メチルフェニデートは、中枢神経刺激役であり、人では注意欠如、多動性障害(ADHD)の治療に用いられます。
犬ではナルコレプシーと多動の治療に用いられることもあります。
○ペットに害を及ぼした危険なお薬トップ10
ASPCAが2007年にペットが間違って処方薬や一般用医薬品を飲んでしまった89000事例を調査した結果です。
数が多い順ですが、
消炎鎮痛剤
抗うつ剤
アセトアミノフェン(解熱・鎮痛薬)
メチルフェニデート(AHDHの治療薬)
フルオロウラシル(抗がん剤)
イソニアジド(結核治療薬)
エフェドリン(咳止め)
経口糖尿病薬
ビタミンD(骨粗鬆症薬)
バクロフェン(筋弛緩薬)
ASPCAのホームページ
http://www.aspca.org/pet-care/poison-control/animal-poison-control-faq.aspx#FD6
ペットに害を及ぼした危険なお薬トップ10
http://www.aspca.org/pet-care/poison-control/top-10-human-medications-that-poison-our-pets.aspx
動物に対する中毒物質
http://nihon.matsu.net/nf_folder/nf_mametisiki/nf_dog/nf_dog_chuudoku.html
当記事では、犬が人のADHDの薬を口にしてしまった時に起こる症状、病態、対処法に至るまでをまとめました。
犬にとって危険な物を知りたい飼い主必見です。
限りなく網羅的にまとめましたので、人のADHDの薬が犬に与える影響をご存知でない飼い主は是非ご覧ください。
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
犬がADHDの薬飲んじゃった!メチルフェニデート中毒の怖さとは?!
この記事の目次
犬がメチルフェニデートを食べてしまった時に起こる病態
メチルフェニデートは間接的に交感神経に作用します。
作用機序は完全に解明されていませんが、薬理学的な特性はアンフェタミンと類似しています。
アンフェタミンはアドレナリン作用を有する中枢神経刺激薬です。
これらはノルエピネフリンの放出を刺激し、アドレナリン作動性受容体部位に直接作用すると考えられています。
アンフェタミンは急速に胃腸間から吸収され、脳と中枢神経系に高濃度に分布します。
犬がメチルフェニデートを食べてしまった時の中毒の症状
症状は摂取後、1-3時間で出てくることが多いです。
代表的な症状
興奮、多動、運動失調、協調不全、過剰興奮、震え、頻脈、発熱
その他の症状
無気力 沈鬱 重篤例では発作が認められます。
犬がメチルフェニデート中毒を起こした時の治療
特異的な解毒剤はないため、急性腎不全の補正や予防を目的とした治療となります。
摂取直後(2-4時間)、または症状が現れていない時は催吐処置が可能です。
摂取後症状が出ていなければ胃洗浄も有効です。
しかし摂取後、長時間が経過している場合はこれらの処置の効果は乏しくなります。
また他の多くの中毒に対する治療と同様に、嘔吐による脱水、電解質の補正、利尿の促進を目的とした静脈内輸液を行います。
その他には、活性炭、生理食塩水での洗浄の実施:必要に応じて4−6時間毎にする必要が出てきます。
必要に応じてアセプロマジンといった鎮静剤を使用することもあります。
犬がメチルフェニデート中毒を起こす中毒量
ビーグルの実験ですと、30mg/kgで血圧上昇、心拍数増加が認められたとのことです。
また72mg/kg/日以下ですと軽度な流涎のみで、無毒性量とされています。
144mg/kg/以上の場合は、活動亢進やアルブミンの低下などの症状が認められています。
犬がメチルフェニデートを食べた時の対処
対処法は3つに大別されます。
動物病院では、まず胃の内容物を吐かせて外に出し、その後、胃の洗浄をして、活性炭や下剤を投与するといった治療がおこなわれます。
中毒の症状や原因となるものを、体外に排出することが最優先されます。
- そのまま様子を見る(勝手に吐く、あるいは、便で出るのを待つ or 毒物なら点滴して希釈する)
- 吐かせる
- 点滴などの対症療法
摂取後2時-4時間以内であれば、催吐薬の投与を行い吸着剤の投与を併用します。
催吐の効果が認められられない場合には、胃洗浄を行うこともあります。
通常1時間以内であれば胃の中にまだありますので、吐かせることができますが、3時間となるとはかせることは難しいため、症状が出た場合は点滴となります。
しかし、お近くに病院がない場合、また3時間以上経過すると胃袋になく、吐かせることができませんので、中毒が出ないように祈る以外、ご自宅でできる事はありません。
これは3時間経過していれば、病院でも同じです。
しかし摂取後時間が経過している場合は催吐薬の投与、洗浄は行わずに吸着剤の投与を行います。
時間が経過している場合は催吐、並びに胃洗浄は体への負担が生じるだけで効果が認められません。
多くの中毒と同様に嘔吐による脱水、電解質の補正のための輸液などの対処量を行います。
点滴治療で、症状を緩和することが目的となります。
犬がメチルフェニデートを食べてしまった時の応急処置と対処法
原則は病院の受診です。
病院で安全な催吐処置をしていただくことが最善です。
しかし、周りに病院がない場合、離島などで病院受診が困難な場合は自宅で吐かせるしかありません。
自宅でできる催吐処置は元々非常に危険で、それが原因で命を落とすこともあります。
- 炭酸ナトリウム 小型犬:0.5g/頭 中型犬以上:0.5-1g/頭 口腔内投与
- 3%過酸化水素(オキシドール) 1-2ml/kg
上記はあくまでも参考です。
決して気軽に自己判断で行わないでください。
犬がメチルフェニデート中毒を起こした時の予後
迅速にメチルフェニデートの除去を行うことができれば良好です。
重度の腎障害、肝障害が認められる場合の予防は要注意から不良です。
犬のメチルフェニデート中毒の予防
飼い主には誤食を防止するため、動物の手の届かない範囲に薬を保管するなどの工夫をしてもらう必要があります。
いずれも人間が飲む薬であり、使用頻度が高い薬でもあります。
ペットに勝手に人間の薬をあげてはいけないことと薬の保管場所はきちんとした方がいいです。
犬が中毒を起こした時に、準備しておく必要な物
完全保存版!愛犬の常備薬10選!【わかりやすく獣医が徹底解説】
動物病院が空いていない時に、愛犬が怪我をしてしまったり、体調を崩したことはありませんか?そこで当記事では、そんな緊急の時に用意しておく薬、もしもの時のために持っておいた方がいい薬、更に安く手に入れる方法をまとめました。限りなく網羅的にまとめましたので、万が一の時のために用意しておきたい、周りに夜間の病院がない飼い主は是非ご覧ください。
獣医師が解説!犬の中毒まとめ!
獣医師解説!犬との生活の中で、中毒は大変身近にある病気です。人が普段食べているものや、使用している物の中には犬にとって非常に危険な物が多くあります。何気なく使っている物が、犬の口に入ると命に関わることもあります。この記事を読めば、犬に与えていけない中毒物質の種類が分かります。