【獣医師解説】犬の赤ちゃん・子犬の感染症:ウイルス性疾患

犬の赤ちゃん・子犬の感染症:ウイルス性疾患

 

もっとも重要なウイルス性感染症を下記に示します。

子犬の典型的な発症週齢は、一方では病原体の生態に起因し、他方では一般的な予防接種に起因します。

子犬の典型的なウイルス感染症

ウイルス
典型的な罹患週齢
犬ヘルペスウイルス 1~3
犬微小ウイルス 1~3
犬パルボウイルス 6~12
ジステンパーウイルス 6~12
犬パラインフルエンザウイルス 6~12
狂犬病ウイルス -

 

犬ヘルペスウイルス

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犬ヘルペスウイルス(CHV-1)、αヘルペスウイルスは世界中に分布しています。

ヨーロッパにおける血清有病率は1288%の間で変動しています。

CHV-1は、体粘膜の分泌物を通して排出されます。

感染は

  • 口・鼻経由
  • 胎盤経由
  • 生殖器疾患経由

で起こります。

社会的接触(舐める、臭いを嗅ぐ、など)および飛沫感染による口と鼻経由の感染が、主要感染経路です。

子犬は主に分娩中に、ウイルスを含む膣分泌液によって感染します。

感染経路にかかわらず、すべての犬は3~5日後から2~3週間の間、鼻の分泌液経由でウイルスを排出します。

ほかのあらゆるヘルペスウイルスと同様、三叉神経節および仙骨神経節への潜在性感染へと、後退が生じます。

この段階ではウイルスは排出されないです。

しかし、いつでもストレスによって活性化されます。

咽喉頭のリンパ組織における最初のウイルス増殖のあと、ウイルスは、白血球と結びついて体内で広がります。

細胞の死滅をもたらすウイルス増殖は、実質臓器の肉眼で見える病変として現れます。

すなわち、巣状出血性病変、壊死、炎症性病変です。

CHV-1による胎盤における血管炎および巣状壊死は、流産の病因として決定的な役割を果たしているとみられます。

症状

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成犬では犬ヘルペスウイルス感染は軽度で、または潜在性に経過します。

現れる症状は

  • 軽度の結膜炎
  • 漿液性鼻汁分泌
  • ケンネルカフ複合症状時の気管気管支炎
  • 生殖器粘膜の小胞病変

です。

これらの症状は数日で自然に消え、ほとんどの場合、飼い主には疾病として認識されないです。

3週齢以内の子犬の症状は、

  • 食欲不振
  • 無気力
  • 吸乳意欲減退
  • 呼吸困難
  • 腹部緊張
  • 黄緑色の下痢
  • クンクン鳴く

などで、まれに中枢神経症状が現れます。

子犬の致死率は高いです。

最初の症状が現れてから24~48時間で死亡します。

検出

直接ウイルスを検出するには、鼻咽喉頭の粘膜採取を行います。

採取されたヘルペスウイルスは非常に不安定であるため、綿棒は2mLのウイルス輸送培地か0.9%食塩液に入れ、冷やして輸送します。

直接的なウイルス検出は検査室で細胞培養およびPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)によってウイルス分離を行います。

この文章は消さないでください。
採取粘膜からの直接的なウイルス検出時には、陽性の結果のみが意味を持ちます。

陰性の結果が出た場合でも、潜在性感染の可能性は除外できないです。

血清中の抗体の特定は、検査室において血清中和検査、エライザ(ELISA)または免疫蛍光検定法によって行います。

血清が陽性の個体は高い確率で潜在性感染であり、臨床的に顕在化することがないまま、ウイルスを排出し続けます。

治療と予防

治療は症状に応じて行います。

子犬における犬ヘルペスウイルスの増殖は環境を暖かく保つことで効果的に防止できます。

犬における犬ヘルペスウイルス感染について、抗ウイルス化学治療薬の有効性に関する臨床研究は欠けています。

予防処置としては、同犬舎内の血清陽性の成犬の血清12mLを生後1日目または2日目に腹腔内投与するのがよいです。

血清陰性の雌犬にサブユニットワクチンを接種することもできます。

 

微小ウイルス

犬微小ウイルス(CnMV)は1967年に最初の犬パルボウイルスとして、臨床的には目立たなかったシェパード犬の便から分離されました。

そのためこれは犬パルボウイルス1型と同義です。

CnMVは世界中に広がっています。

ヨーロッパでの血清有病率は520%で変動しています。

感染は主に口と鼻経由で起こります。

ウイルスは便とともに排出されます。

症状

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妊娠2535日目における感染は、胎子吸収、流産、死産の原因ともなり、虚弱子犬や全身浮腫と心筋炎を伴う子犬の出生などにつながります。

子犬は、症状として、

  • 呼吸困難
  • 吸乳意欲減退
  • 嘔吐
  • 下痢

を示しますが、

その際、呼吸器系の症状が支配的となります。

症状の重さは、週齢によって左右され、同腹子の間でもばらつきがあります。

検出

CnMV感染で子犬が死亡した症例は、ほとんどの場合、剖検が行われます。

肺、小腸、リンパ系に壊死と炎症性病変が現れています。

パルボウイルス症との明確な識別は、CnMV感染の場合、腸粘膜上皮病変から個別の壊死細胞まで、ほとんど変わらないです。

直接的なウイルス検出および抗体の測定ができる検査機関の数は、世界的にみてもわずかです。

治療と予防

病因の治療は不可能です。

CnMVに対するワクチンは市販されていません。

CPV2に対する予防接種を受けた犬であっても、交差免疫はないのでCnMVからは守られません。

 

犬パルボウイルス

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パルボウイルスは、症例数からみて、犬におけるもっとも重要な感染病です。

病原体である犬パルボウイルス(CPV)は、古くから知られていた猫の猫汎白血球減少症ウイルス(FPV)からの、1970年代におけるいくつかの小さな突然変異によって生じました。

30年前の発生以来、ウイルスは変化し、CPVのいわゆる新しい「抗原タイプ」が登場しました。

それらは、CPV-2aCPV-2b、そして一部はCPV-2cと称されます。

生物学的には、これらの新しいタイプが宿主を多様化させている点が重要です。

基になったタイプCPV-2が犬にしか感染しなかったのに対して、新しい諸タイプは犬と猫に感染し、双方において発症し、種を超えて相互に感染することができます。

これらの新しいタイプは、この間、世界中で古いタイプに取って代わりました。

その結果、パルボウイルスに感染した犬は免疫のない猫にとって感染源となり、同様に、パルボウイルスに感染した猫は犬にとって危険であると考えられます。

CPVは感染した個体から大量に排出されます。

しかも、このウイルスはきわめて抵抗力が強く、数週間から数ヵ月以上、環境中において感染力を保持します。

この2つの要因から、当該犬舎においては急速に高い感染圧力が構築され、感染犬との直接的な接触がなくても、
たとえば訪問者の汚染された衣服や靴底を通じて、非常に簡単に犬舎にウイルスが持ち込まれます。

 

犬はウイルスを鼻と口から取り込みます。

その後ウイルスはリンパ球に入りこんで、リンパ節、脾臓、胸腺、骨髄など免疫系の器官と組織に到達し、

同時に血管を通じて腸粘膜に感染します。

これらの細胞においてもウイルスは同様に非常に激しく増殖し、最終的には小腸の機能を著しく損ない、

重度の水分喪失と腸内細菌の血管系への侵入をもたらします。

症状

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パルボウイルス症は主に免疫系と小腸に関係する感染性疾患です。

発熱やそれに伴う倦怠、全身状態の低下などの最初の症状は、感染後2~5日で現れます。

そして、まもなく嘔吐や血の混じった下痢などの典型的な症状が始まります。

血の混じる下痢と嘔吐の臨床的症状にリンパ球滅少が加わった場合、パルボウイルス症の仮診断を下します。

検出

仮診断は便中のパルボウイルスを検出することによって確定されます。

これは、細胞を用いたウイルス培養によって、または電子顕微鏡検査によって行います。

最近では、いわゆる「簡易テスト」も可能です。

これは免疫クロマトグラフィーの手法に基づいて、便中のウイルス抗原を検出するものです。

この検査は臨床獣医師によって、その場でただちに、数分以内で簡単に実施できます。

治療と予防

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対症療法としてまず第一に、輪液および非経口の栄養補給によって、水分とエネルギーの喪失を回復するよう努めます。

インターフェロンおよび過免疫血清の使用効果には実績があります。

治療せずにいると、この疾患は嘱吐と下痢を発症し、きわめて急激に死にいたります。

それに対して、パルボウイルス症が早期に発見され集中的に治療された場合、80%程度の犬を救うことができます。

パルボウイルス症に対しては生ワクチン接種を行うことができます。

これは多くの場合、古い抗原タイプのCPV-2に基づいて感染を防ぎます。

新しいタイプの感染ウイルスを用いたワクチンは、母犬由来の抗体がまだ存在している子犬を、より有効に感染から守ることができます。

これらのワクチンの開発と利用は、パルボウイルスをさらに制御するのに役立ちます。

 

犬ジステンパー(CDV

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ジステンパーはパルボウイルス症とならんで、犬のもっとも重要な感染病です。

これはジステンパーウイルスによって引き起こされます

このウイルスの抵抗力は弱く、環境中では非常に早く不活性化されます。

それゆえ、感染はほとんどの場合、感染した犬または感染した他の(野生)動物との直接的な接触によって起こります。

症状

ジステンパー感染の病像は多面的で、肺炎から腸炎を経て脳炎にまでにいたります。

感染から約3~6日で発熱します。

  • 最初の23週間の急性経過で、上述の症状が前面に出てきます。
  • 慢性経過では、特に中枢神経の症状が目立ちます。
しかし、通常この感染は、急性の経過をたどり、治癒または死亡で終わります。

検出

症状が多面的であるため、臨床診断は仮診断にとどまります。

これをウイルス検査によって確認しますが、病原体と感染の多様な特性のため、検査は容易でありません。

  • 急性期の間に、血中のウイルスの検出を試みることができます(ウイルス分離、PCR法)。
  • 同様に、眼結膜の採取粘膜中のウイルス抗原も検出可能です(免疫蛍光検定法)。

さらに信頼性が高いのは、膀胱上皮細胞におけるウイルスの電子顕微鏡検査またはPCR法による検出です。

  • これには尿サンプル(5mL)を要します。
  • 尿中には剥げ落ちた膀胱上皮細胞が常に存在し、検出は疾病の急性期を過ぎても成功するとみられている。

慢性の中枢神経期のジステンパーでは、髄液におけるジステンパーウイルスの検出を試みます。

ジステンパーウイルス特有の抗体が髄液中にあれば、感染は確実となります。

治療と予防

治療は症状に対してのみ行われます。

ジステンパー感染に対しては、有効な接種ワクチンが多数です。

ただし、生ワクチンのみが有効性を証明されており、市場で流通しています。

 

犬伝染性肝炎(Hcc

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犬アデノウイルス1CAV-1)は、犬に伝染性肝炎の病像をもたらします。

臨床症状は今日ではごくまれにしかみられなくなりました。

ウイルスも事実上もはや検出されません。

症状

Hccの症状は

  • 肝細胞
  • 免疫細胞
  • 血管および腎臓の内皮細胞

の損傷によるものです。

疾患の重さは犬によって異なります。

軽度の症状のみを伴う感染が多いです。

甚急性(数時間以内)の致死性を示す場合もありますが、

典型的なのは、肝臓の膨張と腹部における高度の痛覚感受性を伴う、急性の経過です。

嘔吐と下痢も定期的に観察されます。

目の角膜に典型的な濁りが現れる、いわゆるブルーアイ肝炎の症状もときおりみられます。

これは感染に対する免疫反応のひとつであり、そのため比較的後になってから発症します(他の症状よりも数週間遅れて現れる。)

検出

CAVの検出は細胞培養における分離により可能です。

疾患の段階によって、急性期の生きている個体では血中(リンパ球)に、比較的長い経過のあとでは尿中にウイルスが示されます。

治療と予防

病因に対する治療は不可能です。

非常に効果的な免疫予防ができます。

接種ワクチンは大変近い同属のウイルスである、犬アデノウイルス2CAV-2)を用いています。

CAV-2ウイルスは呼吸器の組織にのみ感染します。

この接種菌株はもはや病的変化をもたらすことはないですが、
CAV-1に対しても同時に非常に有効な免疫反応を引き起こすので、Hccに対する防御となります。

 

犬コロナウイルス感染(CcoV

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コロナウイルス感染は犬の年齢層にかかわらず、数日以内に軽度の下痢をもたらします。

子犬の経過は比較的重症の場合から致死性の場合まであります。

また、CPV-2CAV-1、およびジステンパーなどのウイルスや、細菌、寄生虫などによる同時感染も起こります。

最近、より高い毒性を持つ新しい遺伝子型の犬コロナウイルスが発見されました。

これは2~3日で死に至る、発熱、出血性胃腸炎、神経症状を伴う全身疾患を引き起こすRNAウイルスであり、

高い感染力を持ち、抗酸性です。

このウイルスの経口摂取のあと、腸絨毛上皮細胞において分解型のウイルス複製が行われ、続いて腸絨毛が萎縮し、ウイルスが便とともに排出されます。

14日間の潜伏期のあと無気力、食欲不振、嘔吐、下痢が現れます。

この際、便は粘液状から水様で血液が混じる場合もあります。

発熱は多くの場合生じないです。

この疾患は810日後に腸における局所抗体(IgA)の産生と腸粘膜の再生能によって、自己抑制されます。

治療は症状に対して行います。

  • RT-PCR法による便中ウイルス検出が、犬コロナウイルス惑染の診断には最適です。
  • 細胞培養によるウイルス分離は必ずしもすべてのCcoV菌株で成功するわけではないです。

 

犬ロタウイルス感染

ロタウイルスはレオウイルス科に属します。

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小児および多くの種の幼獣において重要な、下痢の病原体です。

犬の臨床的疾患の経過は通常、軽度で、子犬は粥状から水様の下痢を発症し、通常は発熱はないです。

治療は純枠に対症療法となります。

ロタウイルスは環境中で高い粘着性を示すので、他の犬への感染を防ぐために、
十分な衛生・消毒処置を行う必要があります。

 

その他のウイルス性疾患

子犬のその他のウイルスへの曝露はそれほど重要ではないです。

狂犬病は感染犬との直接的な接触(噛みつき)で生じるものであり、狂犬病の現在の状況においては、非常に可能性が低いです。

予防接種の可能性については、他の記事で詳細します。

子犬期にはケンネルカフをもたらす犬パラインフルエンザウイルス感染がありえます。

このウイルスは呼吸器の局所疾患を引き起こします。

リスクのある環境にさらされる犬(パピー・プレイタイム、品評会、ペットホテル)に対する予防接種は大いに推奨されます。

局所予防接種は、ワクチン接種による防御能形成がより速いという長所があります。

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no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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