獣医師解説!家庭で感染症・寄生虫の犬猫で気をつけること

    動物病院で、自分の犬や猫が感染症と診断された...

    愛猫が犬・猫の感染症と診断されたけど、

    • 病院ではよくわからなかった...
    • 病院では質問しづらかった...
    • 混乱してうまく理解できなかった...
    • もっと詳しく知りたい!
    • 家ではどういったことに気をつけたらいいの?

    という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?

    ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。

    中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。

    ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、

    情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、

    その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。

    例えば...

    • 人に移るの?
    • 治る病気なの?
    • 危ない状態なのか?
    • 治療してしっかり治る?

    これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?

    結論から言うと、犬や猫の感染症を防ぐには、健康を維持して免疫力を保持・増進すること、ワクチンの接種、ノミ・マダニ・フィラリア予防薬の投与、他の動物と接触させないことです。

    そのための基本的な予防についての考え方と家庭で実践すべき感染症予防について解説します。

    この記事を読めば、犬、猫の感染症対策について、ご自宅で気をつけることがわかります。

    限りなく網羅的にまとめましたので、猫の皮膚糸状菌症と診断された飼い主、猫を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。

    ✔︎本記事の信憑性

    この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
    論文発表や学会での表彰経験もあります。

    今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

    臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

    記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

    » 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

    ✔︎本記事の内容

    家庭で感染症・寄生虫の犬猫で気をつけること

    感染症予防の基本的な考え方を知る

    感染症予防の基本的な考え方を知る

    一般に感染症予防は、感染源対策、感染経路対策、感受性宿主対策の3つに分けて考えられます。

    1)感染源対策

    感染源とは動物に病原体が感染する直前の場であり、土壌・水・大気・媒介節足動物・感染動物などがあります。

    必要な消毒を含めて衛生的な飼育環境が保たれれば、家庭内に感染源が存在することはないです。

    2)感染経路対策

    感染経路は「感染源の排出部位から飼育動物の侵入部位までの経由」であり、その対策は経路の遮断です。

    直接伝播経路は接触、吸入、経口です。

    関節伝播経路は、空気・水・食事・土壌・器物などの媒介物、または節足動物などの媒介生物を必要とするので、これらの清浄化(消毒)と駆除が有効です。

    また胎盤や母乳を介した親から子への感染(垂直伝播) もあります。

    3) 感受性宿主対策

    感受性宿主対策は発症前対策として、健康維持・増進のための衛生・飼育管理および疾病特異的なワクチ ン接種があり、特にウイルス性疾患ではワクチン投与が最も効果的な手段です。

    家庭での手洗い・消毒の実施

    家庭での手洗い・消毒の実施

    人が動物と一番接触する機会が多い部位は手指です。

    家庭で飼育される動物に関係する感染症の多くが接触感染ということを考慮すると、

    人が動物から感染症をもらわないようにする(もしくは人から感染症を移さないようにする)

    人が動物と動物の感染症を間接的に伝播しないようにするためには、手洗いが最も重要です。

    手洗いの方法には「日常手洗い」、「衛生的手洗い」、「手術時手洗い」があり、家庭でできる手洗いは日常手洗いと衛生的手洗いです。

    日常手洗いは石けんと流水による洗浄で、衛生的手洗いは日常手洗いに加えてアルコール消毒薬などによる手指消毒を行います。

    手洗いのタイミング

    手洗いのタイミング

    手洗いは次の3つのタイミング

    1. 食事(調理・給餌)の前
    2. トイレの後
    3. 外出から戻った後

    で実施します。

    特に、他の動物と接触して帰宅した後、公園・ アニマルカフェなど不特定多数の動物が出入りする場所、 また、受診した動物病院から帰宅した後には衛生的手洗いを行うことが推奨されます

    (アルコール消毒薬を出入口に常備している動物病院では、出る前に消毒する)。

    これらはインフルエンザや食中毒の予防にも有用です。

    家庭でできる手洗いの方法

    家庭でできる手洗いの方法

    日常手洗いは一般に家庭で実施できる手洗い方法です。

    洗い残しが多い部位は、指先・親指周囲であり、その次に指間、手の甲、手首首位です。

    手洗いのポイン卜は、

    1. 石けん(液)を十分泡立て、手の全体にいきわたらせ、シワの間に届くようにすること
    2. 30秒以上洗浄すること
    3. 必要に応じて2度洗いすることであり、特に2度洗いはウイルス除去にも効果があるとされています。

    実施の際の注意点は、

    1. 爪は予め短く切り、手洗い前には装飾品を外すこと
    2. 石けん(液)をつける前に目にみえる汚れは流水中で除去すること
    3. 石けん(液)を十分泡立てた後、手のひらと甲、指間、両親指、指先、手首を各5回ずつ擦ること
    4. 流水で洗い流した後、清潔なタオル、できればペーパータオルで清拭すること

    です。

    家庭でできる消毒の方法

    加熱による消毒法

    一般の家庭でも衛生的手洗いが実施できます。

    最近では病院などで利用されているアルコール手指消毒薬と同等のものが市販されており、液体、ジェル、泡状のタイプがあります。

    通常は日常手洗いの後に消毒を行いますが、目にみえる汚れなどがなければ、消毒薬のみで十分効果があることが示されています。

    前述した日常手洗いできれいになりにくい部位を中心に消毒を行いますが、そのポイントは、

    1. 残存する石けん(液)や水は消毒効果を低減させるため、消毒前には十分流水洗浄した後に清拭しておくこと
    2. 消毒薬は指先を含めて両手に噴霧すること(フット式であれば容易ですが、そうでない場合は片手ずつ行うか、ジェルタイプの方が利用しやすい)
    3. 十分擦り込むこと

    です。

    手指消毒の方法と注意点は

    1. 両手に必要量を噴霧すること
    2. 手のひら、指先、指の背、手の甲、指間、親指周囲、手首周囲の順に擦ること
    3. 乾燥するまで十分擦り込むこと

    です。

    手洗い用石けん,消毒薬について

    家庭でできる消毒の方法

    石けんはフェニキア人がヤギの脂肪と木灰の抽出物を沸騰させて凝結しつくったものが最初とされています。

    高級脂肪酸(炭素数12 ~18)のナトリウム塩あるいはカリウム塩で、カリウム塩の方が溶解性が高いため、液体石けんに多く用いられています。

    石けんは形状によって固形、泡状、液体の3種類があり、それぞれメリッ卜・デメリットがあります。

    固形石けん

    市販の石けんは高級脂肪酸のナトリウム塩が多く、洗浄補助剤(無機塩類、キレート剤など)や、添加剤(香料、染料、保存料など)を加えている場合もあります。

    メリットとしては、石けん/界面活性剤としての含有量が高く、洗浄効果が高いです。

    デメリットとしては、不特定多数の人が利用する場合には不衛生となることや、溶かすのに時間がかかる点があります。

    泡状石けん

    泡立ちを良くするため、液体石けんに起泡剤や泡保持剤を加えたものです。

    メリットとしては、泡立ちが良く、素早く洗浄できること、すすぎが容易であることです。

    デメリットとしては石鹸成分の濃度が低く、また、手指が水や温水に濡れている場合には消泡されやすいです。

    液体石鹸

    脂肪酸のカリウム塩を成分とし、常温でゼリー状・粘液状を呈するため適度に加水しています。

    メリッ卜としては、泡立ちが良く、容器に入っていることから不特定多数の人が利用しても衛生的であり、補充が可能です。

    デメリッ卜としては、石けん成分の合有量が低く(固形石けんの約30%)、その点で、固形石けんにくらべてやや洗浄力が劣ります。

    薬用石けん

    殺菌消毒を目的にしたものと、肌荒れの防止を目的にしたものがあります。

    これらは医薬部外品扱いとなります。

    手指の殺菌や除菌を目的にしたものには、ベンザルコニウム塩などが殺菌剤として配合されています。

    いずれも、洗浄成分としてはアシルイセチオン酸塩やアシルグルタミン酸塩などの合成界面活性剤が使用されることが多いです。

    逆性石けんは主に陽イオン界面活性剤である塩化ベ ンザルコニウムや塩化ベンゼトニウムであり、低水準 消毒薬としての殺菌効果を有します。

    石けんという名称が付いているが、洗浄力はほとんどないとされています。

    消毒薬

    手指消毒には一般に速乾式アルコール製剤が用いられ、病院でも利用されています。

    消毒用アルコールにはエタノール(70~90%)や、2-プロパノール(イソプロパノール、50~70%)があり、手指衛生にはより毒性の低いエタノール製剤が利用され、これに2-プロパノールや塩化ベンザルコニウム、保湿剤を添加したものが利用されています。

    消毒薬には液体、ジェル、泡状のタイプがあり、液体や泡状のものは手指まで全体に広げやすく、ジェルタイプのものは飛散しにくいです。

    外から感染症を持ち帰らない

    外から感染症を持ち帰らない

    外から家に感染症を持ち込まないためには、外出時に感染源と接触しないことが重要です。

    しかしながら、感染症を疑う動物との接触は避けることが可能であるとしても(外に出る猫では難しい)、飼育動物や野生動物の糞尿や体液、媒介節足動物などに病原体が存在するかどうかは目にみえないため判断できません。

    そのため、これらとの接触もできる限り避けるべきです。

    一方、意図せず接触してしまった際に感染しないために、常に

    1. 動物を健康に保ち、抵抗力をつけておくこと
    2. ワクチンを接種すること
    3. 蚊、マダニ、ノミなどの媒介節足動物の予防薬を投与すること

    なども必要です。

    犬の散歩時にはどのようなところでリスクがあるのか

    犬の散歩時にはどのようなところでリスクがあるのか

    犬は排泄行為などの生理的行動においても、社会的行動においても、散歩は必要な行為です。

    そのため、過度に神経質になり散歩自体を無くすようなことがあってはならないが、感染予防の点からは何点か注意すべきポイントがあります。

    犬の散歩時には、できるだけほかの犬などと接触させないこと、糞尿に接触させないことが重要です。

    また、野生動物が生息するような場所は、病原体を有するマダニなどの媒介節足動物やネズミなどの糞尿が 存在する可能性が高いため、散歩したり、遊ばせたりしない。

    特に、公園の砂場などは動物の糞尿が隠れている可能性があるので、遊ばせないようにします。

    帰宅時には、四肢先端・鼻口部などを清拭し、体毛の汚れや万一のノミ・マダニの付着を除去するためにブラッシングするといいです。

    最近問題となっている重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などについては、特に発生のみられる地域ではその対策について厚生労働省や農林水産省などの報告に注意し、マダニの付着や感染動物(野生動物)と接触を避けるようにします。

    先に述べた日頃の健康管理、 ワクチン接種、媒介節足動物の予防薬の使用などは、個々の感染症を防ぐのに有効ですが、一方でこれは地域(集同)で生物学的に感染経路を遮断すること、すなわち地域に感染症が広がるのを防ぐことにつながります。

    そのため、自分の飼っている動物の感染症予防が、よその動物の健康をも守っているのだという認識をもち、 地域として動物の感染症を防ぐように心掛けましょう。

    外に出る猫はどのようなところでリスクがあるのか

    外に出る猫はどのようなところでリスクがあるのか

    猫は行動学的には家庭内や十分な広さのあるケージなどの内で生活することが可能であり、外飼いは特に必要のない動物とされています。

    外に出る猫では感染症にかかるリスクが高く、一般に繁殖期の接触、猫同士や他の動物とのケンカ、じゃれ合いなどが動物間での接触感染の機会となります。

    また、糞尿との接触や媒介節足動物による吸血や接触は避けることができません。

    猫同士の接触による感染症で気をつけたい疾患には、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)、猫白血病ウイルス感染症、猫汎白血球減少椛症がありいます。

    最近では重症熱性血小板減少症候群(SFTS)のマダニによる媒介も合めて注意した方がいいです。

    加えて猫は行動学的に他の小動物を狩る習性があり、小鳥、カエル、へビ、ネズミなどを捕食することがあります。

    これらは病原体となるウイルス、細菌、寄生虫をもっていることがあり、感染する機会を与えることとなります。

    飼い主が持ち帰ってしまうケース

    飼い主が動物の病原体と接触する場所としては、動物園、観光牧場、アニマルカフェなど不特定多数の動物が集まる場所、野生動物の生息する野原・森、動物病院などがあります。

    他の動物と接触する機会がなければ、飼い主が動物の病原体を持ち帰るケースはほとんどなく、通常の人のインフルエンザや食中毒を予防するための衛生措置を取っていれば、全く問題はありません。

    動物園では小型動物・草食動物とのふれあいコーナーなどはあるかもしれないが、通常、イヌ科やネコ科の動物と接触する機会はなく、一定の距離を保って見学できます。

    また、健康管理も行われており、感染症などで体調の悪い動物が展示されることはないため、リスクはほとんどないです。

    吸血する節足動物は野生動物が生息する場所に多く存在します。

    すなわち、病原体を保有するマダニなどの節足動物が生息する場所にレジャーなどで行く場合には注意したい。特にマダニは白い布などに反応する傾向があるので、注意し、できれば飼い主も節足動物等の忌避剤を使用することを勧めます。

    一般に動物病院は衛生環境が保たれており、感染症が疑われる動物と接触しない限りリスクは低いです。

    ただし感染動物の出入りが多いことから、一定の注意は必要であるため、以下に注意点を示します。

    動物病院ヘ行ったときに気をつけること

    動物病院ヘ行ったときに気をつけること

    動物病院へ行く前に:日頃の健康管理

    動物病院に行く前には、普段から

    1. 必要なワクチンを接種しておくこと
    2. フイラリア予防や、ノミなどの媒介節足動物の予防薬などを使用しておくこと
    3. 動物に目にみえる汚れが付いていないことなど

    飼い主としてのマナーを守ることが重要です。

    〈感染症の疑いがあり受診するとき〉

    もし動物に感染症の疑いのある場合、例えば疥癬などの皮膚疾患や耳道疾患、嘔吐や下痢、発熱(鼻が乾く、パンティング)、鼻汁・くしゃ み、咳などが認められれば、動物を病院に連れて行く前に病院へ問い合わせ、来院時間や病院へ到着してからの待機場所を確認しておくことが推奨されます

    動物病院に入るとき

    院内感染は主に接触感染であり、直接的な動物同士直接的な動物同士の接触と同時に、人の手指を介した感染に注意します。

    そのため、動物病院では人口近辺に速乾性消毒薬を設置していることがあるので、マナーとしても必ず手指消毒を行いたいです。

    待合室

    飼い主と動物は受け付けした後に指示に従って待合室にて待つことになるが、待合室では、ほかの動物を撫でたりするなど、安易に接触しないこと、また感染症が疑われる動物からは一定の距離(できれば2メートル以上)の間隔を置くことが推奨されます。

    小型犬や猫などは診察室に入るまではキャリーケースに入れたままとすれば、特に距離を置く必要はないかもしれません。

    大型犬の場合は、指示があるまでは別の場所(車内または屋外)で待機します。

    動物病院から帰るとき

    最後に、診察が終わった後は再度手指消毒を終えて、動物病院を出ます。

    多頭飼育の注意点を知る

    多頭飼育の注意点を知る

    多頭飼育下で新しい動物を迎えるときの注意点として

    1. ワクチンを接種すること(新しく迎える動物と先住動物も)
    2. 1週間くらいの検疫・隔離期間を設けること
    3. 症状がある場合には治療すること

    が挙げられる。

    感染症かどうかにかかわらず、病気になった場合の隔離室やケージを予め準備しておく必要があります。

    また、ストレスがあると免疫力を低下させ、感染症になりやすくなるため、動物の行動学的特性を理解して、ストレスの無い環境をつくることは重要です。

    犬の場合

    犬は本来は群で行動するため、行動学的には社会的順位(直線型)を示します。

    そのため、闘争などにより社会的順位を決める必要があることから、新たに犬を導入する場合には咬傷や掻傷による感染症などに注意する 必要があります。

    一般に食事の容器は犬ごとに準備することを推奨されています。

    前述したとおり、予め個々のケージを準備しておき、日頃からすべての動物の健康に留意し、症候が現れた動物を発見した場合には速やかに隔離することが重要です。

    もし感染症が発生した場合には、すべての動物について症状の有無を確認し、必要に応じてケージ飼いに切り変えること、接触感染を防ぐための措置を講じることが重要です。

    例えば食器の消毒、ケージの消毒、排泄物の管理などです。

    排泄物の適切な管理は日常的に心掛けたい事項です。

    犬の場合、長い潜伏感染の後に発生する感染症は限られており(狂犬病、犬ジステンパーなど)、これに対応するワクチンも存在するため、上記の事項を守れば、大きな問題とはならないかもしれないです。

    ただしパルボウイルス感染症などの伝播力が強く、致死率の高いものについては特に注意を要します。

    猫の場合

    猫は繁殖期を除いて単独行動を好む動物とされているが、多頭飼育などでは社会的順位が存在する(これは犬ほど厳格なものではなく、ある程度の寛容性があることが知られている)。

    そのため新たに猫を導入する場合は、先住猫が権利を損なうことなく、また闘争行為が起こらないように、性別、相性、飼育数(飼育部屋数-1を上限)、トイレの数(飼育数+1以上)などを考慮して、ストレスを与えないようにします。

    基本的には、外に山さず室内飼いとします。

    猫の場合、子猫のときから室内飼育し、一定のスペースがあれば、外に出なくてもストレスを感じることはないようです。

    逆に、外に出ることで、ケンカによる咬傷などから唾液や血液などを介して猫白血病ウイルス感染症や猫免疫不全ウイルス感染症、猫汎白血球減少症などの難治性の感染症になるリスクが高まります。

    また、ケンカなどにより弱った猫や子猫にマダニなどの節足動物が付くと、節足動物媒介性感染が生じる場合もあります。

    上記のように、特に外で生活する猫は感染症のリスクが高いことから、導入する場合には必ず動物病院で健康診断・ワクチン接種・感染症検査などを実施した上で、慣らし期間を含めた一定期間、先住猫から隔離して飼育します。

    これらのことを考慮して飼育し、適切な健康管理を行えば、飼い主が外から病原体を持ち込まない限り感染症が発生することはまずないです。

    もし発生した場合には、犬と同様の措置を取ることが重要です。

    飼い犬・猫の感染症を疑う症状を知る

    飼い犬・猫の感染症を疑う症状を知る

    感染症を疑う症状には、急性感染症の症状として炎症に伴う発熱があります。

    各々の感染症に特徴的な症状として主に消化器症状、呼吸器症状、神経症状などがあります。

    消化器症状としては嘔吐や下痢があり、呼吸器症状にはくしゃみ、発咳、鼻汁があり、目脂なども含まれます。

    神経症状はてんかんを除けば重篤な疾患が多く、致死的となる場合も少なくないです。

    多頭飼育の場合、ほかの動物に同じ症状が出ていないかチェックすることで、感染症(および食中毒など)を疑うことができます。

    症状のある動物は直ちにケージや別の部屋に隔離し、嘔吐物、糞尿、唾液、鼻汁などの排泄物があれば除去して消毒します。

    上記の症状が急にみられたら、速やかに動物病院を受診し治療するべきです。

    これらの症状の有無をチェックし、疑われる病原体に対する消毒を行います。

    犬で特に重篤な急性疾患

    犬で特に重篤となる急性疾患にパルボウイルス感染症があります。

    ワクチン接種の普及により少なくなってはいますが、重篤な嘔吐・下痢(脱水)を示し、致死的となることも多い上、きわめて伝播力が強いです。

    激しい嘔吐や出血性の下痢など、パルボウイルスの感染を疑う症状がみられたら、直ちに動物病院にて必要な治療を行うとともに、家庭内の消毒を十分行います。

    また、他の動物には接触しないようにし、感染を広げないよう厳重な注意が必要です。

    猫で特に重篤な急性疾患・慢性疾患

    猫汎白血球減少症もパルボウイルス感染症であり、犬と同様に対応する必要があります。

    猫で慢性に経過し、重篤で致死的となる疾患として猫免疫不全ウイルス感染症、猫白血病ウイルス感染症、猫伝染性腹膜炎があります。

    猫免疫不全ウイルス感染症は免疫機能低下から二次感染により致死的となります。

    また、猫白血病ウイルス感染症はリンパ腫や白血病を引き起こすが、口内炎などの症状もみられます。

    猫伝染性腹膜炎は、滲出型と非滲出型があり、腹水や神経症状などの特徴的な症状を示します。

    これらは基本的には外出したときなどに、ほかの猫とのケンカによる咬傷や濃厚接触で感染します。

    いずれも致死的となるため、猫はできれば室内で飼育することが推奨されます。

    人獣共通感染症の危険性を知る

    人獣共通感染症の危険性を知る

    人獣共通感染症(ズーノーシス)は人と動物の共通感染症です。

    厚生労働省は人の健康の観点から、「動物由来感染症」という言葉を使っているが、中身は同じです。

    犬や猫は長い家畜化の歴史の中で感染症についても人と共有し一定の抵抗力を有するようになって来ています。

    したがって驚異となる疾病はさほど多くはなく、抗菌薬やワクチンの開発も手伝って、多くの感染症を排除して来ました。

    しかしながら近年、新興・再興感染症の発生もあり、これまで知られていなかった感染症もみられるようになりました。

    人獣共通感染症は病原体によって「動物も人も重症となる場合」と、「動物では無症状や軽症であるが、人で重症となる場合」があります。

    前者は動物の健康管理に留意し、ワクチン接種を含めて抵抗力を保てば、病原体を抑えるか、感染しない量に低減させることで、動物から人への感染を防ぐことが可能です。

    後者は動物の感染に気がつかないことが多く、飼い主自身で防がなければなりません。

    すなわち、

    1. 動物の飼育環境を衛生的に保つ
    2. 動物との濃厚接触を避ける
    3. 手指衛生を心掛ける

    ことが重要です。

    また、蚊やマダニなどの吸血により病原体を媒介する節足動物が多く生息するような場所に出向く場合は、虫除け剤の使用や長袖長ズボンの着用が推奨されます。

    飼い主地震も人獣共通感染症から身を守る努力をして、自身の病原体を動物たちへ伝播させることのないようにします。

    もし人で感染症の症状が現れたら、すぐに人の医療機関を受診しその際には動物との接触の程度(咬傷、口移しの餌やり、舐められたなど) を伝えます。

    特に、季節外れの風邪様症状で受診した患者で原因が分からなかったが、鳥を飼っていることを告げることによりオウム病の診断がなされるケースもあります。

    エキゾチックアニマルの飼育では特に人獣共通感染症に注意が必要

    前述したとおり、犬と猫は長い家畜化の歴史の中で、感染症についても人と共生できる特性を有して来たため、犬・猫から人へ、人から犬・猫へ伝播する感染症は限られています。

    一部の常在菌も共有しているかもしれません。

    一方、ぺットとして飼育されるその他の動物(フェレット、ハムスター・チンチラ・デグーなどのげっ歯類、爬虫類、鳥類などのいわゆるエキゾ チックアニマル)はウサギなど産業動物として家畜化されたものを除いて、共生あるいは家畜化の歴史は短く、野生に比較的近い動物を繁殖して販売しているものも多いです。

    したがって,獣医学的に十分な情報がなく、感染症に対する感受性についても不明な点が多いのが現状であり、安易に飼育することは勧められません。

    最近注目されている人獣共通感染症

    近年、人・動物・環境分野で1つの健康衛生を目指す「OneHealth」の観点から、人獣共通感染症について多くの情報が公表されており、特に厚生労働省からは動物由来感染症(人獣共通感染症)に関する情報がホームページ上で随時更新されています。

    重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

    最近話題とされている人獣共通感染症として、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)が報告されており、犬や猫から人に、咬傷や唾液などの体液を介して感染したと思われる事例があります。

    犬・猫での主な症状は、発熱と消化時症状であり、重症化すると血小板減少による出血がみられるようになり、猫では死亡する症例も多いです。

    人でも同様に、発熱・消化器症状(悪心、嘔吐、腹痛、下痢、下血など)・リンパ節腫脹・皮下出血などがみられ、死亡例も多く報告されています。

    コリネバクテリウム・ウルセランス感染症

    コリネバクテリウム・ウルセランス感染症は、ジフテリアと同種の細菌による感染症であり、犬や猫から人に感染したことが報告されています。

    犬や猫では咳やくしゃみ、鼻汁などの風邪様症状、皮膚炎、皮膚や粘膜潰瘍などがみられます。

    人ではジフテリアと類似した臨床症状を示し、呼吸器感染では、風邪様症状から、咽頭痛、咳を認めることがあり、重篤な症状の場合には呼吸困難などを呈し死に至ることもあります。

    エキノコックス症

    エキノコックス症(多包条虫)は北海道を中心として発生が多いが、2018年3月には愛知県の野犬で検検出されています。

    犬は野ネズミなどの中間宿主(幼虫)を摂取しなければ感染せず、人は終宿主であるキツネや犬(成虫寄生)が糞便に排出した虫卵を経口摂取しないと感染しません。

    したがって、人から犬へは感染せず、飼育されている犬も感染する機会はほとんどないです。

    これらの人獣共通感染症について過度に恐れる必要はないが、衛生的な飼育・健康管理、動物との濃厚接触を避けること、手指衛生を心掛けることは感染症を防ぐ上で助けとなります。

    もし体調に異常を感じたならば、自己判断せずに速やかに人の医療機関を受診して対処することが望まれます。

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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