エチレングリコールは非常に危険な中毒の一つです。
夏に使われる保冷剤や、車の不凍液にも入っており、味覚や嗅覚を刺激する甘い匂いが入っているため、興味を持ちやすく、非常に危険です。
中毒の中でも非常に多い部類に入ります。
自宅に帰ると犬がぐったりしていた。
冷凍庫から保冷剤をかじっていた。
夏の冷却シートの中身を食べていた。
その様な経験のある飼い主へ。
では、エチレングリコール中毒になるとどのような症状が生じるのでしょうか?
本記事では、犬のエチレングリコール中毒の病態、症状、中毒量、治療法に至るまでを獣医師が徹底解説します。
この記事を読めば、犬に与えていけない理由と対処法が分かります。
犬にとって危険な物を知りたい飼い主必見です。
限りなく網羅的にまとめましたので、エチレングリコールが犬に与える影響をご存知でない飼い主は是非ご覧ください。
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
犬に不凍液、保冷剤は危険!エチレングリコール中毒の怖さとは?!
この記事の目次
犬がエチレングリコールを食べてしまった時に起こる病態
エチレングリコールは水に溶解しやすく甘みのある無色無臭の液体です。
自動車の不凍液や一部の保冷剤、工業用溶剤などに含まれ、甘い味を動物が好んで摂取するため中毒の原因となります。
エチレングリコールは消化管から急速に吸収されて、組織中に均一に分布し、アルコール脱水素酵素及びアルデヒド脱水素酵素による代謝を受けます。
代謝産物によって代謝性アシドーシスや腎障害が生じ、中枢神経抑制、急性腎不全、低カルシウム血漿などの症状を引き起こします。
エチレングリコールは胃腸管で容易に吸収され、摂取後1-4時間以内に最大血中濃度に達します。
血漿半減期は2-4時間で、16-24時間以内に代謝または排泄されます。
吸収されたエチレングリコールの大部分は未変化のまま、代謝産物は尿、呼気中に排出されます。
犬がエチレングリコールを食べてしまった時の中毒の症状
臨床兆候は3期に分かれます。
これらには3つの中毒のステージがあり、初めの2ステージはしばしば飼い主に気づかれない。
そしてもし動物がそれを飲み尽くした直後に治療に連れてこられたとしたらわからないかもしれないです。
第1期(摂取後30分-12時間) 嘔吐、沈鬱、運動失調、多飲多尿、混迷
第2期(摂取後30分-12時間) 頻回呼吸、頻脈、発作、肺水腫
第3期(摂取後30分-12時間) 乏尿、沈鬱、食欲不振、嘔吐、腹痛
犬がエチレングリコール中毒を起こした時の治療
摂取した場所から動物病院までが長距離の場合には家庭での対処が必要になります。
院内での治療は摂取後の経過時間が短ければ、催吐処置や胃洗浄、吸着剤投与が有効です。
また、エチレングリコールの有害な昼間体への代謝を防げるため、摂取後8時間以内であればエタノールの投与を行います。
ただし、エタノールは代謝性アシドーシスや中枢神経系の抑制を悪化させる重大な副作用が起こる場合があるため、絶えずモニタリングが必要です。
上記の治療と併用し、腎障害の悪化を防ぎ電解質を維持するための輸液を行います。
犬がエチレングリコール中毒を起こす中毒量
致死率が高く、致死量は未希釈の不凍液で4.4-6.6ml/kgですが、ごく少量摂取でも重篤な腎不全に陥る死亡する可能性があります。
犬がエチレングリコールを食べた時の対処
対処法は3つに大別されます。
- そのまま様子を見る(勝手に吐く、あるいは、便で出るのを待つ or 毒物なら点滴して希釈する)
- 吐かせる
- 麻酔をかけて摘出する(開腹手術 or 内視鏡)
特効薬がないため、一刻も早い治療が必要となります。
通常1時間以内であれば胃の中にまだありますので、吐かせることができますが、3時間となるとはかせることは難しいため、症状が出た場合は点滴となります。
しかし、お近くに病院がない場合、また3時間以上経過すると胃袋になく、吐かせることができませんので、中毒が出ないように祈る以外、ご自宅でできる事はありません。
これは3時間経過していれば、病院でも同じです。
点滴治療で、症状を緩和することが目的となります。
犬がエチレングリコールを食べてしまった時の応急処置と対処法
原則は病院の受診です。
病院で安全な催吐処置をしていただくことが最善です。
しかし、周りに病院がない場合、離島などで病院受診が困難な場合は自宅で吐かせるしかありません。
自宅でできる催吐処置は元々非常に危険で、それが原因で命を落とすこともあり、うかつに行うと危険です。
- 炭酸ナトリウム 小型犬:0.5g/頭 中型犬以上:0.5-1g/頭 口腔内投与
- 3%過酸化水素(オキシドール) 1-2ml/kg
- アルコール(ウォッカ、ウイスキー等の40%アルコール)2.25ml/kg 経口投与 脱水に注意し、いつでも動物が引水可能な状態にしておき、病院を受診できない場合は4時間ごとに同様のアルコール経口投与を行い、4回繰り返します。
上記はあくまでも参考です。
決して気軽に自己判断で行わないでください。
犬がエチレングリコール中毒を起こした時の予後
エチレングリコール中毒の予後は、摂取の程度は治療までの時間に依存しています。
治療が8時間以内に開始され、高窒素血漿がない場合には予後は良好です。
乏尿または無尿は予後不良であり死亡率は犬では57-70%と報告されています。
犬のエチレングリコール中毒の予防
不凍液や工業用製品だけでなく、より身近な存在である保冷剤にもいまだにエチレングリコールを含有するものがあることを知っていただく必要があります。
この中毒は多くの飼い主が認識していますが 、中毒を生じたケースのほとんどは動物の盗食によるものです。
無防備な状態で動物が届く範囲におかないよう注意が必要です。
犬が中毒を起こした時に、準備しておく必要な物
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