動物病院で、自分の猫が猫のヘモプラズマ感染症と診断された...
愛猫が猫のヘモプラズマ感染症と診断されたけど、
- 病院ではよくわからなかった...
- 病院では質問しづらかった...
- 混乱してうまく理解できなかった...
- もっと詳しく知りたい!
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結論から言うと、猫に感染するヘモプラズマは、以前はリケッチアの一種であるヘモバルトネラ(Haemobartonella felis)に分類されていたが、遺伝子解析によりマイコプラズマの一種であることが確認されました。
猫ではMycoρlasma haemofilis(Mhf)、Candidatus Mycoplasma haemominutum(CMhm)、Candidatus Mycoplasma turicensis(C Mt)の3種が重要です。
感染経路は完全には解明されていません。
基礎疾患は発症のリスク因子であり、特に猫免疫不全ウイルス(FIV)、猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫では発症例が多いです。
この記事を読めば、猫のヘモプラズマ感染症の症状、原因、治療法までがわかります。
限りなく網羅的にまとめましたので、猫のヘモプラズマ感染症と診断された飼い主、猫を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。
臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
猫のヘモプラズマ感染症〜症状、原因、治療法〜
この記事の目次
猫のヘモプラズマ感染症の病原体
ヘモプラズマは、細胞壁のない保護膜に包まれたグラム陰性細菌です。
猫に感染するヘモプラズマは、以前はリケッチアの一種であるへモバルトネラ(Haemobartonella Jelis)に分類されていたが、その後の遺伝子解析の結果、マイコプラズマの一種であることが確認されました。
猫に感染するヘモプラズマとして、現在のところ3種のヘモプラズマが猫において重要であると考えられています。
猫のヘモプラズマ感染症の疫学
2010年に報告された日本国内の屋外飼育あるいは屋内外飼育されている猫を対象とした分子疫学調査では、約26%の猫が3種のヘモプラズマのいずれか、あるいは混合感染しており、日本全国に万遍なく分布していることが判明しました。
猫のシグナルメン卜や飼育環境とへモプラズマ感染との関連については、雄であること、中高齢であること、咬傷歴を有すること、外出頻度の高いこと、レトロウイルスに感染していることがヘモプラズマ感染における危険因子として同定されました。
猫のヘモプラズマ感染症の感染経路
ヘモプラズマの感染経路については完全には解明されていませんが、これまでの報告では唾液から病原体が検出されたことから、食器の共有などによる間接的な感染経路が存在する可能性が示されました。
しかしそのような経路では感染が成立しないという報告もあり、現在のところ外部寄生虫による吸血や、猫同士のケンカによる咬傷、垂直伝播といった経路が主要な感染経路であろうと考えられています。
猫のヘモプラズマ感染症の発症機序/臨床症状
急性期における症状としては、元気消失、食欲不振、沈うつなどの非特異的な症状に加え、貧血、黄疸、発熱、可視粘膜蒼白、脱水、脾腫、呼吸促迫といった溶血性貧血に関連した症状が認められます。
血液検査では、骨髄抑制につながるような基礎疾患を有していなければ、基本的に再生性貧血を呈します。
猫で溶血性貧血が認められた際には、本症を鑑別診断リストに挙げておくべきです。
また血液化学検査では、しばしば高ビリルビン血症が認められます。
各種治療により回復してもキャリアとなることが知られており、再発もまれではあるが起こり得ます。
また、発症には基礎疾患を有していることが危険因子であるとされており、特に猫免疫不全ウイルス(FIV)や猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫で発症例が多いとされています。
猫のヘモプラズマ感染症の診断
血液検査
急性発症例における猫ヘモプラズマ症の診断は、通常、血液塗抹標本の観察によって行われます。
ロマノフスキー染色を施した血液塗抹標本では、赤血球表面に散在、あるいは直線上に配列した好塩基性の点状物として認められます。
もしこれが観察されれば、猫ヘモプラズマ症と診断できます。
ただしヘモプラズマは赤血球表面に感染する非常に小さな病原体で、しばしば塗抹上のゴミと誤認される可能性があるため、血液塗抹標本の作製や染色に際しては、アーティファクトに注意が必要です。
またへモプラズマの血液中への出現は、必ずしも貧血の程度や発症時期とは一致しないことも考慮しなければなりません。
遺伝子検査
最近では、PCR法による定性検査や、その判定に定量性をもたせたReal-timePCR法を用いた遺伝子診断法が応用されています。
前述のような急性発症例だけではなく、キャリアとなっている状態でも、ヘモプラズマ由来DNAを検出できる程度の感度と特異性を有しているため利用できます。
原因を特定する場合や、血液塗抹の観察だけでは検出できない被疑症例の鑑別診断に有効とされます。
猫のヘモプラズマ感染症の治療
ヘモプラスマに対してはテトラサイクリン系抗菌薬の投与が有効とされており、ドキシサイクリンが一般に選択されます。
用量は 5mg/kg、1日2回、経口的に3週間の投与が推奨されています。
ビブラマイシンは、有効成分としてドキシサイクリンを含有するテトラサイクリン系の抗生物質です。細菌のタンパク質合成を阻害することで、静菌的・殺菌的に感染を治療します。
1箱8錠 3箱:2,660円
適応菌種
ドキシサイクリンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、淋菌、炭疽菌、大腸菌、赤痢菌、肺炎桿菌、ペスト菌、コレラ菌、ブルセラ属、Q熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ)、クラミジア属
- 体重1kgあたり5mgを12時間毎に経口投与
- 体重1kgあたり10mgを24時間毎に経口投与
ビブラマイシンジェネリックは、有効成分のドキシサイクリンを含有するテトラサイクリン系の抗生物質です。
ビブラマイシンジェネリックの有効成分であるドキシサイクリンは、細菌のたんぱく質の合成を阻害することで、細菌を殺して、感染を治療します。
1箱14カプセル
1箱 1,473円
ただし本剤の投与により、食道炎や食道狭窄が誘発されることがあるため、薬剤が完全に胃まで到達するように、投与後に十分な飲水をさせるか、あるいは薬剤自体を液体の形で投与すべきです。
経口的な投与が困難な症例に対しては、オキシテトラサイクリンの注射薬を用いることもできるが、こちらは産業動物用の薬剤であるため、その点を考慮する必要があります。
また最近では、ニューキノロン系抗菌薬であるエンロフロキサシンも、ヘモプラズマに対して有効であることが示されています。
バイロシン(Bayrocin)は、有効成分のエンロフロキサシンを含有する、犬および猫の尿路感染症治療薬です。国内初の犬・猫用フルオロキノロン(ニューキノロン)系抗菌薬として知られているバイトリルの海外版です。
バイロシン(Bayrocin)に含有されている有効成分のエンロフロキサシンは、細菌細胞のDNA合成に欠かせない酵素であるDNAジャイレースを特異的に阻害することで、細菌の増殖を抑え、犬・猫の尿路感染症(細菌性膀胱炎を含む)を改善します。
エンロフロキサシンは、グラム陽性菌やグラム陰性菌などの幅広い細菌に対して、強い殺菌効果を示します。また投与後は感染組織に速やかに移行します。
有効菌種:本剤に感受性の下記菌種
ブドウ球菌属、レンサ球菌属、腸球菌属、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、シュードモナス属、ステノトロホモナス・マルトフィリア、アシネトバクター・カルコアセティクス
1日1回体重1kg当たりエンロフロキサシンとして下記の量を経口投与。
猫: 5mg
1箱100錠 1箱 2,539円
本剤は 5mg/kgの用量で1日1回、2週間の投与が推奨されています。
重度の貧血を呈する症例には、対症療法として輸血を行います。
また、赤血球の免疫学的破壊を伴っている可能性が考えられる場合には、抗菌薬の投与とともにプレドニゾロンを2mg/kg、1日1回の用量で数日間のみ使用します。
猫のヘモプラズマ感染症の予防
本感染症に対する予防薬やワクチンは開発されていません。
したがって、本菌のキャリア猫との接触を避ける必要があります。
感染経路にはまだ不明な点が残されているものの、感染予防に関しては可能性のある感染経路である吸血性節足動物による媒介、猫同士のケンカによる咬傷、垂直伝播の予防や防止が有効と思われます。
また基礎疾患やストレスといった因子が発症に大きくかかわっていることから、それらを適切に管理することによって発症予防につながると思われます。