動物病院で、自分の猫がエキノコックス症と診断された...
愛猫が猫のエキノコックス症と診断されたけど、
- 病院ではよくわからなかった...
- 病院では質問しづらかった...
- 混乱してうまく理解できなかった...
- もっと詳しく知りたい!
という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?
ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。
中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。
ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、
情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、
その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。
例えば...
- 人に移るの?
- 治る病気なの?
- 危ない状態なのか?
- 治療してしっかり治る?
これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?
結論から言うと、エキノコックス症は、サナダムシの仲間(条虫)である人獣共通寄生虫の工キノコックスによって引き起こされる病気です。
猫でも成虫の寄生の報告はあるものの、好適な終宿主はキツネ、犬です。
人が感染すると肝機能障害を主徴とする致死性の疾病が惹起されます。
日本には多包条虫のみが分布・定着しているため、主に多包条虫について解説します。
本虫は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」で4類感染症に分類され、獣医師が犬のエキノコックス症を診断した場合には届出の義務が生じます。
日本国内では、北海道のみに分布すると考えられていたが、本州においても北海道からの移動犬や野犬の感染が見つかっており、北海道外でも注意が必要です。
この記事を読めば、猫のエキノコックス症の症状、原因、治療法までがわかります。
限りなく網羅的にまとめましたので、猫のエキノコックス症と診断された飼い主、猫を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。
臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
猫のエキノコックス症〜症状、原因、治療法〜
この記事の目次
猫のエキノコックス症の病原体
猫での寄生が問題となるエキノコックスは、多包条虫です。
国内で多包条虫の生活環が維持されているのは北海道です。
北海道での飼育猫あるいは野良猫、また北海道外であっても流行地での飼育歴のある猫の寄生は注意しなければなりません。
猫のエキノコックス症の疫学
北海道における最近のキツネでのエキノコックス寄生率は30~40%前後を推移しています。
野犬を合む犬の解剖調査では寄生率1%、糞便を材料とした飼育犬の調査では寄生率0.4%と報告されています。
猫での感染は、1966~2006年に北海道が実施した猫108頭の解剖調査では感染率4.6%と報告されています。
また、1997~2007年に北海道内で集められた486頭の猫の糞便を対象として実施された糞便内抗原検査では、9頭(1.9%)がエキノコックス感染に対して陽性反応を示しました。
しかし、これらの感染猫の糞便に虫卵は確認されていません。
猫でのエキノコックス感染では、成虫の発育は不良で虫卵を産出するまでには至らないことがほとんどです。
ただし北海道で飼育されていた6歳齢の飼育猫で、糞便内に虫卵の排出が報告されています。
多包条虫の侵淫地であるドイツでも、猫400頭の解剖調査で5頭(1.25%)に寄生が報告されています。
猫のエキノコックス症の宿主
エキノコックスの生活環では、猫は終宿主となり、小腸に成虫が感染します。
この点は、多包条虫の好適な終宿主となるイヌ科動物、すなわちキツネや犬と同じですが、成虫の発育は必ずしもよいとはいえないです。
猫のエキノコックス症の感染経路と生活環
多包条虫は、本来キツネを終宿主、野ネズミ(ヤチネズミ、ミカドネズミやハタネズミなど)を中間宿主とする寄生虫で、捕食者ー被食者関係を利用して伝播します。
中間宿主となる野ネズミを捕食する機会は、犬よりも猫の方が多いと考えられます。
上述しているように、多包条虫の感染機会をもった猫であっても、小腸での成虫の発育は不良で、必ずしも好適な終宿主ではありません。
すなわち、糞便とともに虫卵を外界に排出することはまれであることから、生活環の維持においての貢献はきわめて小さいと考えられます。
猫のエキノコックス症の感染の特徴
ネズミを捕食する性質から感染率は高いが、猫の小腸でのエキノコックス成虫の発育は悪く、虫卵を排出することはまれです。
しかしながら、猫から虫卵が検出された事例もあるため、十分に注意は払わなければなりません。
猫のエキノコックス症の臨床症状
成虫の病原作はほとんどなく、たいていの場合症状を示しません。
猫のエキノコックス症の診断
猫の小腸に寄生したエキノコックス成虫の虫卵産出はまれであり、糞便への排出もほとんどないため、糞便検査での虫卵検出は難しいです。
また、エキノコックスの虫卵はテニア属条虫、特に猫では猫条虫と形態的には区別ができません。
感染の確認は糞便内抗原検査が有効であり、虫卵が検出された場合には、大学や国立感染症研究所などの研究機関の協力を得て、虫卵DNAの検査が必要となります。
猫のエキノコックス症の治療
プラジクアンテル5mg/kgの経口投与が有効です。
虫卵が排出されていないケースでも、駆虫後の糞便に虫卵が出る可能性は皆無ではないので、駆虫後の糞便の処理には注意します。
ドロンシット(Droncit)犬猫用 【1箱20錠】
1箱20錠 4,984円
体重5kg未満の猫 1/2錠
裂頭条虫類の駆除には、体重1kg当たりプラジクアンテル30mg(体重5kg当たり3錠)を投与する。
ドロンシットは、犬・猫のおなかに寄生する各種条虫類に対して優れた駆除効果を発揮する犬・猫用条虫類駆除剤です。
ドロンシットは、有効成分としてプラジクアンテル(プラジカンテル)を含有しています。瓜実条虫、マンソン裂頭条虫、メソセストイデス属条虫、多包条虫、猫条虫など、各種条虫類を駆除します。
ドロンシットは投与前に絶食や下剤による前処置をする必要がないため、犬・猫に負担をかけることなく投与可能です。
猫のエキノコックス症の予防
猫に野ネズミの摂食機会を与えないように飼育管理を行う必要があります。
外に出入りする猫など、野ネズミを食べる機会をなくすことができないような場合は、定期的に駆虫薬を与えることも予防法の1つです。
「猫を連れて北海道を旅行した、あるいは猫を連れて北海道から移住してきたが、エキノコックスの感染が心配」
・猫はエキノコックス症に感染した野ネズミを食べて感染するので、北海道を旅行したときに、あるいは北海道に住んでいるときに、猫が野ネズミを食べる機会があったかどうかを確認します。
もし、そのような機会があった場合には検査を実施するべきです。