犬にキシリトールガムは危険!キシリトール中毒の怖さとは?!獣医師が解説!

    キシリトール中毒は、飼い主様の中でもかなり有名で、ご存知の方も多いかもしれません。

    人の食べるものの中には、体の小さい、また、仕組みが異なる犬にとっては非常に有毒なこともあります。

    中毒の中でも非常に多い部類に入ります。

    犬がキシリトールガムを噛んじゃった、食べてしまった。

    その様な経験のある飼い主へ。

    今回は、犬のキシリトール中毒についてお話ししていきます。

    当記事では、犬がキシリトールを誤飲、誤食してしまった時に起こる中毒、症状、致死量、対処法に至るまでをまとめました。

    限りなく網羅的にまとめましたので、キシリトールが犬に与える影響をご存知でない飼い主は是非ご覧ください。

    ✔︎本記事の信憑性
    この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
    論文発表や学会での表彰経験もあります。

    記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

    » 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

    ✔︎本記事の内容

    犬にキシリトールガムは危険!キシリトール中毒の怖さとは?!

    犬がキシリトールを食べてしまった時に起こる病態

    犬がキシリトールを食べてしまった時に起こる病態

    キシリトールは、人では食品や口腔ケア製品に一般的に使用されている甘味料ですが、犬は人と代謝が異なるためキシリトールを摂取すると中毒を引き起こし死亡する危険性があります。

    犬ではキシリトールがインスリン分泌を促進し、また摂取量のほとんど全てが急速に吸収されます。

    ある研究では、キシリトールを1g/kg経口摂取後のインスリン濃度のピークはグルコースよりも6倍高かったそうです。

    このような病態のため、犬がキシリトールを食した後に血糖値が急速に低下し、経口投与後1時間で約50mg/dlまで低下したと言う報告もあります。

    低血糖のほか、肝酵素値の上昇や凝固系の異常が認められる場合もあり、急性肝不全を引き起こし、死亡あるいは安楽死を行った報告もあります。

    この急性肝不全の病態は不明ですがキシリトールや、その代謝物が肝臓の酵素の枯渇や変性をもたらしていると言われております。

    犬が中毒を引き起こすキシリトールを含む製品

    犬が中毒を引き起こすキシリトールを含む製品

    商品名だけではキシリトールを含んでいるのかどうかわからない場合もあるので、必ず成分表にて確認します。

    含有率の算出法:キシリトールの量÷炭水化物の量× 100

    ガムタイプのキシリトール含有率は0.1から100%までと非常に幅が広いです。

    例えば含有率100%のガムなら1粒が1g前後なので、体重1kgの犬なら1~2粒でも中毒量となります。

    またタブレットタイプは含有率が高め(75%以上)のものが多く、ドロップタイプは低め(20%以下)のものが多いです。

    犬がキシリトールを食べてしまった時の中毒の症状

    犬がキシリトールを食べてしまった時の中毒の症状

    低血糖は接種後30-60分以内と早期に認められますが、12時間経過してから発現した例も報告されています。

    臨床症状は急速に進行し、嘔吐に始まり、嗜眠、運動失調、虚脱、痙攣発作を生じる危険性があります。

    血液検査では低血糖が認められることが多いですが、高血糖を呈することもあります。また低血糖は単独で食べていれば発現しやすく、食事も一緒に摂取していたのであれば発現しにくいです。

    その他の血液異常所見として、低カリウム、肝数値の上昇、凝固系の延長などが認められることもあります。

    犬がキシリトール中毒を起こした時の治療

    犬がキシリトール中毒を起こした時の治療

    対処法は3つに大別されます。

    1. そのまま様子を見る(勝手に吐く、あるいは、便で出るのを待つ or 毒物なら点滴して希釈する)
    2. 吐かせる
    3. 麻酔をかけて摘出する(開腹手術 or 内視鏡)

    もし摂取したキシリトールの量が0.1g/kg以上の可能性があれば、臨床症状がなくても入院して定期的な治療と血液検査が必要です。

    もし低血糖が認められた場合、20%以上のグルコースを1-2ml/kgでゆっくり注射し、その後血糖値を維持するため静脈内の持続点滴を行います。

    また、意識がはっきりしていれば、グルコースの経口投与やフードを積極に与えます。しかし過剰なグルコース投与は逆にインスリンの刺激を分泌するので、必要以上に行わないことが重要です。

    低カリウム血漿の場合は、カリウム製剤を点滴に加えて補正します。

    治療は、グルコースの補充をしなくても血糖値が維持できるまで続ける必要があります。

    キシリトール0.5g/kg以上摂取した場合は、低血糖の有無にかかわらず、直ちにグルコースによる治療開始、そして肝不全に対して肝庇護薬や抗酸化薬も有効であると考えられています。

    凝固異常へと病態が進行したら、血漿輸血と全血輸血のどちらも必要です。

    特効薬がないため、一刻も早い治療が必要となります。

    通常1時間以内であれば胃の中にまだありますので、吐かせることができますが、3時間となるとはかせることは難しいため、症状が出た場合は点滴となります。

    しかし、お近くに病院がない場合、また3時間以上経過すると胃袋になく、吐かせることができませんので、中毒が出ないように祈る以外、ご自宅でできる事はありません。

    これは3時間経過していれば、病院でも同じです。

    点滴治療で、症状を緩和することが目的となります。

    犬がキシリトール中毒を起こす中毒量

    犬がキシリトール中毒を起こす中毒量

    キシリトールの0.1g/kg以上の摂取で低血糖の危険性が考えられ、0.5g/kg以上であれば肝障害の危険性も考慮すべきです。

    犬がキシリトールを食べてしまった時の応急処置と対処法

    犬がキシリトールを食べてしまった時の応急処置と対処法

    原則は病院の受診です。

    病院で安全な催吐処置をしていただくことが最善です。

    しかし、周りに病院がない場合、離島などで病院受診が困難な場合は自宅で吐かせるしかありません。

    自宅でできる催吐処置は元々非常に危険で、それが原因で命を落とすこともあり、うかつに行うと危険です。

    • 炭酸ナトリウム 小型犬:0.5g/頭  中型犬以上:0.5-1g/頭  口腔内投与
    • 3%過酸化水素(オキシドール) 1-2ml/kg

    上記はあくまでも参考です。

    決して気軽に自己判断で行わないでください。

    犬がキシリトール中毒を起こした時の予後

    犬がキシリトール中毒を起こした時の予後

    摂取した量や経過時間などが予防を左右します。

    重篤ではなく合併症のない低血糖は治療によって予後は良好です。

    中等度の肝酵素の増加はほとんどの場合、何日間の支持療法で解決します。

    一方、肝酵素値の著しい増加、高ビリルビン血漿、凝固不全が発症したら予後は厳しいです。

    犬のキシリトール中毒の予防

    犬のキシリトール中毒の予防

    キシリトール中毒は多くの飼い主が認識していますが 、中毒を生じたケースのほとんどは動物の盗食によるものです。

    無防備な状態で動物が届く範囲にキシリトールをおかないよう注意が必要です。

    犬が中毒を起こした時に、準備しておく必要な物

    以下の常備薬を持っておくと、安心です。

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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