猫にワクチン摂取って毎年必要なの?
病院、ペットショップ、トリミング、ペットホテルでは毎年ワクチン摂取が必要と言われた...
海外ではワクチン摂取が毎年ではないと耳にしたことがある!
毎年のワクチン摂取は日本の獣医師が儲ける為と聞いたことがある!
飼い主の中には、この様な経験をされたり、愛猫の悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか?
ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。
中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。
ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、
情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、
その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。
例えば...
- 本当に必要な予防は?
- 必要なワクチンは?
- どの予防をすればいいの?
これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?
結論から言うと、
世界小動物獣医師会(WSAVA)は、『1歳までに適切なワクチン接種を実施した個体の場合には強固な免疫を数年間維持する』とし、
『全ての犬または猫が接種すべきコアワクチン※の追加接種間隔を1年毎ではなく3年もしくはそれ以上間隔をあける』とするガイドラインを発表しています。
※猫のコアワクチン:猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルス、猫パルボウイルスの3種類
ワクチンを打っていれば、感染しないことはないですが、感染しても軽症ですみます。
混合ワクチンは、主に3種と5種に分かれます。
3種混合ワクチン
主に室内だけで生活する猫に使用します。
- 猫ヘルペスウイルス
- 猫カリシウイルス
- 猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症/FPLV)
すべての猫に接種することが推奨されており「コアワクチン」と呼ばれています。
非常に感染力が高いうえ、蔓延している地域も多いため、室内飼いであっても接種しておくことが望まれます。
5種混合ワクチン
外にも自由に行く飼い方の猫に使用します。
上記3種に加えて
- 猫クラミジア感染症
- 猫白血病ウイルス感染症
- 猫免疫不全ウイルス感染症(別ワクチン)
この記事では、猫の混合ワクチンの摂取間隔をアカデミックな面からまとめました。
また、最後にワクチン摂取について飼い主からよくある質問をまとめました。
限りなく網羅的にまとめましたので、猫の混合ワクチンの摂取に迷われている飼い主、猫を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。
臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
本当に必要な猫の混合ワクチン間隔 論文、エビデンスあり!
この記事の目次
基本的な接種スケジュール
一般の動物病院を受診する猫のためのコアワクチン(推奨)、ノンコアワクチン(状況に応じて選択)および非推奨ワクチンのガイドラインと推奨事項を表に示します。
猫汎白血球減少症(FPV)、猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルス
猫用のコアワクチンは、猫汎白血球減少症(FPV)、猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスを防御するワクチンです。
この感染症の流行地域では、ペットと人の両方の予防のために、すべての猫にワクチンを定期接種することを推奨されています。
猫のコアワクチンに関して重要なことは、猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスがもたらす防御効果が、猫汎白血球減少症ワクチンがもたらす免疫効果と同等ではないです。
つまり、猫の呼吸器疾患のコアワクチンには、犬のコアワクチンにみられるような強固な防御効果も、免疫持続期間も期待できません。
猫カリシウイルスワクチンは猫カリシウイルスの複数の株に対して交差防御免疫を誘導するようにデザインされているが、それでもワクチン接種を受けた成猫に感染や発症がみられる可能性はある(Pedersen et al. 2000, Schorr-Evans et al.2003)。
強毒ウイルスの感染を防御できる猫ヘルペスウイルスワクチンはなく、また感染した強毒ウイルスは潜伏し、強いストレスがかかった期間に再び活性化する可能性がある(Richter et al. 2009,Maes 2012)。
再活性化したウイルスはワクチン接種済みの動物に臨床徴候を発現させ、あるいはウイルスが感受性の動物に伝播し、感染症を引き起こす可能性があります。
猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスに対するリスクが低い猫については、公表された研究でそれらのコアワクチンの臨床上有意な免疫の最短持続期間に基づき、3 年に1回のワクチン再接種を推奨する(Scott &Geissinger 1999)。
ごく最近実施された猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスワクチンの研究では、ワクチン接種後3 年の時点での猫ヘルペスウイルスに対する防御効果は大きく減弱し、不完全となっていたように思われたが、猫カリシウイルスの部分的防御効果はScott およびGeissinger によって1999 年に示されたものと同等であった(Jas et al. 2015)。
リスクの高い状況では猫に猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスに対するワクチンを年1回再接種することを推奨されています。
- リスクが低い猫は室内で1 頭飼いされており、ペットホテルを利用しない猫として定義しています。
- リスクが高い猫は、定期的にペットホテルを利用する猫、または多頭飼育で室内と屋外を行き来する猫です。
これらのワクチンがもたらす免疫は、ワクチン接種後3ヵ月以内に最も強固となるため(Gaskell et al. 2007)、毎年ペットホテルに猫を預けることがある場合は、預ける直前にワクチン接種を行うのが最良と思われます。
猫白血病ウイルス(FeLV)ワクチン
猫白血病ウイルス(FeLV)ワクチンの接種も、専門家の間で議論の対象となることが多いです。
FeLV ワクチンはノンコアワクチンに分類されていますが、このワクチンの使用が個々の猫のライフスタイルや曝露リスク、また地域における感染率によって決定すべきです。
猫専門家の多くは、FeLV の感染率は、今日では予防プログラムの成功により世界の多くの地域で顕著に低下してはいるものの(Weijer and Daams 1976, Weijer et al.1986,1989, Meichner et al. 2012)、
FeLV 感染症がまだ流行している地域では、外に出る習慣がある(例えば屋外に出る猫とともに生活していることも含む)1 歳齢未満の猫は、8 週齢以降に開始して2 ~ 4 週間隔で2 回接種する定期的ワクチン接種によって、防御効果の恩恵を受けるべきと考えている。
このようなFeLV の「リスク・ベネフィット」分析は猫のワクチン接種の問診時に必ず行うべきであり、またワクチンはFeLV 陰性の猫にのみ接種すべきです。
- FIV 感染診断用の抗体検査へのワクチンの影響(Hosie & Beatty 2007)
- FIV ワクチンはアジュバント添加ワクチンであり、注射部位に肉腫をきたしやすい動物種に繰り返し接種(初年度コースで3 回接種し、年に1 回再接種)しなければならないこと。
- 多くの国では、自分の猫がFIV 伝播の主要なリスク(感染猫に噛まれること)に暴露されないようにするのは難しい。
FIV に感染した猫の疾病の進行は、飼育環境や飼われている猫の数に影響されることが、最近になって明らかにされている(Beczkowski et al.2015b)。
いくつかの調査でこのワクチンがすべてに対してではないが、有効であることが示されたこと、リスクのある猫にとっては利益となる可能性もあることから、この製剤をノンコアワクチンに分類されています。
子猫におけるワクチネーション
子犬と同様、ほとんどの子猫は生後数週間にわたり移行抗体によって防御されます。
しかし、子猫の防御レベルや感染に感受性となる時期、またワクチネーションへの免疫応答が可能になる時期は、血清学的検査を行わなければ分からりません。
これは移行抗体のレベルが異なることや、移行抗体の取り込みに同腹子間でばらつきがみられることに関連しています。
一般に、移行抗体は8~12週齢までには能動免疫応答が可能なレベルまで減弱しますが、
- 移行抗体が低い子猫はそれよりも早い時期に無防備(かつワクチネーションに応答可能)
- 移行抗体レベルがきわめて高い子猫は、12 週齢以降もしばらくワクチネーションに応答しない。
16 週齢でコアワクチンの最後の接種を行っても3 分の1にのぼる子猫がこれに反応せず、多くの子猫には20週齢でもなお防御的移行抗体が存在することを示唆した最近の試験があります。(DiGangi et al. 2012, Jakel et al. 2012)
そのため、コアワクチンの初年度における最後の接種を14~16 週齢から16週齢以降まで延長されました。
子猫のコアワクチン接種の推奨は、子犬について提唱したものに一致します。
:6 ~8 週齢で開始し、16 週齢またはそれ以降まで2 ~4 週毎に接種を繰り返す。
したがって、初年度に子猫にコアワクチンを接種する回数は、接種を開始した週齢と選択したワクチン再接種の間隔によって決定されます。
この推奨に従えば、ワクチン接種を6または7週齢で開始すると、初年度コースでコアワクチンが4回接種されるが、接種を8 または9週齢で開始した場合は、必要な接種は3 回のみになる。
混合ワクチンの生後6または12ヵ月後の追加接種
「ブースター」ワクチンは子猫のコアワクチン接種に欠かすことのできない要素であり、慣例として生後12 ヵ月、または子猫の初年度ワクチンにおける最後の接種後12 ヵ月の時点で行われてきました。
ブースターワクチンの主な目的は、必ずしも免疫応答を「強化」することではなく、初年度のコアワクチン接種でいずれかのワクチンに応答しなかった可能性のある猫に、確実に防御的免疫応答を発現させることです。
したがって、仮にある子猫が初年度のコアワクチン接種に反応しなかったとすれば、その子猫は生後12 ヵ月目のワクチン追加接種まで防御されていない可能性があることが示唆されます。
これはワクチン接種を受けている生後12ヵ月未満の子猫の一部において感染症が発生するという事実の理由となり得ます。
感染症に対する感受性時期を短くするために、ブースターワクチンの接種を52 週齢から26 週齢(または26 ~ 52 週齢の間のいずれかの時点、しかし、26 週齢は都合の良い時期である)に前倒しすることを提唱されています。
このようなプロトコールを採用すると、表に示したように、6 または7週齢でワクチネーションを開始した子猫には、生後6 ヵ月までに最多で5 回のワクチン接種のための受診が必要となります。
コアワクチンについては、26 週齢での「ブースター」後、次のコアワクチンの接種は少なくとも3 年は不要です。(低リスクの猫の場合)。
子犬と同様に、26 週齢でワクチン接種を行う方法の採用により、生後12 または16 ヵ月時点での最初の年1 回の健康診断を否定するものではない。
成猫における再接種
コアワクチンの接種に応答した猫は、再接種を行わなくても猫パルボウイルスに対して強固な免疫を何年にもわたり維持します(免疫記憶)。
猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスに対する免疫は不完全なものにすぎません(Scott and Geissinger 1999, Jas et al.2015)。
「低リスク」の成猫についてはコアワクチンの再接種を3 年以上の間隔で行うことを推奨されています。
「高リスク」の猫については、3 年毎あるいはそれ以上の間をあけて猫パルボウイルスを接種し、猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスワクチンについては年1 回の接種をペットホテルへの年1 回の定期訪問の直前に行うのがいいです。
このような推奨は概して不活化コアワクチン(狂犬病を除く)やノンコアワクチン、また特に細菌抗原を含有するワクチンには当てはまりません。
したがって、このガイドラインによれば、成猫には年1回のワクチン接種が可能です。
一般的には、コアワクチン(特に猫パルボウイルス)を3年に1回接種していて、呼吸器ウイルス(猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルス)のワクチンはリスクに応じて接種し、特定のノンコアワクチンを年1回接種します。
子猫のときに猫パルボウイルス、猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスの初年度接種(6 または12 ヵ月後のブースターを含む)を完了したが、成猫になってからは定期的に接種を受けていなかったと思われる猫については、追加免疫のためにコアワクチンを1 回接種するだけで十分です。
もらわれてきたためにワクチネーション歴が不明の成猫(または16 週齢以上の子猫)については、ウイルスに対する防御免疫応答を誘導するためには猫パルボウイルスのワクチンを1 回接種すれば十分ですが、猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスワクチンに関しては十分な免疫応答を確立するためには2 回(2 ~ 4 週の間隔で)接種すべきです。
猫の混合ワクチン接種部位
ワクチン(あらゆるタイプ)は、猫注射部位肉腫(FISS)の発症に関連するとされてきた注射剤の1つであり、特にアジュバントを含むFeLV と狂犬病のワクチン接種について注目が集まっている(Kass et al. 1993)。
FISS に関しては研究が盛んに行われ、この問題に関して近年多くの総説が公表されてきた(Martano et al. 2011, Srivastavet al. 2012, Ladlow 2013, Hartmann et al.2015)。
FISS の原因はまだ証明されていないが、現時点では局所的な慢性炎症反応が間葉細胞の癌化を引き起こすこと、また、この背景には何らかの遺伝要因が関わっていると考えられています。
ほとんどの皮下注射(ワクチンを含む)は従来、猫の肩甲骨間に行われてきたが、その部位にFISS が多く発生しています。
この腫瘍は浸潤性が高いため、病変部の摘出にはしばしば広範囲な外科的切除が必要となるが、補助療法も併用される(Martanoet al. 2011, Ladlow 2013)。
北米ではこの問題に対応するために、FISS が発現した場合に外科的に切除しやすい部位に接種するプロトコールが推奨されています。
つまり、「左足に白血病、右足に狂犬病」というように、FeLV ワクチンは左後肢のできるだけ遠位に、狂犬病ワクチンは右後肢のできるだけ遠位に接種します。
この推奨は現行のAAFP ガイドラインに引き続き記載されているが(Scherk et al. 2013)、そこには3 種類の猫のコアワクチンを前肢の遠位に接種する方法も詳述されている。
ある研究で、この推奨が作成される以前(1990 ~ 1996 年)と推奨が採用された後(1997 ~ 2006 年)で猫のFISS の解剖学的分布を比較することにより、この接種方法の効果が評価されました(Shaw et al. 2009)。
データから、肩甲骨間のFISS の発生率が有意に低下し、右(左ではなく)前肢の腫瘍発生率が上昇したことが明らかとなりました。
それ以上に注目されたのは、右後肢と腹部右側面を合わせた領域(12.5%~ 25%)ならびに左後肢と腹部左側面を合わせた領域(11.4%~13.8%)において、腫瘍数の増加が報告されたことでした。
これは後肢遠位への注射が難しく、注入が誤って腹部へ行われたことが原因でした。
最近、ある論文においてFPV および狂犬病ワクチンを猫の尾に接種することの有効性が示されました(Hendricks et al. 2014)。
地域猫を捕獲・去勢および不妊手術・返却するプログラムから得た成猫の尾の遠位3 分の1 の背面に3 種混合のMLV ワクチン(FPV、FHV-1、FCV)を、また不活化狂犬病ワクチンを3 種混合ワクチンから2cm 遠位に接種した。
FPV に対する抗体陽転はすべての猫で、狂犬病ウイルスに対する抗体陽転は1 頭を除くすべての猫で発現しました。
この小規模試験では、猫の尾へのワクチン接種に猫が十分耐えられたことが報告されています。
2010 WSAVA ワクチネーションガイドラインでは、ワクチンを胸部側面、可能であれば腹部側面の皮膚に接種するという代替案を提唱した(Day et al.2010)。
尾への注射は四肢の遠位や体壁側面への注射より安全な代替案かも知れないが、尾へのワクチン接種に関してはさらなる研究が必要です。
以下の原則は適用すべきである:
- ワクチンがもたらす防御的免疫の恩恵は、FISSのリスクを上回ります。
- 現時点で推定されるFISSの発生率はワクチンを接種した猫5000 ~12500 頭当たり1 件です(Gobar and Kass2002, Dean et al. 2013)。
- 猫には可能な限りアジュバント非添加ワクチンを接種すべきです。
- ワクチン(特にアジュバント添加製剤)やその他の注射時は肩甲間に接種しない。
- ワクチン(特にアジュバント添加製剤)は肩甲間以外の皮下(筋肉内ではなく)に接種します。
注射部位はFISSが生じた場合の外科的切除の容易さと接種者の安全性(すなわち、動物の保定が困難な状況下で誤って自分に注射してしまうことを避ける)とのバランスを考慮して決定します。
- ワクチンは毎回違う部位に接種。
接種部位は毎回「ローテーション」します。
混合ワクチンの血清学的検査
2010 ガイドラインが発表されてから、コアワクチンウイルス(猫パルボウイルス、猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルス)に対する血清抗体を測定するための実用的な迅速検査キットが市販され、利用できるようになりました。
この検査キットは現在検証が終わり、文献でも採用されています(DiGangi etal. 2011, Mende et al. 2014)。
猫パルボウイルスに対する防御抗体と感染に対する抵抗性の間には強い相関があることから、この検査キットはそのような抗体の存在を確認するために利用することができる(Lappin et al. 2002)。
猫パルボウイルス検査キットの赤血球凝集阻止試験との比較では、特異度89% および感度79%(Mende et al. 2014)、または特異度99% および感度49%(DiGangi et al.2011)と報告されている。
- 結果が陰性の場合、その猫が抗体をほとんど、または全く持たず、ワクチン再接種が推奨されることを示しています。
- しかし、一部の血清反応陰性の猫は実際には免疫を獲得しており(偽陰性)、ワクチン再接種は不要です。
- これに対し、検査結果が陽性であれば、ワクチンの再接種は不要と結論することができます。
ワクチン摂取について飼い主からよくある質問
子猫/成猫が適切にコアワクチン接種を受けた場合、どのような有効性が期待できるか?
適切なMLV または組換えCDV、CPV-2、CAV-2 ワクチンの接種を受けた犬は、98% 以上が疾患の発症から防御される。同様に、感染からも非常によく防御されることが期待できる。 MLV ワクチンの適切な接種を受けた猫は、98% 以上がFPV の発症およびFPV 感染から防御される。一方、FCV およびFHV-1 のワクチンに関しては、とくに高度に汚染された環境(シェルターなど)では感染からの防御は期待できず、疾患発症からの防御が期待できるのみである。高リスク環境での防御率は60 ~ 70% であると考えられる。他の猫から隔離されている飼い猫や、ワクチネーション済み猫と同居している長期間家庭内で飼育されている飼い猫では、ウイルスによる感染リスクが低く、またストレスレベルも低いため、防御率ははるかに高いようである。
猫パルボウイルス[汎白血球減少症]は経口投与できるか?
できない。CPV-2 ワクチンおよびFPV ワクチンは、経口投与では免疫は成立しない。鼻腔内投与では免疫を獲得するが、最も有効な接種経路は、適切なワクチンの注射(皮下または筋肉内)である。
1 回の投与のみで防御効果をもたらす猫白血病ウイルスワクチン(不活化アジュバント添加、サブユニット、組換え)はあるか?
ない。すべての猫白血病ウイルスワクチンで、最低2 回の接種が必要である。8 週齢以降に開始して2 ~ 4 週間隔で2 回投与することが望ましい。2 回の接種による初回ワクチネーションが終了した後に限り、ブースターには1 回投与するればよい。猫の初回2 回の投与間隔が6 週またはそれ以上離れた場合、確実に2 ~ 4 週間隔での2 回投与を行うために、再度2-4 週間隔で2 回接種することが推奨される。
FeLV ワクチンについて、子猫のワクチネーションと1 年後の追加接種を終了した後に、毎年、再接種する必要があるか?
ない。再接種は2 ~ 3 年ごとに行うべきである。アジュバント添加ワクチンを毎年再接種すると、注射部位肉腫の発生リスクが高くなる可能性もある。
私の国にはFIV ワクチンはないが、その理由は?
一般的には、ワクチンが入手できるかどうかは、現地におけるこの感染症の発生状況に関する科学的知識に基づいた(加えて、マーケティング上の判断に基づいた)製造業者による判断の他、地方や地域の認可当局の判断によって決まる。現行のFIV ワクチンには2 種類のFIV clade(サブタイプ)(A、D)があり、異なるサブタイプに対する交差防御があると言われているが、特定の国で伝播しているウイルスのサブタイプには地理的な違いがある。FIV ワクチンを接種する猫においては、ワクチン接種前に血清抗体の検査を行い、マイクロチップで個体の標識を行うべきである。
FIV ワクチンの接種を受けた猫はFIV に感染するか?
する。ワクチンはFIV のすべてのサブタイプの感染や潜伏感染を防御しないため、FIV ワクチネーション済みの猫も感染し、感受性のある猫に対してウイルス源となる可能性がある。
犬や猫にグルココルチコイドによる免疫抑制療法を行った場合、ワクチンによる免疫は阻害されるか?
犬と猫における研究では、ワクチン接種の前または同時にグルココルチコイドによる免疫抑制療法を行っても、ワクチンによる抗体産生の著しい抑制はないことが示唆されている。しかし、とくにコアワクチンの初回ワクチネーションと並行して治療を行った場合、グルココルチコイド療法が終了した数週間(2 週間以上)後に再接種することが推奨される。
(がんまたは自己免疫疾患などに対して)免疫抑制療法または細胞傷害性療法(グルココルチコイド以外)を受けているペットにワクチンを接種してもよいか?
よくない。とくにMLV 製剤の接種により発症する可能性があるため、避けるべきである。不活化ワクチンの接種は有効ではないことがあり、免疫介在性疾患を悪化させることもある。高用量シクロスポリンによる治療を受けた猫の研究において、治療中に追加接種したFPV ワクチンおよびFCV ワクチンに対する血清の応答に影響はなかったが、FHV-1、FeLV、および狂犬病に対する防御抗体の応答は遅延することが示された。これに対して、治療を受けた猫では、FIV ワクチンを用いた初回ワクチネーション後における抗体の発現が見られず、シクロスポリン療法は初回ワクチネーションに対する免疫応答を阻害するが、免疫記憶は阻害しないことが示唆されている(Roberts et al. 2015)。
免疫抑制療法の中断から再接種まで、どのくらいの期間をあければよいか?
最低2 週間。
子犬および子猫のワクチネーションでは、最終投与をいつにするべきか?
16 週齢またはそれ以上で最終投与とする。
注射部位に消毒薬(アルコールなど)を使用するべきか?
使用するべきではない。消毒薬は製剤を不活化することがあり、利益がないことが分かっている。
ワクチンを1 回投与するだけでも、犬や猫に利益があるか?犬や猫の集団ではどうか?
ある。16 週齢以降に投与した場合、MLV 犬コアワクチン(CDV、CPV-2、CAV-2)またはMLVFPV ワクチンの1 回投与は長期免疫をもたらすはずである。16 週齢またはそれ以上のすべての子犬や子猫に、MLV コアワクチンを最低1 回は投与するべきである。猫呼吸器コアワクチン(FCV、FHV-1)の場合、2 ~ 4 週間隔をあけて2 回投与すると防御効果が最大になる。これができれば、集団免疫は著しく改善するであろう。ワクチン接種率が高い米国でも、ワクチンを一度でも接種されているのは、おそらく子犬の50% 未満、子猫の25% 未満であろう。集団免疫(75% 以上)を達成し、大流行を予防するには、集団内のより多くの動物にコアワクチンを接種しなければならない。
重度の栄養不良はワクチンに対する免疫応答に影響を及ぼすか?
及ぼす。ビタミンや微量ミネラル(ビタミンE、セレンなど)の重度欠乏症は、子犬における防御免疫応答の成立を阻害する可能性が明らかになっている。栄養不良が分かっているまたは疑われる場合、適切な栄養補充により是正してから、十分な防御免疫が得られるように、再接種するべきである。
FeLVおよび/またはFIVに感染した猫にワクチンを接種するべきか?
臨床的に健康なFeLV またはFIV 陽性猫は、感染症への曝露リスクを最小限に抑えるため、室内飼育により他の猫から隔離するのが理想的である。しかし、コア成分(FPV、FCV、FHV-1)の接種が避けられないと考えられる場合は、(MLVではなく)不活化ワクチンを接種することを、専門家グループは推奨している。このような猫にはFeLV またはFIV に対するワクチンを接種するべきではない。臨床症状を発現しているFeLV またはFIV 陽性猫には、ワクチン接種をするべきではない。
猫ではどの部位にワクチンを接種するべきか?
猫用のワクチン(とくにアジュバント添加製剤)は、肩甲間に投与するべきではない。米国では、狂犬病ワクチンは右後肢の遠位に、FeLV ワクチンは左後肢の遠位に、コアFPV/FCV/FHV-1 ワクチンは前肢の遠位に、別々に注射する方法が実施されている。この代わりとなる皮下注射部位は、尾の遠位部、外側の胸壁または腹壁である。どの部位を選択するにしても、ワクチンは筋肉内ではなく皮下に投与しなければならない。猫用ワクチンでは、1 ヵ所に繰り返し投与しないように、接種する解剖学的部位をローテーションさせることが重要である。これは個体ごとに毎回ワクチン接種部位をローテーションさせて、それを記録すること、または、病院ごとに毎年1ヵ所の接種部位を決めて使用するという方針を採用することによって達成できる。
子犬または子猫が初乳を飲めなかった場合、母親由来抗体(受動免疫)で防御されるか?
母親の抗体価にもよるが、生まれたばかりの子犬および子猫では、移行抗体(受動免疫)の約95%以上が初乳から得られるため、ほとんど、または全く防御されないであろう。初乳は生後24 時間までに腸管から吸収され全身に循環する。
子犬または子猫が初乳を飲めなかった場合、能動免疫を阻害する母親由来の抗体がないことから、生後数週間でワクチンを接種するべきか?
するべきではない。4 ~ 6 週齢に達していない子犬や子猫には、MLV コアワクチンを接種するべきではない。ある種の弱毒生ワクチンウイルスは、2 週齢未満でMDA のない子犬や子猫に投与すると、中枢神経系の感染や疾患を引き起こし、死亡させる可能性もある。これは、生後1 週間またはもう少し後までは、体温調節がほとんどまたは全くできず、自然免疫と獲得免疫のいずれも顕著に阻害されるためである。
初乳を飲めなかった若齢の動物は、どうすればコアの感染症から防御できるか?
生後1 日未満の子犬または子猫には、人工初乳を与えるとよい。人工初乳は、代用ミルク50%、免疫血清(母親または母親と同じ環境で生活し、十分にワクチン接種された他の個体のものが望ましい)50% から成る。生後1 日以上経過した子犬または子猫には、十分に免疫が成立している(感染症のない)成熟個体の血清を、皮下または腹腔内投与するか、クエン酸処理血漿を静脈内投与することができる。動物の体格にもよるが、血清または血漿約3 ~ 10 mL を1 日2 回、最長3 日間投与する。
ワクチン接種を受けていない成猫に対しては、どのようなプロトコールが推奨されるか?
VGG は、ワクチン接種を受けていない成猫に対して、MLV ワクチン(FPV、FCV、FHV-1)を2 回接種するコアワクチネーション、また、流行地域ではこれに狂犬病ワクチンの1 回接種を追加することを推奨している。リスクの低い猫に対しては、その後の再接種(またはFPV の血清学的検査)を3 年以上の間隔で行い、リスクの高い猫に対しては、FPV に対する再接種を3 年以上の間隔で、FHV-1 およびFCV に対する再接種を年1 回行う。ノンコアワクチンは、個体のリスクとベネフィット(利益)を分析した結果に基づき選択する。
既に上気道疾患の症状を呈している猫にワクチン接種を行うべきか?
臨床症状を呈している猫にワクチンを接種するべきではない。回復した猫には、FCV またはFHV(上気道疾患の原因として両方の病原体が関わっている場合は両方)に対するある程度の自然免疫があるが、このような免疫は、(ワクチン接種後も)病原体を排除することはない。呼吸器ウイルス感染から回復した猫にワクチン接種を「しない」ことを推奨した使用法はない。3 種混合ワクチンにはFPV に対する防御効果があり、また、以前の呼吸器疾患の原因ではない呼吸器ウイルス(FHV-1 またはFCV)からも防御する。
血清抗体価は、ワクチンで誘導された免疫の判定に役立つか?
役立つ。とくに犬のCDV、CPV-2、およびCAV-1、猫のFPV、猫と犬の狂犬病ウイルス(法的義務として)には役立つ。他のワクチンについては、血清抗体価の有用性は限られているか、まったくない。いずれのワクチンに関しても、様々な技術的、生物学的な理由から、CMI の検査の有用性はほとんどないか、まったくない。血清学的検査においては、多くの変数でコントロールがはるかに容易であるため、CMI の場合のような要因が問題になることは少ない。ただし、検査センターの品質保証プログラムによっては、依然として、矛盾する結果が得られることがある。
定期的な狂犬病抗体検査を推奨しないのはなぜか?
多くの国において、抗体価検査の結果に関わらず、犬と猫の定期的狂犬病ワクチン接種が法的に義務付けられているため、多くの獣医師にとってこの質問から生じる実際的な影響はほとんどない。狂犬病抗体検査は、ペットの海外渡航に関連する特定の場合にのみ必要となる。国際的に使用されている狂犬病ワクチンの有効性は高く、一般的には、接種後の免疫を検査する必要はないと考えられている。
ワクチン接種を終えた子犬/子猫において、重度の疾患に対する防御には高抗体価が必要か?
CDV、CAV-2、CPV-2、およびFPV については必要ない。(抗体価に関わらず)抗体の存在は、防御免疫が得られていることを示し、また、免疫記憶もある。抗体価を上昇させることを目的として、より頻繁なワクチン接種を行うことには意味がない。抗体価を上昇させることで「より強い免疫」を成立させることは不可能である。
猫に年1 回のワクチン接種を行う代わりに、検査を実施してもよいか? 3 年に1 回のみの追加接種では心配である。
もちろん、してもよい。現在、CDV、CAV、CPV-2、およびFPV に対する血清防御抗体を検出できる、よく検証された院内用血清学的検査キットが利用できる。これらのキットを使用して、3 年ごとに(コア感染症に対する自動的な再接種の代わりに)防御能を確認している国もある。血清学的検査を年1 回実施することはできるが、院内でデータを収集、分析すれば、年1 回の検査に妥当性はないことがすぐに分かるであろう。
ワクチン接種後の3年間で抗体価はどのように変化するか?
CDV、CAV-2、CPV-2、およびFPV の抗体価は一貫して同程度で推移する。このことは、最長で9 年前にワクチン接種を受けた野外の犬で多くの血清調査を実施した結果、また、最長で14年前にワクチン接種を受けた犬で実施した試験の結果から示されている。レプトスピラに対する抗体価は接種後急速に低下するのだが、この抗体価と防御能の間に強い相関はない。FCV に対して最も重要な免疫タイプは粘膜免疫、FHV-1 では細胞免疫であるため、FCV とFHV-1 では血清抗体価の重要性は低い。
ワクチンの過剰接種(過剰な頻回接種、また特定のペットに不必要なワクチンを使用する)リスクはあるか?
ある。有害反応を引き起こす可能性があるため、ワクチンは不必要に投与するべきではない。ワクチンは個々の動物のニーズに合わせて使用するべき医薬品である。
有害反応を起こしたことがある犬や猫、または免疫介在疾患(膨疹、顔面浮腫、アナフィラキシー、注射部位肉腫、自己免疫疾患など)の病歴のある犬や猫にワクチンを接種するべきか?
有害反応を発現したと考えられるワクチンがコアワクチンの場合、血清学的検査を実施し、動物が抗体陽性(CDV、CAV、CPV-2、FPV に対する抗体)であることが分かった場合には、再接種は不要である。ワクチンが任意のノンコアワクチン(レプトスピラ、ボルデテラバクテリンなど)の場合、再接種は行わないことを勧める。狂犬病については、地方当局に相談し、狂犬病ワクチンの投与が法的に必須なのか、または抗体価を代用としてもよいかどうかの判断を受けなければならない。ワクチン接種が絶対に必要な場合には、製剤(製造業者)の変更が有用かもしれない。しかし、過敏症反応は、ワクチンに混入する添加物(ウイルス培養工程で使用する微量の牛血清アルブミン)と関連することが知られており、この添加物は多くの製剤で共通しているため、この方法が常に成功するとは限らない。抗ヒスタミン薬またはグルココルチコイドの抗炎症用量の接種前投与は容認でき、ワクチンの免疫応答を阻害しない。有害反応のリスクが高い動物に再接種した場合は、ワクチン接種後最長24 時間、注意深くモニタリングするべきであるが、このような反応(I 型過敏症)は通常、接種後数分以内に生じる。他のタイプの過敏症(II 型、III 型、IV 型)はかなり時間が経過してから生じることがある(数時間~数ヵ月)。
ワクチンは自己免疫疾患を引き起こすか?
ワクチン自体は自己免疫疾患を引き起こさないが、遺伝的素因のある動物では、自己免疫応答を誘発し、疾患の発生が認められることがある。これは、感染症、薬剤、または他の様々な環境因子でも同様である。
ワクチンによる有害反応はどの程度多いのか?
正確なデータを得るのは難しいため、この質問に対する明確な答えはない。現在では、われわれが使用するワクチンの安全性は極めて高く、有害反応の発現率は極めて低いことが認められている。有害反応の発現リスクよりも、重篤な感染症予防のベネフィット(利益)の方がはるかに勝っている。近年行われた米国にある大型の病院グループのデータベース解析により、非常に多くのワクチン接種済みの犬や猫のデータが公表された。
ワクチン接種済みの犬10,000 頭中38 頭において、接種後3 日以内に有害反応(非常に軽微な反応も含め、あらゆるもの)が記録されていた(Moore et al. 2005)。
ワクチン接種済みの猫10,000 頭中52 頭において、接種後30 日以内に有害反応(非常に軽微な反応も含め、あらゆるもの)が記録されていた(Moore et al. 2007)。
しかし、当該診療施設には報告されず、他の診療施設や救急診療施設に報告され、そこで治療を受けたと考えられる症例もある。一部の犬種やペットの家系は、一般的な動物の集団よりも、有害反応発現のリスクが高いと考えられる。
ワクチンへの免疫応答が生じない犬や猫はいるか?
いる。これは、とくに一部の品種に認められる遺伝的特性であり、このような動物は「ノンレスポンダー」と呼ばれる。遺伝的関連のある(同じ家系または同じ品種の)動物が、しばしばこの特性を共有する。犬パルボウイルスや猫汎白血球減少症ウイルスのような、極めて病原性の高い病原体に対するノンレスポンダーの場合、動物は感染すると死亡することがある。ほとんど致死的ではない病原体の場合は、病気にはなるが生存するであろう(Bordetella bronchiseptica感染後など)。
ワクチンに対する軽度のアレルギー反応の治療にステロイド剤を使用することはできるか?
できる。顔面浮腫や掻痒などの反応は、抗炎症用量(免疫抑制用量ではない)グルココルチコイド(プレドニゾロンなど)や抗ヒスタミン薬を単独または併用して治療することができる。
ワクチンにより皮膚血管炎が引き起こされることを示す証拠はあるか?
ある。極めてまれではあるが、とくに狂犬病ワクチン接種後の有害反応として認められている。
犬の場合と同様に、猫でもワクチンに対する皮膚アレルギー反応の徴候が見られるか?
見られる。猫でも犬と同様、接種後にI 型過敏症と同様の症状(顔面浮腫、皮膚掻痒など)が見られることがある。
猫の肉腫の原因がワクチンであることを、どのようにして知ることができるか?このような肉腫にはどのように対処するべきか?
猫注射部位肉腫(FISS)は、以前、注射用製剤を投与した部位に生じる。ワクチンを含む幅広い注射剤が腫瘍を誘発し得ると考えられている。猫用のワクチンとしては、可能な限りアジュバント非添加のものを選択する。この肉腫は残念ながら侵襲性が非常に高い。広範囲に浸潤し、約20% が転移する。広範な外科的切除が必要となり、この手術の多くは専門医が実施するのが望ましく、また、補助的に放射線療法および免疫療法を行うこともある。
年1 回のワクチネーションには、有害反応の(非常に低い)リスクの他に、どのようなリスクがあるか?
ワクチネーション後における有害反応のリスクは、実際には比較的低い。このリスクは、ワクチン接種を受けた犬で10,000 頭中約30 頭、猫では10,000 頭中約50 頭であり、そのほとんどが非重篤の反応(一過性の発熱、嗜眠、アレルギー反応など)である。しかし、来院した動物において重篤な反応が発現した場合、難しい状況になる。新たなガイドラインを導入することは、単に有害反応リスクを最小限に抑えるためだけではなく、より優れた診療、根拠に基づく動物治療を行い、必要なときにのみ医学的処置(つまりワクチネーション)を実施するためでもある。
ワクチネーションのリスクとベネフィットどのように分析するべきか?
すべての犬と猫(生活環境や飼育方法に関わらず)について、コアワクチンの接種(流行地域における狂犬病ワクチンなど)は義務であると考えられているため、リスクとベネフィットの分析が適用されるのは、ノンコアワクチンの選択についてのみである。
リスクとベネフィットの分析は、飼育環境、屋内と屋外へのアクセス、旅行や宿泊の頻度、他の動物との接触(複数のペットがいる家庭など)について、飼い主から聴取した内容に基づき、個々の動物について行う。
考慮するリスクには、
- ワクチン接種後の有害反応のリスク
- 不必要な医療行為を行うリスク
- 地域における疾患の流行について得られている科学的知識に基いた、感染性病原体により動物が感染するリスク
- 感染後に臨床症状が発現するリスク
がある。
考慮するベネフィットには、
- ライフスタイルまたは地理的位置を考えて、感染性病原体に曝露する可能性が高い場合、ワクチン接種により動物が感染から防御される
- 動物が感染した場合に、臨床症状がワクチン接種により軽症化する
- ワクチン接種した動物が集団免疫に寄与する
がある。