犬に殺鼠剤は危険!ワルファリン中毒の怖さとは?!獣医師が解説!

    キッチンの犬の口の届く所には様々な危険なものがあります。

    犬が殺鼠剤をかじっていた、咥えていた。

    台所に犬が入った形跡がある。

    朝起きたら犬の様子がおかしい。

    そんな経験のある飼い主は多いんではないでしょうか?

    犬は珍しいものを口に咥える習性があります。

    今回はネズミ除けとして置かれている、殺鼠剤中毒に関してお話しします。

    当記事では、犬が殺鼠剤を誤飲、誤食してしまった時に起こる中毒、症状、致死量、対処法に至るまでをまとめました。

    限りなく網羅的にまとめましたので、殺鼠剤が犬に与える影響をご存知でない飼い主は是非ご覧ください。

    ✔︎本記事の信憑性
    この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
    論文発表や学会での表彰経験もあります。

    記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

    » 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

    ✔︎本記事の内容

    犬に殺鼠剤は危険!ワルファリン中毒の怖さとは?!

    犬に殺鼠剤をあげてはいけない理由

    犬に殺鼠剤をあげてはいけない理由

    現在様々なタイプの殺鼠剤が販売されています。

    最も一般的な殺鼠剤はクマリン系の抗凝固性殺鼠剤です。

    クマリン系殺鼠剤としてワルファリンが最も有名ですがワルファリンに比べ3-7倍強力なクマテトラリルなど様々なものがあります。

    ワルファリンなどのクマリン系殺鼠剤では中毒を呈するまでに数回の摂取が必要とされているものの、犬が大量摂取すると1回の摂取で中毒量に達します。

    2006年全く新しい第二世代クマリン系殺鼠剤としてジフェチアロールが発売されております。

    この殺鼠剤はワルファリンの300倍の効力があり1回の摂取で十分な殺鼠効果を有します。

    ワルファリンなどの薬物の吸収率は90%以上とされており非常に高いです。

    また蛋白と強力に結合するため体内の残留時間も長いです。

    これらはビタミンK還元酵素の阻害によってビタミンK依存性の凝固因子を枯渇させ出血傾向を招きます。

    犬の殺鼠剤の中毒量

    犬の殺鼠剤の中毒量

    ワルファリンの場合、犬であれば5-50mg/kg 単回もしくは1-5mg/kg,5-15日などで中毒症状が発現するとされています。

    ジフェチアロールの中毒量は犬で4-11.8mg/kgと言われていますが、市販されている製品には0.0025%の濃度しか入っていないため、製品として10kgの犬が1.6-4.7kg食べないと中毒量に達しません。

    そのため製品を多少食べたところで中毒になる可能性は低く犬に対しては安全性が比較的高い製品です。

    ただ小さな犬であったり大量に製品を摂取した場合その個体の感受性により中毒量に達する可能性も否定できません。

    犬が殺鼠剤を食べてしまう理由

    これら殺鼠剤にはネズミが好んで食べるように誘引剤として糖類や小麦などが入っているため犬も好んで食べる傾向にあります。

    また殺鼠剤が散布してある所を通ると手足に薬剤が付着し、グルーミングにより摂取してしまうこともあります。

    犬の殺鼠剤中毒の症状

    犬の殺鼠剤中毒の際の診断

    ワルファリン中毒は接種後1-3日後に発症し、鼻出血、口腔内出血、皮下出血、タール便、吐血、眼底出血などでします。

    出血した場所により症状が異なり、脳神経での出血を生じれば神経症状を呈し、関節内出血を生じれば運動器症状が現れます。

    また胸腔内出血や肺出血が生じれば呼吸困難を呈します。

    血液検査では貧血が認められ、血液凝固系検査では正常の2倍以上に延長する異常が認められます。

    犬が殺鼠剤中毒を起こした時の対処は?

    犬がキシリトール中毒を起こした時の治療は

    対処法は3つに大別されます。

    1. そのまま様子を見る(勝手に吐く、あるいは、便で出るのを待つ or 毒物なら点滴して希釈する)
    2. 吐かせる
    3. 麻酔をかけて摘出する(開腹手術 or 内視鏡)

    摂取後2時-4時間以内で、催吐薬の投与を行い吸着剤の投与を併用します。

    催吐の効果が認められられない場合には、胃洗浄を行うこともあります。

    しかし摂取後時間が経過している場合は催吐薬の投与、洗浄は行わずに吸着剤の投与を行います。

    時間が経過している場合は催吐、並びに胃洗浄は体への負担が生じるだけで効果が認められません。

    多くの中毒と同様に嘔吐による脱水、電解質の補正のための輸液などの対処量を行います。

    通常1時間以内であれば胃の中にまだありますので、吐かせることができますが、2時間となるとはかせることは難しいため、症状が出た場合は点滴となります。

    しかし、お近くに病院がない場合、また3時間以上経過すると胃袋になく、吐かせることができませんので、中毒が出ないように祈る以外、ご自宅でできる事はありません。

    これは3時間経過していれば、病院でも同じです。

    犬の殺鼠剤中毒の治療

    犬の殺鼠剤中毒の治療

    命に関わる中毒なので入院治療を行います。

    接種後から時間が経過していなければすぐに嘔吐を行います。

    また、拮抗薬であるビタミンKをできるだけ早く投与しできれば摂取から8時間以内に投与します。

    治療効果判定として治療後12時間24時間に凝固検査を行います。

    その後もビタミンKを 2-3日に1回で2-3週間は投与します。

    投与終了後2-4日目に再度血液凝固系検査を行います。

    貧血を伴っている場合には全血輸血を行って凝固因子を補います。

    その他支持療法として点滴や胸腔内に血液が貯留している場合には胸腔穿刺を行い呼吸の改善を図ります。

    犬の殺鼠剤中毒の予後

    犬の殺鼠剤中毒の予後

    摂取量に依存するが拮抗薬があるので治療が早ければ、予後は一般的に良好です。

    しかし、肺出血や脳出血等を伴っている場合には救命できないこともあります。

    犬の殺鼠剤中毒の予防

    犬の殺鼠剤中毒の予防

    殺鼠剤は犬の命を危険にさらすものとして認識し、そのような製品を犬が食べられないような場所に設置しない、保存しないということを注意します。

    人が住む環境の中には、犬にとって危険な植物は数多く存在します。

    犬は興味を持ち噛み付いたりしてしまうことがよくありますので、犬の手の届かない範囲に危険なものは置かないことが一番の予防になります。

    犬が中毒を起こした時に、準備しておく必要な物

    以下の常備薬を持っておくと、安心です。

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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