状態の改善などが報告されています。

その他の抗ウイルス薬について使用が報告されているが、いずれの場合においてもFeLV感染 症における抗ウイルス療法は今後の課題です。

そのほかの注意点

免疫抑制薬と骨髄抑制薬の使用について

腫瘍性疾患や免疫介在性疾患を発症していない限り、ステロイド、免疫抑制薬や骨髄抑制薬の処方は避けます。

ただし口内炎や歯肉炎を認める場合には食欲促進のためにステロイドの使用を考慮します。

コアワクチン接種について

感染猫は猫コアワクチンの接種を行うことを推奨するが、免疫応答が完全でなかったり、長期間維持されないことがあるので、抗体価の測定によりワクチン接種の頻度を検討します。

猫白血病ウイルス感染症の予防

猫白血病ウイルス感染症の予防

FeLVワクチン

FeLV陰性の猫を室内に限定して飼育している場合は、FeLVに感染することはありません。

屋外に出ることがある場合には、ウイルス暴露を受ける可能性があるので、ワクチン接種が推奨されます。

不活化ワクチン、エンベロープ蛋白質サブユニットワクチンおよびカナリア痘ウイルス組換え生ワクチンが市販されています。

ワクチンの有効性に関する比較検討は日本では行われていません。

ワクチン接種によってウイルス感染を完全に防御できるとはいえないが、疫学的にその効果は認められています。

子猫では8週齢で、初回接種し、その3~4週後に2回目の接種を行います。

2回目の接種から1年後に1回接種します。

成猫では3~4週間で2回接種します。

どちらも最終接種の後は暴露リスクが高い猫では2~3年以上の間隔をあけて接種します。

ワクチン接種を行う場合はFeLV感染の有無を確認し、FeLV感染が認められる場合はワクチンを接種しません。

検査と隔離

多頭飼育をしている場合は、全頭のFeLV検査を行い、陽性猫と陰性猫を隔離して飼育します。

この検査と隔離のプロトコルは定期的に実施します。

検査と隔離のプロトコルは陰性猫を陽性猫から守り、ウイルスの蔓延を阻止する目的で行います。

ウイルス血症(血中のウイルス抗原が検出される)が認められた猫が、陰転(血中のウイルス抗原が検出されない) した場合は、ウイルスは骨髄やリンパ節の染色体にプロウイルス(ウイルス核酸)として潜伏感染して存在しています。

ウイルスが完全に猫体内から排除されたとは考えられません。

この潜伏感染している猫の血液を輸血すると、輸血された猫ではウイルス血症となります。

潜伏しているウイルスは再活性するため、陰転した感染猫が多頭飼育環境やストレス、何らかの疾患によってFeLVを産生するようになります。(全くウイルスを産生しない場合もある)。

したがって、陰転した猫をウイルス非感染猫と一緒に飼育すると、陰転猫が陽転化する可能性のみならず、FeLVをいつの間にか蔓延させてしまう危険性があります。

一方で、潜伏感染状態をプロウイルスDNAの検出によって評価することは可能であるため、遺伝子検査を定期的に行い、ウイルス遺伝子が検出されなくなって数年が経つのであれば、ウイルス産生の可能性はきわめて低いと考えられます。

結論として、陰性猫をウイルス感染から守るという観点で徹底するならば、陽性猫と陰性猫は一緒に飼育しない方がいいです。

消毒

ウイルスは生体を離れるとすぐに失活します。

石けん、消毒薬、熱、乾燥などの処置で容易に感染性を失うことから、洗浄などによる環境の整備も重要です。

注射針、手術用具および輸血用血液を介した医原性感染には注意が必要です。

「抗原検査の使い方」

院内検査キットはきわめて高い感度と特異性を示しますが、1回の検査だけをもって100%の信頼を示すものではありません。

FIV (Sen. 93.5%/Spec.100%) とFeLV (Sen. 98.6%/Spec.98.2%)

感染してから約2カ月で抗原が検出できるようになるので、再検査をする場合は2~3 カ月の期間をあけて行います。

偽陽性および偽陰性を示す場合があるので、検査キットの変更の考慮、外注検査であれば検査機関の変更、また遺伝子検査やウイルス分離の検査実施を推奨します。

「遺伝子検査(プ口ウイルスDNA検出)の使い方」

・以下に遺伝子検査を検討するケースの例を挙げます。

供血用猫:抗原検査と遺伝子検査を行い、輸血によるウイルス伝播のリスクを下げる。

感染猫:ウイルスが陰転化(ウイルス抗原陰性)した場合、骨髄を用いて潜伏感染状態を調べる。

腫瘍診断のための生検材料の一部でウイルスの遺伝子検査を行い、その関連性を調べる。

造血器系疾患はFeLV感染と深くかかわっていることが多いので、FeLVがかかわっていない造血器系疾患を証明する場合は、ウイルス抗原とプロウイルスの検査を行うことによって否定する。

「組織検査(免疫染色)の使い方」

FeLV陽性猫が腫瘍や様々な疾患を発症したとしても、FeLVによって発生したか否かは不明なので、その疾患部位の免疫染色によってウイルス抗原の検出を行い、原因を追求する。

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no life no dogs & catsをモットーに、いつも犬と猫に癒されています。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。
現役獣医師が海外で勉強しながら得た、犬と猫の病気に対する知識とスキルを発信していきます。

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