獣医師解説!猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)〜原因、症状、治療法〜

動物病院で、自分の猫が猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)と診断された...

愛猫が猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)と診断されたけど、

  • 病院ではよくわからなかった...
  • 病院では質問しづらかった...
  • 混乱してうまく理解できなかった...
  • もっと詳しく知りたい!

という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?

ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。

中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。

ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、

情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、

その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。

例えば...

  • 人に移るの?
  • 治る病気なの?
  • 危ない状態なのか?
  • 治療してしっかり治る?

これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?

結論から言うと、猫免疫不全ウイルス(FIV)はヒト免疫不全ウイルス(HIV)に近縁のレ卜口ウイルスです。

ネコ科動物の多くが猫免疫不全ウイルス(FIV)に感受性があるが、人には感染しません。

猫免疫不全ウイルス(FIV)感染猫の典型的な症状は、慢性口内炎・歯肉炎、慢性鼻炎、リンパ節症、体重減少です。

一方で、ウイルスに感染しても数年間臨床症状がみられない場合や、発症しない猫もいます。

猫免疫不全ウイルス(FIV)陽性猫は適切なケアによって、非感染猫と同様に長期間生存することが可能です。

診断はイムノク口マト法、ELlSA法、ウエスタンプロット法により抗体を検出します。

感染猫は非感染猫と接触しないように飼育します。

この記事では、猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)についてその原因、症状、診断方法、治療法までをまとめました。

限りなく網羅的にまとめましたので、猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)と診断された飼い主、猫を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。

✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。

今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

✔︎本記事の内容

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)〜原因、症状、治療法〜

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の病原体

猫免疫不全ウイルス Feline immunodeficiency virus(FIV)は、

レトロウイルス科

オルソレトロウイルス亜科

レンチウイルス属に属している。

同じレンチウイルス属にはヒ卜免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、馬伝染性貧血ウイルス、山羊関節炎・脳脊髄炎ウイルス、マエデイ・ビスナウイルスなどが含まれます。

猫免疫不全ウイルス(FIV)はエンベロープをもつRNAウイルスです。

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の疫学

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の疫学

猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症は全世界の猫に認められます。

ダニや蚊など節足動物による感染の媒介が起こらないので、ウイルスの感染は飼育環境と猫の行動パターンに依存します。

日本では1987年の調査によると28.9%、1994~1999年の調査では9.8%が抗体陽性であったと報告されています。

さらに2008年における抗体の調査では、週に1日以上外出する猫を対象とした場合、23.2%がFIV1陽性を示しています。

このうちFeLVとの混合感染が4.1%でした。

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の宿主

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の宿主

猫免疫不全ウイルス(FIV)はイエネコの間で伝播し流行します。

ピューマ、ライオン、マヌルネコなど、非イエネコ系ネコ科動物に固有の猫免疫不全ウイルス(FIV)近縁ウイルスがみられます。

日本では、ツシマヤマネコに猫免疫不全ウイルス(FIV)感染が発生したことがあり、イエネコからの伝播であると考えられています。

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の感染経路

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の感染経路

一般に臨床症状を示さない猫での猫免疫不全ウイルス(FIV)感染率は1~14%、何らかの疾患をもつ場合では44%であると報告されています。

ウイルスは唾液、血液、乳汁、精液などに存在します。

感染経路はその多くが水平伝播で、経口感染よりもケンカによる咬傷(直接接触)によることが主な感染ルートです。

咬傷には雄猫との交尾中の咬傷感染も含まれます。

咬傷歴のある猫では、猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染している率が高いです。

猫免疫不全ウイルス(FIV)感染は幅広い年齢層において認められ、3歳齢をピークに維持されており、FIV感染猫の数は年齢とともに減少しているわけではありません。

性別では雄の感染率は雌の2倍以上高いです。

また、屋内と野外を自由に行き来する猫の感染率は高く、屋外に出る猫では室内飼育猫の20倍も感染リスクが高まります。

そのほか、まれではあるが経乳感染や胎盤感染もあり得ます。

特に母猫が急性感染している場合は、ウイルス品が高い状態であるので、垂直伝播が起こる可能性があります。

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の臨床症状

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の臨床症状

猫免疫不全ウイルス(FIV)感染の場合は必ず病気になるということがプランニングされておらず、感染後非常に経過が長いという特徴があります。

そのためAIDS期になる前に寿命が訪れることが多いです。

ウイルスの増殖によってリンパ球減少が起こり、免疫のバランスが崩壊すると、様々な症状を呈します。

猫免疫不全ウイルス(FIV)による病期は5つに分類されています。

猫免疫不全ウイルス(FIV)による病期

急性期(acute phase AP)

  • 発熱
  • リンパ節腫大
  • 抗体陽転
  • 下痢
  • 好中球減少

感染から数日でウイルスは増殖し、2週間以内に血漿中に出現します。

感染から8-12週間で血中ウイルス量がピークに達します。

この期間中に一時的に食欲不振、沈うつ、発熱のような臨床徴候が観察される場合があるが、その後は正常に戻ります。

しかし全身のリンパ節腫大(リンパ節症)は数週~数カ月の間、持続する場合があります。

この時期は全身にウイルスが拡散する最初の過程であり、宿主免疫応答が起こる前に、高ウイルス血症を示すと推測されます。

無症候キャリア期(asymptomatic carrier AC)

  • 無症状

AC期では血中ウイルス量の減少がみられます。

この期間は免疫によってウイルスの増殖がコントロールされることから、臨床症状は示しません。

AC期は数年~生涯において持続すると考えられます。

そのため猫免疫不全ウイルス(FIV)に関連した症状を何も示さず寿命を全うする猫もいます。

持続性全身性リンパ節症期(persistent generalized lymphadenopathy PGL)

  • リンパ節腫大

全身のリンパ節目重大が認められるが、臨床的に明確でない場合もあります。

この時期は数カ月-1年ほど持続します。

エイズ関連症候群期(AIDS-related complex, ARC)

  • 体重減少
  • 口内炎
  • 歯肉炎
  • 慢性感染症

この時期には免疫異常に伴う症状が現れ、数カ月~数年程度持続するものと思われます。

主なものには口内炎や歯肉炎、上部気道炎、消化器症状、皮膚病変などが挙げられます。

後天性免疫不全症候群期(acquired immunodeficiency syndrome AIDS)

  • 体重減少
  • 日和見感染
  • 腫瘍
  • 骨髄抑制
  • 脳炎

猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症の末期であるAIDS期は、免疫不全に起因した症状を呈します。

ARC期の症状に加えて、クリプトコックス症、カンジダ症、ヘモプラズマ症、疥癬、毛包虫症といった各種の日和見感染や貧血あるいは汎血球減少症、神経症状(脳炎)、腫瘍(特にB細胞リンパ腫)、重度の削痩や衰弱が認められます。

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の診断

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の診断

抗体検査

猫免疫不全ウイルス(FIV)の診断には血液中の抗FIV抗体をイムノクロマト法を用いて検出する院内検査キットがあり、迅速に結果が得られ簡便であることから臨床的に使用されています。

抗体の検出はこのほかELISA法、間接光抗体法やウエスタンブロット法などにより行われます。

[抗体検査の注意点]

1)猫がウイルスに暴露され感染が成立し抗体が産生されるまでに約1~2カ月程度あります。

感染の可能性がある猫では期間をあけて再度検査を行うことが重要です。

2 )幼猫では母猫が猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染している場合は、移行抗体の残存の可能性があるので、6カ月齢以上で再度検査を行います。

3) 猫免疫不全ウイルス(FIV)ワクチンを接種された猫では抗猫免疫不全ウイルス(FIV)抗体が産生されるので、ワクチン接種猫と実際に感染している猫との鑑別が必要になります。

遺伝子検査

遺伝子検査としてプロウイルスDNAあるいはウイルスRNAの検出を行うことができます。

血中ウイルスRNA量が病期の進行とともに増加し、予後の判定に有用であると示されています。

血漿中100万/mL以下の場合とそれ以上の場合では、明らかに生存率が異なります。

その他

そのほか、末梢血リンパ球を材料にウイルス分離を行うことができます。

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の治療

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の治療

抗ウイルス療法

逆転写酵素阻害薬

猫免疫不全ウイルス(FIV)に対する抗ウイルス療法として、逆転写酵素阻害薬であるジドブジン(アジドチミジン:AZT 5~10 mg/kg、1日2回、経口投与)が使用されることがあります。

血中ウイルス量の減少、免疫状態や歯肉炎などの臨床症状の改善が期待されます。

使用には骨髄抑制などの副作用が起こる可能性があるので、治療中は血液検査を行います。

そのほか、アデフォビル(PMEA)、テノホビル(PMPA),ラミブジン(3TC)などがあるが、治療法としては確立していません。

受容体拮抗薬

プレリキサホル(AMD3100)はCXCR4の拮抗薬であり、ウイルス感染を阻止することが期待されています。

猫免疫不全ウイルス(FIV)自然感染猫における投与(0.5mg/kg 1日2 回 皮下投与)では血中ウイルス量の減少が報告されているが、治療法としては確立していません。

猫組換えインターフェロン

猫組換えインターフエロン ω の投与 (1MU/kg 1日1回 皮下投与)が報告されています。

対症療法

二次感染の管理や猫免疫不全ウイルス(FIV)に関連して生じる病変の鎮静化には対症療法を行います。

口内炎や歯肉炎は猫免疫不全ウイルス(FIV)感染猫における非特異的なリンパ球の活性化が関与していると考えられるため、抗炎症効果を目的としたステロイドの使用と二次感染防止のための抗菌薬の投与が行われます。

基本的にはそれぞれの原因や症状に応じて、抗炎症薬、抗菌薬、抗真菌薬、駆虫薬などを用います。

猫免疫不全ウイルス(FIV)感染猫の管理

猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染している猫ではほかの感染症に罹患しやすくなっているため、屋外へ出さない、生肉を与えないなど感染のリスクを避けるよう注意を払います。

また、ほかの健康な猫へ猫免疫不全ウイルス(FIV)を広めないようにするため、感染猫は隔離して飼育することが推奨されます。

間接的な方法として、健康である猫免疫不全ウイルス(FIV)感染猫は去勢を検討し、攻撃性や徘徊を低下させることで、FIV伝播のリスクを減少させます。

感染猫は6カ月ごとに健康診断を行い、体重減少をモニターします。

また血液検査、生化学検査、尿検査も定期的に行うことが推奨されます。

動物病院やペットホテルにおける入院は可能であるが、ほかの猫と接触しないよう飼育ケージを別にする必要があります。

外科・歯科処置行う場合には、抗菌薬の投与によって細菌感染症のリスクを減らします。

コアワクチン接種について

猫免疫不全ウイルス(FIV)の主な感染経路がケンカによる咬傷であり、疫学調査においても5カ月齢以下の子猫にはFIV抗体陽性は認められないことから、移行抗体の消失の時期に合わせて3種混合ワクチンの接種を行っても一般的に問題となる可能性は低いです。

猫免疫不全ウイルス(FIV)が感染している場合には、免疫応答に問題が生じている場合があるので、ウイルス抗体価の測定などを通してワクチン効果を判定することも可能です。

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の予防

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の予防

猫免疫不全ウイルス(FIV)ワクチン

日本では2008年から猫免疫不全ウイルス(FIV)不活化ワクチンが市販されており、利用可能です。

ワクチン接種された猫で血清中の抗体が陽性となるので、ワクチン接種前に猫免疫不全ウイルス(FIV)抗体検査を行うことが推奨されます。

子猫では8週齢で初回接種し、その後は2~3週間隔で2回実施します(初年度計3回)

3回目の接種から1年後に1回接種します。

成猫では、2~3週間隔で3回実施します。

どちらも最終接種の後は暴露リスクが高い猫では1年に1回接種します。

猫免疫不全ウイルス(FIV)感染猫との接触の防止

予防の最も有効な方法は猫免疫不全ウイルス(FIV)感染猫との接触を防ぐことであり、室内飼育の場合は感染のリスクが下がります。

猫同士のケンカに巻き込まれる機会を減少させるために避妊・去勢は効果があると考えられています。

猫免疫不全ウイルス(FIV)の消毒

レトロウイルスは生体を離れると失活します。

石けん、消毒薬、熱、乾燥などの処置で容易に感染性を失います。

注射針、手術用具および輸血用血液を介した医原性感染には注意が必要です。

関連記事一覧

Life with dogs & cats のロゴ

vet1013


no life no dogs & catsをモットーに、いつも犬と猫に癒されています。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。
現役獣医師が海外で勉強しながら得た、犬と猫の病気に対する知識とスキルを発信していきます。

このブログについて お問い合せ プライバシーポリシー
PAGE TOP