褐色細胞腫(pheochromocytoma)は副腎髄質や傍神経節のクロム親和性細胞を起源とする腫瘍であり、カテコラミンを産生します。
クロム親和性細胞種とも呼ばれます。
犬ではときに報告されていますが、猫ではきわめてまれです。
犬の褐色細胞腫は半数程度が良性、残りが悪性と考えられています。
この記事を読めば、犬の褐色細胞腫の症状、原因、治療法までがわかります。
限りなく網羅的にまとめましたので、犬の褐色細胞腫ついてご存知でない飼い主、また犬を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
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✔︎本記事の内容
犬の褐色細胞腫〜症状、原因、治療〜
犬の褐色細胞腫の症状
褐色細胞種の犬の半数程度は臨床症状を呈さず、剖検時にはじめて褐色細胞種と診断されることもあります。
現れる症状はおもにカテコラミンの過剰によるものであり、非特異的です。
- 虚脱
- 食欲不振
- 嘔吐
- パンティング
- 呼吸困難
- 多飲・多尿
- 下痢、体重減少
- 後肢の浮腫
- 失明
- 鼻出血
- 落ち着きのなさ
- 発作
猫では多飲・多尿、元気消沈、食欲不振、発作、嘔吐がみられます。
全身性の発作も過剰なカテコラミンによるもので、1 分~数時間持続します。
腫瘍の大血管浸潤による腹腔内出血や腹水は、症例の15%程度で認められます。
メトクロプラミドはクロム親和性細胞からのカテコラミン分泌を刺激する。
嘔吐などの消化器症状に対してメトクロプラミドを使用し、高血圧(あるいは他のカテコラミン過剰症)が悪化した場合には褐色細胞腫を疑います。
犬の褐色細胞腫の診断
副腎エコーは褐色細胞腫を検出するために最も優れた検査法です。
褐色細胞腫は他の副腎腫瘍と同様に球状に腫大するが、石灰化することはありません。
犬や猫の褐色細胞腫は内分泌的に確定できません。
動物のカテコラミンは生理的変動がきわめて大きく、基準値が設定できないからです。
このため症状からカテコラミン過剰が疑われ、副腎に腫瘤が認められ、高血圧の鑑別疾患としてアルドステロン症が除外されたら、褐色細胞腫と仮診断して治療を開始します。
α1-拮抗薬による内科療法が有効であれば褐色細胞腫の可能性が高くなります。
最終的には外科手術と病理組織学的検査で確定診断します。
犬の褐色細胞腫の治療
術前検査で完全摘出が見込めるなら、副腎摘出術が第一選択です。
部分摘出に終わっても、臨床症状はコントロールしやすくなります。
術後管理は、腫瘍の完全摘出後には低血圧が問題となります。
褐色細胞腫の動物は慢性的にカテコラミンに暴露されており、心血管系のカテコラミン感受性が低下しています。
このため腫瘍摘出直後には一般的な昇圧剤は無効であり、十分な輸液(晶質液・膠質液)により血圧を維持する必要があります。
この状況は術後2~4 日程度で解消し、症例の血圧は安定します。手術が不完全摘出に終わった場合には、引き続き高血圧のコントロールが必要です。
犬の褐色細胞腫の予後
症例が少ないため、予後を体系的に検討した報告はないです。
予後は腫瘍の悪性度、血管浸潤や遠隔転移によって大きく異なります。
良性腫瘍を完全に摘出できれば動物は寿命を全うするが、大血管に浸潤すると数カ月以内に死亡します。
遠隔転移は肺、肝臓、脾臓、腎臓、骨、心臓、膵臓、リンパ節で報告されています。