獣医師解説!犬と猫の電解質を徹底解説:ナトリウム(Na、Sodium)、 クロール(Cl)、カリウム(K)

体調が悪く、動物病院で電解質:ナトリウム(Na、Sodium)、 クロール(Cl)、カリウム(K)の検査をしましょうと言われた・・・

健康診断をしたら、電解質:ナトリウム(Na、Sodium)、 クロール(Cl)、カリウム(K)に異常があると言われた・・・

本記事では頻繁に行われる検査であり、動物の状態に大きな異常を伴う電解質:ナトリウム(Na、Sodium)、 クロール(Cl)、カリウム(K)についてお話しします。

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結論から言うと、電解質は体重などとともに体液の水分量の増減評価に必須の検査項目です。

通常、Na、K、Clは同時に測定されます。

この記事は、愛犬や愛猫の電解質のバランスが崩れていると病院で言われた飼い主向けです。

この記事を読めば、愛犬や愛猫の電解質検査の意味や検査結果の重要性がわかります。

限りなく網羅的にまとめましたので、ご自宅の愛犬や愛猫の電解質検査について詳しく知りたい飼い主は、是非ご覧ください。

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✔︎本記事の信憑性

この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。

今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

✔︎本記事の内容

獣医師解説!犬と猫の電解質を徹底解説:ナトリウム(Na、Sodium)、 クロール(Cl)、カリウム(K)

犬と猫のナトリウム(Na,Sodium)

この文章は消さないでください。
高 Na血症、低Na血症、脱水、 浮腫、電解質

Na は細胞外液の陽イオンの大部分を占め、血中Na濃度の変化は血漿浸透圧に最も大きな影響を及ぼします。

体重などとともに体液の水分量の増減評価に必須の検査項目です。

補液の種類や流量の決定のために欠かせません。

一方、Cl は 細胞外液の陰イオンとしては最も多いイオンです。

Naとともに体液異常の検出に用いられるほか、HCO3の量とも関係して酸塩基平衡の指標としても利用されます。

通常、Na、K、Clは同時に測定されます。

検査のときに気をつけること

各検査機関・機器の参照値を下記に示しました。

Naの参照値(mEq/L)

抗凝固剤としてNaを含むものを使用する場合には、測定値に影響が出る可能性がるので、ヘパリンリチウムを利用した採血管を用いて測定することが多いです。

Clの測定では臭素 (Br) も Clとして測定されます。

てんかん発作のコントロールのために臭化カリウムを投与している場合には、Brの影響でClが異常高値となることもあります。

検査によってわかること

嘔吐、下痢、腎不全など、さまざまな病態でみられる脱水症状溢水症状を把握するために測定されます。

異常値となる疾患

低Na血症

低 Na血症となる疾患を下記に示しました。

電解質異常の治療計画の立案のためには、まず体液量が減少しているのか増加しているのかを把握することが必要です。

継続的に来院している動物では体重測定が有用です。

脱水を伴う低Na血症は、激しい嘔吐など消化器症状などで多くみられます。

同じ低Na血症でも、体重増加や浮腫を伴う低Na血症の場合には治療方針が全く異なります。

体重の増加がみられる場合には、体内の水分貯留傾向が強いので、輸液ではなくむしろ利尿が必要となります。

脳や胸部に疾患がある動物で著しい低 Na血症の場合には、まれな疾患として、SIADH(抗利尿ホルモン不適切分泌症候群)を鑑別診断として考慮します。

低Na血症
  • 脱水がみられる場合
    嘔吐、下痢、サードスペースへの Na喪失
  • 細胞外液量が増加している場合
    うっ血性心不全、肝不全、ネフローゼ症候群、腎不全
  • 薬剤(サイアザイド系利尿剤)
  • 副腎不全(アジソン病、クッシング病の治療時)
  • 高浸透圧性低 Na 血症(マンニトールなどの負荷、高血糖)
  • SIADH(抗利尿ホルモン不適切分泌症候群):体液量は変わらない
  • 異所性抗利尿ホルモン産生腫瘍
  • 中枢神経疾患
  • 肺疾患
  • 薬剤(ビンクリスチン、サイクロフォスファミドなど)
ポイント
  • 低 Na であっても脱水とは限らない。体重の増減や浮腫の有無を評価する。

高Na血症

高 Na血症の原因となる疾患を下記に示しました。

腎不全や消化管からの水分喪失に関連して高Na血症がみられることが多いです。

特に猫では、腎不全症例の多くで尿濃縮能が低下するため、高Na血症を呈することが多いです。

状態の悪化により自力での飲水量が低下すると、さらに重度の高Na血症となります。

高Na血症
  • 低張液の喪失
    腎性(腎不全、高Ca血症)
    浸透圧利尿(マンニトール等浸透圧利尿剤、高カロリー輸液、高血糖)
    消化管からの喪失
    尿崩症
  • 飲水量低下
    意識障害、水を飲めない環境

異常がみられたときどうするか

Na の異常は体重の増減と組み合わせて評価し、補液による水和を行うのか、あるいは利尿を行うのか明確な方針を決定して治療を開始します。

重篤な高Na血症、低 Na血症を急速に補正すると浸透圧の変化により脳障害のリスクを伴うので、ゆっくりと補正します。

脱水がみられる場合の高Na血症では体内の水分喪失とともにナトリウム喪失があると考え、水分補充とともに Naの補充が必要となります。

ポイント
  • 著しい Na濃度の異常はゆっくりと補正。

犬と猫のクロール(Cl)

Cl濃度が異常となる疾患を下記に示しました。

通常、血中のNa/Cl比は1.4/1です。

Cl値が異常であってもこの比に変化がない場合には、Clの異常はNa値の異常と同じ原因で起こっていると考えられます。

比が異常な場合には血液ガス測定によりHCO3を求め、アニオンギャップ(AG)を計算します。

AG = Na - (Cl + HCO3)

で計算され、 参考基準値は10~14 程度です。

アニオンギャップの増加は、通常、健常な動物では測定されない陰イオン(ケトン、乳酸、リン酸など)の増加を示唆します。

Clの参照値(mEq/L)

Clの異常を生じる疾患・病態

高Cl血症
  • Br 投与(みかけの高値) Clを含む点滴
  • 呼吸性アルカローシス
  • Na以外の陽イオンの増加 (K、Ca、Mgなど)
低 CI 血症
  • 嘔吐や消化管からの喪失
  • 腎臓からの喪失
  • Cl以外の陰イオンの増加(リン酸、乳酸、ケトンなど)

カリウム (K. Potassium)

この文章は消さないでください。
高K血症、低K血症、腎不全、 アジソン病

Kは細胞内に存在する陽イオンのなかで最も多いです。

細胞内のK濃度はおよそ 150 mEq/Lで、細胞外液の濃度は3.5~5mEq/Lです。

  • Kイオンの濃度差は細胞膜電位の維持に重要です。
  • 血清K濃度の異常は膜電位を介する細胞機能、特に神経、筋肉の機能に影響を及ぼします。
  • 細胞外液中のKは体内に存在する総K量のおよそ2%にすぎず、検査で判明する血清中のK濃度が生体内のKの過不足を直接表すわけではありません。
  • 血中のK濃度は細胞内外へのK移行の影響を強く受けます。

このことは電解質補正を計画するうえで重要です。

検査のときに気をつけること

検査機関・機器でのKの参照値を下記に示しました。

Kの参照値(mEq/L)

赤血球内のK濃度は高いので、溶血検体ではKは高値となります。

また、抗凝固剤としてKを含むもの(例:EDTA - カリウム)を用いた場合には著しい高値となることがあります。

血清K値に影響する因子

細胞外液中に存在する Kは体内のわずか2%程度です。

血中のK値は細胞内からの移行の影響を強く受けます。

pH が 0.1 低下する(酸性になる)と細胞内から外液にKが移行し、血中のK濃度は 0.4~0.6上昇するといわれています。

同じ理由で重炭酸ナトリウムの投与は pHを高くするため、血中K値を低下させます。

アシドーシス、アルカローシスはK値の異常の原因として重要です。

K濃度に影響を与える薬剤としてはインスリンがあり、インスリンを投与すると細胞内にKが取り込まれ血中K値は低下します。

この作用を利用して危険なレベルの高K血症に対してはインスリンを投与することがあります。

その際、インスリンによる低血糖を防ぐためにグルコースも併用されます。

血清K値が異常となる疾患

低K血症

通常K値が 3.5 mEq/L以下を指します。

低K血症による臨床症状は、通常、犬では 2.5 mEq/Lを下回ると発現し、猫では 3.5 mEq/L 程度でも発現するとされています。

臨床症状の重篤さは低K血症の程度と関連しており、2.0 mEq/L以下の場合には輸液による積極的な補充療法が適応となります。

臨床症状としては、

心筋の収縮力低下や尿の濃縮力障害、テタニー、麻痺性イレウス

などが挙げられます。

猫では筋障害も発生しやすいです。

低カリウムの原因となる疾患を下記に示しました。

原因は多くあるが、原因によらず低K血症自体が対症療法の対象となります。

糖尿病性アシドーシスでは治療とともにアシドーシスが改善され、Kが細胞内へ移動し低K血症になります。

治療前に正常または軽度の低K血症がみられる場合には、治療後の低K血症の発現に注意します。

犬・猫でみられる低K血症の原因
  • 食欲低下などによる摂取不足
  • 代謝性アルカローシス
  • 糖尿病性アシドーシスの治療時
  • 消化管からの体液喪失(特に長期間の下痢)
  • 慢性腎不全(猫)
  • 甲状腺機能亢進症
  • インスリン投与
  • グルコース投与
  • 利尿剤
  • 重炭酸ナトリウムの投与
ポイント
  • K はさまざまな要因で細胞内液、外液を移動する。
高K血症

血中K値が5mEq/L を超えた場合、高K血症とされます。

  • 6mEq/Lを超えると心電図上でT波の増高など心臓の電気生理的異常がみられ、8mEq/L を超えると神経・筋の障害がみられるようになります。
  • 8mEq/Lを超える場合には緊急疾患として治療します。

犬・猫でみられる高K血症の原因を下記に示しました。

獣医領域で多くみられるのは副腎皮質機能低下症末期腎不全です。

副腎皮質機能低下症でもBUN やクレアチニンが増加することがあり腎不全と見誤りやすいが、腎不全で高Kとなるのは乏尿または無尿期です。

Kの点滴中によっても高Kとなることがあるので、K の補充中はモニターが必要です。

犬・猫で高K血症の原因となる疾患・病態
  • 副腎皮質機能低下症
  • 腎不全(特に無尿期)
  • アシドーシス
  • 横紋筋融解
  • 腫瘍融解症候群(抗癌剤投与による腫瘍の融解)
  • 膀胱破裂、尿道破裂
  • 高濃度の K を多く含む輸液の投与
ポイント
  • 著しい高 K 血症の場合、まずは腎不全やアジソン病を疑う。

異常がみられたときどうするか

低K血症

軽度の場合には経口的にKの補給を行います。食事中には多くのKが含まれていますし、Kの経口製剤も入手可能です。

Kが2.0 を下回る場合には点滴による積極的な治療が必要です。

高K血症

重篤な不整脈がみられるなど緊急時には Ca製剤の投与が行われます。

CaはK濃度を低下させることはないが、高K血症による毒性に拮抗します。

そのほかに細胞内へのKの移入をねらい、重炭酸の投与やグルコース・インスリンの投与が行われます。

これらの治療を腎不全の症例に行う場合には、輸液による用量過負荷(肺水腫のリスク)に注意します。

経口のイオン交換レジンや透析を行うことがあります。

浸透圧 (osmolality)

この文章は消さないでください。
腎不全、腹膜透析、尿崩症

血漿の浸透圧は腹膜透析の透析液などを選択する際必要になります。

液体の浸透圧を決定するのは溶けている溶質の濃度(数)です。

細胞外液では陽イオンとしてNaイオンが多くを占め、K、Ca、Mg イオンも少量含まれます。

BUNやグルコースなども浸透圧に関与する程度の量存在しています。

陰イオンは陽イオンと同数(同じ電荷になるように)存在します。

これらのことから血漿中の浸透圧は以 下の式で近似されます。

血漿浸透圧 %=2 × (Na + K) + 血糖値 / 18 + BUN/2.8

犬・猫の文献的な浸透圧の参照値(単位:mOsm/kg) 

280~310

 

腹膜透析

実際の臨床現場で浸透圧のデータが必要な状況は多くないですが、腎不全の腹膜透析を行う際の透析液の決定に利用されます。

例えば Na 144 mEq/L、K6mEq/L、血糖値 120 mg/dL、BUN 140 mg/dL の腎不全症例では、上の式から浸透圧はおよそ357 mOsm/kgとなります。

この症例で腹膜透析を考慮する場合、浸透圧が 357 mOsm/kg 以上の腹膜透析液を入れることになります。

計算したとおりに水分が除去できないような場合には浸透圧を実測することもあります。

こんなことについて知りたい!これについてまとめて欲しい!というのがあれば下記からお願いします!

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no life no dogs & catsをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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