獣医師解説!犬と猫のコアワクチンについて【論文あり】

犬と猫にワクチン摂取って毎年必要なの?

病院、ペットショップ、トリミング、ペットホテルでは毎年ワクチン摂取が必要と言われた...

海外ではワクチン摂取が毎年ではないと耳にしたことがある!

毎年のワクチン摂取は日本の獣医師が儲ける為と聞いたことがある!

飼い主の中には、この様な経験をされたり、愛犬、愛猫の悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか?

ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。

中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。

ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、

情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、

その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。

例えば...

  • 本当に必要な予防は?
  • 必要なワクチンは?
  • どの予防をすればいいの?

これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?

結論から言うと、

世界小動物獣医師会(WSAVA)は、『1歳までに適切なワクチン接種を実施した個体の場合には強固な免疫を数年間維持する』とし、

『全ての犬または猫が接種すべきコアワクチン※の追加接種間隔を1年毎ではなく3年もしくはそれ以上間隔をあける』とするガイドラインを発表しています。

  • ※犬のコアワクチン:狂犬病ウイルス、犬ジステンパーウイルス、犬パルボウイルス、犬アデノウイルスの3種類
  • ※猫のコアワクチン:猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルス、猫パルボウイルスの3種類

ワクチンを打っていれば、感染しないことはないですが、感染しても軽症ですみます。

この記事では、犬と猫に注射するウイルスのワクチンについてアカデミックな面からまとめました。

限りなく網羅的にまとめましたので、犬と猫の混合ワクチンの必要性に迷われている飼い主、犬と猫に打つワクチンの種類を知りたい飼い主は是非ご覧ください。

✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。

今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

✔︎本記事の内容

獣医師解説!犬と猫の各種ワクチンについて【論文あり】

狂犬病ワクチン

入手可能なワクチンの種類

弱毒生ウイルス(MLV)ワクチン:ペットの犬や猫に接種される以外に、野生動物(カナダや欧州 のキツネ、フィンランドのタヌキなど)の経口免疫用に広く使用されています。

ベクター組換え狂犬病ワクチン:組換えワクチンウイルスは、防御に関連する狂犬病ウイルスの糖蛋白Gの遺伝子しか含まないため、極めて安全です。

不活化ワクチン:犬および猫の個体接種と犬の集団接種においては、不活化ワクチンの使用が原則です。

メカニズムと免疫持続期間(DOI)

・犬と猫の狂犬病はほとんどの場合、不活化ワクチンでコントロールされています。

初回狂犬病ワクチン接種に続いて 1 年後に必ず再接種を行わなければなりません。

・犬と猫では野外でのウイルス感染後に発症した場合は致命的であるため、自然感染後のDOI は明らかではありません。

・攻撃試験と血清学的検査の結果から、市販の不活化製剤および組換え製剤接種後のDOIは3年です(Jas et al. 2012)。

・初回ワクチン接種は12週齢を超えてから行い、 1 年後に再接種します。

抗体価は通常、ワクチン接種から4週間後に防御レベルに達します。

・一部のワクチンは、強毒性狂犬病ウイルスによる攻撃に対して 3 年間防御するが、国または地方の法律で年1回の追加接種が必要とされることがある。

一部のワクチン(国内で製造される製剤など)では、1 年を超えると信頼性の高い防御を得られないことがあります。

・能動免疫を獲得した 16 週齢以上の犬では、0.5 IU/mL 以上の血清抗体価の存在は防御能と相関します。

ワクチン接種後の血清学的検査をペットの移動プロトコールに含めている国々では、この抗体価(0.5 IU/ml 以上)に達することが、 ペットの渡航に関する法律で要求されています。

本疾患に関して

・感染部位にもよるが(通常、咬傷または引っ掻き傷により伝播)、感染後 2 週間~数ヵ月で徴候が発現します。

説明のつかない攻撃的行動または突然の行動変化が認められた場合、本疾患を疑うべきです。

・本疾患は、「狂躁型」または「麻痺型」の狂犬病 として発現します。

古典的な「狂躁型」狂犬病の徴候には、

  • 眼瞼/角膜/瞳孔反射の低下
  • 斜視、
  • 下顎の下垂
  • 流涎
  • 異食症
  • けいれん発作
  • 筋収縮
  • 振戦
  • 見当識障害
  • 無目的に走り回る
  • 無目的の咬みつき行動
  • 過度の情動反応(易刺 激性、激しい怒り、恐怖)
  • 羞明
  • 運動失調 および麻痺

最終的に昏睡に陥り、呼吸停止により死亡します。

「麻痺型」狂犬病は猫よりも犬で多く、下位運動ニューロン麻痺を呈し、咬傷部位から中枢神経全体に進展します。

麻痺により急速に昏睡に陥り、呼吸不全により死に至ります。

・環境中では、ウイルスは速やかに感染力を失い、 界面活性剤を含む消毒薬で容易に不活化されます。

犬パルボウイルス2型(CPV-2)ワクチン

入手可能なワクチンの種類

弱毒生ウイルス(MLV)ワクチン:現在確認されているCPV-2 の変異株はCPV-2a、CPV-2b、およびCPV-2c の3 種類です。

不活化ワクチン:不活化CPV-2 ワクチンは数種類しか存在しない。不活化ワクチンは、ワクチンよりも効果が弱く、免疫応答誘導までの時間がはるかに長く(Pollock & Carmichael1982b)、通常の接種には推奨されません。

野生動物やエキゾチックアニマル、または妊娠動物のように、ワクチンが推奨されない場合においては、不活化ワクチンの使用による多少のメリットがある可能性があるが、こうした状況における不活化CPV-2 ワクチンの安全性や有効性は検討されていないです。

メカニズムと免疫持続期間(DOI)

ほとんどの犬において、自然感染または発症後のDOI は終生持続すると考えられています。

MLV ワクチン接種後のDOI は9 年またはそれ以上です(Schultz et al. 2010)。

不活化ワクチン接種後のDOI は3 年またはそれ以上である。

子犬の能動免疫は、移行抗体による阻害を受ける。

阻害を受ける期間は、初乳抗体の力価、出生後吸収される抗体量、およびワクチンの種類によって異なる(Pollock & Carmichael 1982a)。

「感染しやすい時期」とは、子犬が野外ウイルスに感染し得るが、ワクチンによる免疫は得られない期間と定義されます。

非常に有効なワクチン(高抗体価、低継代)では「感染しやすい時期」は2 週間以内と短いが、有効性が比較的低いワクチンでは10~12 週間と長い(Schultz & Larson, 1996, Hoare etal.1997)。

16 週齢以降に子犬のワクチネーションが完了し、生後26 ヵ月または52 ヵ月で再度接種したら、その後の再接種は3 年以下の間隔で行う必要はないです。

移行抗体がない場合は、ワクチンにより早ければ3 日後に免疫が成立します(Schultz &Larson 1996)。

能動免疫を獲得した20 週齢以上の犬では、血清抗体が存在する場合、その抗体価に関わらず、防御されます。

注意事項

  • 野生動物に対してMLV ワクチンを使用するべきではないです。
  • 特別に適応になる場合を除き、MLV ワクチンを妊娠動物に使用するべきではないです。
  • 4~6週齢未満の子犬に対してMLV ワクチンを接種するべきではないです。

本疾患に関して

・感染後、本疾患の徴候が発現するまでに3~7日かかります。

・CPV-2 の糞便中への排泄が2 週間以上持続することはまれです。

・4 週間を超えて感染が持続した犬の報告はなく、その間に動物が死亡するか、ウイルスが除去されると考えられています。

・ウイルスは環境中で1 年以上感染力を維持することがあるため、感染動物が滞在したことのある施設はすべて汚染されていると考えるべきです。

子犬の糞便中抗原検出検査の結果が陽性で、犬パルボウイルス腸炎と疑われる徴候を伴う場合、それは、直前に接種された可能性のあるCPV ワクチンによって引き起こされたものではありません(DeCaro et al. 2014)

犬アデノウイルス(CAV-2)ワクチン

入手可能なワクチンの種類

弱毒生ウイルス(MLV)ワクチン:CAV-2 を含むワクチンが、最もよく利用される製剤です。

この製剤は、CAV-1 による犬伝染性肝炎(infectious canine hepatitis、ICH)の予防、およびCAV-2 感染による呼吸器疾患の症状緩和に対して推奨される唯一のワクチンです。

非常に有効である上に、CAV-1 ワクチンでよく見られる有害反応(アレルギー性ぶどう膜炎、「ブルーアイ」として知られる)が発現しない(Curtis &Barnett, 1983)。

注射MLV CAV-2 ワクチンの他:犬伝染性呼吸器症候群(canine infectiousrespiratory disease complex、CIRDC)予防のため、Bordetella bronchiseptica および犬パラインフルエンザウイルス(CPiV)とCAV-2 を含む配合製剤または単味製剤があります。

CAV-2、CPiV、およびボルデテラを含む鼻腔内製剤は、CIRDC の軽症化のためには使用できるが、単独でICH 予防のためのワクチンとして使用してはならない。ICH の予防のためには、注射MLVCAV-2 も投与するべきです。

不活化ワクチン:一部の国では不活化CAV-1 およびCAV-2 ワクチンが利用可能であるが、効果が劣るため、MLV 製剤を利用できる場合には推奨されません。

メカニズムと免疫持続期間(DOI)

・ほとんどの犬において、犬伝染性肝炎に自然感染した後、DOI は終生持続すると考えられています。

・MLV ワクチン接種後のDOI は9 年またはそれ以上です(Schultz et al. 2010)。

・不活化CAV-1 またはCAV-2 ワクチンのDOI は、MLV 製剤と比較して短いと考えられています。

・移行抗体は注射製剤接種後の免疫成立を阻害するため、子犬が16 週齢以上のときに他のコアワクチン(CDV、CPV-2 など)とともに最終接種を行うべきです。

・16 週齢以降に子犬のワクチネーションが完了し、26 週齢または52 週齢で再度接種したら、その後の再接種は3 年以下の間隔で行う必要はないです。

・移行抗体がない場合は、ワクチンにより早ければワクチン接種5 日後にICH に対する防御が成立します。

・能動免疫を獲得した20 週齢以上の犬では、血清抗体が存在する場合、その抗体価に関わらず、防御されます。

注意事項

鼻腔内CAV-2 ワクチンは、CAV-2 による上気道疾患の予防を補助することが意図されており、CAV-1 型感染に対する防御は想定されていません。

本疾患について

・CAV-1 は主に唾液や尿など、汚染された分泌物や排泄物を介して感染します。
・CAV-1 およびCAV-2 は中程度に安定したウイルスであり、環境中で数日~数週間生存します。
・CAV-1 を実験的に感染させると、ICH の徴候が出現するまでに5 日またはそれ以上かかります。
・「感染しやすい時期」とは、子犬が野外ウイルスに感染し得るが、ワクチンによる免疫は得られない期間と定義されます。

・通常、CAV-2 ワクチンの「感染しやすい時期」はそれほど長くないです(CPV-2 ワクチンとは異なり、2 週間未満)。
・CAV-2 は主に空気感染する。
・CIRDC の原因は、ストレス、換気不良、ほこり、不衛生な施設におけるアンモニアガス、ならびにレンサ球菌属の菌、Bordetellabronchiseptica、マイコプラズマ属の菌、CAV-2、CPiV、CIV、犬ニューモウイルス、および犬呼吸器コロナウイルスによる感染症など複合的です。
・CAV-2 とCIRDC に関連付けられている他の病原体に混合感染した場合、3 ~ 4 日で呼吸器疾患に至ることがあります。
・CIRDC は多因子疾患であるため、ワクチンでは完全には予防できない。現行ワクチンは感染症の軽症化に役立つだけです。


犬ジステンパーウイルス(CDV)ワクチン

入手可能なワクチンの種類

弱毒生ウイルス(MLV)ワクチン:最も一般的な製剤です。

通常、CDV Rockborn 株、SnyderHill 株、Onderstepoort株、Lederle株などが、様々なウイルス量で含まれています。

CDV の病原型は多く(Kapil et al. 2008、Espinal et al.2014)、多様な動物種に様々な臨床徴候を引き起こします。

しかし、どれか1 つのワクチンを接種すれば、全ての病原型に対して防御免疫をもたらします。

不活化ワクチン:不活化ワクチンは入手しにくく、有効でもないため、ジステンパーに対する免疫には使用するべきではありません。

メカニズムと免疫持続期間(DOI)

・ほとんどの犬において、自然感染または発症後のDOI は終生持続すると考えられています。

・ワクチン接種後のDOIは9 年またはそれ以上です(Schultz et al. 2010)。

・子犬の能動免疫は移行抗体により阻害されます。

阻害を受ける期間は、初乳抗体の力価や出生後吸収される抗体量によって異なります。

・「感染しやすい時期」とは、子犬が野外ウイルスに感染し得るが、ワクチンによる免疫は得られない期間と定義されます。

CPV-2ワクチンとは異なり、通常、CDV ワクチンの「感染しやすい時期」はそれほど長くないです(2 週間未満)。

・子犬での接種は、6 週齢になる前に開始しない方がよいです。

16 週齢以降にワクチネーションが完了し、26 週齢または52 週齢で再度接種したら、その後の再接種は3 年以下の間隔で行う必要はないです。

・移行抗体がなければ、MLV ワクチンまたは組換えワクチンの接種直後に免疫が成立します。

・能動免疫を獲得した20 週齢以上の犬では、血清抗体が存在する場合、その抗体価に関わらず、防御されます。

注意事項

・ワクチンは、野生動物やエキゾチックアニマルではなく飼育犬に使用するための弱毒化ワクチン(弱毒化され安全なワクチン)です。

このワクチンは(ブラックフットフェレット/ クロアシイタチ、ハイイロギツネなどに対して)病原性が強く、発症させ死に至らしめる(Carpenter et al. 1976、Pearson 1977、Durchfeld et al. 1990)。

・4 ~ 6 週齢未満の子犬にはMLV ワクチンを接種するべきではないです。

本疾患に関して

・徴候は感染後2~6週で発現します。

・CDV は潜伏期間中に免疫抑制をもたらすため、動物は微生物による感染を受けやすくなります。

ジステンパーウイルス感染症の典型的な徴候が現れる前に、このような二次感染から、呼吸器疾患や肺炎を発症し、死に至ることがあります。

・環境中ではウイルスは急速に感染力を失います。

猫汎白血球減少症ウイルス(FPV)ワクチン

入手可能なワクチンの種類

弱毒生ウイルス(MLV)ワクチン:これらの製剤は様々なウイルス量の弱毒化(非病原性)猫パルボウイルス(猫汎白血球減少症ウイルス)を含みます。

他のワクチン抗原(猫コロナウイルス、猫ヘルペスウイルスなど)が配合された注射用製剤および鼻腔内投与用製剤があります。

ワクチンには、作用の発現が早く、母親由来の抗体を克服する効果が高く、十分な免疫を賦与できる可能性が高いという利点がある(DiGangi et al. 2011、Lappin 2012)。

不活化ワクチン:アジュバント添加不活化ワクチンが入手可能です。

いくつかの製剤は、接種経験のない猫に対して、1 回注射により比較的短期間で良好な抗体応答を誘導することがあります。

しかし、すべての不活化製剤は2 ~ 4 週間隔での2 回の投与を必要とし、2 回目の接種後にのみ免疫が成立します。

メカニズムと免疫持続期間(DOI)

・自然感染または発症後のDOI は終生持続します。

・ワクチン接種後のDOIは7 年またはそれ以上持続します。

・不活化汎白血球減少症ワクチン接種後のDOI は、最低でも7.5 年持続することが示されています(Scott & Geissinger 1999)。

・ほとんどの場合、猫汎白血球減少症はFPV 感染により引き起こされるが、猫に感染して感染症を引き起こし得る犬パルボウイルスの変異株 (CPV-2a、CPV-2b、CPV-2c)が出現しています(Decaro & Buonavoglia 2012)。

現行FPV ワクチンの中には、これらのCPV 変異株の感染もある程度防御できるものがあります。

・子猫の能動免疫は、母親由来の移行抗体 (MDA)によって阻害されます。阻害を受ける期間は、初乳抗体の力価や生後数時間で吸収され る抗体量によって異なります。

・「感染しやすい時期」とは、子猫が野外ウイルスに感染し得るが、ワクチンによる免疫が得られない期間と定義されます。

犬パルボウイルスとの類似性から、移行抗体レベルが自然感染を防御するには低すぎるが、ワクチン効果を妨げてしまう免疫空白期間が存在すると推測されます。

・6 週齢以降に子猫のワクチネーションが完了し、26 週齢または52 週齢で再度接種したら、その後の再接種は3 年以下の間隔で行う必要はありません。

・能動免疫を獲得した20週齢以上の猫では、血清抗体が存在する場合、その抗体価に関わらず、 防御されます。

・ワクチン接種後は、非常に早期から防御が得られます(Brun & Chappuis 1979)。

注意事項

・ワクチンは、ウイルスが胎仔に伝搬され致死的損傷を及ぼすリスクがあるため、妊娠猫には使用できません。

・新生仔の発達中の小脳へのダメージを避けるため、MLV- FPVワクチンは、4~6週齢未満の子猫には投与するべきではありません。

・FPVワクチンは、重度の免疫抑制が生じている個体には投与するべきではありません。

重度の免疫抑制がある場合(臨床症状のあるFIVまたはFeLV 感染猫、強い免疫抑制剤を投与されている猫)、リスクは小さいとは考えられるものの、ウイルスの複製を制御することができず、 ワクチン接種後に臨床症状が発現する可能性があります。

本疾患に関して

・感染後、徴候の発現までに2~7日かかります。

・通常、発熱の1~2日後に嘔吐が生じます。

その後に下痢が起こることがあるが、下痢は見られない場合もあります。

急速に脱水が起こり、罹患猫は水の入った容器の前に座り、明らかに水を欲しがる様子ですが、飲まないです。

末期症状では低体温となり、敗血症性ショックや播種性血管内凝固を発症することがあります。

・環境中ではウイルスは1 年以上感染力を維持することがあるため(Gordon & Angrick 1986)、 感染動物がいたことがあるすべての施設は汚染されていると考えられます。

猫ヘルペスウイルス(FHV-1)ワクチン

入手可能なワクチンの種類

弱毒生ウイルス(MLV)ワクチン:これらの製剤は、様々な量の弱毒化したFHV-1(猫鼻気管炎ウイルス、単一の血清型)を含み、アジュバントは添加されていません。

単独製剤または他のワクチン抗原(常にカリシウイルス)と配合された注射用製剤や鼻腔内投与用製剤があります。

不活化ワクチン:アジュバント添加不活化ワクチ ンが入手可能です。

メカニズムと免疫持続期間(DOI)

・猫ヘルペスウイルス(カリシウイルスも同様)ワクチンによる防御は、 猫汎白血球減少症ウイルスワクチンによる防御ほど完全ではありません。

2 つの猫のコアワクチン (ヘルペスウイルス、カリシウイルス)には、犬のコアワクチンや猫汎白血球減少症ウイルスと同程度の強固な免疫と免疫持続期間は期待できません。

・DOI の評価は困難です。

完全な臨床的防御はワクチン接種直後にのみ認められ、その効果は時間と共に低減していく(Gaskell et al. 2007)。

・自然感染または発症後の免疫は強固ではなく、 持続期間にも幅がある。

・不活化ヘルペスウイルスワクチン接種後の抗体価は3年間持続することが明らかになっているが(Scott & Geissinger 1997)、ヘルペスウイルスにおける抗体価は感染防御と強くは相関しない(Gaskell et al. 2007)。

・16 週齢以降に子猫のワクチネーションが完了し、26 週齢または52 週齢で再度接種したら、その後の再接種は、リスクの低い猫では3 年以下の間隔で行う必要はありません。

ただし、リスクの高い猫(定期的に猫の宿泊施設に滞在する猫など)では、より頻繁な再接種を行うべきです。

・ワクチン接種が十分であった猫で追加接種の間隔があいてしまった場合、1 回の注射で十分に免疫記憶のブースト(増強)が得られると考えられます。

・ヘルペスウイルスワクチンは、強毒ウイルスによる感染を防御できず、潜伏し、強いストレスがかかったときに再び活性化することがあります。

再活性化したウイルスは、ワクチン接種済みの動物に臨床徴候を引き起こす可能性があります(Gaskell et al. 2007)。

ウイルスが排泄され、感受性のある動物に伝搬して、感受性のある子猫や成猫で発症することがあります(Gaskell et al. 2007)。

・子猫の能動免疫は移行抗体によって阻害されます。 阻害を受ける期間は、初乳抗体の力価や出生後吸収される抗体量によって異なります。

初回ワクチネーションは、通常6~8週齢で開始されます。

注射製剤の方が、移行抗体による阻害を受けることが多いです。

移行抗体を保有する子猫では、鼻腔内ワクチンの方が注射ワクチンよりも早く免疫を賦与することができると予想されます。

・猫の繁殖施設では、本感染症は、ほとんどの場合、移行抗体が減弱してくる離乳直前(通常は4 ~ 8 週齢)の子猫に見られます。

多くの場合、感染源は、出産や授乳のストレスにより潜伏していたウイルスが再活性化した母猫です。

注意事項

・注射用弱毒生ヘルペスウイルスワクチンおよびカリシウイルスワクチンは、病原性がある程度残存している可能性があるため、適切に投与しなければ発症することがあり得る(偶発的に皮膚や被毛に付着したワクチンを摂取または吸引したときなど)。

・鼻腔内ワクチン接種後に上気道疾患の徴候が発現することがあります。

本疾患に関して

・ウイルスの排泄は、早ければ感染後24時間で始まり、1~3週間持続します。

・急性症状は2~6日後に出現し、10~14日以内に回復します。

・ウイルスは感覚神経に沿って広がり、ニューロン、とくに主な潜伏部位である三叉神経節に到達します。

ほとんどの猫は生涯にわたって潜在キャリアとなり、ストレスのかかる状況があると周期的にウイルスを排泄する(Gaskell et al.2007)。

これに対してFCV は、感染後数ヵ月にわたり持続的に排泄されます。

・環境中ではウイルスは不安定であり、一般的な消毒薬で不活化されます。

猫カリシウイルス(FCV)ワクチン

入手可能なワクチンの種類

弱毒生ウイルス(MLV)ワクチン:本製剤には、アジュバントは添加されていません。
単独または他のワクチン抗原(常に猫ヘルペスウイルス)と配合された注射用製剤や鼻腔内投与用製剤があります。

不活化ワクチン:不活化アジュバント添加ワクチンも入手可能です。

メカニズムと免疫持続期間(DOI)

・カリシウイルス株間で抗原性にはかなりの違いがあり、1つの株に感染すると、その後に異種株に曝露したときの急性の臨床徴候が著しく軽減され、口からのウイルス排泄も抑制されることがあります。

一般的には、異種株に対する防御レベルは、対象とするウイルス株の組み合わせによって異なります。

・ウイルス中和抗体が最初に出現するのは感染から約7日後であり、その抗体価は、同種株による攻撃に対する防御と相関します。

不活化アジュバント添加カリシウイルスワクチン接種後の抗体は、少なくとも4 年間は持続することが明らかになっています(Scott & Geissinger1997)。

2 回の不活化アジュバント添加ワクチン接種から7.5 年後に、強毒性カリシウイルスにより攻撃試験を行ったところ、防御は完全ではなかったが、不活化製剤接種から1 年後に行った攻撃試験と同様の結果でした(Scott & Geissinger 1999)。

・カリシウイルス(ヘルペスウイルスも同様)ワクチンによる防御は、猫汎白血球減少症ウイルスワクチンほど完全ではないです。

これら2 つの呼吸器ウイルスのコアワクチンでは、猫汎白血球減少症ウイルスワクチンや犬のコアワクチンと同じような強固な免疫と免疫持続期間は期待できないです。

ワクチン接種済みの猫でも、異なる株のカリシウイルスに感染する可能性があります。

・16 週齢以降に子猫のワクチネーションが完了し、26 週齢または52 週齢で再度接種したら、 その後の再接種は、リスクの低い猫では3 年以下の間隔で行う必要はありません。

ただし、リスクの 高い猫(定期的に猫の宿泊施設に滞在する猫な ど)では、より頻繁な再接種を行うべきです。

・子猫のワクチネーションは、同じウイルス株を含むワクチンを使用することが推奨されます。

・移行抗体は生後数週間の防御にとって重要であるが、ワクチネーションを阻害する可能性が有ります。

移行抗体の平均半減期は15 日で、10 ~ 14 週間持続するとされている(Johnson & Povey 1983)。

野外での研究では、6 週齢の子猫の約20% において、広く使用されているワクチン株に対する抗体は検出されませんでした(Dawson et al. 2001)。

鼻腔内製剤よりも注射製剤の方が移行抗体による阻害を受けることが多いです。

移行抗体を保有する子猫では、鼻腔内ワクチンの方が注射ワクチンよりも早く免疫を獲得すると予想されます。

注意事項

・鼻腔内ワクチン接種の合併症として、上気道疾患の徴候が見られることがあります(Lappin et al. 2006, 2009)。

・野外には抗原性の異なる多様なウイルスが広まっているため、ワクチンウイルス株の組み合わせは、重篤な感染症を交差防御できるよう選択されています。

しかし、接種済みの猫にも軽度の発症は起こり得ます。

・ヘルペスウイルスはストレスが生じた場合に間欠的に排泄されるのに対して、カリシウイルスは持続的に排泄されるが、通常は数ヵ月後に排泄はなくなります (Coyne et al. 2006a)。

ワクチネーションがウイルス排泄に及ぼす影響については議論が続いており、感染後排泄期間の中程度の減少から延長まで様々です。

本疾患に関して

・カリシウイルス感染は口腔および上気道の急性徴候を引き起こすことがあるが、免疫介在性の慢性歯肉口内炎とも関連していると考えられています。

・潜伏期間は2 ~ 10 日間です。

口腔潰瘍(とくに舌の周縁部)、くしゃみ、水様鼻汁が主徴候です。

口腔および上気道疾患の急性徴候は、主に子猫で見られます。

・新たな症候群である「高病原性全身性猫カリシウイルス(virulent systemic feline calicivirus、 VS-FCV)による感染症」が時折報告される (Coyne et al. 2006b)。

シェルターや病院で曝露を受けた猫における潜伏期間は1~5日ですが、家庭環境では最長12 日間に及ぶことがあります。

成猫では子猫よりも重症化すると考えられています。

現行ワクチンの接種は猫を野外感染から防御しないが、実験室内環境下ではある程度防御されることが報告されています(Poulet & Lemeter 2008, Huang et al. 2010)。

これは高病原性株本来の特徴によるものと考えられる。

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no life no dogs & catsをモットーに、いつも犬と猫に癒されています。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。
現役獣医師が海外で勉強しながら得た、犬と猫の病気に対する知識とスキルを発信していきます。

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