ねぎ中毒は、飼い主様の中でもかなり有名で、ご存知の方も多いかもしれません。
犬がねぎを食べると、場合によっては中毒を起こし、様々な症状が出ることがあります。
本記事では、犬のねぎ中毒の病態、症状、中毒量、治療法に至るまでを獣医師が徹底解説します。
この記事を読めば、犬にねぎを与えていけない理由と対処法が分かります。
犬にとって危険な物を知りたい飼い主必見です。
限りなく網羅的にまとめましたので、ねぎが犬に与える影響をご存知でない飼い主は是非ご覧ください。
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
犬にネギはとっても危ない!ネギ中毒の危険性とは?
この記事の目次
犬がねぎを食べてしまった時に起こる病態
犬がネギを過剰に摂取した場合、ネギ内にある化学物質により、ハインツ小体性溶血性貧血が引き起こされます。
ネギの毒性は季節や摂取量、暴露速度、急性か慢性化によって変化します。
しかし調理加熱の有無や腐敗、乾燥、粉末等といった加工の有無により毒性が消失する事はなく、様々な形態での摂取及び発症が報告されています。
また、同様の病態は、ネギのみに限らず、ニンニク、玉ねぎ、ニラなどのAlllium科に属するその他の植物を過剰に摂取した場合にも発生します。
この中毒では赤血球の細胞膜に酸化的障害を及ぼすことにより起因します。
酸化的障害を受けた赤血球は溶血し、また変性したヘモグロビンは赤血球内に凝集沈殿し、最終的にハインツ小体を形成します。
その後これらの赤血球は溶血し、貧血に至ります。
犬では赤血球内の抗酸化作用が弱く、酸化的障害を受けやすいです。
とりわけ遺伝的にカリウム濃度が高い犬種や日本犬(主に秋田犬や柴犬など)は酸化的障害の防御機能が弱く、中毒を起こしやすいとされています。
これは日本犬は遺伝的に赤血球内にグルタチオンが多い傾向にあり、チオ硫酸化合物との反応による酸化に弱いためです。
犬がネギを一回だけ食べたとしても、まず中毒症状はでないものと思われます。 ネギ中毒は、中毒原因の珍しさ(人間が普通に食べるネギ、タマネギ、ニラ、ニンニク類)から、名前が独り歩きしている感があります。 実際には、食用油と一緒にタマネギを継続的に与えられていたケンネルでの原因不明の貧血が見られた事から、タマネギ中毒であると判明したのが最初の報告です。 このように継続的に与えているのでなければ貧血の症状は出ません。 症状としては、主に貧血に伴う運動低下、起立不全などがあります。 よほど大量のネギ、ニラなどを長期にわたって与えない限り死につながる事はありません。 ネギ中毒といったものの症状は貧血です。どの程度食べれば症状がでるかはその子によって違いますが、かじった程度ではまず問題ないです。
犬がネギを食べてしまった時の中毒の症状
初期には、元気がない、発熱、嘔吐、下痢、などの症状が見られ、さらに震えや痙攣、貧血、血尿に血便、吐血などを起こし、死に至るケースもあります。
頻拍、頻回呼吸あるいは呼吸困難、粘膜色の異常(蒼白あるいは黄疸)を呈します。
中には呼気にネギの匂いが認められる場合もあります。
血尿またコーヒー色の尿をする場合もあります。
血尿(ヘモグロビン尿)や、嘔吐・下痢などの消化器症状は、治療により比較的短期間で落ち着く場合がほとんどです。
症状の発現は、大量摂取後24時間以内に認められる場合もありますが、一般的にはやや遅れて数日後に認められます。
加熱調理しても中毒物質は変化しないので、コロッケやハンバーグなどに含まれる少量のものも、犬の口に入らないように注意してください。
味噌汁やすきやきの汁など、ネギの成分やエキスが溶け出しているものも与えてはいけません。
犬がネギを食べた時の対処
対処法は3つに大別されます。
- そのまま様子を見る(勝手に吐く、あるいは、便で出るのを待つ or 毒物なら点滴して希釈する)
- 吐かせる
- 麻酔をかけて摘出する(開腹手術 or 内視鏡)
ねぎ中毒における有効な解毒薬は存在しないです。
ねぎ中毒に対しては催吐や吸着剤、抗痙攣薬、抗不整脈薬、輸液を用いて対症療法を行います。
摂取後2時-4時間以内で、痙攣発作が起こっていない状態であれば、催吐薬の投与を行い吸着剤の投与を併用します。
通常1時間以内であれば胃の中にまだありますので、吐かせることができますが、2時間となるとはかせることは難しいため、症状が出た場合は点滴となります。
しかし、お近くに病院がない場合、また3時間以上経過すると胃袋になく、吐かせることができませんので、中毒が出ないように祈る以外、ご自宅でできる事はありません。
これは3時間経過していれば、病院でも同じです。
点滴治療で、症状を緩和することが目的となります。
催吐の効果が認められられない場合には、胃洗浄を行うこともあります。
しかし摂取後時間が経過している場合は催吐薬の投与、洗浄は行わずに吸着剤の投与を行います。
時間が経過している場合は催吐、並びに胃洗浄は体への負担が生じるだけで効果が認められません。
多くの中毒と同様に嘔吐による脱水、電解質の補正のための輸液などの対処量を行います。
ねぎ中毒を引き起こしてしまった際に動物病院で行なわれる治療は、点滴やビタミン剤の投与・強心剤・利尿剤、輸血などを投与し、ねぎの中毒性を緩和させるという事だけです。
犬がネギ中毒を起こした時の治療
実は、ネギ中毒には特効薬、解毒薬という物がありません。
そのため治療は消化管内容物(原因物質)の除去と貧血の治療、及び支持療法が中心となります。
治療においては、静脈内輸液や輸血などによって十分な循環血液量を維持することが最大の目的となります。
- 解毒(原因物質の除去)
大量摂取後2時間以内であり、症状が認められない場合は再度処置が有効です。
催吐処置に用いられる薬剤には様々なものがありますが、安全性の高いトラネキサム酸を用いることが多いです。
また、原因物質の吸収を抑制する目的で催吐処置後に、吸着剤である吸着炭を経口投与することも有効です。
玉ねぎ摂取後既に吸収されてしまった物質については、適宜乳酸リンゲル液の輸液を実施することにより、なるべく速やかな排出を促すことになります。 - 対症療法:貧血の改善
重度の貧血が認められる場合には、全血輸血及び酸素吸入の実施も検討します。
輸血量は副反応の危険性を考慮し必要最小限の輸血量で実施する形になります。 - 支持療法
頻回の嘔吐や下痢を呈している場合や、ヘモグロビン尿や低血圧が認められる場合には静脈内輸液を実施します。
場合によっては脱水とショックの補正も行い、低血糖が認められる場合には、デキストロースの添加を行います。
症状の程度に応じて生徒役や消化器系保護薬の投与も検討します。 - その他の療法
ビタミンC及びEなどの抗酸化剤薬の投与も、赤血球の酸化的障害の抑制に効果があると考えられております。
治療中のフードについては、酸化物質をあまり含まない食事が推奨されます。
犬がネギ中毒を起こす中毒量
中毒症状は、体重の0.5%以上のネギを1度に摂取した場合に一貫して認められます。
犬の身体は個体差が大きいため、一概に「この量」とは断言できませんが、一般的に「体重が1kgだった場合、ネギ15~30gを摂取してしまうと中毒量に値する」と言われています。
あくまでもこれは参考値です。実際にはこれよりもはるかに少ない量でも、中毒症状が出ることがあります。
食べた直後はなんともなく元気だったのに、数時間後や翌日にぐったりし出した・血尿や血便をし出したなどというケースも多く報告されています。
犬がネギを食べてしまった場合には、犬に症状が出ている・出ていないに関わらず、病院の受診をお勧めします。
犬がネギを食べてしまった時の応急処置と対処法
原則は病院の受診です。
病院で安全な催吐処置をしていただくことが最善です。
しかし、周りに病院がない場合、離島などで病院受診が困難な場合は自宅で吐かせるしかありません。
自宅でできる催吐処置は元々非常に危険で、それが原因で命を落とすこともあり、うかつに行うと危険です。
- 炭酸ナトリウム 小型犬:0.5g/頭 中型犬以上:0.5-1g/頭 口腔内投与
- 3%過酸化水素(オキシドール) 1-2ml/kg
上記はあくまでも参考です。
決して気軽に自己判断で行わないでください。
犬がネギ中毒を起こした時の予後
最重度の貧血は、ネギの摂取から遅れて認められる場合(1-5日後)が多い。
そのため、摂取後数日間にわたり、モニタリングすることが重要です。
本疾患の予後は、貧血の重症度、及び支持療法の有無により異なります。
重症例では死に至る場合もありますが、ネギの摂取後早期に適切な治療実施することができれば、予後は比較的良好である場合が多いです。
犬のネギ中毒の予防
ねぎ中毒は多くの飼い主が認識していますが 、中毒を生じたケースのほとんどは動物の盗食によるものです。
無防備な状態で動物が届く範囲にねぎを置かないよう注意が必要です。
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