犬の赤ちゃん:生まれてから生後1ヶ月・4週間以内の子犬の育て方!獣医師解説

    犬を妊娠させたい。

    自分の犬を一度出産させてみたい。

    交尾や人工授精をしたけど妊娠しているか不安。

    妊娠しているけど順調に育っているか不安。

    • 妊娠しているけどいつごろ出産するか知りたい。
    • 出産の準備ってあるの?
    • 妊娠期間は?
    • 子供数や大きさ、出産に関わる時間は?

    妊娠はしたものの、出産について不安に思われている方は多いと思います。

    本記事はそのような、犬の妊娠、出産、赤ちゃんについて解説します。

    犬の赤ちゃん:生後1ヶ月・4週間以内の子犬の育て方!

    獣医師解説 生後4週までの発育期

    犬の子犬は生物学的・新生子学的観点からすると典型的な巣ごもり性(留巣性)動物のグループに属します。

    発育程度と体格は同腹子の間で多少異なります。 これは、卵管の卵巣側の部分において、卵子が時間のずれを伴いつつ受精するからです。

    そのため、犬の新生子は、出生の時点で、胚・胎子期の発育期間にして2~4日間の差が現れることは多いです。

    それにより、同腹子の間で神経学上の成然段階における若干の差異が生じますが、病的過程に関するものでなければ、臨床上はほとんど確認できません。

    それ対して、生時体重は、子宮内の発育期間を示す判断基準となります。

    しかし、生時体重は子宮内の発育期間のわずかな差異のほか、性別や胎盤の大きさにも左右されるということに注意する必要があります。

    特に、胎盤の大きさは、 生時体重が犬種平均を超えている場合(長期在胎) 子宮内膜の変性がみられる場合 体格の発育 に重要な影響を与えます。

    これらは、

    • 前回の妊娠
    • 雌性疾思(子宮内膜炎など)
    • 年齢条件(母犬が10歳以上の場合など)に起因する障害

    によって引き起こされます。

    出生時の神経学上の未成熟のため、犬の新生子は生後3~4週間は、母犬による全面的な世話が必要です。

    さらに、この時期の子犬は、暖かく安全な、狭く区切られた空間を必要とします。

    この空間において決定的に重要なのは、まず環境温度といわゆる機能的U字です。

    機能的U字とは、分娩完了後の母犬が、それに続く2~3日間の間、絶えず横臥姿勢で子犬たちの脇に留まり、乳房鼠径部と伸ばした四肢で形成する半円のことです。

    生後の初期の発育段階は、器官機能の発現によって、3段階あるいは3つの適応期に分けられます。

    それには、新生子学的・生理学的観点がその臨床的実用性と組み合わされます。

    以下の区分は臨床的観点から裏づけられています。

    • 第1適応期 = 生後0~24時間
    • 第2適応期 = 生後1~14日
    • 第3適応期 = 生後15~28日

    第1適応期

    第1適応期は、陰門からの胎子の娩出および臍帯の切断の直後に始まり、出生1日目の終了とともに終わります。

    ここでは、まず、

    • 呼吸刺激に対応した肺でのガス交換の開始
    • 心・循環状況への適応
    • 覚醒状態の安定

    など、最初の生存過程の確保が行われます。

    続く数時間で、

    1. 子宮内状態から子宮外状態への血行力学的適応を伴う基本的反射の定着
    2. 新生子組織へのエネルギー供給
    3. 最初の栄養摂取の中での受動的免疫状況の安定化

    が行われます。さらに、体温の調節が行われます。

    したがって、この生後の最初の時期については、以下のようにまとめられます。

    出生から心臓・呼吸システムの安定化までの期間(生後1時間)

    これは子宮内および子宮外の生活の間に位置する非常に重要な時期であるといえます。

    生後1~24時間の期間

    ここで重要なのは、内因性・内分泌性代謝要素および外因性要素(環境温度、組織へ細菌の定着)に基づく栄養摂取と体温の安定化が行われることです。

    第2適応期

    第2適応期は生後1~14日目までです。

    1. 生後の神経系のさらなる発達が進行し
    2. 屈筋優位から伸筋優位への転換が起こり
    3. 頭部および頸部領域の支持器官の緊張が増して安定し
    4. 前肢の支持反射が生じるようになります。

    また、ほかの器官系の成熟も進み、造血系も機能し始めます。

    それに加えて、消化器系の消化機能もはっきりと現れます。

    肝臓と膵臓も機能し始め、腎臓の機能も成熟して、電解質および水分の代謝が可能になります。

    この第2適応期の終わり、そして第3適応期の始まりの時期には、目や耳などの感覚器が機能し始め、反射が安定し可動性が向上します。

    最初は長かった睡眠時間が徐々に短縮され、覚醒時間が長くなります。

    生後10日間で体重は2倍になり、体温は若干上昇していきます。(36.5~37.5℃)。

    生後28日間(第1~第3週に適応期)における犬新生子のいくつかの所見

    区分

    所見

    運動性

    最初は温度指向性の探索運動。生後4日目から神経成熟の進行の印としての屈筋優位から伸筋優位への転換。生後10日目から最初の立ち上がり、および歩行の試みがみられ、運動性が増す。

    覚醒期と睡眠期

    生後78日までは睡眠期が長く(1日の90%)、覚醒期が短い(1日の10%)。その後、覚醒期が長くなり、睡眠中に筋肉の攣縮がみられる。

    感覚器の発達

    出生時には耳も聞えず、目も見えない。目が見えるようになるのは、生後1014日目からで、焦点が合わせられるようになるのは2128日目からである。耳道が開くのは生後1315日目で、これによって物音に反応しやすくなる。

    排尿と排便

    生後16日目までは母犬によって誘発される。21日目から排尿・排便の随意調節ができるようになってくる。

    体重の増加

    生後10日以内に体重は2倍になる。

    体温

    出生直後に39℃から35.5℃に下がり、生後10日間で少なくとも36.5℃まで上昇し、その後2030日目までに38℃以上になる。

    乾燥した臍帯の残りの部分は、生後23日の間にとれ、臍の創傷部位に上皮が形成される。

    第3適応期

    第3適応期は生後2~4週です。

    この段階で体温はさらに上昇し、その結果、最終的には成犬に近いレベルとなり、

    制御された運動性が増大し、感覚器機能の安定を伴う明確な覚醒期が形成されます。

    子犬自身による随意的な排便・排尿調節は生後第3週の終わり頃から始まります。

    体重の増加

    子犬の生時体重は、まず第一に犬種に左右されます。

    雑種の場合には父方および母方の要素によって決まります。

    性別による相違もわずかに存在します。

    出生時点では、胎子は妊娠満期体重の少なくとも75%に達していなければなりません。

    そうでない場合には未熟あるいは低発育ということになります。

    • 犬の新生子は通常、体重が増加し始める前に、生後24時間で体重が10%減少します。
    • ただし、この出生1日目の体重減少は10%を超えてはなりません。
    • 子犬は生後10日以内に生時体重よ80~100%増加した体重になっていなければなりません。

    体重の増加を判定する際には、尾側の両側乳房対で哺乳されている子犬は、ほかの兄弟姉妹よりも体格が大きくなり、生存のチャンスもより高いです。

    犬種による生時体重

    犬種

    生時体重

    小型犬

    100~200g

    中型犬

    200~400g

    大型犬

    400~500g

    超大型犬

    600g以上

     

    自然な飼育条件のもとでの生後の体重の増加

    生後の日数

    体重の増加

    8~10

    生時体重の2

    20日

    生時体重の56

    体温の上昇

    出生直後の子犬の体温はまだ子宮内の環境温度(39℃前後)を示します。

    しかし、 この体温は生後最初の数分間で急激に下降し、35.5℃前後となります。

    これは体温調節がまだ完全には機能していないからである。

    生後2週目になって初めて体温は持続的に上昇するようになります。

    体温の上昇

    生後の経過

    体温

    出生直後

    39℃以上

    生後1時間

    35.5~36.5℃

    生後1週

    36.0~36.5℃

    生後2週

    37.5~38.0℃

    生後3週以降

    38℃以上

    睡眠行動

    新生子の睡眠時間は長く、生後数日は約90%を睡眠状態で過ごします。

    その際、この睡眠状態は、

    • 静睡民
    • 動睡眠・逆説睡眠

    に区別されます。

    後者は筋攣縮、発声、不規則な心・呼吸活動を伴います。

    これらの基準は、発育期の最初の段階にある、正常に飼育された健康な子犬たちの場合にあてはまります。

    この逆説睡眠 における行動は、それゆえ、臨床的判断に使用できます。

    逆説睡眠が欠けているようであれば、身体的な、あるいは神経医学的な病的障害の徴候の可能性があります。

    通常、第2適応期の終わりまで、逆説睡眼期の占める割合は大変高いですが(約90%)、これに続く時期に著しく低下し、生後第4週には約30%にまで下がります。

    これと逆に、静睡眠と覚醒期は拡大します。

    生後第3週の終わりには、覚醒期の割合は50%になり、第4週の終わりには70%になります。

    生後数日間優勢であった睡眠姿勢は腹這いの姿勢ですが、その後すみやかに横臥姿勢へと変化します。

    子犬たちはゆるやかに群れを成し、母犬に密着して横たわります。

    環境温度が下がっている場合(18℃以下)に限り、子犬同士は密着し、部分的には互いに重なり合い、位置を交替しながら(動的小群)、内因性の熱喪失を軽減します。

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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