【獣医師解説】犬の赤ちゃん・子犬の感染症:免疫・感染の危険と感染経路

犬の赤ちゃん・子犬の感染症:免疫

胎子と子犬の免疫学

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胸腺およびリンパ節には妊娠3545日目にリンパ組胞が定着します。

少量ながら自分自身の抗体を産生する能力は妊娠50日前後に備わります。

犬の内皮絨毛性胎盤は妊娠中、母体の抗体を少量だけ通過させます。

これは妊娠期間の最後の三分の一に行われ、

その結果、子犬は最初の初乳摂取の前にすでに、母体の血漿中濃度の5%程度の母体由来抗体を持っています。

母体由来抗体は感染に対する受動的防御となりますが、特定の抗原にのみに対応します。

これは母犬の予防接種によって獲得されます。

また、ワクチン接種と関係なく母犬が抵抗したことのある病原体については、抗体が形成され、能動輸送機構によって初乳に蓄積されます。

こうして、子犬が出生環境中の微生物に接する際の一時的な受動防御が働きます。

たとえば母犬が外国へ販売されるなどして、分娩直前に未知の細菌叢の影響にさらされる環境に置かれてしまうとこの防御は作用しません。

それゆえ、母犬は分娩予定日の少なくとも3週間前までに、分娩を行う環境に連れてきておく。

 

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感染に対する防御は、出生前に取り込まれた抗体のみでは確実なものとはなりません。

防御を確実にするには、出生後に初乳を摂取することが必要です。

そのため、初乳を摂取しなかった、あるいは摂取が不十分だった子犬は、
十分な初乳を摂取した場合に比べて、感染性疾患に罹患することが明らかに多いです。

 

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初乳抗体の吸収は出生後24時間で減少します。

この時点までに十分な供給を確保しなければなりません。

早期の初乳摂取においては、生後18時間でIgG値が最大になります。

これは比較的急速に減少します。

そのためジステンパーウイルスに対する抗体の半減期は8.4日です。

抗体価が検出限界以下になる時期は、吸収された抗体の量と使用された量で決まります。

その時期は同腹子群同士でも、同腹子内の兄弟姉妹同士でも大きく異なります。

母体由来の抗体価の低下と並行して、子犬自身の、抗原刺激に応じて抗体を産生する能力は増大します。

母体由来の初乳防御が機能しなくなってから、子犬自身の抗体産生がまだ防御機能を発揮していない期間のことを、免疫学的空隙と称します。

通常は68週齢では、まだわずかな値の母体由来抗体がみられますが、1216週齢ではもう検出されなくなります。

 

吸収された母体由来抗体のほかに、犬の乳汁に含まれるIgAが、腸の感染に対抗する重要な役割を果たします。

IgAは、新生子の器官にはわずかな量しか吸収されず、子犬の腸にとどまり、そこで病原を抑制することができます。

 

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出生時点の末梢血中白血球数は成犬に比べかなり多いです。

その原因は環境中の抗原に激しく曝されるためと考えられます。

全体として、犬新生子の免疫機構は、外界からの刺激に対応するには十分なまでに完成しているといえます。

ただし、白血球分画の構成とその活性は、成犬と比較すると、3ヵ月齢まで相違がみられます。

 

 

感染の危険と感染経路

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感染性疾患は犬新生子の死因および病因として大きな存在を占めています。

1週齢と2ヵ月齢の間の免疫学的空隙期において、致死率が高くなります。

通常、子宮内では胎子が微生物と接触することはないです。

生後24時間以内に、胃腸管および外界と接する粘膜に細菌が定着します。

ウイルスの場合、必ず病因となる株が感染性疾患の特定の病原体として最大の役割を果たすのに対して、

細菌性疾患では、まず最初に優勢となる病原菌が問題となります。

それが潜在感染に終わるか、臨床的な感染性疾患に発展するかは、

  • 環境中の病原菌の優勢度
  • 微生物の病原性と毒力
  • 子犬の防御反応

によって決まります。

予防法は下の危険因子の回避です。

他の犬の出入りや場所の移動を、分娩前3週間および分娩後3週間は、どうしても必要な最小限にとどめることが有効です。

 

子犬の感染性疾患発症の危険因子

危険因子 要因
初乳抗体による受動感染防御能の欠如または不足
●初乳未摂取

●初乳摂取の遅れ

●母犬の免疫未獲得または不足による、初乳中の特定抗体の欠如

●母犬が抵抗力を持たない細菌叢の存在する環境での出生

環境中の病原菌数の増加
●不衛生な状況

●犬の密集

●さまざまな犬との接触

●感染性細菌を排出する罹患した個体(母犬の場合:悪露停滞、乳房炎、膿皮症など)

防御作用の減退
●栄養不足

●低体温

●免疫系疾患

●ストレス

●外傷

●発育不良

●未熟

 

子宮内感染

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子宮内ですでに胎子に感染が生じることがあります。
  • 犬ネオスポラ
  • 犬ヘルペスウイルス
  • ブルセラ菌
  • 犬回虫

の例が記録されています。

ヘルペスウイルスの場合は、予防接種によって母犬の感染を回避することで防御できます。

 

分娩中感染

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分娩中、子犬は病原菌を含んだ膣分泌液によって感染します。

この感染経路は犬ヘルペスウイルスにとって重要な役割を果たしているとみられています。

また、細菌性の感染病原体もこの経路で誘導されます。

妊娠中の母犬が膿様の膣分泌物を示している場合、サンプルを取って細菌検査および薬剤感受性試験に回します。

母犬の治療は、感受性試験の結果に従って厳密に行います。

その際、抗生物質の選択にあたっては、胎子毒性に注意します。

新生子の病原体に対しての防御となる生理的細菌叢の形成のため、分娩前の母犬に根本的な抗生物質治療を施すことは避けます。

それに加えて、抗生物質の使用が増えると、耐性菌が増加してしまうという問題もあります。

新生子医療では特に、許容される副作用が明示されている薬剤の種類は限られています。

 

生後感染

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ほとんどの感染は出生後に生じます。

このような疾患を回避するには、子犬に最善の応急処置を施すことが役立ちます。

もっとも重要な感染源は母犬です。

  • 悪露排出物
  • 乳房炎乳汁
  • 皮膚
  • 口腔領域

の炎症は、子犬にとって著しく危険です。

子犬に細菌感染が疑われる場合には、それに対応する疾患が母犬にあるかどうか検査します。

出生後の病原体の侵入経路としてもっとも多いのは腸、臍および呼吸器の粘膜です。

犬トキソプラズマおよび犬十二指腸虫、また、乳房炎を持つ母犬の細菌においては、母犬の乳汁が子犬への感染経路になります。

ウイルス感染が起きると、普段は問題にならない種類の細菌および真菌の続発的な感染が観察されます。

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no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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