園芸用品は、最も危険な殺虫剤や殺鼠剤、除草剤などが区分されており、またこれら薬物には家庭内や庭、散歩コースなどに溢れています。
これらの薬系薬剤の中で、特に注意が必要な薬剤は、動物や昆虫が好むように誘引剤が入っている、いわゆるベイト剤と言われるもので大量摂取になりやすく重篤な中毒に至る場合が多いです。
このメタアルデヒド剤は、ナメクジやカタツムリの駆除剤として販売されております。
いわゆるベイト剤であるため、大量摂取すなわち犬が1箱まるまる食べて来院する場合が多く、多くが既に診察時に頻回の嘔吐や痙攣などの症状を呈しています。
農薬系薬剤は非常に多く、農水省に登録された農薬のみでも7600を超える製品があります。
いくつかの農薬系薬剤が1製品中に配合されていることがあるため、必ずしもシンプルな毒性を示さずそれらを併せ持った複雑な中毒症状示します。
そこで当記事では、そんなメタアルデヒドを含む殺虫剤を舐めてしまった時に起こる病態、症状、中毒量、治療法に至るまでを獣医師が徹底解説します。
犬にとって危険な物を知りたい飼い主必見です。
この記事を読めば、犬にメタアルデヒドを与えていけない理由と対処法が分かります。
限りなく網羅的にまとめましたので、メタアルデヒドが犬に与える影響をご存知でない飼い主は是非ご覧ください。
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
犬にナメクジ、カタツムリ駆除剤は危険!メタアルデヒド中毒の怖さとは?!
この記事の目次
犬がメタアルデヒドを食べてしまった時に起こる病態
メタアルデヒドの体内での吸収率は非常に高く、マウスの試験で吸収率が90-97%と報告されています。
吸収後、アセトアルデヒドに分解されますがこのアセトアルデヒドにより中毒症状呈すると考えられています。
毒性の正確なメカニズムは知られていません。
メタアルデヒドはアセトアルデヒドを遊離させるように代謝されることが知られています。
アセトアルデヒドの代謝は、代謝性アシドーシスの誘因となり、筋肉の振戦や痙攣の動きを悪化させます。
メタアルデヒドやアセトアルデヒドが、メタアルデヒド中毒で見られる症状の原因となるかどうかは明確ではありません。
犬がメタアルデヒドを食べてしまった時の中毒の症状
嘔吐、下痢、呼吸不全、筋肉硬直、痙攣、昏睡などを呈します。
普通摂取後15分-3時間以内に、症状が現れ始めます。
[初期症状] 心拍の増加、嘔吐、流涎、運動失調、足の硬直、眼振、散瞳 [中期症状] 接触により不規則に応じる筋肉の振戦、下痢、痙攣 [末期症状] 連続的な痙攣、重度の発熱、アシドーシス、呼吸不全、チアノーゼ、昏睡
犬がメタアルデヒドを食べてしまった時の中毒量
人であれば摂取量が50mg/kg未満で症状を呈し、100mg/kgの摂取で48時間までに死亡することもあります。
犬の場合は毒性試験(6ヶ月間:20-90mg/kg/日)によると20mg/kg/日では毒性はなく、30mg/kg/日で死亡が認められました。
そのため安全領域は10mg/kg/日とされております。
犬がメタアルデヒドを食べた時の対処
対処法は3つに大別されます。
動物病院では、まず胃の内容物を吐かせて外に出し、その後、胃の洗浄をして、活性炭や下剤を投与するといった治療がおこなわれます。
中毒の症状や原因となるものを、体外に排出することが最優先されます。
- そのまま様子を見る(勝手に吐く、あるいは、便で出るのを待つ or 毒物なら点滴して希釈する)
- 吐かせる
- 点滴などの対症療法
摂取後2時-4時間以内であれば、催吐薬の投与を行い吸着剤の投与を併用します。
催吐の効果が認められられない場合には、胃洗浄を行うこともあります。
通常1時間以内であれば胃の中にまだありますので、吐かせることができますが、3時間となるとはかせることは難しいため、症状が出た場合は点滴となります。
しかし、お近くに病院がない場合、また3時間以上経過すると胃袋になく、吐かせることができませんので、中毒が出ないように祈る以外、ご自宅でできる事はありません。
これは3時間経過していれば、病院でも同じです。
しかし摂取後時間が経過している場合は催吐薬の投与、洗浄は行わずに吸着剤の投与を行います。
時間が経過している場合は催吐、並びに胃洗浄は体への負担が生じるだけで効果が認められません。
多くの中毒と同様に嘔吐による脱水、電解質の補正のための輸液などの対処量を行います。
点滴治療で、症状を緩和することが目的となります。
犬がメタアルデヒド中毒を起こした時の治療
他の薬剤と異なり催吐により痙攣を誘発する可能性がありますので、基本的に禁忌です。
ただ大量摂取によりときに死亡するため、摂取後すぐであれば症状が出る前に催吐させることも検討します。
残念ながら拮抗薬は存在しません。
痙攣時にはジアゼパムを使用します。
同じ抗痙攣薬であるフェノバルビタールなどのバルビツール系はメタアルデヒドの分解産物であるアセトアルデヒドの分解を阻害するため、使用禁忌と考えられています。
経口投与が可能な状態になれば吸着剤としての活性炭1-4g/kgを経口投与します。
犬がメタアルデヒドを食べてしまった時の応急処置と対処法
原則は病院の受診です。
病院で安全な催吐処置をしていただくことが最善です。
しかし、周りに病院がない場合、離島などで病院受診が困難な場合は自宅で吐かせるしかありません。
自宅でできる催吐処置は元々非常に危険で、それが原因で命を落とすこともあり、うかつに行うと危険です。
- 炭酸ナトリウム 小型犬:0.5g/頭 中型犬以上:0.5-1g/頭 口腔内投与
- 3%過酸化水素(オキシドール) 1-2ml/kg
上記はあくまでも参考です。
決して気軽に自己判断で行わないでください。
農薬系薬物を摂取し摂取後すぐ(できれば1時間以内)で、意識が清明であれば催吐を検討しても良いです。
しかしこれらの薬物は有機溶媒を含んでいることが多いので、誤嚥にはくれぐれも注意が必要です。
摂取した薬物が液体であった場合には特に誤嚥性肺炎を生じることがあるので催吐しないほうが無難な場合もあります。
また催吐が禁忌である場合もありますので摂取したものがわからない場合には催吐の判断を慎重に行います。
酸・アルカリ性の薬物、石油系の薬剤は催吐禁忌であり、また犬猫の意識障害があっても催吐は禁忌です。
犬がメタアルデヒド中毒を起こした時の予後
摂取した中毒性物質やその量、摂取から治療までの時間、治療内容等に左右されます。
農薬系薬剤は重篤な症状が出る位の量を摂取した場合、死亡する可能性も十分に考えられ、一時的に回復しても、腎不全、盲目、意識障害などを合併することもあります。
24時間生存していれば、その後の回復する見込みが出てきます。
人であれば、記憶障害が1年もしくはそれ以上続くことがあります。この薬物は脂溶性であるため、牛乳の摂取は禁忌です。
犬のメタアルデヒド中毒の予防
犬を飼っている場合には、とにかく、これら農薬系薬剤を買わない、置かない事が重要です。
どうしてもそれら薬物を使用する際には、飼い主が危機意識を持ち、犬が誤食する可能性を十分に考え、絶対に犬が立ち入らない場所に設置します。
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