獣医師解説!栄養学から考える犬猫のペットフードの選び方

    どんなフードが一番いいんだろう...?

    ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。

    中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。

    ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、

    情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、

    その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。

    例えば...

    • 安全なご飯は?
    • 栄養バランスは大丈夫?
    • 無添加?国産がいいの?
    • とりあえずどのフードをあげればいいの?

    これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?

    結論から言うと、動物病院に置いてあるフードが一番良いです。つまりロイヤルカナンやヒルズです。

    この記事では、犬と猫のペットフードの選び方についてその理由をアカデミックな面からまとめました。

    限りなく網羅的にまとめましたので、犬と猫のフードに迷われている飼い主、犬、猫を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。

    ✔︎本記事の信憑性
    この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
    論文発表や学会での表彰経験もあります。

    今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

    臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

    記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

    » 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

    ✔︎本記事の内容

    ライフステージに合わせたバランスの取れた食事~動物栄養学の基礎

    フードの話をする前に、犬と猫の必要な栄養について解説したいと思います。

    そんなのめんどくさいからフードを知りたいと言う方は飛ばして大丈夫です。

    しかし、ここの理解を深めることで本当に必要な栄養素や注意点、フード選びの基準が分かるようになりますので、是非目を通してみてください。

    栄養素の種類

    5大栄養素とは…タンパク質・炭水化物・脂肪・ミネラル・ビタミン(+水で6大栄養素となる)

    • これらのバランスが重要です。
    • 人間にとって完璧な栄養バランスがとれた食事を犬や猫に与えても、まったくバランスが偏ってしまいます。
    • 犬と猫では必要な栄養が異なり、猫はタウリン(アミノ酸)・アラキドン酸(脂肪酸)・ビタミンA(脂溶性ビタミン)を食事から摂取します

    犬・猫にあげてはいけないもの

    犬・猫にあげてはいけないもの

    ・ネギ類…玉ねぎ、長ネギなどのネギ類には血液中の赤血球を壊してしまう物質が含まれていて、貧血を起こしたり赤い尿をすることがあります。(ニンニク・ニラにも同じ物質が含まれてるので注意してください。)

     

     

    ・お肉ばかりの食事…肉はリンとカルシウムのバランスが極端に悪いため、カルシウム不足になってしまいます。リンとカルシウムのバランスは1:1が理想ですが、肉では20:1になってしまいます。(ペットフードには充分な量のカルシウムが含まれており、カルシウム剤などを追加で与えると逆にカルシウムの過剰摂取となり、かえって体に良くありません。)

    ・チョコレート・ココア…中毒(テオブロミン)を引き起こす物質が含まれていて、下痢・嘔吐・突然死を起こすことがあります。(ダックスフンドで250g、コッカースパニエルで300gのチョコレートを食べて死んでしまった例があります。)

     

     

    ・牛乳…牛乳に含まれる糖分(乳糖)をうまく消化できない子の場合、下痢を起こしてしまいます。(犬猫のおよそ2~3割が乳糖不耐性と言われています。)

    ・ブドウ・レーズン…成分は特定されていませんが、有害性が認められています。嘔吐・下痢・腹痛が起こり、数日後に腎不全を引き起こすことがあります。(犬に関しては腎不全から死亡するケースも報告されています。猫では不明です。)

     

     

    ・キシリトール…ガムなどに含まれる甘味料で、人では吸収されませんが、犬においては吸収されてしまうため、急激な血糖値の低下を招き低血糖症状を引き起こします。(小型犬の場合、数枚のキシリトールガムで致命的な症状を呈する可能性があります。猫では報告がありません。)

     

    ※アボカドも沢山の量を食べると同じような症状を引き起こすことがあります。

     

    犬の習性

    祖先はオオカミで、何事もリーダーのもとで行動していたため、リーダー以外のオオカミたちは食事の時も残り物を奪い合って生きてきた経緯から、あげたらあげた分だけ食べる習性がある。

    肥満になりやすい犬種として…ダックス・パグ・ビーグル・柴・コーギー・フレンチブルドッグ・コッカースパニエル・キャバリア・シェルティー・ゴールデンレトリバー・ラブラドールレトリバー…など。(避妊雌の60%は肥満というデータも)

    ボディーコンディションスコア(BCS)

    • 1痩せすぎ
      (最適体重より20%以上少ない)
      明らかに肋骨、背骨、骨盤骨が見える。明らかな筋肉量の減少。胸まわりに触知できる脂肪がない。
    • 2痩せている
      (最適体重より10~20%少ない)
      肋骨、椎骨の尖り、骨盤骨が見える。ウエストが明らか。胸まわりに触知できる脂肪がない。
    • 3理想的
      (最適体重内)
      肋骨、背骨は見えないが、はっきりと触知できる。ウエストが明らか。胸まわりに薄い脂肪が触知できる。
    • 4太っている
      (最適体重より10%以上多い)
      肋骨、背骨の触知が困難。ウエストがない。背骨とお尻周りへの脂肪沈着が明らか。
    • 5太り過ぎ
      (最適体重より40%以上多い)
      胸部、背骨、お尻まわりにおける過度の脂肪沈着。明確な腹囲の拡大。

    ※最近の評価は9段階に分かれているものもある。

    肥満になると、循環器障害の発生率が自然発生率に対しておよそ3.3倍、関節・運動器官の障害がおよそ1.7倍に上昇する。

    その他皮膚疾患、繁殖障害、がん、糖尿病、免疫機能の低下や外科手術の危険性の増大などがあります。

    成長期の体重管理

    • 子犬の時に太る   →脂肪細胞の数が増加する。
    • 成犬になってから太る→脂肪細胞のサイズが拡大する。

    ※生後3歳まで自由採食にして育てた子と、幼児期からカロリー調整を行った子に関しては、後者の方が2年長生きしたというデータがあります。

    ペットフードのメリット

    • 必要カロリーが摂取できれば、各栄養素が過不足なく摂取できる。
    • 適切なハンドメイド食の継続は困難な時がある。
    • 胃腸の状態が毎日チェックできる。

    ペットフードの種類

    総合栄養食

    各ライフステージに必要とする栄養素をすべて含む。

    フードと新鮮な水を与えていれば、特にほかの栄養素を補充する必要はない。

    『ペットフード公正取引協議会』が承認する分析試験、給与試験を行わなければならない。

    ペットフードの添加剤

    何よりペットフードに含まれる添加物や原材料は、ペットフード安全法により、安全なもの・安全な量のみ含まれるように規定されています。

    例えば、ペットフードに含まれる酸化防止剤は、一生摂取し続けても健康に影響を与えない量(ADI)が上限として定められており、これを下回る量のみ含まれるようになっています。
    発がん性云々の話は、ADIの数千倍もの量をマウスに投与した際の毒性実験の話で、フードに含まれている量では発がん性を心配する必要はないです。

    むしろ酸化したペットフードの方がペットの健康を害し、中毒や下痢を引き起こす可能性があります。

    ペットフード安全法によってペットの健康に影響を与えるような原材料は使用できないように規定されています。

    また、世界的に採用されている食品衛生管理手法である「HACCP(危害要因分析重要管理点)」も実施しています。

    またHACCPとは、本来NASAが安全な宇宙食を作る目的で開発した厳格な安全管理プログラムのことで、日本でも2020年から全ての食品等事業者に対して義務化されます。

    HACCPを取り入れているということは、安全管理がしっかりなされているということです。

    間食

    おやつ・スナック

    その他の目的食
    • 副食・おかずタイプ(嗜好性増進等を目的)
      『一般食(おかずタイプ)』などど表記。
    • 栄養補助食(特定の栄養分の調節などを目的)
      『栄養補完食』・『サプリメント』などど表記。
    • 療法食(食事療法に使用することを目的)
      『食事療法食』・『特別療法食』などど表記。

    ペットフードの原材料

    消化・吸収されれば栄養学的価値は同じなので、原材料の種類よりも必要な栄養素がきちんと取り込まれることが重要です。

    ヘルスニュートリション

    犬や猫に向き合うと、年齢、品種、サイズ、ライフステージ、ライフスタイル、健康状態など、個々の犬と猫はそれぞれに異なる特徴を持っているため、必要な栄養バランスも一頭ずつ異なることがわかります。

    個々の犬と猫で異なる栄養要求に応えるための50種類あまりの栄養素の最適なバランス。

    それを考慮して日々開発することの総称を『ヘルスニュートリション』と呼んでいます。

    よいフードとは?

    • 消化性の高いフード…高消化性のタンパク質を使用している。糞便が少なくなる。
    • 栄養のバランスがとれているフード…各栄養素の量だけでなく質も重要。毛ヅヤがよくなる。

    皮膚

    健康な皮膚はセラミドや角化細胞がバリア機能を発揮し、細菌や真菌から守ってくれます。

    • 健康でない皮膚ではセラミドや角化細胞が壊れてしまっているので、細菌や真菌が入りやすくなってしまいます。
    • 皮膚は3週間に1回生まれ変わります。
    • 皮膚は体重の20%を占めています。
    • 摂取した栄養素の30%が皮膚に利用されます。

    ※よって正しい食事をしないと健康な皮膚をつくることはできません。

    ペットフードの選び方

    • それぞれのライフステージでの栄養要求を満たす食事を与える。
    • 高消化性の原材料を使用した食事を与える。
    • ペットは個々によって違うことを忘れないようにする。

    ここまでが犬と猫の栄養に関するお話です。

    ここからは上記のことを踏まえて、実際に販売されているペットフードを選んでいきます。

    今現在、ペットフードは数多く出されており、新規参入する会社も少なくありません。

    数多くの情報、ペットフードの中から飼い主の犬や猫にあったフードを見つけるために正しい知識を身に付けてください。

    ネットのおすすめフードは信用できるのか?

    ネットのフードおすすめランキングは信用できない!

    ではフードを選ぶ際に、検索するとなると『犬 オススメフード』と調べるのではないでしょうか?

    ここでいろんなブログで紹介されているものはほとんどが「おすすめフード」ではなく「売りたいフード」です。

    実際に、「ドッグフード おすすめ」で上位表示されるサイトを見ると報酬の高い順が上位を占めています。

    モグニャン (新規購入: 3960円)
    ピュリナ (新規購入: 3,850円)
    カナガン (初回購入: 3960円)

    一方、多くの獣医師がおすすめするヒルズやロイヤルカナンは報酬額がかなり低いので、ほとんどのサイトでランクインしていないです。

    ヒルズやロイヤルカナンを売って報酬を得ようとすると、Amazonや楽天を経由して広告を貼ることになるので、報酬は購入額の5%です。

    アフィリエイトを否定するつもりはありませんが、これでは飼い主に誤った情報を与えてしまいます。

    愛犬の口に入るフードですから、正しい知識で本当に良いものを選んでください。

    つまり、これらのフードは報酬目当てで宣伝されており、情報には全く根拠がない誤った情報で、科学的な根拠やデータに基づいていません。

    本当に良いフードの選び方

    • 長年の販売実績があるかどうか?
    • 科学的観点から作られたフードかどうか?

    長年の販売実績があるかどうか?

    近年の犬猫の長寿化にはペットフードの質の向上や予防が大きいと言われています。

    長年の販売実績は、ペットの長寿化に貢献してきた実績でもあり、信頼でもあります。

    それは数多くの犬や猫がそのフードを食べてきたからです。

    間違いなく、一番多く食べられてきたご飯がロイヤルカナンとヒルズです。

    ヒルズやロイヤルカナンは50年以上も前からペットフードの販売を行なっています。

    さらにヒルズは世界86カ国、ロイヤルカナンは90カ国での販売実績があります。

    この販売実績こそが、そのフードが安心・安全で優れていることを示しています。

    科学的根拠に基づいて作られたフードを選ぶ

    フードを選ぶ上で獣医師が一番重要視する点が「科学的根拠に基づいて作られたフード」ということです。

    その背景に科学的根拠、研究、論文などで効果が証明されているかが、オススメできるかどうかの線引きになります。

    例えばヒルズやロイヤルカナンは自社の研究所を持ち、獣医師や研究者などその道のエキスパートと組んで新しい製品開発に取り組んでいます。

    ヒルズには獣医師や栄養学者、食品科学者など220人以上が在籍し、ペットがより健康で長生きできるよう、日々、世界各地で新製品の開発や既存製品の改良に取り組んでいます。ヒルズの専門家たちは毎年50以上もの論文や教科書などを執筆し、獣医学において最先端の研究を行う大学で教鞭をとっています。そして、最新の知識や専門的技術をヒルズ製品に注いでいるのです。(ヒルズHPより)

    最近は、様々なフードが新規参入していますが、長年実績のあるヒルズやロイヤルカナンを超えるだけの研究結果に基づいた安全性には敵いません。

    科学的観点からフードを作る、選ぶのは非常に大事です。

    他の会社のペットフードのサイト見てみてください。

    添加物や、グレインフリーなどの商品アピールは謳っていても、販売実績や、製造過程をここまで詳細に記載しているところはないと思います。

    実際に獣医師がオススメするフード

    以下は私が実際に病院で診察の際によく出す、オススメするフードです。

    犬種別や、年齢にもよって変わりますが、成犬、成猫であれば下記を選んでおけばまず間違いはないです。

    ロイヤルカナン

    小型犬

    中型犬

    大型犬

    猫用

    ヒルズ

    犬用

    小型犬

    大型犬

    猫用

    正しいフードの切り替え方

    フードの種類を変える場合は1週間かけて徐々に慣らしていくようにしてください。

    日にち 旧フード量 新フードの量
    1-2日目 75% 25%
    3-4日目 50% 50%
    5-6日目 25% 75%
    7日目 0% 100%

    フードを変えたばかりは、残してしまったり、好き嫌いがあるかもしれません。

    その場合はふりかけやササミの汁、カボチャ、さつまいもを混ぜる、電子レンジで温めることも匂いでご飯を感じる犬にとっては有効です。

    ドライフードとウェットフードどっちが良いの?

    ドライフードとウェットフード、それぞれに良いところがあります。

    ドライフードのメリット

    • 長期の保存ができ、扱いやすい
    • 歯石がつきにくい(と言われている)
    • 扱いやすいのは断然ドライフードです。

    保存もききますし、歯石がつきにくいのも良いですよね。

    ウェットフードのメリット

    • 水分含有量が多く、食事から水分補給ができる
    • 満腹感が得られやすい
    • 食事から水分を取れることがウェットフードの1番のメリットです。

    健康診断

    簡単な検査をこまめに行うことで病気の早期発見につながるケースも…

    ◎聴診→心雑音の有無→心臓病

    ◎尿検査→尿比重(低比重尿)・尿タンパク→LUTD、初期の腎臓病

    ビリルビン→肝疾患

    潜血・尿pH(亜硝酸塩:細菌感染)→LUTD、腎疾患

    尿糖→糖尿病、腎疾患

    本当に良いフードのまとめ

    犬・猫・人では栄養素の種類は同じであるが、それぞれに必要な栄養バランスは異なるので、それぞれの特性をよく知る必要がある。

    • 健康な皮膚には従来バリア機能が備わっており、それ維持するためには正しい食事が不可欠である。
    • 成犬の肥満では脂肪細胞のサイズが拡大するが、成長期の肥満では脂肪細胞の数が増えるので、成長期に肥満にさせないことが重要である。
    • 良いフードとは消化性が高く、高品質で栄養のバランスがとれたフードである。
    • 人が食べるものの中には、犬や猫にとって毒性のあるものが存在するので、特定のフード以外はなるべく与えない方がよい。
    • ペットフードにとって酸化が一番のダメージなので、大袋の場合はタッパーやジップロックなど小分けにして保存するのもおすすめである。(空気に触れないようにする)
    • 食事を通じて健康を維持してあげることは、真の愛情にもつながる。

    フードを選ぶ上で重要なポイントは以下の2つです。

    • 長年の販売実績があるかどうか?
    • 科学的観点から作られたかどうか?

    この2つを満たすフードが多くの獣医師が勧めるヒルズやロイヤルカナンのフードなのです。

    ネット上にはフードに関連するさまざまな情報が錯綜しています。

    中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。

    ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、

    情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、

    その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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