【獣医師解説】子犬と母犬の予防接種と寄生虫駆除

子犬と母犬の予防接種と寄生虫駆除

母犬と子犬の予防接種

子犬の予防接種は非常に重要な獣医学的予防手技であり、発育に支障を来たさないための決め手です。

犬の主要な感染性疾患に対してはワクチンがあり、例外なく非常に有効であることがこれまでに示されています。

犬と猫の予防接種は、ここ数年、まさに相反する議論のテーマとなっています。

この文章は消さないでください。
その中心は、毎年の反復接種の必要性と、予防接種による合併症です。

この議論の結果、ドイツ国内では、犬に関して、2つの予防接種推奨がなされることになりました。

1つはブリーダーによるもので、ドイツ犬連盟(VDH)(http://www.vdh.de/presse/impfernmpfehlung.php)を経て行われ、

もう1つは獣医師によるもので、連邦開業獣医師連盟(bpt)による「小動物診療のためのドイツ予防接種推奨」(http://www.tieraerzteverband.de/)です。

現行の予防接種推奨は、いわゆる必須接種と選択接種を定義しています。

  • 必須摂取とは、すべての犬が常に効果的な免疫防御能を持つべき病原体に対する予防接種を意味しています。
  • 選択接種とは、重要性が低くはないものの、すべての犬にとって同じように重要なわけではないものを指します。

これらの病原体に対する予防接種は、暴露が予想される場合にのみ必要となります。

犬において重要な必須および選択の予防接種の一覧です。

犬における必須および選択予防接種

必須接種 選択接種
犬パルボウイルス 犬ヘルペスウイルス
ジステンパーウイルス 犬パラインフルエンザウイルス
狂犬病ウイルス 気管支敗血症菌(ボルデテラ)
レプトスピラ 犬アデノウイルス、ボレリア属

 

子犬の予防接種

子犬の予防接種における本質的問題はいわゆる免疫学的空隙ですが、これは根本において大変不都合な名称です。

というのも、実際には子犬の免疫機構は空隙なく作用するからです。

この問題の背景には、母犬の抗体の失活があります。

生後数週間、子犬は多くの感染性疾患から受動的に守られています。

これは子犬が母犬から授乳によって摂取した抗体による防御です。抗体は一定の半減期にしたがって失活するが、この受動的防御は抗体価に規定されるため、子犬が防御される時間は限られており、あらかじめ計算可能である。しかし、この抗体が完全には防御機能を発揮しなくなってからも、予防接種による抗体、または病原体に干渉する可能性があり、それにより予防接種の効果が妨げられるような時期が生じてしまう。この期間を免疫学的空隙または危険期と称するのである(図10.1)。

 

基礎免疫方式

子犬の予防接種は基礎免疫方式で行われます。

これは生後1~2年の間の予防接種を示します。

基礎免疫方式は子犬にとって重要な意味を持つため、順守徹底にぜひとも留意しなければなりません。

基礎免疫方式のあとは、それに続く年齢で反復接種を行います。

基礎免疫方式は、重要な病原体に対して抵抗性を持つ免疫を定着させるのに役立ちます。

これに関しては、下記に掲げた方式が推奨されます。

急性のパルボウイルスの問題が優先されるような状況では、パルボウイルス症の予防接種(単独ワクチン)が6週齢で必要となります。

 

推奨される子犬のための基礎免疫方式

予防接種年齢 対象疾患
8週齢 ジステンパー、犬伝染性肝炎、パルボウイルス症、レプトスピラ症
12週齢 ジステンパー、犬伝染性肝炎、パルボウイルス症、レプトスピラ症、狂犬病
16週齢 ジステンパー、犬伝染性肝炎、パルボウイルス症、レプトスピラ症、狂犬病
15ヵ月齢 ジステンパー、犬伝染性肝炎、パルボウイルス症、レプトスピラ症、狂犬病

 

反復接種
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基礎免疫方式に続けて、反復接種を行います。

これは実際の必要に応じて、曝露の危険性が懸念される場合に行います。

この評価は、毎年1回、臨床獣医師による予防接種相談時に行います。

パルボウイルスおよびジステンバーのワクチンの接種は、最低3年間有効であると考えてよいです。

したがって反復接種は基本的に3年間隔でいいです。

ただし、高度の曝霧や特別な必要性がある場合、毎年の接種もやはり重要となります。

ドイツにおいては、200512月の狂犬病条例の変更で、製造業者による添付文書上の指示に基いて反復接種が行われれば、文字通り有効な免疫保護が与えられたと認められるようになりました。

こういった基準を満たしたワクチンを使用することにより、狂犬病予防接種は、必ずしも厳密に毎年実施する必要がなくなりました。

 

レプトスピラ症に対する予防接種後の免疫防御は短期間しか持続しません。

したがって毎年の反復接種が必須ですが、曝露が特に予想される犬(狩猟犬など)は、6ヵ月ごとの接種が必要です。

 

ほかの犬との接触が多い子犬にはケンネルカフ(犬パラインフルエンザウイルス、気管支敗血症菌)に対する予防接種が推奨されます。

特にパビー・プレイタイムやドッグランでのトレーニングに参加する時は、多様な感染の危険性があります。

局所投与の可能なワクチンの接種は、より速やかな免疫形成という長所を持ちます。

 

ボレリア属に対する予防接種の意義に関しては相変わらず論争が続いていますが、ダニの予防さえできれば予防接種は必要ないです。

この病原体は唯一ダニ経由でのみ感染するからです。

すでに曝露してしまった犬の場合、予防接種については慎重に判断すべきです。

曝露後もボレリア属の存在が継続しているため、接種による発症の危険性が増すからです。

 

繁殖用雌犬の予防接種

繁殖用雌犬の予防接種においては、母犬の抗体が子犬に移行することが重要です。

母犬の抗体価が高いほど、より多くの抗体が子犬に引き継がれます。

子犬の抗体価が高いほど、より長期間にわたって感染に対する防御となります。

したがって、ここでの目標は、母犬が分娩前までに最大の抗体価を作り上げることです。

そのもっとも簡単な方法は、雌犬に毎年交配の前に予防接種を行うことです。

 

妊娠中の予防接種は原則として控えねばなりません。

 

犬ヘルペスウイルス感染に対する予防接種は可能です。

唯一使用可能なワクチンが、臨床症状に対する防御となります。

通常、ヘルペスウイルスの問題は、1頭の母犬において一腹の子にのみ生じます。

母犬の体内にウイルスが存続しているにもかかわらず、形成された免疫が臨床的疾患から母犬とそれに続く同腹子を守ります。

犬ヘルペスウイルスの問題を抱える雌犬に対し、非感染性のサブユニットワクチンを使用すれば、その後の妊娠の前に免疫性を与えることが可能となります。

子犬の犬ヘルペスウイルス感染の危険性は元々低いですが、これにより危険性がさらに軽減されます。

 

 

母犬と子犬の寄生虫駆除

環境条件や飼育条件によってさまざまですが、子犬も成犬同様、寄生虫感染の危険性があります。

そこで、子犬期の終わりごろに戦略的な「寄生虫駆除」を行うとよいです。

その際は、犬条虫、多包条虫を含むテニア科条虫、および線虫などのような、犬に寄生しうるあらゆる種類の寄生虫を考慮します。

 

線虫

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犬における回虫や十二指腸虫による感染の治療には、罹患犬への負担が少ない優れた駆虫剤が数多く存在します。
出生前に犬回虫に感染した子犬はすでに21日齢で卵を排出しますので、こういった子犬には分娩後2週間で最初の治療を施し、
成熱過程にある腸内段階の寄生虫を駆除し、環境中への汚染を阻止しなければなりません。

 

用いられた薬剤に応じて、その後の治療は、

  • ベンゾイミダゾールを14日間隔で3ヵ月齢まで投与
  • マクロサイクリック・ラクトンの毎月の投与

が推奨されます。

このパターンは分娩後の経乳汁感染にも適用されます。

これと並行して母犬に対し、分娩後2週目と4週目に

  • ベンゾイミダゾール
  • さらに1ヵ月間隔でのマクロサイクリック・ラクトン

による治療を行います。

再感染、および低活性段階の再活性化を防ぐためです。

 

フェンベンダゾールによる子犬の治療は優れた有効性を示します。

14日齢から、3日間毎日、50mg/kg BWの経口投与を行い、3週間後に反復投与を行います。

同時に、母犬に対しても分娩後3週目と5週目に子犬同様の投与を行います。

ただし、このパターンは費用がかかる上、遅発性の経乳汁感染を確実には予防できません。

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出生後および乳汁経由の犬回虫感染は、母犬へのさまざまなベンゾイミダゾールの高用量投与による長期治療で、防止または著しく減少させることができます。

また、多くの場合、さらに容易なマクロサイクリック・ラクトン(イベルメクチン、ドラメクチン、モキシデクチン)の投与によっても高い効果が得られます。

ただし、今のところ、垂直感染を予防できるマクロサイクリック・ラクトンは登録されていません。

母犬に、セラメクチン6mg/kg BWを分娩40日前と10日前および分娩後10日目と40日目に局所投与したケースでは、

24日齢および34日齢の子犬の卵排出を96%以上抑制することができました。

ミルベマイシン・オキシムは、このようなケースで4週齢以上の子犬に30日間隔で投与されます。

0.5~1.0mg/kg BWの経口投与で、犬十二指腸虫、犬回虫に対して高い効果を示します。

さまざまな新しい個別または複合製剤が、鉤虫類に対して高い有効性を示しています。

犬への使用が認可されている他のマクロサイクリック・ラクトン類が、
このような治療戦略においてどの程度の範囲で使用できるかについては、まだ完全な研究報告は存在しません。

 

衛生対策

しばしば非常に大量の犬回虫の卵が排出されることと、卵が高い抵抗力および数年にわたる感染力を持つことから、

便の除去とならび、犬小屋および運動場の徹底的な機械的洗浄は特に重要です。

比較的大規模な犬の飼育場、たとえば実験動物施設などにおいては、

舗装された床面(石、コンクリート)を洗浄し同時に熱殺菌するために、蒸気洗浄装置を設置します。

回虫の卵は70℃以上の熱で死減させることができますが、この方法で成長諸段階の寄生虫を完全に駆除するのはまず不可能です。

回虫卵に対する化学的殺菌は、特定の殺菌剤によってのみ可能です。

たとえば

  • Neopredisan
  • Lomasept
  • Endosan Forte
  • Dessau DES
  • Calgonit

などのクレゾール類またはフェノール化合物。

 

原虫

ジアルジア症

犬のジアルジア症に対する化学療法として

  • フェンベンダゾール(50mg/kg BW35日以上、毎日経口投与)
  • メトロニダゾール(12.522mg/kg BW5日以上12回経口投与)

が有効です。

再発率が高いため、2~3週後の反復治療が推奨されます。

そのほか、

  • アルベンダゾール
  • オクスフェンダゾール
  • フェバンテル
  • ビランテル・エンボネート
  • プラジカンテルの複合製剤

は、高い有効性が報告されています。

犬舎や犬収容施設での新たな感染を避けるため、便で汚染されたすべての領域を蒸気噴射(60℃以上)によって徹底的に洗浄し、
洗浄後は確実に、完全に乾燥しなければなりません。

 

ジアルジア嚢子は、湿った冷たい環境での生存にもっとも適しているからです。

また、わずかな量でも再感染をもたらすため、犬を洗浄し、徹底的にシャンプーして、病原体を被毛から取り除かねばなりません。

 

クリプトスポリジウム症
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主な治療法は、水分および電解質補給による下痢症の治療と、鎮痙剤による腸痙攣の治療です。

クリプトスポリジウム類に対する専用の薬剤はEU圏内では今のところ入手できません。

オーシストには高い粘性があるので、再感染を防ぐには、衛生対策の改善が必要不可欠です。

犬舎や犬収容施設では蒸気噴射(60℃以上、最低10分間)による洗浄が推奨されます。

 

コクシジウム:イソスポラ症

イソスポラ類に対する現在もっとも効果的な薬剤は

  • トルトラズリル(10mg/kg BW45日以上毎日、5%懸濁液を経口投与)
  • ジクラズリル(軽量犬:5mg/kg BW1回経口投与、重量犬2.5mg/kg BW1回経口投与)

です。

それに代わるものとして、6日間の強化サルファ剤治療も試みられていますが、ほとんどの場合、効果は劣ります。

犬では、

  • スルファドキシン+トリメトプリム(合わせて1520mg/kg BW
  • スルファジメトキシン+トリメトプリム(合わせて24mg/kg BW

の経口投与が推奨されます。

脱水症が強い場合は、これに加えて、水分および電解質の補給にも留意する必要があります。

実験条件下で厳しい衛生対策が取られている場合でさえ、イソスポラ感染の完全な防止が可能なわけではないです。

しかし、

  • 宿主の便の定期的な除去
  • 齧歯類の駆除
  • 生肉給餌の回避

など、さらなる管理対策によって、感染は著しく抑制されます。

犬舎には、舗装された、洗浄しやすい床面を用いるべきです。

接合子を死減させるには、蒸気噴射装置が最も確実です。

完全に効果的な殺菌は、化学薬品では今のところ不可能であると考えられています。

問題が続く場合は、子犬たちに対して3~4週齢目にトルトラズリルの1回投与(10mg/kg BW、5%懸濁液を経口投与)が推奨されます。

これによって、臨床的疾患のみでなく、オーシストの排出も防止されます。

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no life no dogs & catsをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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