獣医師解説!猫の猫クラミジア症〜症状、原因、治療法〜

    動物病院で、自分の猫が猫クラミジア症と診断された...

    愛猫が猫クラミジア症と診断されたけど、

    • 病院ではよくわからなかった...
    • 病院では質問しづらかった...
    • 混乱してうまく理解できなかった...
    • もっと詳しく知りたい!

    という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?

    ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。

    中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。

    ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、

    情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、

    その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。

    例えば...

    • 人に移るの?
    • 治る病気なの?
    • 危ない状態なのか?
    • 治療してしっかり治る?

    これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?

    結論から言うと、猫クラミジア症は1歳齢以下の猫にみられ、主な症状は結膜炎です。

    くしゃみ、鼻汁などの上部呼吸器症状を示すこともあります。

    結膜炎は、瞬膜の充血、痙攣として片側性に生じ、やがてもう一方の眼にも広がります。

    ほとんどの場合、全身症状は認められないが、一過性の発熱、食欲不振および体重減少が認められる場合もあります。

    感染猫の眼分泌物や鼻汁と接触することにより感染します。

    ドキシサイクリンなどのテトラサイクリン系抗菌薬で治療可能です。

    国内では、不活化ワクチンが認可されています。

    この記事を読めば、猫クラミジア症の症状、原因、治療法までがわかります。

    限りなく網羅的にまとめましたので、猫クラミジア症と診断された飼い主、猫を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。

    ✔︎本記事の信憑性
    この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
    論文発表や学会での表彰経験もあります。

    今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

    臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

    記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

    » 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

    ✔︎本記事の内容

    猫の猫クラミジア症〜症状、原因、治療法〜

    猫クラミジア症の病原体

    猫クラミジア症の病原体

    分類

    猫クラミジアは、クラミジア目、クラミジア科、クラミジア属に属しています。

    人や動物に病原性を示すクラミジア科細菌の多くは、クラミジア属のほか、クラミドフィラ属に分類されていたが、2015年に両者は単一のクラミジア属に統合されました。

    クラミジア属には、オウム病クラミジア、トラコーマクラミジアなど、人や動物に病原性を示す11種が含まれます。

    ネオクラミジア

    海外では、角・結膜炎を呈した猫226頭中39%(88頭)において、原生動物(アメーバ)の共生細菌として知られる環境クラミジア(クラミジア様細菌)であるネオクラミジアが検出されたという報告があるが、病態との関連や日本での実態は不明です。

    クラミジア科は形態学的に異なる2つの増殖環をもつ偏性細胞内寄生性細菌であることを最大の特徴とします。

    猫クラミジア症の疫学

    猫クラミジア症の疫学

    猫クラミジアは、世界中に広く分布しており、猫の結膜炎、上部呼吸器疾患の主要な原因とされます。

    例えば英国では、慢性の結膜炎を呈した猫の30%から本菌が分離されました。

    日本における状況は以下のとおりです。

    2000年の血清調査の結果では、野良猫の45.5%、飼い猫の17.3%が抗体陽性でした。

    また、結膜炎および上部呼吸器疾患を示す飼い猫の59.1%から本菌が検出され、それぞれ10%以上は猫カリシウイルスや猫ヘルペスウイルス1型との共感染でした。

    また、本症に対するワクチンが認可されて以降の調査では、動物病院に来院したワクチン未接種猫670頭の約20%が抗体陽性でした。

    すなわち、猫クラミジアは日本の猫に普遍的に分布していると考えられます。

    猫クラミジア症の宿主

    クラミジア属は、各種動物や人に感染し、不顕性から結膜炎、流産、全身症状など多様な病態を示します。

    それぞれの種で主な宿主は決まっているものの宿主域は広く、人へ感染するものも多いです。

    猫クラミジア症の人への感染

    猫クラミジア症の人への感染

    オウム病クラミジアは、主に鳥類が保菌していますが、人へ感染すると人獣共通感染症であるオウム病を引き起こします。

    また、数は少ないものの、羊流産菌(C.abortus)の人への感染も報告されています。

    このほかのクラミジア属についても、人への感染を示唆する多数の報告があります。

    猫クラミジアについては、HIV陽性患者の結膜炎の原因となった例が報告されています。

    日本でも、健常人の3.l%、小動物臨床獣医師の5.0%が猫クラミジア抗体陽性という報告があり、人への感染が示唆されています。

    近年、中国の血清疫学調査において、飼い犬の12.1% (264頭中)が猫クラミジア抗体陽性であることが報告されました。

    同調査における猫の抗体陽性率は5.9%(221頭中)であり、猫クラミジアの感染源として、猫と同じく人に近い環境で飼育される犬の重要性が示唆されています。

    猫クラミジア症の感染経路・感染の特徴

    猫クラミジア症の感染経路・感染の特徴

    保護施設などの集団飼育環境下では、最も普通に認められる感染症です。

    猫クラミジアは、感染猫の眼分泌物や鼻汁中に排菌され、接触やエアロゾルにより感染します。

    感染猫では、膣および直腸からクラミジアが検出されますが、交尾による感染があるかは定かではありません。

    眼分泌物は、60日ほどで自然に治まるが、クラミジアは持続感染のかたちで存在します。

    1歳齢までの感染・発症が大部分ですが、生後1-2ヶ月は母猫からの移行抗体のため感染は起こりにくいです。

    偏性細胞内寄生性細菌ですが、感染性粒子である基本小体は細胞外の環境中でも安定します。

    猫クラミジア症の発症機序

    猫クラミジア症の発症機序

    猫クラミジア症の病態発現機序については、詳細な検討がされていないのが現状です。

    そこで、トラコーマクラミジアなど、他種クラミジアでの知見をもとに解説します。

    感染猫の眼分泌物中のクラミジア基本小体は、まず角膜上皮細胞に感染します。

    感染細胞内で、基本小体が網様体へと転換し増殖するに伴い、インターロイキン(interleukin. IL)-1などの炎症性サイトカインが放出されます。

    IL-1の放出により、感染細胞、周辺の細胞からの各種サイトカイン、ケモカイン産生が誘導され、炎症反応が若起します。

    感染局所では、血管透過性が亢進し、好中球やマクロファージなどの炎症細胞が浸潤します。

    クラミジアによる感染細胞の破壊、浸潤した好中球による周辺組織破壊、細胞増殖などの細胞性応答により乳頭様結膜炎、濾胞性結膜炎が形成されます。

    猫クラミジア症の臨床症状

    猫クラミジア症の臨床症状

    猫クラミジアは当初、「猫の肺炎起因因子(feline pneumonitis agent)」として報告されたが、最も重要なのは眼瞼痙攣、結膜浮腫、うっ血を伴う急性・慢性の結膜炎です。

    眼症状

    感染から発症までの潜伏期は2~5 日とされます。

    症状は片側の眼球から始まり、やがてもう片側にも波及します。

    初期には水様性の眼脂を認めます。

    眼脂は次第に粘液性となり、重度では粘膿性となります。

    結膜炎では、眼の不快感、眼瞼痙攣、瞬膜の充血を認めます。

    結膜の浮腫は猫クラミジア症の特徴です。

    慢性例では、結膜の癒着を認めることもあります。

    猫クラミジアの単独感染では、角膜炎や角膜潰瘍となることはまれです。

    角膜に病変を生じるのは、猫ヘルベスウイルス1型やストレプトコッカス属細菌などとの混合感染の場合が多いです。

    呼吸器症状

    眼症状とともに、くしゃみ、鼻汁などの上部呼吸器症状を示すこともありますが、軽度です。

    その他

    感染初期には.、一過性の発熱、食欲不振、体重減少といった症状が認められることもあります。

    クラミジア属菌は、人やヒツジなどで流産、胎子死、不妊など繁殖障害の原因となることが知られているが、猫クラミジア感染においてそのような報告はありません。

    実験感染では、結膜炎に加え、後肢破行、腸炎を生じた報告があります。

    猫クラミジア症の診断

    猫クラミジア症の診断

    猫クラミジアによる結膜炎を猫ヘルベスウイルス1型、猫カリシウイルスによる結膜炎と臨床症状から鑑別することは困難です。

    混合感染例も多いです。

    細菌分離検査

    確定診断には、微生物学的診断が必要となります。

    眼分泌物、結膜スワブなど病変部材料を培養細胞や発育鶏卵に接種し、猫クラミジアを分離することが最も確実ですが、時間と熟練を要します。

    遺伝子検査

    結膜スワブから抽出したDNAを用いてPCRやReal-time PCR法によりクラミジア遺伝子を検出することが、最も一般的であり感度も高いです。

    塗抹標本の検査

    ギムザ染色で、結膜スワブ中いのクラミジア封入体を観察することができます。

    ただし、他の好塩基性の顆粒との鑑別に注意が必要です。

    血清学的検査

    血清中の抗体は、精製菌体や感染細胞を抗原とした酵素抗体法(ELISA法)で測定することができます。

    猫クラミジア症の治療

    猫クラミジア症の治療

    クラミジアは、テトラサイクリン、エリスロマイシン、リファンピシン、フルオロキノロン、アジスロマイシン系抗菌薬に感受性を示します。

    ラクタム系抗菌薬は無効であり、むしろ持続感染の原因になるので注意が必要です。

    ドキシサイクリンは、他のテトラサイクリン系にくらべ若齢猫への副作用が少ないこと、投与開始後2日程度で臨床症状の軽減が認められることから、第一選択薬として用いられています。

    ABCDガイドライン (The European Advisory Board on Cat Diseases 欧州猫病学諮問委員会)では、ドキシサイクリンの4週間の経口投与(10mg/kg、1日1回)が推奨されています。

    臨床症状の消失後も2週間の投与が必要です。

    ビブラマイシン(Vibramycin)100mg

    ビブラマイシンは、有効成分としてドキシサイクリンを含有するテトラサイクリン系の抗生物質です。細菌のタンパク質合成を阻害することで、静菌的・殺菌的に感染を治療します。

    1箱8錠  3箱:2,660円

    適応菌種
    ドキシサイクリンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、淋菌、炭疽菌、大腸菌、赤痢菌、肺炎桿菌、ペスト菌、コレラ菌、ブルセラ属、Q熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ)、クラミジア属

    • 体重1kgあたり5mgを12時間毎に経口投与
    • 体重1kgあたり10mgを24時間毎に経口投与

    ビブラマイシンジェネリック100mg(Monodoks) 

    ビブラマイシンジェネリックは、有効成分のドキシサイクリンを含有するテトラサイクリン系の抗生物質です。

    ビブラマイシンジェネリックの有効成分であるドキシサイクリンは、細菌のたんぱく質の合成を阻害することで、細菌を殺して、感染を治療します。

    1箱14カプセル

    1箱 1,473円

    他の抗菌薬としては、フルオロキノロン系が用いられます。

    バイロシン(Bayrocin)50mg[海外版バイトリル]

    バイロシン(Bayrocin)は、有効成分のエンロフロキサシンを含有する、犬および猫の尿路感染症治療薬です。国内初の犬・猫用フルオロキノロン(ニューキノロン)系抗菌薬として知られているバイトリルの海外版です。

    バイロシン(Bayrocin)に含有されている有効成分のエンロフロキサシンは、細菌細胞のDNA合成に欠かせない酵素であるDNAジャイレースを特異的に阻害することで、細菌の増殖を抑え、犬・猫の尿路感染症(細菌性膀胱炎を含む)を改善します。

    エンロフロキサシンは、グラム陽性菌やグラム陰性菌などの幅広い細菌に対して、強い殺菌効果を示します。また投与後は感染組織に速やかに移行します。

    有効菌種:本剤に感受性の下記菌種
    ブドウ球菌属、レンサ球菌属、腸球菌属、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、シュードモナス属、ステノトロホモナス・マルトフィリア、アシネトバクター・カルコアセティクス

    1日1回体重1kg当たりエンロフロキサシンとして下記の量を経口投与。
    猫: 5mg

    1箱100錠 1箱 2,539円

    猫クラミジア症の予防

    救護収容所、繁殖施設などの集団飼育下では蔓延しやすい感染症です。

    そのため、過去に集団発生が認められた施設では、ワクチン接種やドキシサイクリン投与(少なくとも4週間)などの対策を講じるのが望ましいです。

    猫クラミジア症のワクチン

    猫クラミジア症のワクチン

    日本では、猫クラミジア不活化ワクチンを含有する混合ワクチンが認可されています。

    初回免疫処置は、猫では9週齢に初回接種を行い、2回目は2~4週間後に実施します。

    成猫では、2~4週間隔で2回接種します。

    どちらも初回免疫処置の後は暴露の可能性の高い環境では、毎年の接種が推奨されています。

    「猫クラミジアワクチンの効果について」

    猫クラミジアのワクチンでは、完全に感染を防御することはできません。

    重症化を防ぐことに効果があります。

    副反応としてまれですが、接種後7~21日に発熱、倦怠感、破行を示すことがあります。

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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