犬に人の鎮痛薬は危険!アスピリン(アセチルサリチル酸):バファリン中毒の怖さとは?!獣医師が解説!

    ロキソニン、バファリンを愛犬が口にしてしまった!

    痛そうだけど、人のロキソニンやバファリンをあげていいの?

    サリチル酸塩を含む多くの鎮痛薬、抗炎症薬、解熱薬、止瀉薬は、非ステロイド系抗炎症薬(Non-steroid antinflammatory drug:NSAIDS)の1種で一般医薬品として販売されていいます。

    アスピリン(アセチルサリチル酸)はその他の鎮痛薬(カフェイン、パラセタモール)と混合して使われることもあります。

    その他のサリチル酸誘導体、例えばメチルサリチル酸も局所の抗炎症性鎮痛薬として使用されています。

    しかし、犬、猫では安全域が狭く、小動物領域では処方されることはなく、誤食による中毒がほとんどです。

    ○ペットに害を及ぼした危険なお薬トップ10

    ASPCAが2007年にペットが間違って処方薬や一般用医薬品を飲んでしまった89000事例を調査した結果です。
    数が多い順ですが、

    消炎鎮痛剤
    抗うつ剤
    アセトアミノフェン(解熱・鎮痛薬)、ロキソニン、バファリン
    メチルフェニデート(AHDHの治療薬)
    フルオロウラシル(抗がん剤)
    イソニアジド(結核治療薬)
    エフェドリン(咳止め)
    経口糖尿病薬
    ビタミンD(骨粗鬆症薬)
    バクロフェン(筋弛緩薬)

    ASPCAのホームページ
    http://www.aspca.org/pet-care/poison-control/animal-poison-control-faq.aspx#FD6

    ペットに害を及ぼした危険なお薬トップ10
    http://www.aspca.org/pet-care/poison-control/top-10-human-medications-that-poison-our-pets.aspx

    動物に対する中毒物質
    http://nihon.matsu.net/nf_folder/nf_mametisiki/nf_dog/nf_dog_chuudoku.html

    誤食以外にも、医療従事者や、鎮痛剤としてよく飲んでいる飼い主は、同じ感覚で愛犬が痛がっているときに飲ませてしまうこともあります。

    愛犬が、飼い主のアスピリン(アセチルサリチル酸)を食べてしまった。

    また病院がやっていない時に、愛犬がどこかを痛がり出して、何か痛み止めを飲ませたい方もいるのではないでしょうか?

    ヒトでは消化器に対する副作用が少ないですが、動物で同じように副作用が少ないという報告はないです。

    当記事では、犬が人の鎮痛剤を口にしてしまった時に起こる症状、病態、対処法に至るまでをまとめました。

    限りなく網羅的にまとめましたので、アスピリン(アセチルサリチル酸)を与えようと思っている飼い主、愛犬が飲んでしまった飼い主は是非ご覧ください。

    ✔︎本記事の信憑性
    この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
    論文発表や学会での表彰経験もあります。

    記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

    » 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

    ✔︎本記事の内容

    犬に人の鎮痛薬は危険!アスピリン(アセチルサリチル酸)中毒の怖さとは?!

    犬がアスピリンを食べてしまった時に起こる病態

    犬がアスピリンを食べてしまった時に起こる病態

    アセチルサリチル酸はシクロオキシゲナーゼを不活性化し、プラスタグランジンE2を含む数種のプロスタグランジンの生成を阻害します。

    高用量では、呼吸中枢を調節刺激し、最初に呼吸性アルカローシスを引き起こします。

    さらに高血糖と糖尿を続発します。

    その結果、胃腸管は血流量を減じ、胃粘膜分泌を低下させ、胃腸間の貧血、及び潰瘍化を引き起こします。

    プロスタグラジンの抑制は、腎血流量を減少させ、腎細管壊死と急性腎不全を招きます。

    犬がアスピリンを食べてしまった時の中毒の症状

    犬がアスピリンを食べてしまった時の中毒の症状

    初期の症状は、摂取後4-6時間で出現します。

    抑鬱、嘔吐、食欲不振や嗜眠、呼吸促迫、及び発熱が認められます。

    嘔吐物は胃腸潰瘍の形成により、出血を帯びることがあります。

    中枢神経の抑制は、筋肉の衰弱と運動失調を招きます。

    昏睡は、数日以内に起こります。

    胃腸潰瘍や穿孔は、数日間に渡って繰り返し飲んだ場合に認められます。

    犬がアスピリン中毒を起こした時の治療

    犬がアスピリン中毒を起こした時の治療

    特異的な解毒剤はないため、急性腎不全の補正や予防を目的とした治療となります。

    摂取直後(2-4時間)、または症状が現れていない時は催吐処置が可能です。

    摂取後症状が出ていなければ胃洗浄も有効です。

    しかし摂取後、長時間が経過している場合はこれらの処置の効果は乏しくなります。

    また他の多くの中毒に対する治療と同様に、嘔吐による脱水、電解質の補正、利尿の促進を目的とした静脈内輸液を行います。

    その他には、活性炭、生理食塩水での洗浄の実施:必要に応じて4−6時間毎にする必要が出てきます。

    必要に応じてアセプロマジンといった鎮静剤を使用することもあります。

    また、解毒薬の投与として、クロルプロマジン、及びハロペリドールの12時間毎の注射が必要になります。

    また、脳圧上昇のためには、フロセミドやマンニトール、ステロイドも有効です。

    塩化アンモニウムを使うことで尿を酸性化し、アンフェタミン剤の排出を促進する方法もあります。

    犬がアスピリン中毒を起こす中毒量

    犬がアスピリン中毒を起こす中毒量

    アスピリンの生物学的半減期、つまり体の中で半分の量にまでなる時間は、25mg/kg/日の投与で7.5-8時間と言われています。

    中毒量は50mg/kg/日です。

    また止瀉薬(Pept-Bismol)は7mg/kg/日以上の投与で認められます。

    犬がアスピリンを食べた時の対処

    犬がアスピリンを食べた時の対処

    対処法は3つに大別されます。

    動物病院では、まず胃の内容物を吐かせて外に出し、その後、胃の洗浄をして、活性炭や下剤を投与するといった治療がおこなわれます。

    中毒の症状や原因となるものを、体外に排出することが最優先されます。

    1. そのまま様子を見る(勝手に吐く、あるいは、便で出るのを待つ or 毒物なら点滴して希釈する)
    2. 吐かせる
    3. 点滴などの対症療法

    摂取後2時-4時間以内であれば、催吐薬の投与を行い吸着剤の投与を併用します。

    催吐の効果が認められられない場合には、胃洗浄を行うこともあります。

    通常1時間以内であれば胃の中にまだありますので、吐かせることができますが、3時間となるとはかせることは難しいため、症状が出た場合は点滴となります。

    しかし、お近くに病院がない場合、また3時間以上経過すると胃袋になく、吐かせることができませんので、中毒が出ないように祈る以外、ご自宅でできる事はありません。

    これは3時間経過していれば、病院でも同じです。

    しかし摂取後時間が経過している場合は催吐薬の投与、洗浄は行わずに吸着剤の投与を行います。

    時間が経過している場合は催吐、並びに胃洗浄は体への負担が生じるだけで効果が認められません。

    多くの中毒と同様に嘔吐による脱水、電解質の補正のための輸液などの対処量を行います。

    点滴治療で、症状を緩和することが目的となります。

    犬がアスピリンを食べてしまった時の応急処置と対処法

    犬がアスピリンを食べてしまった時の応急処置と対処法

    原則は病院の受診です。

    病院で安全な催吐処置をしていただくことが最善です。

    しかし、周りに病院がない場合、離島などで病院受診が困難な場合は自宅で吐かせるしかありません。

    自宅でできる催吐処置は元々非常に危険で、それが原因で命を落とすこともあります。

    アスピリンを飲んでしまった場合のみ、この処置に賭ける事になります。

    致死量食べてしまった場合は、何もしないと亡くなりますので、その場合のみアスピリンで命を落とすか、自宅で吐かせる危険な処置をするか選ぶ必要があります。

    1. 炭酸ナトリウム 小型犬:0.5g/頭  中型犬以上:0.5-1g/頭  口腔内投与
    2. 3%過酸化水素(オキシドール) 1-2ml/kg

    上記はあくまでも参考です。

    決して気軽に自己判断で行わないでください。

    犬がアスピリン中毒を起こした時の予後

    犬がアスピリン中毒を起こした時の予後

    迅速にアスピリンの除去を行うことができれば良好です。

    重度の貧血、肝障害が認められる場合の予防は要注意から不良です。

    犬のアスピリン中毒の予防

    犬のアスピリン中毒の予防

    飼い主、特に人医療関係者の中には、犬や猫を動物病院に連れていかず、不十分な知識で治療を試みる方もいます。

    そのため十分な注意喚起が重要になります。

    また、飼い主には誤食を防止するため、動物の手の届かない範囲に薬を保管するなどの工夫をしてもらう必要があります。

    いずれも人間が飲む薬であり、使用頻度が高い薬でもあります。

    ペットに勝手に人間の薬をあげてはいけないことと薬の保管場所はきちんとした方がいいです。

    犬が中毒を起こした時に、準備しておく必要な物

     

     

     

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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