【獣医師解説】子犬、犬の赤ちゃんの腎臓の発生・奇形・腎機能
これによって、腎臓は出生までは、わずかな機能しか持たない状態にあり、形態的にも完成されていません。
ようやく生後2~4週目になって腎臓組織形成は終了し、器官としての機能を発揮できるようになります。
したがって、正常な発達過程と遅発型の腎変性との区別が難しいため、幼若犬の腎障害には診断上の不確実性が存在します。
子犬を飼育する上で、腎臓の出生後のゆっくりとした成熟に関しては、注意が必要となります。
腎臓組織形成がまだ完了していないため、犬の新生子の糸球体の温過率は成犬の場合より25%低く、管分泌率は15%低いです。
- 出生後、たしかに非機能的な糸球体の数は存在していますが、糸球体の毛細管ループはまだ成犬並みには分化していません。
- 第2適応期と第3適応期の過程でようやく、上皮の再形成によって膜の浸透性が高められ、これにより濾過過程の完全な進行が可能になります。
腎機能の発達の緩慢さのもうひとつの原因は、犬の新生子においてはまだ完全な腎臓循現が備わっていないという事実にあります。
- このことは、動脈の全身平均血圧が発達しきっていないことと関係しています。
- 数週間後になってようやく、血圧の安定に伴い、腎血流量(RPF. renal plasma flow)の直線的上昇がみられるようになります。
したがって、生後数日から数週の子犬は、高い水分要求量が満たされない場合、急速に脱水状態になる危険があります。
濃縮された尿を生成する能力もまだ限られています。
成犬の腎臓は尿を血清の2~4倍のモル濃度に濃縮できるのに対して、新生子の尿のモル濃度は、血清のモル濃度よりもわずかに高いのみです。
新生子の場合はわずかに比重の高い尿が形成されます(1.006~1.017。成犬の正常値は1.030~1.045)。
環境温度が高すぎる場合や、水分補給が不足している場合には、1.017を超える一時的な比重の増加が生じます。
比重の低下は、水分補給の過多や、腎疾患または全面的腎不全の場合に生じます。
同様に、管分泌率も生後になってようやくゆっくりと上昇します。
たとえばグルコースやアミノ酸は初めのうちは再吸収されず、4週齢以上の幼犬になって初めて行われます。
このため、新生子では生理的アミノ酸尿症がみられます。
また、電解質除去率は新生子の場合、成犬よりも低いです。
ただし、電解質濾過能力および管再吸収などの腎機能は、急速に向上します。
尿生成はすでに胎子の腎臓においても可能です。
尿は少量ずつ恒常的に生成され、尿膜嚢に排出されます。
新生子の尿生成は増加していきますが、その尿を自律的に排出できないという特徴があります。
排尿は、生後3週間は母犬の世話行動によって誘導されます。
第2適応期と第3適応期の間に神経の刺激伝達と圧受容器の状態が成熟し、自律的かつ制御された尿排出が可能になります。