獣医師解説!犬と猫のパスツレラ症〜原因、症状、治療法〜

    パスツレラ症はパスツレラ属薗によって引き起こされる人獣共通感染症です。

    犬や猫の場合、感染していても明確な症状を示さない場合がほとんどです。

    まれに猫同士の争いによる咬傷や掻傷により、皮膚化膿症となります。

    人では、犬および猫の岐傷や掻傷により、局所感染および呼吸器系感染が引き起こされます。

    犬・猫の口腔内における常在率が高く、伴侶動物由来の感染症として重要です。

    この記事を読めば、犬パスツレラ症の症状、原因、治療法までがわかります。

    限りなく網羅的にまとめましたので、犬パスツレラ症ついてご存知でない飼い主、また犬を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。

    ✔︎本記事の信憑性
    この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
    論文発表や学会での表彰経験もあります。

    記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

    » 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

    ✔︎本記事の内容

    犬の犬パスツレラ症〜原因、症状、治療法〜

    犬パスツレラ症の病原体

    犬パスツレラ症の病原体
    パスツレラ属Pαsteurellαは、グラム陰性、通性嫌気性、非運動性の短桿菌で、しばしば多形性を示します。

    両端染色性(二極染性)を示し新鮮分離菌の多くは莢膜をもちます。

    犬パスツレラ症の疫学

    犬パスツレラ症の疫学
    パスツレラ属菌は犬や猫をはじめとして、ハムスター、ウサギなど一般的に飼育されている動物の口腔、鼻腔内および爪に常在します。

    保菌率は,犬の口腔で55~75%、猫の口腔で60~97%、猫の爪で20% と高率であることが報告されています。

    これらのことから、他の人獣共通感染症と比べ、人に感染する危険性が高いです。

    近年、犬や猫は人と生活域を共有し身体的接触をするなど、緊密な関係になっており、犬や猫から人への感染が増加しています。

    犬パスツレラ症の宿主

    犬パスツレラ症の宿主
    パスツレラ属菌は各種哺乳動物および鳥類に広く存在します。

    伴侶動物ではほとんどの場合、不顕性感染です。

    猫の皮膚化膿巣の40 ~ 58% からパスツレラ属菌が分離されたことから、猫にも病変が形成され、そこから人に感染することも示唆されています。

    犬パスツレラ症の感染経路

    犬パスツレラ症の感染経路
    動物間の感染は経気道、経口感染と考えられています。

    パスツレラ属菌は犬や猫などの伴侶動物の口腔、鼻腔内および爪に常在することから、人は咬傷、掻傷により感染します。

    動物との過剰な接触および飛沫による呼吸器系の感染もあります。

    犬パスツレラ症の感染の臨床症状

    犬パスツレラ症の感染の臨床症状

    動物の症状

    犬、猫では無症状、不顕性感染が主である。

    本菌は犬や猫では病原性が低いです。

    種々の動物で一次病原体として敗血症を引き起こし、一次あるいは二次病原体として肺炎などの呼吸器系感染症を起こす原因となります。

    ウシ、ヒツジ、ヤギの敗血症と肺炎、ブタの肺炎と萎縮性鼻炎、家禽コレラ、ウサギのスナッフル(鼻性呼吸)などを引き起こすことが知られています。

    人の症状

    犬、猫の咬傷や掻傷による創傷感染では、創傷部位の発疹、腫脹、蜂窩織炎がみられます。

    その後、局所に感染して膿瘍、蜂窩織炎、リンパ節炎を起こします。

    創傷が深部まで達した場合、骨髄炎まで発展することがあります。

    創傷感染以外では呼吸器系感染が多く、高齢者や慢性気管支炎などの基礎疾患を有する場合、重症化します。

    犬パスツレラ症の感染の診断

    犬パスツレラ症の感染の診断
    犬や猫では常在していることから、診断のための菌検出は意味がないです。

    菌の分離培養(人)
    人において診断する場合は、菌の分離培養を行います。

    血清学的検査、遺伝子検査(人)
    血清学的診断法およびPCRなどを用いた遺伝学的な診断法は普及していません。

    犬パスツレラ症の感染の治療

    犬パスツレラ症の感染の治療

    犬・猫における治療

    抗菌薬の投与による治療を行います。

    セファロスポリン系薬、フルオロキノロン系薬などが用いられます。

    国内の動物病院に来院した動物から分離されたパスツレラ属菌について薬剤感受性を調べたところ、ほとんどの抗菌楽に感受性であったと報告されています。

    犬パスツレラ症の感染の予防

    犬パスツレラ症の感染の予防
    犬、猫では常在菌であるため、菌を体内から完全に排除することは難しいです。

    他の動物では、不活化ワクチンを用いて予防している国もあります。

    人への感染予防策としては、犬、猫を寝室に入れないようにするなど過剰な接触を避けるようにします。

    「最近話題となっている犬・猫ー人の感染症」

    カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症

    犬や猫の口腔内に常在している細菌です。

    人への感染経路はパスツレラ症と類似しています。

    報告されている患者数がきわめて少ないことから、まれにしか発症しないと考えられています。

    発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などの症状がみられます。

    重症例では敗血症や髄膜炎を引き起こし、死亡するケースも報告されています。

    コリネバクテリウム・ウルセランス感染症

    ジフテリア菌の類縁菌で、主に家畜などの動物の常在菌です。

    ジフテリア菌はジフテリア毒素を産生し、これが組織に傷害を与え、ジフテリアと呼ばれる呼吸器疾患を引き起こします。

    ウルセランス菌はこの毒素をもっておらず本来病原性はほとんどないです。

    まれにジフテリア毒素を産生するウルセランス菌が存在し、毒素産生菌がジフテリア様の症状を引き起こします。

    犬・猫から人への感染が報告されています。

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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