獣医師解説!犬が咳をした、喀血〜症状、原因、治療法まで〜

    犬が咳をした!咳の中から血が混じっている!犬が咳き込んで呼吸が苦しそう!

    犬が咳をし始めたけど、救急病院や夜間病院に行った方がいい?

    咳は遭遇する機会が非常に高い症状です。

    実は、この咳には、乾性と湿性の2種類があります。

    また、それにより対処法や疑われる症状、行う検査も異なります。

    この違いを病院で教えていただくと、非常に診察もスムーズになり、自宅で判断できると対処法も分かります。

    自宅での咳の緊急性の有無が分かるのは非常に大事です。

    本記事では、『犬の咳』について解説します。

    この記事を読めば、犬の咳の原因、症状、対処法、緊急度から治療法までがわかります。

    限りなく網羅的にまとめましたので、犬の咳について、ご存知でない飼い主、また愛犬の咳を見つけた飼い主は是非ご覧ください。
    ✔︎本記事の信憑性
    この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
    論文発表や学会での表彰経験もあります。

    記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

    » 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

    ✔︎本記事の内容

    獣医師解説!犬の咳、発咳、喀血〜症状、原因、治療法まで〜

    犬の咳とは?発咳とは?

    犬の咳とは?発咳とは?
    閉鎖した声門に対して突然起こる強力な呼気反射であり.肺からの空気を大きな音を立て て爆発的に排出させることです。

    それは気道内に貯留した分泌物や異物を気道外に排除するための生体防御反応です。

    下記の3つの症状が併発します。

    喀出

    口腔または上気道内の分泌物、または気道内分泌物を口の外に出すことです。

    喀痰

    気管支腺や杯細胞からの分泌物を主成分 とし、異物、細菌、気道上皮細胞などから構成され、咳嗽とともに喀出されたものです。

    しかし、犬や猫では喀痰は口腔内に喀出されすぐに嚥下されてしまうので、通常喀痰を採取し直接みることは困難です。

    喀血

    咳とともに血液を喀出することであり、血痰とは血液が混じった喀痰を意昧します。

    犬の発咳の分類

    犬の発咳の分類

    発咳の持続期間による分類

    • 急性発咳:発症から2週間未満
      ウイルスや細菌感染症の可能性が高い。伝染性期間・気管支炎( ケンネルコフ)、気道内異物
    • 遷延性発咳:2週間から2ヶ月間
      感染後発咳、口鼻瘻管
    • 慢性発咳:2ヶ月以上持続
      ウイルスや細菌感染症による咳の可能性は低い。
      口鼻瘻管、慢性気管支炎、心肥大、好酸球性肺疾患、犬糸状虫症、気管虚脱、腫瘍、寄生虫感染

    咳の正常による分類

    大まかに湿性、乾性に分類されます。

    湿性

    • 音量が小さく柔らかくこもった咳
    • 1回ごとに力なく消耗し一般状態は不良です
    • 末梢気道肺疾患を示唆し、肺機能が低下しています
    • 細菌性気管支肺炎時の典型所見です。

    乾性

    高音調で響く咳

    単発性

    喉頭刺激により、突然始まり、3-5回程度の強い乾咳が続き、喉になんか絡まったような仕草をして終わります。

    持続しない、慢性鼻炎に関連する口鼻瘻管、咽喉頭炎などで生じます。

    発作性

    アレルギー性気道疾患などにより、突然始まり強い呼気努力を伴います。

    通常は数回で終わり、猫喘息で見られます。

    持続性

    一度発咳が始まると、それが次の咳刺激となり持続します。

    中枢気道性

    気管、気管分岐部、主気管支に咳刺激がある場合に生じます。

    甲高く音量が大きく、咳が悪化するが安静時には生じません。

    一日中続くこともあります。

    肺機能は正常であることが多く、一般状態は維持され咳をしながら動き回ります。

    伝染性気管・気管支炎(ケンネルコフ)、左房拡大による左主気管支の圧迫などでみられます。

    特にガチョウの鳴き声様の甲高い持続性乾咳は気管虚脱の典型所見です。

    痰産生性

    末梢気道肺実質疾患により末梢気道内に過剰分泌物が貯留した状態です。

    乾咳を続けた後に必ず「カーッ」といって痰を喀出する仕草を見せます。

    1回毎の咳は努力性で、喉の切れるような高音調な咳をします。

    安静時にも咳が生じ、朝方や夜に悪化し、一晩中続くこともあります。

    肺機能低下を生じていることが多く、一般状態は低下し、特に発咳時には苦しそうな様子が見られます。

    慢性気管支炎、心肥大、好酸球性肺炎などで見られます。

    喀血、血痰が生じる疾患

    気管支拡張症、肺アスペルギルス症、犬糸状虫症、心原性肺水腫、急性呼吸促迫症候群、抗凝固性殺鼠剤中毒、悪性気管腫瘍、肺びまん性血管肉腫

    病理発生

    病理発生

    発咳

    気道内の過量分泌物、異物、物理的圧迫、振動、有毒ガス、冷気、感染、炎症に対して気道壁表層の咳受容体の刺激が迷走神経を介して延髄に伝達され咳が発生します。

    喉頭や気管は機械的刺激に対して感受性が高く、化学的刺激には感受性が低いです。

    さらに遠位の軌道に進むに従い、化学的刺激に対し感受性が高く、機械的刺激には感受性は低くなります。

    感受性はそのまま咳の強度に関連します。

    例えば気管内では小さな異物でも強く咳をします。
    気管支深部では比較的大きな異物が長く滞留しても咳があまり強く生じません。
    また喉頭部の直接刺激は、吸息を伴わず、呼息反射が生じます
    遠位気道の受容体刺激には発咳に先行する吸気相が見られます。

    喀血、血痰

    • 気道が破壊性変化を受け拡張している場合
    • 肺胞壁の破綻により肺実質内に血液が流入する場合
    • 血液凝固内能の著しい低下
    • 易出血性の気道・肺実質内腫瘤状病変

    対症療法

    対症療法
    湿咳や痰産生咳の場合は鎮咳薬やステロイドは禁忌です。

    気管支肺炎なら細菌感染を悪化させる可能性があり、慢性気管支炎でも排泄すべき喀痰を気道内に停留させてしまい、「適正な咳反応」を抑制し、むしろ咳症状を増悪させます。

    ステロイド投与で初期には粘膜の抗炎症効果により鎮咳効果が見られますが、持続投与する場合、末梢気道閉塞と痰産生咳の憎悪、そして肺機能障害に陥り、一般状態は悪化します。

    湿咳や痰産生咳の治療

    抗生物質、気管支拡張薬、去痰薬 

    一般状態が悪い場合は、酸素濃度は30%程度から酸素投与を始めます。

    ネブライザー療法は原因特定前から行うのは危険です

    単発性乾咳

    抗生物質と去痰薬、鼻炎や咽喉頭炎を伴えばネブライザー療法を併用します。

    発作性乾咳

    気管支拡張薬を投与 発作頻度では酸素投与を行います。

    持続性中枢気道性咳

    抗生物質「ケンネルコフ(伝染性気管・気管支炎)の場合はビブラマイシン」投与します。

    犬の咳の特徴

    犬の咳の特徴
    ヨークシャーテリア、チワワ、パピヨン、ポメラニアン、シーズーなどの中高齢の小型犬種では慢性気管支炎が多いです。

    ヨークシャーテリア、チワワ、ポメラニアンでは気管虚脱が、4ヶ月齢以下の若齢犬間では伝染性気管・気管支炎(ケンネルコフ)が多いです。

    キャバリアキングチャールズスパニエル、マルチーズ、チワワ、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、シーズーなどでは心肥大が生じやすい傾向があります。

    高頻度の疾患

    高頻度の疾患

    伝染性気管・気管支炎(ケンネルコフ)

    パラインフルエンザウィルス及び犬アデノウイルス2型に感染後、気管支敗血症菌の感染によって発症すると考えられています。

    気管支敗血症菌は、一度感染すると14週間は気道内に残留すると言われています。

    持続性中枢気道性の強い乾咳が続きます。

    慢性気管支炎

    非感染性、非炎症性の粘稠な気道内分泌物が貯留し、慢性の持続性痰産生咳を示します。

    夜間に悪化し睡眠障害に陥ることが多いです。

    抱くなどの刺激で咳が始まります。

    胸部X線写真では呼気時に胸腔内の気道が虚脱していることがよく見られます。(気管、気管支軟化症)

    末梢気道疾患のため重度の低酸素血症を示していることが多く一般に予後が良くないです

    治療は非痰補助に徹します。環境空気改善、去痰、気管支拡張、運動、減量を行う

    心肥大

    小型犬では心肥大自体が胸腔内容積を制限し、多発性に肺葉気管支に虚脱が生じます。

    この現象が慢性発咳と関連があると考えられています。

    慢性気管支炎同様、夜間の持続性痰産生咳が特徴的です。

    気管虚脱

    期間が扁平狭窄している状態で、運動や興奮時にガチョウの鳴き声様の持続性中枢気道性乾咳を示します。

    重症令では、外科療法やステント留置などを考慮します。

    猫喘息

    人の気管支喘息のように気道内好酸球が主体となり気管支に慢性炎症と粘膜障害を引き起こし咳受容体の感受性が亢進している状態です。

    人と同様に慢性経過にて病変気管支壁が器質化し肥厚する機序が確認されています。

    ステロイドと気管支拡張薬の吸入薬で管理します。

    しかし、同様症状を示すネコの異なる慢性気道疾患もあり、原因疾患を治療するには気管支鏡検査にて確定診断する必要があります。

    好酸球性肺炎

    好酸球が実質から末梢気道に渡り浸潤し、組織障害を起こし、頻呼吸と慢性発咳を示します。

    犬糸状虫の潜在寄生でよく認められますが、好酸球性肺浸潤の原因は特定できないことが多く特発性と診断されることがあります。

    気管支鏡検査にて診断し、ステロイドの全身投与で長期管理します。

    犬糸状虫症

    蚊を介して感染します。

    感染子虫は、体内移行後、最終的に成虫となて肺動脈に寄生します。

    重度寄生で肺動脈は変性または閉塞し肺性心を示すようになります。

    肺胞壁の破綻は末期になって、肺高血圧と肺ない炎症憎悪による肺胞上皮障害によって生じます。

    左房拡大による左主気管支の圧迫

    僧帽弁閉鎖不全により左房が拡大すると、左主気管支の一部が下行大動脈との間に挟まれて圧迫されます。

    気道粘膜の慢性炎症と心拍動により、咳受容体の感受性が亢進し、持続性中枢気道性乾咳を示します。

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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