獣医師解説!犬の目やに、眼脂が多い?〜原因、症状、治療法〜

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    愛犬の犬の目やに、眼脂が多いので病院に連れて行ったけど、 

    • 原因がわからないと言われた...
    • 様子、経過を見てくださいと言われたけど心配...
    • 病院ではよくわからなかった...
    • 病院では質問しづらかった...
    • 混乱してうまく理解できなかった...
    • もっと詳しく知りたい!
    • 家ではどういったことに気をつけたらいいの?
    • 治療しているけど治らない

    という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?

    ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。

    中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。

    ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、

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    その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。

    例えば...

    • 人に移るの?
    • 治る病気なの?
    • 危ない状態なのか?
    • 治療してしっかり治る?

    これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?

    結論から言うと、目脂は結膜の分泌物で、その性状は様々で、

    さらさらとした透明な漿液性眼脂、べとべととした粘液性眼脂、黄緑~淡黄色の膿性眼脂

    などに分類されます。

    生理的な分泌もあれば、炎症に伴い分泌されるものもあります。

    この記事では、犬の目脂、目やにが多い場合について、その理由をアカデミックな面からまとめました。

    この記事を読めば、犬の目やにが多い、なかなか治らない際の症状、原因、治療法までがわかります。

    限りなく網羅的にまとめましたので、ご自宅の愛犬の目やにが多いところを見つけた飼い主は、是非ご覧ください。

    ✔︎本記事の信憑性

    この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
    論文発表や学会での表彰経験もあります。

    今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

    臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

    記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

    » 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

    ✔︎本記事の内容

    獣医師解説!犬の目やに、眼脂が多い?〜原因、症状、治療法〜

    犬の眼脂とは

    犬の眼脂とは

    結膜の分泌物で、その性状は様々であり、

    • さらさらとした透明な漿液性眼脂
    • べとべととした粘液性眼脂
    • 黄緑~淡黄色の膿性眼脂

    などに分類されます。

    生理的な分泌もあれば、炎症に伴い分泌されるものもあります。

    犬の眼脂の分類

    犬の眼脂の分類と問題点

    生理的眼脂

    眼球表面の汚れやゴミが涙で洗い流され、結膜分泌物で絡め取られたものが眼脂です。

    通常はまばたきによって洗い流されています。

    睡眠中はこの作用がないため、起床時にいくらか眼脂が付着していることがあるが、これは生理的な現象です。

    また、内眼角の粘性眼脂が大型犬・超大型犬の、特に鼻の長い品種(ドーベルマンやラフ・コリーなど)に認められます。

    眼球陥凹、深い眼窩、狭い頭蓋、軽度の眼瞼内反、不適切な涙の排泄など解剖学的異常によるものとする見解や正常所見とみなす見解があります。

    持続的な結膜と瞬膜の充血を生じることがあるが、薬物治療への反応は乏しいです(内眼角ポケット症候群)。

    病的眼脂(眼の炎症反応による眼脂)

    眼脂量の増加や粘稠度が高い眼脂、または膿性の眼脂が認められた場合は、眼に何らかの炎症が存在すると考えられます。

    眼脂の性状による原因と分類

    眼脂の性状による原因と分類

    漿液性眼脂

    ・角膜への機械的刺激

    ▶眼瞼の疾患:眼瞼内反、眼瞼欠損、眼瞼腫瘍

    ▶睫毛疾患:睫毛重生、睫毛乱生、異所性睫毛

    ・鼻涙管通過障害

    ▶先天性:涙点の非開口、小涙点、鼻涙管形成不全、涙腺嚢腫

    ▶後天性:涙嚢炎、腫瘍、異物、外傷

    ・眼痛

    ▶結膜炎

    ▶角膜炎、難治性角膜潰瘍

    ▶涙液膜の質的異常

    ▶前部ブドウ膜炎

    ▶緑内障

    粘性から粘液膿性眼脂

    ・結膜炎

    ・乾性角結膜炎(以下KCS)

    ・融解性または感染性角膜潰瘍

    ・眼窩膿瘍/蜂窩織炎

    ・涙嚢炎

    ・鼻涙管異物

    犬の眼脂の問題点

    犬の眼脂の問題点

    ほかに臨床徴候がない眼脂は治療の対象とはなりません。

    眼に異常がある疾患の多くに眼脂が認められますが、眼脂は結膜で生成される分泌物であることにより、結膜炎について述べます。

    犬と猫では結膜炎の原因が異なります。

    犬では原発性感染性結膜炎は稀であり、グラム陽性好気性菌であるStaphylococcus sp.,Bacillus sp.,Curynebacterium sp.は臨床的に正常な犬の結膜からも46~90%の確率で培養されます。

    また、Cladosporium oxysporum,Curvularia lunataは正常な結膜嚢から分離される真菌叢です。

    そのため、細菌や真菌が存在するという理由だけで感染性結膜炎と断定することはできません。

    細菌性結膜炎は眼瞼異常あるいはKCSに続発して認められることが多く、診断および治療には系統立てた眼科検査が必須です。

    対照的に、猫の結膜炎の原因の多くは特異的原因による原発性感染であり、続発性結膜炎は非常に稀です。

    犬の眼脂の病理発生

    犬の眼脂の病理発生

    急性障害に対し、結膜は結膜浮腫、充血、細胞浸潤という反応を生じます。

    慢性障害に対しては充血、色素沈着、小胞形成、滲出という反応を呈します。

    眼脂の主成分である粘液は結膜杯細胞から産生されています。

    KCSでは涙液の減少に伴い結膜上皮細胞の角化が生じるが、結膜杯細胞は傷害されるものの、粘液分泌は保たれるために粘液性眼脂がみられます。

    また、アレルギー性結膜疾患ではリンパ球や好酸球が炎症細胞の大部分を占め、好中球が少ないために、漿液性、粘液性眼脂を呈することが多く、

    細菌性結膜炎では膿性眼脂、ウイルス性結膜炎においては粘性のある漿液性眼脂が認められることが多いです。

    犬の眼脂の対症療法

    犬の眼脂の対症療法

    眼脂の性状によって対症療法は異なります。

    感染性結膜炎

    細菌性結膜炎

    広域スペクトルの抗生物質点眼液または眼軟膏に速やかに反応します。

    ウイルス性結膜炎

    ジステンパー感染症:イヌジステンパーウイルスは結膜炎、脈絡網膜炎、KCS、視神経疾患を伴います。

    発熱を伴う鼻炎、気管・気管支炎とともに粘液膿性眼脂も認められます。

    特異的な治療はないため、維持治療および続発性の細菌感染治療が必要です。

    真菌性結膜炎

    犬ではほとんど認められません。

    Blastmyces dermatitidisの感染が結膜下に結節を生じることがあります。

    ▶治療:イトラコナゾールの全身投与です。

    寄生虫性結膜炎

    眼虫の寄生による結膜炎。

    日本では東洋眼虫(Thelazia callipaeda)の寄生が主に西日本~九州において認められます。

    ▶治療:点眼麻酔下で除去です。

    非感染性結膜炎

    アレルギー性結膜炎

    犬ではよく認められます。

    犬アトピー性皮膚炎の一症状である場合もあります。

    ▶治療:コルチコステロイドの静脈注射や筋肉注射に速やかに反応します。

    また、コルチコステロイドの点眼を実施します。

    濾胞性結膜炎

    慢性的な抗原刺激に続発して起こると考えられるが、いくつかのウイルスや細菌性の原因には続発しません。

    結膜充血と粘液性眼脂がしばしばみられます。

    18ヵ月齢以下の犬に多いです。

    ▶治療:生理食塩水による洗眼、コルチコステロイド眼軟膏による対症療法

    猫の眼脂の対症療法

    猫の眼脂の対症療法

    原発性感染性結膜炎が多くを占め、その原因病原体としてネコヘルペスウイルス1型(FHV-1型)、ネコカリシウイルス(FCV)、Chlamydophila felis、マイコプラズマが挙げられます。

    これらは単独感染、混合感染のいずれも認められ、PCR検査で鑑別が可能な場合もあります。

    感染性結膜炎

    ヘルペスウイルス性結膜炎

    ネコヘルペスウイルスによる結膜炎は両眼性、結膜充血、漿液性眼脂が特徴です。

    病気の進行に伴い、結膜の腫大とともに眼脂が粘液性から粘液膿性になります。

    ▶治療:

    ファムシクロビル:40mg/kg,PO,1日3回

    L-リジン:250~500mg/cat,PO,1日2回

    インターフェロンωの局所投与

    ネコカリシウイルス(FCV)性結膜炎

    眼症状だけでなく、一般的に鼻炎、漿液性鼻汁が認められます。

    口腔内に潰瘍病変を形成することが多いです。

    ▶治療:主に支持療法(点滴、抗生物質の全身および局所投与など)

    クラミジア性結膜炎

    片側性結膜炎が数日のうちに両側性に移行します。

    眼脂は病状進行とともに漿液性から膿性に変化します。

    ▶治療:ドキシサイクリン5~10mg/kg,PO,1日2回

    マイコプラズマ性結膜炎

    流涙と結膜の乳頭肥大が特徴の片眼性または両眼性の結膜炎です。

    ▶治療:抗生物質の点眼(エリスロマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコールなど)

    新生子眼炎

    新生子猫に起こります。

    急性結膜炎の疾病群、多量の粘液膿性眼脂を必発症状とします。

    通常の細菌性原因とともに、前述した原因のほとんどが含まれます。

    ▶治療:広域スペクトルの抗生物質による点眼療法

    その他の結膜炎

    アレルギー性結膜炎

    稀ではあるが、テトラサイクリン、イドクスウリジン、トリフルリジン、ネオマイシン(いずれも日本未発売)

    の眼科用製剤に過敏性反応を起こすことがあります。

    犬の眼脂の診断の進め方

    犬の眼脂の診断の進め方

    病歴の聴取

    ▶片側性/両側性

    ▶急性/慢性

    ▶眼脂の色調

    ▶原発性/続発性

    眼科検査

    ▶視診

    ▶対光反射検査

    ▶視覚試験

    ▶眼圧測定

    ▶シルマー涙液検査(STT)

    ▶フルオレセイン(あるいはローズベンガル)染色検査

    ▶結膜細胞診および培養検査

    犬の眼脂の特徴

    犬の眼脂の特徴

    ・眼脂が認められる疾患は多岐にわたる。

    ・原因により様々な年齢、品種で認められる。

    ・性差は認められない。

    犬の眼脂の高頻度の疾患

    ・結膜炎

    ・角膜炎

    ・睫毛疾患

    ・眼瞼内反/外反

    ・乾性角結膜炎(KCS)

    ・ブドウ膜炎

    ・緑内障

    ・鼻涙管疾患

    犬の眼脂の要点

    犬の眼脂の要点

    眼脂には生理的な眼脂と眼の炎症反応に伴う病的眼脂があります。

    様々な眼疾患において眼脂が認められるため、身体一般検査および眼科検査を実施し、原因疾患を特定したうえでそれぞれに応じた治療を行うことが重要です。

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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