獣医師解説!犬と猫の電解質を徹底解説:マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、リン(IP)

体調が悪く、動物病院で電解質:マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、リン(IP)の検査をしましょうと言われた・・・

健康診断をしたら、電解質:マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、リン(IP)に異常があると言われた・・・

本記事では頻繁に行われる検査であり、動物の状態に大きな異常を伴う電解質:マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、リン(IP)についてお話しします。

  • 様子、経過を見てくださいと言われたけど心配...
  • 検査してくれなかった...
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  • 混乱してうまく理解できなかった...
  • もっと詳しく知りたい!
  • 家ではどういったことに気をつけたらいいの?
  • 治療しているけど治らない
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例えば...

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結論から言うと、電解質は必須の検査項目です。

この中でもカルシウムやリンは腫瘍や腎臓の病気を反映しており、原因疾患の治療はもとより、軽いし産むとリンの値そのものを補正することが重要です。

通常、Na、K、CIは同時に測定されます。

この記事は、愛犬や愛猫の電解質のバランスが崩れていると病院で言われた飼い主向けです。

この記事を読めば、愛犬や愛猫の電解質検査の意味や検査結果の重要性がわかります。

限りなく網羅的にまとめましたので、ご自宅の愛犬や愛猫の電解質検査について詳しく知りたい飼い主は、是非ご覧ください。

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✔︎本記事の信憑性

この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。

今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

✔︎本記事の内容

獣医師解説!犬と猫の電解質を徹底解説:マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、リン(IP)

マグネシウム (Mg)

この文章は消さないでください。
高Mg血症、低Mg 血症、腎不全、蛋白漏出性腸症

Mgは食事とともに摂取され、尿中に排泄されています。

体内ではCaと同様に狭い濃度内に調節されています。

臨床的に測定する機会は多くないですが、入院動物など重篤な動物では、Mgの異常は比較的高頻度にみられます。

検査のときに気をつけること

検査機関での参照値を下記に示しました。

Mgの参照値(mg/dl)

血中Mgが異常となる疾患

高Mg血症

高Mg血症を呈する疾患を下記に示しました。

高Mg血症の症状は元気消失、衰弱などで心電図ではPR間隔の延長、QRS群の延長などがみられることがあります。

過剰なMgは腎臓から排泄されるため、高Mg血症がみられることはまれですが、腎不全、尿路閉塞など泌尿器の異常に関連してみられることが多いです。

また、一部の制酸剤、下剤などMgを多く含む薬剤によっても生じることがあります。

Mg濃度は血中のK濃度とよく相関します。

高Mg血症
  • 一部の制酸剤、下剤など Mg を含む製剤腎不全
  • 尿路閉塞
  • 腎不全
低Mg血症

低Mg血症を呈する疾患を下記に示しました。

低Mg血症では、元気消失、食欲不振、テタニー症状、発作、運動失調などがみられることがあります。

治療の対象となるのは1mg/dL 以下の場合です。

さまざまな疾患が低Mg血症を起こします。

犬では、蛋白漏出性腸症で低Mg血症となることが知られているほか、僧帽弁逆流の犬でも低 Mg血症になることがあると報告されています。

薬剤では、グルココルチコイドやフロセミドなどによる尿量増加が低Mg血症の要因となります。

猫でも、胃腸疾患などで低 Mg血症がみられることがあります。

また、猫では糖尿病性ケトアシドーシスの治療時にも低Mg血症となることが知られています。

Na、K、Caの低下を併発していることもあり、症状を修飾します。

低Mg血症の動物はジギタリスの副作用を発現しやすいです。

低Mg血症
  • 蛋白漏出性腸症などの消化器疾患
  • 心疾患
  • 利尿剤の使用
  • 糖尿病性ケトアシドーシスの治療時

異常がみられたときどうするか

高Mg血症では、薬剤が原因の場合には薬剤を中止します。

尿量が確保できる場合には補液を行い、利尿をかけます。

低Mg血症に対してはMgの補給を行います。

低リン血症を併発している場合にはリンの補給を合わせて行います。

Mg含有の輸液も可能だが、動物での用量は不明です。

カルシウム (Ca)

この文章は消さないでください。
高Ca血症、低Ca血症、リンパ腫、 アポクリン腺癌、上皮小体腫瘍、 ビタミンD過剰症

血中Caの異常はさまざまな疾患で起こります。

高Ca血症の症状は、元気消沈、 食欲不振、多飲、多渇など非特異的です。

低Ca血症ではテタニーがみられます。

Caの異常はそれ自体が治療の対象となります。

一方で、Caの異常から原因疾患をある程度絞り込むことができる場合もあります。

検査のときに気をつけること

各検査機関・機器の参照値を下記に示しました。

Caの参照値(mg/dl)

血中Caは大部分がアルブミンと結合しており、残りはグロブリンと結合しています。

そのため、低蛋白血症の症例では、みかけのCa値は低くなります。

本来イオン化したCaを測定すべきですが、臨床的には以下の式でCa値を補正します。

補正 Ca = 実測 Ca値 + (3.5 - アルブミン濃度)

しかし、上式は動物ではイオン化Caとの相関がよくないという報告もあり、必要な場合にはイオン化Caを実測します。

異常値を示す疾患

高Ca血症

犬・猫で高Ca血症を呈する疾患を下記に示しました。

高Ca血症の原因として最も多いのは腫瘍です。

さまざまな腫瘍が原因で二次的な高Ca血症がみられますが、その原因として頻度が高いのがリンパ腫と肛門のアポクリン腺癌です。

リンパ腫では、非典型的なリンパ腫の症例で高Ca血症を呈することが多いです。

腫瘍が小さくても高Ca血症となることがあるので、高Ca血症のときには注意深く腫瘍を探す必要があります。

腫瘍による高Ca血症は腫瘍細胞によるPTH関連ペプチド(PTH-rP)の産生が原因です。

  • アジソン病では約30%の症例が高Ca血症を呈する(犬)とされるので、アジソン病の症状や高K血症などの臨床病理所見がないか注意します。
  • 犬では腎不全でも高Ca血症を呈することがありますが、著しい高Ca血症にはなりにくいです。
  • 上皮小体機能亢進症やビタミンD過剰症は比較的まれですが、鑑別診断として考慮し、上皮小体ホルモン(PTH)の測定や食事、サプリメント給餌などについてもチェックが必要です。
  • そのほかに、膵炎(低 Caになることもある)や、まれに感染症でも高Ca血症がみられることが報告されています。

高Ca血症はリンパ腫などの腫瘍が原因となっていることが多いです。

高Ca血症の原因としては次いで腎不全が多いですが、猫でも腎不全では著しい高Ca血症にはなりにくいです。

尿石を主訴として来院した症例で高Ca血症がみられることもあります。

ストロバイト尿石に対する特別療法食を中止したり、尿酸化剤の投与を中止したりすることで改善する場合があります。

犬と猫で血中Caが高値となる疾患

  • 腫瘍(リンパ腫、アポクリン腺癌)
  • アジソン病
  • 上皮小体機能亢進症
  • 腎不全
  • 膵炎
  • ビタミンD過剰症
  • 腫瘍(リンパ腫)
  • 腎不全
  • 特別療法食(尿石予防用)

高カルシウムについてもっと詳しく!という方はこちらの記事もどうぞ!

低Ca血症

低蛋白血症の動物ではCa値を補正し、真の低Ca血症か判定します。

犬と猫で低 Ca 血症を呈する疾患を下記に示しました。

犬では、甲状腺腫瘍に伴う甲状腺・上皮小体の切除のほか、腎不全、蛋白漏出性腸症、膵炎で低Ca血症が起こります。

猫では、甲状腺機能亢進症治療のための甲状腺切除後にみられるほか、尿閉、膵炎、栄養性上皮小体機能亢進症、糖尿病性ケトアシドーシス、上皮小体機能低下症、分娩前の母猫などで低Ca血症の発症が知られています。

医原性のこともあり、多くはカルシトニンやビスフォスフォネート製剤の投与により起こります。

低カルシウムについてもっと詳しく!という方はこちらの記事もどうぞ!

犬と猫で血中Caが低値となる疾患

  • 腎不全
  • 蛋白漏出性腸症
  • 膵炎
  • 手術による上皮小体摘出
  • 薬剤(カルシトニン、ビスフォスフォネート)
  • 上皮小体機能低下症
  • 甲状腺摘出手術
  • 膵炎
  • 尿閉
  • 栄養性上皮小体機能亢進症
  • 糖尿病性ケトアシドーシス
  • 母猫(分娩前)
  • 薬剤(カルシトニン、ビスフォスフォネート)

異常値がみられたときどうするか

高Ca血症がみられた場合、高Ca血症の原因となっている疾患に対して治療を行うとともに高Caそのものに対しても治療を考慮します。

中程度までの高Ca血症は通常、生理食塩液の点滴とフロセミドにより治療されます。

16 mg/dL以上の重度の高Ca血症では、腎障害の原因となることがあるので迅速な治療が必要です。

カルシトニンかビスフォスフォネートを用いて治療を行うとともに、Naを含んだ輸液とフロセミド投与を行います。

グルココルチコイドの投与も有効ですが、リンパ腫の場合には診断が難しくなります。

高Ca血症の原因としては、ビタミンDの過剰を疑い、食事について十分な管理を行います。

しかし、実際にはビタミンD過剰はまれです。

重度の高Ca血症が成犬、成猫にみられた場合、腫瘍が原因になっていることが多いので、腫瘤を見逃すことなく十分に身体検査や画像診断を行います。

  • 高Ca血症を伴うリンパ腫は腫瘤が小さいことも多いです。
  • アポクリン腺癌も高Ca血症の原因として頻度が高いので、腸骨や肛門付近のX線検査などを行います。
  • PTHおよびPTH-rPの測定は高Ca血症の鑑別に有用です。

低Ca血症がみられた場合には原因の探索を行うとともに、テタニーがみられる場合には治療を行います。

Ca製剤をゆっくり点滴により補充し、ビタミンD製剤の投与を開始します。

リン (P)

この文章は消さないでください。
腎不全、腫瘍融解症候群

血中のリンはCaと同時に測定されることが多いです。

血中ではリンの一部は蛋白と結合しているが、その他の多くはリン酸イオンとして存在しています。

検査では無機リンが測定されます。

血中のリン濃度は、腸管からの吸収、尿中への排泄、細胞内から細胞外液への移動により変化します。

検査のときに気をつけること

リンの参照値を下記に示しました。

リンの参照値(mg/dl)

年齢による影響を受け、若齢動物で高い傾向にあります。

6ヵ月齢までの犬では8~9mg/dLくらいまでは正常です。

動物での日内変動は不明ですが、食事の摂取により軽度に低下することが知られています。

検査するのはどういうときか

Ca値の異常が疑われるときや、リンが異常となる疾患を疑うときに検査することが多いです。

高リン血症

高リン血症を疑わせる特徴的な臨床症状は少ないです。

高リン血症を呈する代表的な疾患を下記に示しました。

これらのうち臨床的に最も多く遭遇するのが腎不全であり、慢性腎不全ではリンの値は10~20 mg/dL程度まで高度に増加することも多いです。

また、犬や猫ではリン酸を含む浣腸液で致死的な代謝異常が生じることがあり、その場合には高リン血症がみられます。

高リン血症の原因
  • 若齢動物(生理的 10 mg/dL 程度)
  • ビタミンD過剰投与
  • コレカルシフェロール(殺鼠剤)中毒
  • 腎不全
  • 上皮小体機能低下症
  • 代謝性アシドーシス
  • 腫瘍融解症候群、組織障害
  • 溶血
  • 静脈へのリンの過剰投与
  • リンを含む浣腸剤
低リン血症

低リン血症を呈する疾患を下記に示しました。

通常症状から低リン血症を疑うことは困難だが、スクリーニング検査で発見されることがあります。

細胞内外のリンの移動はKの動態と類似しています。

糖尿病性ケトアシドーシスの治療後はリン濃度が低下するので、糖尿病の治療前に低リンの症例では治療中リン濃度のモニターを行います。

治療の対象となるのは、1.5 mg/dLよりも低値の場合や低値になることが予想される場合です。

1mg/dLより低値では溶血が起こる可能性があります。

低リン血症の原因
  • リン吸着性の制酸剤(アルミニウム製剤など)の長期服用
  • ビタミンD欠乏
  • 吸収不良
  • 糖尿病性アシドーシスの治療開始後
  • インスリン投与
  • 重炭酸ナトリウム投与
  • 長期間の非経口栄養(中心静脈栄養など)

異常がみられたときどうするか

高リン血症

原因疾患の治療を優先します。

高リン血症が持続すると、軟部組織への石灰化などが問題となることがあります。

尿量が確保できる場合には、高窒素血症の緩和も兼ねて積極的な輸液療法を行います。

長期的な治療としては、低リンの特別療法食(腎不全用の特別療法食の多くは低リン)や経口のリン吸着剤を使用することがあります。
低リン血症

2mg/dL以上のリン濃度を維持することが治療の目標です。

通常、経口でのリン補給が優先されます。

食物中のリンは Caと同時に摂取されるものが多いです。

ミルク、 肉類、卵黄などが用いられます。

緊急時や静脈栄養実施時など経口補充が困難な場合には静脈内補充が行われます。

  • リン補正用の製剤(コンクライト-P:大塚)が利用可能です。
  • 静脈栄養が長期に及ぶ場合にはリンの補充も考慮する必要があります。
  • ヒトで用いられる高カロリー輸液の基本液にはリンを含む製剤が多く便利です。
  • 経静脈でリンの補正を行う場合には、リン濃度を経時的にモニターします。

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no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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