ゴキブリ駆除の目的で、ホウ酸団子として販売されています。
大変危険な薬剤であるにもかかわらず、一般的には比較的安全なイメージがありホウ酸団子を作り、配布したり自宅で作ることもあります。
市販品のホウ酸団子のホウ酸含有量も結構な量が入っていますが、一般的には、自作のホウ酸団子もホウ酸濃度が高いため注意が必要です。
れら殺鼠剤にはネズミが好んで食べるように誘引剤として糖類や小麦などが入っているため犬も好んで食べる傾向にあります。
そこで当記事では、そんなホウ酸を含むゴキブリ駆除剤を舐めてしまった時に起こる病態、症状、中毒量、治療法に至るまでを獣医師が徹底解説します。
犬にとって危険な物を知りたい飼い主必見です。
この記事を読めば、犬にゴキブリ駆除剤:ホウ酸を与えていけない理由と対処法が分かります。
限りなく網羅的にまとめましたので、ホウ酸が犬に与える影響をご存知でない飼い主は是非ご覧ください。
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
犬にホウ酸団子は危険!ホウ酸中毒の怖さとは?!
この記事の目次
犬がホウ酸を食べてしまった時に起こる病態
ホウ酸は胃腸管からよく吸収されます。
皮膚がすりむけているような場合にはその部分から吸収されますが、健常肌では透過しにくいです。
ホウ酸は、摂取量の40-60%が12-24時間以内に尿中に排泄されます。
ホウ酸の血中濃度が50μg/ml以上であれば、ホウ酸中毒の診断のために測定できます。
正確な作用基準は分かっていません。
ホウ酸は一般にすべての細胞に対する細胞毒性を持っています。
ホウ酸は腎臓で濃縮されて尿中に排泄されますので、他の臓器組織よりもしばしば腎臓が障害されます。
また脳と肝臓も障害されることが知られています。
犬がホウ酸を食べてしまった時の中毒の症状
嘔吐、下痢、嗜眠、痙攣、昏睡、皮膚症状などを呈し、肝臓や腎臓の障害をきたします。
犬がホウ酸を食べてしまった時の中毒量
ホウ酸の人の経口致死量は0.1-0.5g/kg(乳児2-3g、幼児5-6g、成人15-20g)とわずかです。
ホウ酸団子を少し食べた位と安心していると、致死量に至っていることに気づかず処置が遅れます。
小動物に対するホウ酸の経口中毒量は0.2-0.5g/kg、致死量は2g/kgです。
犬がホウ酸を食べた時の治療
対処法は3つに大別されます。
動物病院では、まず胃の内容物を吐かせて外に出し、その後、胃の洗浄をして、活性炭や下剤を投与するといった治療がおこなわれます。
中毒の症状や原因となるものを、体外に排出することが最優先されます。
- そのまま様子を見る(勝手に吐く、あるいは、便で出るのを待つ or 毒物なら点滴して希釈する)
- 吐かせる
- 点滴などの対症療法
摂取後2時-4時間以内であれば、催吐薬の投与を行い吸着剤の投与を併用します。
催吐の効果が認められられない場合には、胃洗浄を行うこともあります。
通常1時間以内であれば胃の中にまだありますので、吐かせることができますが、3時間となるとはかせることは難しいため、症状が出た場合は点滴となります。
しかし、お近くに病院がない場合、また3時間以上経過すると胃袋になく、吐かせることができませんので、中毒が出ないように祈る以外、ご自宅でできる事はありません。
これは3時間経過していれば、病院でも同じです。
しかし摂取後時間が経過している場合は催吐薬の投与、洗浄は行わずに吸着剤の投与を行います。
時間が経過している場合は催吐、並びに胃洗浄は体への負担が生じるだけで効果が認められません。
多くの中毒と同様に嘔吐による脱水、電解質の補正のための輸液などの対処量を行います。
点滴治療で、症状を緩和することが目的となります。
犬がホウ酸中毒を起こした時の治療
催吐を行い、水や牛乳を飲ませます。
ホウ酸中毒の場合には、活性炭の効果では定かではありませんが、害にはならないのでできれば投与を行います。
痙攣があればジアゼパムを用いて対処します。
ホウ酸中毒には拮抗薬は存在しません。
経口投与が可能な状態になれば吸着剤としての活性炭1-4g/kgを経口投与します。
犬がホウ酸を食べてしまった時の応急処置と対処法
原則は病院の受診です。
病院で安全な催吐処置をしていただくことが最善です。
しかし、周りに病院がない場合、離島などで病院受診が困難な場合は自宅で吐かせるしかありません。
自宅でできる催吐処置は元々非常に危険で、それが原因で命を落とすこともあります。
ホウ酸を飲んでしまった場合のみ、この処置に賭ける事になります。
致死量食べてしまった場合は、何もしないと亡くなりますので、その場合のみホウ酸で命を落とすか、自宅で吐かせる危険な処置をするか選ぶ必要があります。
- 炭酸ナトリウム 小型犬:0.5g/頭 中型犬以上:0.5-1g/頭 口腔内投与
- 3%過酸化水素(オキシドール) 1-2ml/kg
上記はあくまでも参考です。
決して気軽に自己判断で行わないでください。
農薬系薬物を摂取し摂取後すぐ(できれば1時間以内)で、意識が清明であれば催吐を検討しても良いです。
しかしこれらの薬物は有機溶媒を含んでいることが多いので、誤嚥にはくれぐれも注意が必要です。
摂取した薬物が液体であった場合には特に誤嚥性肺炎を生じることがあるので催吐しないほうが無難な場合もあります。
また催吐が禁忌である場合もありますので摂取したものがわからない場合には催吐の判断を慎重に行います。
酸・アルカリ性の薬物、石油系の薬剤は催吐禁忌であり、また犬猫の意識障害があっても催吐は禁忌です。
犬がホウ酸中毒を起こした時の予後
摂取した中毒性物質やその量、摂取から治療までの時間、治療内容等に左右されます。
農薬系薬剤は重篤な症状が出る位の量を摂取した場合、死亡する可能性十分に考えられ、一時的に回復しても、腎不全、盲目、意識障害などを合併することもあります。
24時間生存していれば、その後の回復する見込みが出てきます。
犬のホウ酸中毒の予防
犬を飼っている場合には、とにかく、これら農薬系薬剤を買わない、置かない事が重要です。
どうしてもそれら薬物を使用する際には、飼い主が危機意識を持ち、犬が誤食する可能性を十分に考え、絶対に犬が立ち入らない場所に設置します。
犬が中毒を起こした時の為に、準備しておく必要な物
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