犬と猫の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)・免疫介在性血小板減少症と新生子同種溶血現象の原因・症状・診断・治療方法【獣医師解説】

犬と猫の免疫介在性溶血性貧(IMHA)と新生子同種溶血現象の 原因・症状・診断・治療方法 【獣医師解説】

病院で免疫介在性溶血性貧血(IMHA)・免疫介在性血小板減少症と診断された・・・

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)・免疫介在性血小板減少症の治療方法が知りたい・・・

本記事では、犬と猫の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)・免疫介在性血小板減少症と新生子同種溶血現象の原因・症状・診断・治療方法についてお話しします。

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結論から言うと、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は自己に対する免疫寛容の破綻により引き起こされます。

IMHAは犬に多くみられる疾患であるため、ここでは犬のIMHAを中心にお話しします。

猫に関しては、必要に応じて情報をまとめました。 

この記事は、犬と猫の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)・免疫介在性血小板減少症と新生子同種溶血現象の原因・症状・診断・治療方法が気になる飼い主向けです。

この記事を読めば、犬と猫の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)・免疫介在性血小板減少症と新生子同種溶血現象の原因・症状・診断・治療方法がわかります。

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✔︎本記事の信憑性

この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、 論文発表や学会での表彰経験もあります。

今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

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✔︎本記事の内容

犬の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)と免疫介在性血小板減少症(IMTP)の 原因・症状・診断・治療方法

免疫介在性溶血性貧血の診断と治療 

〇はじめに 

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)において、その病理発生に関与している抗体および抗原が確認できることはほとんどないです。

原発性IMHAは、赤血球自体に対して抗体が産生される自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と同義語です。

免疫反応を惹起させる原因や基礎疾患が存在する場合は二次性IMHAに分類されますが、

臨床的には、原発性IMHAと二次性IMHAを鑑別することは困難であり、両者をひとまとめにしてIMHAとしているのが現状です。

原因が何であれ、IMHAは自己に対する免疫寛容の破綻により引き起こされます。

輸血新生子同種溶血現象による溶血性貧血は赤血球の同種抗体によるもので、IMHAの一種です。

新生子同種溶血現象については後述します。

IMHAは犬に多くみられる疾患であるため、ここでは犬のIMHAを中心にお話しします。

猫に関しては、必要に応じて情報をまとめました。 

〇IMHAの発生機序 

免疫学的機序による赤血球の破壊はIgGあるいはIgM抗体および補体が赤血球表面に結合することにより開始します。

IMHAの多くは、IgGおよび/あるいは補体によりオプソニン化された赤血球が、マクロファージに貪食される血管外溶血です。

マクロファージにはIgG分子のFc部分および補体に対するレセプターがあり、これらレセプターを介して赤血球の貪食が起こります。

IgG1およびIgG3は特にFcレセプターに対する親和性が高いです。

補体成分のC3b,iC3bに加えIgGが結合することによりさらに貪食が亢進しますが、これは特に肝臓のマクロファージであるクッパー細胞で顕著です。

赤血球全体が貪食される場合膜の一部が貪食され球状赤血球となる場合があります。

球状赤血球は血球容積に対して表面積の小さな赤血球で、変形能が失われているため脾臓で捕捉されやすいです。

非常に多くのIgG分子により赤血球が被われた場合には、補体の活性化が起こり血管内溶血が起こることがあります。

マクロファージにはIgMのFc部分に対するレセプターは存在しないため、IgMに被われた赤血球の破壊は補体を介して起こり、通常、血管内溶血です。

溶血に関与している抗体の最適反応温度は、通常、体温に近い温度であり、温式抗体と呼ばれますが、まれに4℃が最適温度の寒冷式抗体もあります。

AIHAに関する最近の研究で、自己抗体が標的とする抗原が、赤血球膜に存在するグライコフォリンとアニオン交換ポンプであるバンド3であることが証明されています。

また、細胞骨格分子であるスペクトリンに対する抗体もAIHAの犬から検出されています。

これらの赤血球抗原に対する自己抗体は、抗体価は低いが正常な犬においても検出されることがあり、これらの抗体は老朽化した赤血球の処理に関連しているのではないかと考えられています。 

〇二次性IMHAの原因 

IMHAの誘発原因としては、

  • 薬剤
  • 感染
  • 腫瘍性疾患
  • 免疫疾患

が知られています

バベシアヘモバルトネラ感染では免疫学的機序により赤血球破壊が進みます。

腎盂腎炎、子宮蓄膿症など多くの慢性感染症ではIMHAをはじめ種々の免疫疾患が誘発されることがあります。

また、ワクチン接種とIMHAの関連性も示唆されています。

  • 甲状腺機能低下症
  • 免疫介在性血小板減少症(ITP)
  • 免疫介在性関節炎
  • 全身性紅斑性狼瘡

など他の免疫疾患にともなってIMHAがみられることもあります。

IMHAがある種の犬に多発することから、遺伝的な素因のあることが示唆されている。

ヒトでは特定の組織適合性抗原がIMHAと関連していることが分かっています。

性別でみると、雌犬の方が雄犬よりもやや発生率が高く、これは不妊手術を受けている動物においても同様です。 

二次性免疫介在性溶血性貧血の原因 
  • 感染→ウイルス(FeLV、FIV)、細菌、寄生虫(ヘモバルトネラ、バベシア、フィラリア)
  • 薬剤→セファロスポリン、スルホンアミド、ペニシリン、プロピルチオウラシル、メチマゾール、プロカインアミド
  • ワクチン 
  • 腫瘍性疾患→特にリンパ系腫瘍 
  • 免疫疾患→全身性紅斑性狼瘡、甲状腺機能低下症 
  • 遺伝的素因→アメリカン・コッカー・スパニエル、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、オールド・イングリッシュ・シープドッグ、アイリッシュ・セッター、プードル、ダックスフンド

〇臨床症状 

IMHAは中年の犬に最も多く発生がみられています。

臨床症状は明確でないことが多いですが、下痢や嘔吐が典型的な貧血の徴候に先だってみられることがあります。

  • 元気消失
  • 運動不耐性
  • 発熱
  • 呼吸困難
  • 可視粘膜蒼白
  • 黄疸
  • 血色素尿やビリルビン尿、
  • 触診で脾腫や肝腫(脾腫の方が一般的)

が確認されることもあります。

発熱は赤血球破壊あるいは基礎疾患によるものであり、

呼吸困難はIMHAの合併症である肺血栓塞栓症あるいは基礎疾患に由来すると考えられます。

まれではありますが、寒冷自己免疫性溶血性貧血の場合、耳介、尾の先、鼻、爪床などの変色や壊死が主訴で来院することが多いです。

寒冷AIHAでは貧血や溶血は通常みられないですが、軽度の貧血が認められることもあります。 

〇スクリーニング検査 

  • 赤血球数の低下
  • ヘモグロビン濃度の低下
  • PCVの著明な低下
  • MCVの上昇
  • MCHCの低下
  • 網状赤血球増加症

が認められ、大球性低色素性の再生性貧血と分類されます。

IMHAの場合、通常、再生像が非常に強く、網状赤血球産生指数が3以上となる症例も多いです。

しかしながら、初診時には正球性正色素性貧血の像を呈し、非再生性貧血と分類されることがあります。

これは、赤血球の破壊が急激であったために来院時にはまだ十分な網状赤血球が末梢血中に出現していない、

あるいは抗体のターゲットが赤血球の前駆細胞であるために、末梢血中に網状赤血球が出現していない可能性が考えられます。

IMHAでは貧血に加え、成熟好中球を主体とした白血球増加症がみられることが多く、時に50,000/μLを越えることもあります。

血小板に関しては、免疫介在性血小板減少症の併発(Evan’s症候群)あるいはDICにより血小板減少症が起こる可能性があります。

血液化学検査では、肝逸脱酵素(特にALT)の軽度の上昇がみられることがあるが、これは貧血による組織の低酸素症によるものです。

大量の赤血球が破壊されることによりヘモグロビンの代謝産物であるビリルビンの血中濃度が上昇しますが、

通常、高ビリルビン血症は軽度であり、犬の場合はビリルビン尿症が先行します。

著明な高ビリルビン血症がみられる場合、貧血だけでなく肝障害の併発を考えるべきです。

血管内溶血の場合にはヘモグロビン血症およびヘモグロビン尿症がみられることがあります。 

〇IMHAの確定診断 

IMHAの確定診断には、

  • 自己凝集
  • 著明な球状赤血球増加症
  • 直接クームス試験陽性

のうちどれか1つを満たす必要があります。 

1.自己凝集 

自己凝集はIgMあるいは多量のIgGが存在する場合に引き起こされます。

自己凝集はEDTA加チューブ内やスライドグラス上で肉眼的に観察できることがあります。

自己凝集があると、自動血球計算機を用いた通常の血液検査では正確な値を得ることができませんが、

血液塗抹標本による血液細胞の評価は可能です。

血液塗抹標本では、凝集した赤血球塊が観察されます。

自己凝集は、フィブリノゲン濃度が高い時などにみられる連銭形成と、血液を生理食塩水で希釈することにより鑑別します。

まれですが、犬の赤血球は温度が低くなると非特異的に凝集することがあるので、本来の自己凝集か否かを確認する必要があります。

確認のための手順としては、血液を遠心し血漿を捨て、生理食塩水を加え転倒混和した後、再び遠心するという洗浄作業を数回繰り返し、最後に赤血球の3倍量以上の生理食塩水を加え、自己凝集の有無を確認する。

 

2.球状赤血球 

球状赤血球はその名のごとく、球状の赤血球です。

血液塗抹標本上では、正常な赤血球に比べ小型でセントラルペーラーを欠いています

球状赤血球は抗体の付着した膜の一部がマクロファージに貪食されることにより形成され、浸透圧脆弱性が非常に亢進しています。

低リン酸血症、亜鉛中毒、細血管異常性溶血性貧血においても少数の球状赤血球が出現することがありますが、

IMHAの場合、通常、非常に多くの球状赤血球が認められます。

犬のIMHA例中の2/3で多数の球状赤血球が観察されています。

猫の赤血球にはもともとセントラルペーラーが認められないので、球状赤血球を鑑別することは不可能です。 

3.クームス試験 
この文章は消さないでください。
直接クームス試験は赤血球膜表面に結合した抗体および/あるいは補体を検出するための検査です。

 

IgG、IgMおよび補体に対する抗体を含んだ抗血清はクームス試薬と呼ばれ、犬用、猫用がそれぞれ市販されています。

クームス試験は赤血球膜表面に付着した抗体および/あるいは補体に結合することによって、赤血球同士が架橋し、肉眼的に赤血球凝集として観察されます。

自己凝集がある場合は、最初から赤血球が凝集しているのでクームス試験は意味がありません。

理論的には、IMHAはクームス陽性のはずですが、IMHAの約30%の症例で直接クームス試験はマイナスです。

つまり、クームス試験がマイナスだからと言って、IMHAを除外することはできません。

この解釈としては、マクロファージが赤血球を貪食するには十分な抗体が結合していますが、クームス試験で陽性を示すには赤血球に結合している抗体量が不十分であるためとされています。

 

溶血を起こすには赤血球1個当たり200~300個の抗体が必要であるとヒトでは報告されています。

クームス試験には直接クームス試験の他に血漿中に存在する抗体を検出する間接クームス試験があるが、臨床的な有用性は低いです。

  • IMHAの中には上記のどの条件も満たさない症例も存在します。
  • さらに、末梢血中に網状赤血球がほとんど出現しておらず、正球性正色素性の非再生性貧血と分類される症例もあります。

このような場合、溶血と血液検査のタイミングの問題、骨髄中で網状赤血球および/あるいはそれ以前の幼弱な赤血球前駆細胞が破壊されている可能性が考えられる。

CBCで非再生性貧血と診断され、検査のタイミングの問題が除外された場合は、骨髄検査が必要です。 

〇猫のIMHA 

この文章は消さないでください。
猫のIMHAは多くが二次性であり、何らかの基礎疾患に起因していることがほとんどです。

特にFeLVヘモバルトネラ感染は重要であり、IMHAが疑われる猫では必ずこれらの疾患について検査すべきです。

クームス試験陽性のIMHAが、

  • FIP
  • FIV感染症
  • 膿瘍
  • 耳血腫
  • 膵臓の腺癌
  • 慢性間質性腎炎

の猫で報告されています。

FeLV感染による貧血は単なる溶血性貧血とは異なり、造血抑制を含む種々の病態を引き起こす複雑なものです。

臨床症状としては、

  • 元気消失
  • 可視粘膜蒼白
  • 頻脈
  • 頻呼吸
  • 嘔吐
  • 黄疸
  • 発熱
  • リンパ節腫大
  • 肝脾の腫大

などがあげられます。

犬と同様に血管外溶血が主体であるため、ヘモグロビン血症やヘモグロビン尿症はほとんどみられません。

猫の赤血球は比較的小型で、セントラルペーラーを欠いているので血液塗抹標本で球状赤血球を確認することは不可能です。

また、猫では健康な動物でも連銭形成がみられるため、自己凝集との鑑別には注意が必要です。

血液検査でヘモバルトネラ・フェリスが検出されない場合でも、ヘモバルトネラ感染を完全に除外することはできず、数回にわたる血液塗抹標本の評価が必要です。 

〇新生子同種溶血現象 

この文章は消さないでください。
赤血球の同種抗体は同じ種の血液型を決定する抗原に対する特異的な抗体です。

新生子同種溶血現象が臨床的に問題となるのはです。

猫の血液型はABシステムであり、A、B、ABの3つの血液型が存在します。

対立遺伝子AはBよりも優性であるため、タイプAの猫はホモ接合(A/A)の場合とヘテロ接合(A/B)の場合がある。

タイプAの猫が持つ抗B抗体は力価が低いが、タイプBの猫が持つ抗A抗体は極めて強力である。

タイプBの雌猫とタイプAあるいはタイプABの雄猫が交配し、タイプAおよびタイプABの子猫が生まれた場合に同種溶血現象がみられます。

これらの子猫は初乳を摂取するまでは健康です。

つまり、初乳中に含まれる抗A抗体が子猫の体内に入り赤血球を破壊するのですが、子猫は数時間のうちに死亡することもあります。

同種溶血現象が起きた場合の症状は摂取した初乳の量および個体差により異なり、
中には尾の先端が脱落するだけで済む場合もあるが、一般的には子猫を助けることは難しいです。

 

新生子同種溶血現象を防ぐには、

  • 交配前に血液型を調べ、タイプBの雌猫はタイプBの雄猫とのみ交配させる、
  • タイプBの母親から生まれたタイプAやABの子猫は生後24時間まで、タイプBの母親の母乳ではなく、タイプAの雌猫の乳を飲ませる
  • 人口哺乳を行う

などの工夫が必要です。

犬における新生子同種溶血現象は、

輸血あるいは過去の妊娠によりDEA1.1抗原に感作されたDEA1.1マイナスの雌犬が出産した子犬で起こる可能性があります。

つまりこの雌犬がDEA1.1プラスの雄犬と交配、DEA1.1プラスの子犬が生まれ、

赤血球に対する抗体を含んだ初乳を摂取した場合に同種溶血現象が起こります。 

〇IМHAの治療 

IМHAの治療のゴールは

  • 抗体産生の抑制
  • 補体の活性化阻止
  • マクロファージによる赤血球の貪食阻止

です。

この文章は消さないでください。
IМHAの治療は、グルココルチコイドおよび免疫抑制剤がおもに使用されますが、その他に輸血やヒト免疫グロブリンなどが用いられることもあります。

寒冷AIHAの治療には免疫抑制剤が必要とされることもありますが、

寒冷凝集素は耳介や尾の先端など循環血液温度の下がった部位で標的と結合するので、

動物を寒い所に置かないようにすることが重要です。 

1.グルココルチコイド 
この文章は消さないでください。
IMHAの治療には通常、免疫抑制量のプレドニゾロン(治療開始時2~4㎎/㎏、sidあるいは2㎎/㎏、bid)が用いられます。

治療の初期の段階で一時的にデキサメタゾンを使用することも可能ですが、

  • プレドニゾロンよりも消化管潰瘍や膵炎を引き起こす可能性が高く、
  • また1日おきに投与しても視床下部-脳下垂体-副腎軸に易経を及ぼすなど、

長期のコントロールには適しません。

また、プレドニゾロンに比べ特に優れていません。

多くの場合、プレドニゾロン投与後3~4日で反応がみられるが、時として10~14日かかることもあります。

ステロイド剤による消化管潰瘍の予防には

  • スクラルファート
  • ファモチジン
  • ラニチジン
  • シメチジン

などのH2ブロッカーが用いられます。 

2.免疫抑制剤 

グルココルチコイドと同時に使用可能な免疫抑制剤には

  • シクロホスファミド
  • アザチオプリンシ
  • シクロスポリン

の3剤があります。

シクロホスファミドはアルキル化剤で抗癌剤として知られていますが、強力な免疫抑制剤でもあります。

ポイント
  • 経口薬と注射薬があり、通常50㎎/㎡で1日おきに経口投与します。
  • 急性で重篤なIMHAの場合は200㎎/㎡で静脈内投与することも可能です。
  • 副作用として食欲不振、消化器症状、骨髄抑制がみられることがありますが、投与量の調節により通常コントロールできる。
  • しかしながら、出血性膀胱炎が発症する危険性があるので、長期投与には向かない。

シクロスポリンはT細胞に対して選択的に免疫抑制効果を持つ強力な免疫抑制剤です。

骨髄抑制を引き起こすこともなく、コストを度外視するのであれば、おそらくIMHAの治療薬として最適な薬剤です。

シクロスポリンは薬剤により生態活性が大きく異なるため、血中濃度を測定する必要があります。

最小有効血中濃度は500ng/mlです。

静脈注射用のシクロスポリンもありますが、経口投与薬よりも有効か否かは今のところ不明です。

シクロスポリンは胃腸障害、歯肉の過形成、さらにオーバードーズにより腎毒性および肝毒性がみられるようになることがあります。

アザチオプリンはシクロホスファミドほど強力な免疫抑制剤ではないですが、グルココルチコイドとの併用で十分効果が期待できます。

ポイント
  • アザチオプリンは効果発現までに少なくとも2~3週間はかかります。
  • 副作用として、膵炎や肝障害を引き起こすことが知られていますが、実際にはまれです。
  • 投与開始後2~3週間で、極めて稀に重篤な骨髄抑制が起こることがありますが、可逆性で白血球数のモニターで回避できます。
  • アザチオプリンは経口薬で、投与量は2㎎/㎏/日です。

は犬に比べ免疫抑制剤に対する許容範囲が狭いため、各個体に適切な投与量を決定するのが難しいです。

シクロホスファミドは犬と同様、50㎎/㎡アザチオプリン0.3㎎/㎏/日とされています。

しかしながら、幸いなことに猫は犬と異なりグルココルチコイドの長期投与による副作用がほとんどないので、
IMHAの治療に免疫抑制剤が必要とされることはめったにないです。 

 

3.輸血 

IMHAの動物を治療する場合、輸血をすべきかどうかは常に悩むところです。

この文章は消さないでください。
免疫抑制剤の効果がみられるようになるまでには、通常1週間、時には数週間かかるため、症例によっては治療の初期段階で輸血が必要となります。

輸血をしなければ動物が死ぬというような場合、もちろん輸血を行うべきです。

しかしながら、IMHAの動物はすでに自己の赤血球を破壊する抗体を産生しており、輸血された赤血球が破壊される可能性は高いです。

輸血された赤血球の寿命は短いことが多く、溶血を増悪させる可能性については常に議論の的となっています。

したがって、どうしても輸血の必要性のある動物に対してのみ輸血を行うべきです。

IMHAの動物の場合、クロスマッチの効果が擬陽性となることが多いので、

可能であれば血液型判定を行い、同じ血液型の動物の血液を用いることが望ましいです。

特に猫では血液型判定が重要となるが、残念ながら日本ではこれらの検査を行うことができません。

アメリカでは最近、Оxyglobin(重合牛ヘモグロビン)という血液製剤が登場しました。

Oxyglobinは血液型には関係なく使用可能であり、重度の貧血の動物に、短時間ではあるが、安全かつ確実に酸素運搬能を回復させることができます。

Oxyglo-binの大きな利点は、室温保存できることと保存期間が非常に長いことです。

全血や成分輸血製剤が容易に手に入るアメリカでは、コストや輸血のリスクを考慮しながらこれらの血液製剤を選択することができます。 

4.その他の治療薬、治療法 

以上の免疫抑制剤の他にもIMHAや免疫介在性血小板減少症(IMTP)の治療に用いられている薬剤があります。

ビンクリスチン(0.5mg/㎡、0.02mg/kg)はIMTPの犬に静脈内にボーラスで投与することにより、血小板数の増加が期待できます。

アンドロゲンの誘導体であるダナゾールは、

ステロイドの投与量を減少させることができるとしてグルココルチコイドとの併用が推奨された薬剤ですが、

近年その有効性は疑問視されています。

ポイント
  • ダナゾールの作用機序としてはIgとFcRの結合を阻害する可能性が示唆されています。
  • ダナゾールの投与量は5mg/kgで1日2~3回、経口投与です。
  • 副作用としては肝毒性と雌犬の雄性化が知られているが、きわめてまれです。

通常の免疫抑制剤による治療に反応しない症例に対する他のオプションとして、

  • γグロブリン
  • プラズマフェレーシス
  • 脾摘

があげられます。

しかしながら、これらの治療法はいわゆる”最後の手段”であり、他の治療法を試みる前に行うべきではありません。

ヒトγグロブリンの静脈内投与(0.5~1.5g/kg/12時間)により速やかな改善が認められることがありますが、

ヒトγグロブリン投与の危険性として肺血栓塞栓症発生が指摘されています。

プラズマフェレーシスが有効であったという報告はありますが、一般臨床の現場における応用は難しいです。

IMHAではDICおよび肺血栓塞栓症症発生により動物が死亡することが多いので、

重篤な症例では入院加療中、ヘパリン投与も考慮すべきです。

ヘパリン75~100U/kgを1日に3~4回、皮下に投与します。 

犬の免疫介在性血液疾患における免疫抑制剤の使い方 

〇はじめに 

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)と免疫介在性血小板減少症(IMTP)は犬において最も一般的な免疫介在性血液疾患です。

これらは赤血球や血小板(巨核球)系の免疫系による破壊によって引き起こされますが、

症例によっては免疫系が骨髄の赤血球前駆細胞に作用し、赤芽球癆(PRCA)の病態を引き起こす場合があります。 

本項では、IMHA、IMTP、PRCAに対する免疫抑制治療について、犬の免疫介在性血液疾患に対する治療をまとめました。

〇免疫介在性溶血性貧血(IMHA)に対する免疫抑制治療 

IMHAの治療の目的は、 

  1. 免疫学的機序に基づく赤血球の破壊を抑制するための特異的治療 
  2. 一般状態の改善を目的とした支持療法 
  3. DIC、肺血栓塞栓症などの合併症の予防 

の大きく3つに分けられます。

したがって免疫抑制剤のような特異的治療だけがIMHAの治療ではなく、何を優先させるべきかを常に認識しておく必要があります。 

1.ステロイド反応性のIMHA症例 

免疫抑制剤としてまず第一に選択されるのは副腎皮質ステロイド剤です。

逆に言えば副腎皮質ステロイド剤以外の免疫抑制剤の使用についてはまだ経験による判断が大きく手探りで治療を行わなくてはならない状況です。

副腎皮質ステロイド剤の中ではプレドニゾロン

(犬:1~2mg/kg、q24h(24時間毎)or q12h(12時間毎)、猫:2~4mg/kg、q24h or q12h)

が一般的に用いられます。

ステロイド剤にはリンパ球の数と機能を抑制する作用だけでなく、マクロファージによる血球の貪食を抑える効果があるため、最も即効性のある薬剤であるとされます。

しかし即効性があるとはいえ、効果の発現には3~7日かかるのが一般的です。

また消化管潰瘍の予防を目的としてH2ブロッカーやスクラルファートの併用が推奨されます。

ステロイド剤による初期治療に成功したとしても、免疫介在性血球減少症の治療は長期間にわたって行うべきです。

血球数が正常域に達して1~2週間たってから3~4週間毎にきわめて緩徐に減量する慎重さが必要であり、
できれば最低6ヵ月間は投与を続けるべきと考えられています。

一部の症例ではその後投薬を中止することが可能です。

長期管理におけるステロイド剤の減量を副作用の軽減を図りたい場合には

  • アザチオプリン(初期投与量2mg/kg、q24h)
  • シクロスポリン(ネオーラル:2.5~5mg/kg、q12h)

を併用することも可能です。 

2.ステロイド抵抗性のIMHA症例 

ステロイド剤だけでは効果が不十分ではありますが、状態が比較的安定している場合には、アザチオプリンやシクロスポリンなどをできるだけ早期に併用して、その反応を観察する。

しかしアザチオプリンあるいはシクロスポリンは効果の発現まで数週間以上かかるとされるため、

寛解を急ぐ必要がある場合には作用の発現が比較的速い

  • シクロフォスファミド(200mg/㎡、IV、単回あるいは50mg/㎡、PO、隔日で4回)
  • ヒト免疫グロブリン製剤(ガンマガード:0.5~1.5g/kg、6~8時間かけて点滴静注)

を用いることで寛解に持ち込める場合があります。

ただしシクロフォスファミドについてはIMHAにおいて明らかな死亡率の上昇および
網状赤血球数の低下が報告されており、
現在では使用を控えるべきであると考えられています。

ダナゾール(5mg/kg、q12h)の併用が効果があるとする報告もありますが、最近は効果が疑問視されていたり、副作用や費用の面から使用されないことが多いです。

抗リウマチ薬であるレフルノミド(2~4mg/kg、q12h)が難治性のIMHAに対して効果があったという最近の報告があり、昨年秋に国内販売が開始されましたが、シクロスポリン同様値段が高いのが難点です。

ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン:30~10mg/kg/日、3日連続)を行うことで改善が認められることがあることも報告されています。

しかしその理論的根拠は十分でなく、IMHAに対するステロイドパルス療法の使用法は明らかではありません。

〇IMHAに対する免疫抑制治療を行う前に 

ここではIMHAにおける治療を紹介しましたが、実際には免疫抑制療法を行いながらも死亡してしまう症例は少なくないです。

IMHA症例(39症例)の初診から1ヵ月の時点の生死を調べたところ、41%(16症例)が免疫抑制療法を行いながらも死亡していました。

これらの症例において予後因子の検討を行ったところ、

  • 白血球増多症
  • 高ビリルビン血症
  • 血小板減少症
  • FDP値の上昇
  • DICの併発

が予後因子となりうることが明らかとなりました。

つまり治療を開始する前に、これらの所見の多くが該当するような症例においては、

  • 低酸素や血栓症による重度の組織障害
  • 急激な溶血
  • DICの併発

のために、免疫抑制療法を行っても予後不良となる可能性が高いです。

特にDICと予後との関連についてはこれまでの報告においては否定的でしたが、

今回の調査においては血液凝固線溶系検査を実施した27症例中16症例(58%)がDICを併発しており、このうち75%が死亡していました。

このようにDICや血栓塞栓症などの併発は症例の予後を左右するものであり、
IMHAの治療においては有効な免疫抑制療法を行うとともに、
合併症の予防にも留意することが重要であると考えられています。

■DICの診断基準 

1.血小板数の減少(<200×10³/μl) 

2.FDP値の上昇(≧10μg/ml) 

3.PTまたはAPTTの延長(基準値の25%以上) 

3項目を満たす→DIC確定 ・2項目を満たす→DIC疑い 

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no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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