獣医師解説!猫の回虫症〜症状、原因、治療法〜

    動物病院で、自分の猫が回虫症と診断された...

    愛猫が猫の回虫症と診断されたけど、

    • 病院ではよくわからなかった...
    • 病院では質問しづらかった...
    • 混乱してうまく理解できなかった...
    • もっと詳しく知りたい!

    という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?

    ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。

    中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。

    ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、

    情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、

    その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。

    例えば...

    • 人に移るの?
    • 治る病気なの?
    • 危ない状態なのか?
    • 治療してしっかり治る?

    これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?

    結論から言うと、回虫症は、回虫科トキソカラ属の比較的大きな線虫の腸管感染によって引き起こされます。

    猫では猫回虫が多いが、犬小回虫の感染もみられます。

    犬回虫と異なり寄生に対する年齢抵抗性はなく、成猫でも虫卵陽性率は高めです。

    胎盤感染はしないが、母猫から子猫への経乳感染は起こります。

    糞便とともに外界に排出直後の虫卵には感染性はないが、湿潤で適温の外界では約4週間で感染性をもつ幼虫形成卵となります。

    幼虫形成卵は固有宿主である猫に感染するばかりでなく、非固有宿主である様々な動物(人を含めた哺乳類・鳥類)に感染しその全身組織で被嚢します。

    このような動物肉を食することで猫での感染が起こり、人でも感染が起こります。

    生活環境中の幼虫形成卵、あるいは被嚢幼虫を含む食肉を食した人でトキソ力ラ症と呼ばれる幼虫移行症が問題となるので、猫回虫卵を含む糞便を放置しないことが重要です。

    この記事を読めば、猫の回虫症の症状、原因、治療法までがわかります。

    限りなく網羅的にまとめましたので、猫の回虫症と診断された飼い主、猫を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。

    ✔︎本記事の信憑性

    この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
    論文発表や学会での表彰経験もあります。

    今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

    臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

    記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

    » 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

    ✔︎本記事の内容

    猫の回虫症〜症状、原因、治療法〜

    猫の回虫症の病原体

    猫の回虫症の病原体

    猫回虫Toxocara catiは、犬回虫Toxocara canisと同属で、回虫目、回虫科に属します。

    虫体は白~淡黄色の厚い外皮(クチクラ)で覆われ、体長は雄虫で3~7cm、雌虫で4~12 cm程度と犬回虫よりやや小さいです。

    虫卵は、65~75x60-67μmと犬回虫よりやや小型です。

    特徴的な蛋白膜を有するため、回虫以外の虫卵との区別は簡単だが、形態的に犬回虫との鑑別は困難です。

    患畜の種によって判別しても問題はありません。

    猫の回虫症の疫学

    猫の回虫症の疫学

    世界的に分布します。

    日本国内の猫での感染率は、埼玉県で行われた調査では、保護収容猫1,079頭の糞便検査では21.8%(235頭)から猫回虫卵が検出されています。

    青森県の一般家庭で飼育されている猫542頭の検査では、猫回虫卵の陽性率は、室内飼育の1~6カ月齢で高く(27.1%)、それ以降の年齢では低下していくのに対し室外飼育では1~6カ月齢(17.9%)、7カ月~1歳齢(18.5%)、4~5歳齢群(14.3%)と年齢が上がっても感染率の変化はありませんでした。

    環境中に虫卵や待機宿主が多く存在するとは考えにくい室内飼いの子猫の陽性率が高いことから、子猫は主に乳汁を介して猫回虫に感染していると考えられます。

    室内飼育猫では定期的な駆虫が行われることが多いため、成長に伴い感染率は減っていくが、室外飼育では成猫であっても駆虫機会が少なく感染が維持されているか、あるいは何度も繰り返し感染している可能性が示唆されます。

    人での幼虫移行症(卜キソカラ症)

    猫回虫は、犬回虫とともに人に幼虫移行症を引き起こすことがあります。

    犬や猫の糞便を放置することで、環境中に猫回虫卵を拡散しネオのみならず人への感染機会を増加させる可能性があります。

    猫の回虫症の宿主

    猫の回虫症の宿主

    猫およびネコ科動物、フェレット

    猫の回虫症の感染経路と生活環/感染の特徴

    猫の回虫症の感染経路と生活環/感染の特徴

    疫学の項で述べたように、犬回虫と異なり、宿主の年齢抵抗性はみられず、幼猫、成猫ともに感染します。

    幼虫形成卵の経口感染のほか、待機宿主の捕食や乳汁を介した感染が起こります。

    犬回虫のような胎盤感染は起こりません。

    感染力をもつ幼虫形成卵への発育には、4週間程度と犬回虫よりも時聞がかかります。

    飲み込まれた幼虫形成卵は、胃で孵化し、胃壁からリンパ、血行性に肝臓、肺を経て、再び消化管に戻り、成虫へと発育します(気管型移行)。

    この場合のプレパテントピリオドは約2カ月です。

    一部の幼虫は、全身型移行を行い、組織内で被嚢するか、授乳猫では乳腺中に移行し乳汁中に排出されます。

    哺乳期の子猫では、経乳感染が主な感染ルートです。

    子猫が母猫の乳汁を介して感染した場合、気管型移行より早く、感染から約5週間で産卵が開始されます。

    授乳猫の乳汁中には多くの感染期幼虫が含まれるので、飼い主への感染を防ぐためにも重要です。

    虫卵は12℃以上の湿潤な環境で発育を開始し温度条件にもよりますが、およそ2-3週間程度で感染幼虫が形成された幼虫形成卵になります。

    外界に排出された虫卵の環境抵抗性は強く、条件によっては何年も生きつづけけます。

    消毒薬などの様々な薬品にも強い抵抗性を示すため、ホルマリン固定した虫体であっても、虫卵は活性を維持している可能性があり、十分な注意が必要です。

    最終的には小腸に寄生し成虫となって虫卵を排出しますが、そこに至るまでには以下に記すような体内移行型と感染経路をとります。

    気管型移行

    生後2~3カ月齢の子猫に経口摂取された猫回虫卵は、小腸内で孵化し、幼虫は腸壁のリンパ管からリンパ節、門脈系の静脈に入り、肝臓へ移動します。

    その後、肝臓から後大動脈、心臓を経て肺にたどり着き、ある程度成長した後、気管支から気管、咽頭を経て(再嚥下)、胃に移動します。

    胃にしばらく留まった後にようやく小腸へと到達し、成虫となります。

    虫卵排出は、感染後4~5週で起こります。

    感染しても虫卵が排出されるまでの期間は、当然ながら糞便検査では診断できません。

    この期間をプレパテントピリオドと呼びます。

    全身型移行

    子猫の月齢が進むと、気管に移行する幼虫数は徐々に減少し大部分が第3期幼虫のまま大循環に乗り、全身へと移行します。

    全身の筋肉や臓器にたどり着いた幼虫は発育を休止し感染力を保持したまま被嚢します。

    一部の第3期幼虫は、そのまま腸管から排出され、他の猫への感染源となることも知られています。

    経乳感染

    妊娠末期や授乳中の雌猫では、再活性化した幼虫は乳汁中に移行し、哺乳期の子猫に感染します。

    子猫へ感染後、約5週で虫卵が排出されます。

    感染母猫の乳汁は人への感染源にもなるので、子供などが猫の乳汁を舐めないよう注意が必要です。

    ペットを触った後の手洗いの重要性の1つです。

    待機宿主

    幼虫形成卵を経口摂取したネコ科動物以外の非固有宿主体内では成虫にはなれないため、幼虫は全身の臓持に入り込み、全身型移行と同様に感染力を保持したまま被嚢し発育を休止します。

    これらの動物を終宿主である猫が捕食すれば、感染環が再び回りはじめます。

    人の幼虫移行症の原因としても、待機宿主として猫回虫に感染したウシ、ニワトリなどに由来する食肉の生食が重要視されています。

    猫の回虫症の待機宿主の捕食による感染

    猫の回虫症の待機宿主の捕食による感染

    猫回虫の幼虫形成卵を経口摂取したネコ科以外の動物の体内では、第3期幼虫は全身に移行し肝臓など各種臓器や筋肉中で感染力を保持したまま被嚢します。

    これを終宿主である猫が捕食すると、幼虫は胃壁に侵入して発育し、肝臓や肺を通ることなく、そのまま小腸に到達し成虫へと発育します。

    げっ歯類や鳥、ゴキブリ、ミミズ、甲虫、カタツムリなど多くの動物が待機宿主として、生活環に寄与していると考えられています。

    成猫への感染では、待機宿主を介したルートが主体であると思われます。

    この場合のプレパテントピリオドは約3週間です。

    飼育環境中に入り込んだ感染猫から排出される虫卵によりニワトリやウシなどが待機宿主となり、人ではこれら食肉を介したトキソカラ症が問題となります。

    猫の回虫症の発症機序

    猫の回虫症の発症機序

    小腸への成虫寄生では、大型虫体の接触による腸粘膜損傷などが起こります。

    消化管内の食渣を横取りされるため栄養不良に陥り、発育の遅延、被毛粗剛などが生じます。

    特に幼猫では多数寄生で重篤な症状が出る場合があります。

    猫の回虫症の臨床症状

    猫の回虫症の臨床症状

    小腸への成虫寄生により、嘔吐や下痢、発育不良、腹部膨満、異嗜、貧血、削痩などが現れます。

    虫体の吐出や多数寄生での腸閉塞、消化管壁穿孔による腹膜炎などが知られています。

    幼虫が体内の様々な臓器に迷入や異所寄生することによって、神経症状や黄疸など、その部位に応じた不特定の症状を呈することもあります。

    しかしながら臨床現場でこのような症例に遭過し診断に至るケースはほとんどないと思われる。

    血液像の変化やCBC、血液化学検査の値に異常が認められるのは、重篤な寄生や異所寄生時などの場合が多いです。

    猫の回虫症の診断

    猫の回虫症の診断

    糞便検査による虫卵検出を行います。

    犬回虫と異なり年齢抵抗性はないので、すべての年齢の猫で糞便検査が有用です。

    糞使検査による虫卵検出を行います。

    直接塗抹法、浮遊法、ホルマリン・エーテル法などで検出可能です。

    浮遊法

    ショ糖液を用いた浮遊法は時間が経っても虫卵の変形が少ないです。

    育子期の母犬は子犬の肛門を舐めたり、糞便を口にすることもあるので、子犬由来の虫卵がそのまま母犬の糞便から検出されることもあります。

    猫の回虫症の治療

    猫の回虫症の治療

    猫では、エモデプシド、イベルメクチン、エプリノメクチン、セラメクチン、モキシデクチン、パモ酸ピランテル、フェパンテルなどが使用できます。

    犬にくらべ、内服させるのが難しいことが多いため、外部寄生虫も合めた様々な寄生虫に有効なスポット剤が市販されています。

    状況に合わせて適宜使用します。

    エプリノメクチン、エモデプシド、モキシデクチンは体内移行中の幼虫にも有効です。

    レボリューション

      

    背中に垂らすだけノミダニ駆除&フィラリア症予防。

    マダニに対応していないため、室内ペット向け

    対象:フィラリア・ノミ・ミミヒゼンダニ

    成分 :セラメクチン

    価格帯

    形状 スポットオン

    数量 3本

    メーカー:Zoetis

    ミルプラゾン

    飲み薬タイプの猫の犬糸状虫(フィラリア)症予防、消化管内寄生虫駆除剤です。

    フィラリア予防から線虫(猫回虫、猫鉤虫)駆除、条虫(瓜実条虫、多包条虫(エキノコックス))駆除までトータルにカバーすることができます。

    ノミ、マダニに対応していないため、室内ペット向け。

    スポットが苦手やさわれない猫ちゃんに。

    症状:犬糸状虫(フィラリア)症予防、消化管内寄生虫

    成分:ミルベマイシンオキシムとプラジクアンテル

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    数量  2個

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    マダニに対応していないので、自然が大好きなペットは注意が必要

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    数量:6本

    メーカー:Zoetis

    対象:フィラリア・ノミ・ミミヒゼンダニ

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    オールインワン商品のため価格が高い

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    数量:3本

    メーカー:Zoetis

    対象:フィラリア・ノミ・ミミヒゼンダニ・マダニ・回虫

    成分:セラメクチン・サロラネル

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    成分:フルララネルとモキシデクチン

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    猫の回虫症の予防

    猫の回虫症の予防

    排出直後の糞便中の虫卵には感染力がないため、速やかな糞便の処理が重要です。

    犬回虫とは異なり、成猫になっても成虫が寄生するので、定期的な駆虫が望ましいです。

    特に屋外への出入り自由な猫では、野外に生息する待機宿主の捕食によって感染を繰り返すことから、駆虫は必須です。

    「子犬や子猫の駆虫計画について」

    「子犬や子猫の駆虫計画について」

    ・子犬、子猫を迎える場合、駆虫はその子犬や子猫がいた環境を考慮して計画する必要があります。

    買ってきたのか、もらってきたのか、それまでにいた環境が衛生的であったかどうかが重要となります。

    拾ってきた子猫であれば、最初の健康診断の際に、体重、日齢などをみて可能な限り早めに駆虫をした方がよいです。

    ノミやマンソン裂頭条虫なども寄生していることも多いので、回虫だけでなく、その他の寄生虫も同時に駆除できる駆虫薬の投与を勧めます。

    回虫卵を排出している子犬であれば,大部分の幼虫が体内で被嚢してしまう前、生後半年までのできるだけ早期の駆虫が効果的です。

    新しく飼い始めるのか、多頭飼育しているのか、室内飼いであるのか、これらの条件でも治療や予防に必要な駆虫薬や間隔も異なってくるため、一概に「こういう計画で」というのは言いきれません。

    また、ターゲットが回虫だけでよいのか、条虫も寄生していそうなのか、フィラリア予防もしたいのか等々も考慮し、それぞれに適した様々な製剤が出ているので、適宜選択して使用します。

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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