犬と猫の細菌性皮膚感染症: 標準的な診断法と治療法【獣医師解説】

    犬や猫の皮膚が痒そう、フケやかさぶたができている

    病院で、細菌性皮膚炎と言われた

    本記事では、細菌性皮膚感染症: 標準的な診断法と治療法についてまとめました。

    • 様子、経過を見てくださいと言われたけど心配...
    • 検査してくれなかった...
    • 病院ではよくわからなかった...
    • 病院では質問しづらかった...
    • 混乱してうまく理解できなかった...
    • もっと詳しく知りたい!
    • 家ではどういったことに気をつけたらいいの?
    • 治療しているけど治らない
    • 予防できるの?
    • 麻酔をかけなくて治療できるの?
    • 高齢だから治療ができないと言われた

    もしくは、病院に連れて行けなくてネットで調べていた という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?

    ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。

    中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。

    ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、 情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、 その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。

    例えば...

    • 人に移るの?
    • 治る病気なの?
    • 危ない状態なのか?
    • 治療してしっかり治る?

    これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?

    結論から言うと、細菌性皮膚炎は皮膚の細菌性感染症であり、表面性、表在性、深在性に分類されています。

    この記事は、愛犬や愛猫の細菌性皮膚感染症: 標準的な診断法と治療法が気になる飼い主向けです。

    この記事を読めば、愛犬や愛猫の細菌性皮膚感染症: 標準的な診断法と治療法がわかります。

    限りなく網羅的にまとめましたので、ご自宅の愛犬や愛猫の細菌性皮膚感染症: 標準的な診断法と治療法について詳しく知りたい飼い主は、是非ご覧ください。

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    ✔︎本記事の信憑性

    この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、 論文発表や学会での表彰経験もあります。

    今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

    臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

    記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

    » 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】や詳しい実績はこちら!

    ✔︎本記事の内容

    犬の細菌性皮膚感染症: 標準的な診断法と治療法

    膿皮症とは何か?

    皮膚の細菌性感染症

    膿皮症について知っておく必要がある事項

    • 認識する方法
    • 診断手順
    • 治療の選択肢 - 最適な治療薬

    膿皮症の種類

    表面性

    • 可能性外傷性皮膚炎
    • 間擦疹 -皮膚の雛壁の感染症
    • 粘膜皮膚膿皮症
    • 細菌過剰増殖症候群

    表在性

    • 膿痂疹
    • 表在性細菌性毛包炎
    • 表在性拡大性膿皮症

    深在性

    • 毛包炎/せつ腫症
    • ジャーマンシェパードの膿皮症
    • 鼻口部膿皮症
    • 足部膿皮症
    • 蜂窩織炎
    • 化膿性外傷性毛包炎/せつ腫症
    表面性表在性深在性
    混合細菌集団ブドウ球菌が圧倒的に多数ほとんどがブドウ球菌だが混合感染が多い
    細胞診が有用細胞診は裏付け細胞診は陰性であることが多い
    培養は行わない培養行われることもある培養は頻繁に実施
    外用療法全身性抗菌薬+外用療法全身性抗菌薬を長期的に投与

    膿皮症の臨床診断

    症状:表在性膿皮症(表在性細菌性毛包炎)

    • 膿疱
    • 丘疹
    • 痂皮
    • 虫に食われたような外観
    • 脱毛+鱗屑
    • 表皮小環

    細胞診

    有用な補助診断検査

    以下の場合は強く推奨されます

    • – 典型病変(膿疱)が存在しないか少ない場合
    • – 典型病変が存在するが、適切な経験的抗菌薬療法に対する反応が不良な場合
    • –  細菌培養を実施すべき場合

    以下に同時感染している場合の診断には必須

    • – Malassezia(マラセチア)
    • – 桿菌

    細菌培養

    表在性膿皮症では培養が必須

    • – 2週間経過しても改善率が50%未満
    • – 2週間経過後に新たな病変が出現
    • – 6週間経過しても病変が残存
    • – 細胞内桿菌
    • – 家庭内の他のペットに薬剤耐性感染症の既往がある

    抗菌薬使用中に検体を採取します– この慣行に反対するエビデンスはない

    感染した犬猫と家庭内および獣医診療所内で接触したペット、ヒトおよび環境間におけるメチシリン耐性Staphylococcus  pseudintermedius の伝染

    MRSP感染の発端となった犬と接触した同居犬

    – 36%がMRSP陽性-水平感染

    MRSP陽性のヒト(獣医診療所職員/飼い主)は188人中6人

    50%を超える診療所で環境検体の16%でMRSP陽性

    培養すべきもの
    膿疱が最適

    40頭のそれぞれから膿疱を3検体ずつ培養

    120検体中118検体(98.3%)でブドウ球菌が増殖

    表皮小環

    表在性膿皮症罹患犬の表皮小環検体の好気性培養に対する評価

    犬の表在性細菌性膿皮症:皮膚表面の検体採取法の評価および原因となっているブドウ球菌分離株の抗菌薬感受性

    皮膚病変の面積が±3 cm2

    • –乾燥した滅菌スワブで5秒間擦る
    • –生理食塩液で湿らせた滅菌スワブで5秒間擦る
    • –滅菌メス(#10)で5秒間掻爬する
    痂皮の下

    表在性膿皮症の治療

    以下に基づいて治療を選択します

    • 入手可能性
    • 安全性
    • 現地における抵抗性感染の有病率
    • 飼い主の投薬能力(投与経路/頻度)
    • 併発疾患
    • 薬物反応の既往歴
    • 病変の範囲/重症度

    外用療法

    全身使用:シャンプー、スプレー、コンディショナー、リンス

    • クロルヘキシジン、過酸化ベンゾイル、トリクロサン
    • カルボン酸(酢酸)
    • ヒドロキシ酸(乳酸、リンゴ酸など)
    外用療法: 成功の秘訣
    • 明確な指示を与える-ハンドアウト
    • 塗布が簡単になるように被毛を短くしておく
    • 10分間接触させる
    • まず感染領域に塗布する
    • 冷水または微温湯を使用する
    • 活動性感染には薬浴を週2回以上行う
    • 予防には薬浴を週1回行う
    • シャンプーとシャンプーの間にはスプレー、ワイプ、リンスを使用する
    • 直径が硬貨1枚分±26 mm(米国の25セント硬貨、日本の500円硬貨、欧州の2ユーロ硬貨)

    ISCAIDガイドライン2004年版の推奨内容:3選択に分類された全身性抗菌薬

    第1選択

    • – 経験的使用
    • – 耐性感染症の可能性がない

    第2選択

    • – 耐性感染症
    • – 培養および感受性試験の結果に基づく

    第3選択

    • – 強く推奨されない
    • – MRSAに感染したヒトの治療に用いられる抗菌薬
    第1選択(経験的使用)
    • 第1世代セファロスポリン系薬
    • セファレキシン
    • アモキシシリン/クラブラン酸
    • クリンダマイシン、リンコマイシン
    • 強化サルファ剤
    • ±第3世代セファロスポリン系薬 セフォベシン、セフポドキシム
    第2選択(培養感受性試験)
    • ドキシサイクリン、ミノサイクリン
    • クロラムフェニコール
    • フルオロキノロン系薬
    • リファンピシン
    • アミノグリコシド系薬
    • ±第3世代セファロスポリン系薬 セフォベシン、セフポドキシム

    第3世代セファロスポリン系薬: 第1選択か第2選択か?

    ガイドラインの著者の一部はこれらの抗菌薬が耐性感染症のリスクを増大させることを懸念している

    • – メチシリン耐性S. pseudintermedius
    • – 薬剤耐性グラム陰性菌(例 ESBLやAmpC E. coli )

    実状

    • – どの抗菌薬の使用も耐性感染症のリスクを増大させる
    • – 第3世代セファロスポリン系薬が他の抗菌薬よりもこのリスクを高めることを示すエビデンスはない
    第3選択(使用しないことが強く推奨される)
    • リネゾリド
    • テイコプラニン
    • バンコマイシン
    MRSP感染の危険因子
    • 入院または獣医診療施設の訪問(4件の研究)
    • 抗菌薬の使用歴(4件の研究)
    • – 過去30日~12ヵ月間における抗菌剤の使用
    • – クリンダマイシンはMRSPのリスクとして特異的に同定されている唯一の抗菌薬(Beck et al 2012)
    • – 注:2件の研究では抗菌剤の使用とMRSPの間に関連は示されなかった(Beck et al 2012, Lehner et al 2013).

    Lehner et al 2013, Beck et al 2012, Weese et al 2012, Eckholm et al 2012, Neinhof et al 2011, Bergstrom et al 2012

    犬における多剤耐性E. coliのリスク
    • 7件の研究が抗菌薬使用と耐性 coliを報告している
    • 検討した抗菌薬はすべて糞便中の耐性 coliの増加と関連していた
    • – アモキシシリン、エンロフロキサシン、セファレキシン、セフォベシン
    • – 抗菌薬を中止後にベースライン時の耐性E. coliレベルに戻った
    • 一般に犬に対する抗菌薬使用は耐性 coliの淘汰を促進する-第3世代セファロスポリン系薬に限らない

    Boothe et al 2011, Gronvold et al 2009, Trott et al 2004, Gibson et al 2011, Moreno et al 2008, Damborg 2011, Lawrence 2013

    膿皮症の治療薬:各薬剤について

    第1選択の全身性抗菌剤

    セファレキシン

    22~25 mg/kgを8~12時間毎に投与

    GI有害反応

    • -20%に嘔吐
    • -13%に下痢

    半減期が短いため、投与し損ねると影響が大きい

    アモキシシリン/クラブラン酸(4:1)

    – 13.75 mg/kgを12時間毎に投与

    – 広範囲の活性スペクトル

    – 皮膚および軟部組織の感染症

    – 尿路および歯牙の感染症

    – 好気性細菌と嫌気性細菌

    シンプリセフ®

    セフポドキシム  プロキセチル

    -5~10 mg/kgを24時間毎に投与

    -時間依存的抗菌作用を有する経口抗菌薬に最適な薬物動態プロファイル

    -シンプリセフはペニシリンまたはセファロスポリンに過敏性の犬に用いてはならない。妊娠中および授乳中の雌犬または繁殖用の雄犬における安全性は確立されていない。

    Cherni JA,, et al. Intern J Appl Res Vet Med 4(2): 85-93, 2006.

    コンベニア注®

    セフォベシンナトリウム 80 mg/mL

    犬および猫に対し8 mg/kgを単回皮下注射により投与する。

    コンベニア注はペニシリン系薬やセファロスポリン系薬に対するアレルギー反応の既往を有する犬または猫に使用してはな らない。

    他のセファロスポリン系薬と同様に、犬および猫における副作用には、嘔吐、下痢、食欲低下/食欲不振および嗜眠がある。

    授乳中または繁殖用の動物におけるコンベニア注 の安全性は確認されていない。

    Stegemann MR, et al. J Sm An Practice 48: 378-386, 2007.

    コンベニア注を診療で用いるには

    コンベニア注 1 mL = セフォベシンナトリウム 80 mg

    1mLで10 kgを治療。

    ※日本には4mLバイアル(40㎏分)が存在する。

    コンベニア注は多数のよくみられる皮膚感染症に対し1 回の注射で最長14日間の治療が行える

    • 犬:表在性膿皮症、膿瘍、創傷 [S. intermedius、 canis(G群)]
    • 日本: 皮膚感染症、尿路感染症および歯周病にも適応
    • 猫:膿瘍および創傷(. multocida)
    • 日本: 皮膚感染症

    犬の表在性および深在性膿皮症に対する全身性抗菌薬療法の有効性:システマティックレビュー

    報告されている最良のエビデンス

    • – 表在性膿皮症に対するセフォベシンの高い有効性を示す十分なエビデンス
    • – 深在性膿皮症に対するアモキシシリン/クラブラン酸の高い有効性を示す十分なエビデンス

    犬の細菌性毛包炎、膿瘍または感染創の治療におけるセフォベシンの有効性および安全性

    ・犬118頭をConvenia® で治療-62頭 [52%]が細菌性毛包炎

    ・118頭中101頭(85.6%)が単回注射のみによる治療

    ・最終評価時点(Day 28)において:-118頭中97頭(82.2%)が治癒

    1回で済む治療のコストが経口薬による治療の3~17倍になるにもかかわらず、76.2% が第一選択治療としてセフォベシンナトリウムを受け入れた。

    5 kg:3,540円(34.8 USD)

    10 kg:5,584円(54.8 USD)

    15 kg:7,672円(75.3 USD)

    第2選択の全身性抗菌剤

    培養および感受性試験の結果から適応とされる場合のみ使用

    – ドキシサイクリン/ミノサイクリン

    – フルオロキノロン系薬

    – クロラムフェニコール

    – アミカシン

    – リファンピン

    メチシリン耐性ブドウ球菌(MRS):重要性

    MRSはin vitroでの感受性にかかわらず、in vivoにおいてすべてのβラクタム系抗菌薬に対して耐性

    – セファレキシン、セファロチン、セファゾリン、セファドロキシル、セフポドキシム、セフォベシン、アモキシシリン/クラブラン酸が含まれる

    多剤耐性– フルオロキノロン系薬に対して耐性であることが多い

    ドキシサイクリン

    ・25、50、100 mg錠剤/カプセル

    ・Vibramycin®/ジェネリック

    ・5~10 mg/kg

    ・12時間毎

    ・副作用

    • 嘔吐/下痢
    • 猫における食道狭窄
    • ヒクラート製剤
    • 6 mLの水と共に錠剤を服用するか、スラリー状にして服用
    • 一水和物製剤を用いる
    クロラムフェニコール

    • 50、100、250、500、1000 mg
    • 錠剤/カプセル
    • ジェネリック
    • 25~50 mg/kgを8時間毎に投与
    • 錠剤をそのまま使用
    • 飼い主が取り扱う際は手袋を装着し、その後手洗いをする
    • – 致死的な再生不良性貧血

    副作用

    • – 嘔吐
    • – 造血毒性
    • – 後肢脱力
    • – P450酵素阻害薬
    • – NAVDF 2014抄録(Short et al)
    • ・105頭の犬をクロラムフェニコールで治療
    • ・39頭に有害事象
    • -18頭(17%)消化器症状
    • -14頭(13%)後肢脱力
    • -運動失調、振戦、起立困難-体重が重い犬に発現する傾向          
    アミカシン

    ・50 mg/mL、250 mg/mL

    ・15 mg/kgを1日1回SC投与

    ・腎毒性

    • 尿沈渣(円柱)をモニタリング
    • 血清中濃度のトラフ値(週2回)
    • 1~4 mg/L
    • 上昇または>10 mg/Lで注意
    • 血清中濃度のピーク値(数週間毎)
    • 20~25 mg/Lを目標とする
    • ・聴器毒性
    • 聴覚喪失(第8CN毒性)
    • 前庭疾患
    フルオロキノロン系薬

    表在性/ルーチンの感染症に過剰使用してはならない;深在性膿皮症、中耳炎に効果がある

    培養および感受性試験の結果に基づいて使用する

    動物用のフルオロキノロン系薬を使用する-バイオアベイラビリティが優れている

    Ca/Mg/Al含有制酸薬、スクラルファート、亜鉛の投与と2時間以上の間隔をあける

    Plumb DC ed. Plumb’s Veterinary Drug Handbook 6th ed. Blackwell Publishing, 2008, 343.

    ・Baytril® (エンロフロキサシン)

    -5~20 mg/kgを24時間毎に投与

    ・Orbax ® (オルビフロキサシン)

    -2.5~7.5 mg/kgを24時間毎に投与

    ・ゼナキル錠® (マルボフロキサシン)

    -2.75~5.5 mg/kgを24時間毎に投与

    すべてのフルオロキノロン系薬と同様に、急速な成長期にある未成熟な猫や犬、

    フルオロキノロン系薬への過敏症が判明している猫や犬へのゼナキル 錠の使用は推奨されません。

    臨床試験中に観察頻度が高かった有害反応は、活動低下、食欲低下、嘔吐および下痢でした。

    まとめ

    ポイント
    • 細胞診および細菌培養の実施が必須となるタイミングを知る
    • 表在性膿皮症に対する治療選択肢を理解する
    • 経口抗菌薬の全クール投与を
      -誰が可能で、
      -誰がそれを望んでいて、
      -誰が実際に実行できるか、を見抜く

     

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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