子犬の歯・消化器・肝臓の発達、成長
成犬ではこれが7%に増大します。
子犬は歯のない状態で生まれてきます。
口腔は、乳頭を受け入れ含んでおくとができ、かつ、吸飲・嚥下が可能となるような構造を持ちます。
吸飲行動自体は口腔内の陰圧形成と機械的(ロ唇、顎筋、舌の圧迫)作業および分泌(唾液腺)作業によって行われます。
新生子の胃は主に羊水によって満たされています。
子犬・犬の赤ちゃんの歯の並び方、生え方
歯生は第3適応期の終わりにようやく始まります。
乳歯は通常28本ですが、犬種による相違を考慮する必要があります。
切歯と小臼歯は乳歯においては少ないです。
乳犬歯は比較的強くとがって形成されます。
- 小臼歯1(P1)は、大臼歯1(M1)同様、3ヵ月ないし5ヵ月になってようやく永久歯として生えてきます。
- 他方、P4、P3、P2は5~6ヵ月目に生え変わり、ほかの大臼歯(M2、M3)は5~6ヵ月目に歯列に現れます。
歯式は以下のようになります。
子犬の歯生の経過
生後日数 | 歯生 |
20~30日 | 犬歯 |
30~35日 | 切歯Ⅰ+Ⅱ |
小臼歯2+3 | |
35~45日 | 切歯Ⅱ |
小臼歯4 |
乳歯
13d Cld P3d/13d Cld P3d=28本
永久歯
I3 C1 P4M2/ I3 C1 P4M3=42本
子犬・犬の赤ちゃんの胃腸管の発達・成長
口腔、胃、腸の内容物は分娩の時点まで無菌です。
出生直後に羊膜が破られるのと同時に初めて、口腔には外界の一般の細菌が生息し始めます。
その後、出生に続く数時間から数日間で、食道での生息と胃腸管での集落形成が起こります。
そこでは、当初は乳酸桿菌叢が優勢です。
その際考慮すべきなのは、口腔その他の器官における細菌の生息は、子犬の生まれてきた環境、
- 母犬の肛門・生殖器領域(分娩に起因する、産道汚染による羊水感染)
- 皮膚
- 乳房および乳汁
の細菌分布に左右されるということです。
ここですでに通性の病原菌、また更には細菌に汚染された産道や非衛生的な環境に由来する病原菌が感染します。
他の動物種においてもそうであるように、胃壁は出生後に初めて塩酸の分泌を始めると考えられます。
- 出生直後の子犬の胃内部のpHは、5.0~6.0で、その後数日の間にようやく下がります(pH4.0以下)。
- 成犬のpHは1.0です。
胃粘膜のタンパク分解機能は当初はわずかですが、第2適応期に活発になります。
そのため、母乳とともに摂取された免疫グロブリン複合体は胃で分解されることなく、損なわれずに腸に到達します。
そこで免疫グロブリン複合体は腸細胞に吸収され、腸細胞運動を経てさらに移動します。
初乳にはトリプシン阻害物質が含まれているからです。
子犬は早ければ生後18日目で成犬なみのほぼ安定したpH値を持つようになります。
これは、純粋な乳汁のみの栄養摂取から固形食への緩やかな転換に伴う消化システムの変化のほか、口腔および食道から入った細菌の胃における変性とも関係します。
胃の塩酸分泌が確立されることにより、やや遅めではあるものの、ようやく通性の病原菌または病原菌の集落形成に対するバリアとなります。
これは特に人間による飼育下において観察されます。
新生子の胃は限られた容量しか持ちません。
比較的少量ずつの頻繁な乳汁摂取は、胃の受容能力に過大な負担をかけないためです。
胃壁筋層はしっかりしており、正常な条件下では乳汁は最小限の時間で腸に運ばれます。
胃に液体が過剰に入り胃壁が過度に伸長すると、胃の内容物を先に移送することが困難になります。
これは、明らかな張力低下が起こり、また律動的腸収縮が完全に中断してしまうためです。
腸粘膜は分娩の時点ではまだ胎子的性質を持っており、出生後の時期に腸細胞の形態学的・機能的成熟が生じます。
これは一般に頭側から尾側へと進行します。
最初の固形栄養摂収の時点までに完全な消化容量と消化機能が備わっているようにするため、この出生後の腸の構造転換は不可欠です。
腸は初めは乳汁消化にのみに適応しています。
酵素ラクターゼは出生時から備わっているので、乳糖は分解できます。
犬の新生子の十二指腸がすでに十分なリパーゼを生成しているのかどうかは、まだ完全には解明されていません。
その合成量は生後2週間の間に増加します。
腸における多糖類利用率は出生直後はわずかです。
そのために必要な膵アミラーゼが欠けているからです。
同様に、第2適応期の終わりまでは、子犬におけるαアミラーゼ活性はわずかですが、
多くの場合生後2~3週目に始まる固形栄養摂取の時点で、急速に増大します。
犬の新生子にとって、摂取物の移送と排便の前提条件である腸の運動機能は特に問題です。
腸の運動機能は胎生期においては非常に低く、出生後に徐々に高まります。
腸管の末端部においてこの時間が最もかかるため、腸運動の制御と誘起に関する生後の発達はある程度長引きます。
- 生後2~3週目になってようやく、迷走神経と交感神経の腸運動への影響が増加します。
- さらに、初期にはまだ腸各部の壁の筋層が十分に形成されていない場合もあります。
これらはすべて、3週齢までの子犬が腸運動や排出を母犬による腹部マッサージに依存していることの理由と言えます。
子犬・犬の赤ちゃんの肝臓の発達・成長
腸機能が最終的に第2適応期と第3適応期の間に完全に成熟するのと同様に、
とはいえ、肝臓は出生時には体重の7~10%を占めます。
生後2~4週間の間に、肝臓の構造転換が起こります。
この経過の一つとして、静脈管は生後に閉鎖され、静脈管索に変化します。
出生前は、静脈管は静脈 - 静脈シャントとして、肝臓内で、門脈と臍静脈の流入する血管系と、外へ出て行く血管(肝静脈)、そして下行大静脈とを結んでいます。
このシャントによって、胎盤に接続した臍静脈由来の代謝産物と酸素の豊富な血液を、肝臓組織を経由せずに心循環に直接供給することができます。
したがって、胎子期の肝細胞は固有の代謝機能をまったく、あるいはわずかにしか果たしていません。
特定の酵素システムがなお構築途上であり、この理由から、生後の数週間にもまだ、代謝機能は限定されています。
胎生期の肝臓は主に造血機能を担っています。
肝職の大きさはこのことから説明できます。
子宮から出ると肝臓は代謝機能を引き継がねばなりません。
その際、代謝しなければならないのは主に低分子物質です。
低分子物質には薬物も含まれるため、薬物の選択と投与量は、新生子の代謝·解毒機能が未完成であることを考えれば、特に重要です。
さらに、糖新生および解糖は最初のうちはわずかしか行われないため新生子の肝臓は代謝を制御することができません。
したがって、外からグルコース液を注射しても、肝臓組織での糖新生を伴うフィードバック機構はまだ働きません。
このため、新生子にグルコースを過剰に補給すると、それが有効であったとしても、制御不能な高血糖の危険が生じます。
肝臓は、最初は胎子期に固有のグリコーゲン貯蔵器官として機能します。
このグリコーゲンは、出生後、褐色脂肪由来のエネルギーとともに、すぐに使用できます。
これによって、最も重要なエネルギー消費を伴う過程
- 震えを伴わない熱発生
- 開始された運動の範囲内での筋肉内代謝
を乗り切ります。
ただし、このグリコーゲン貯蔵はごく早い段階で使い果たされ、通常は生後12時間しかもちません。