調子が悪いので、動物病院で血液検査をしたら肝臓の値が悪いと言われた・・・
健康診断をしたら、肝臓の値が悪いので、ウルソデオキシコールやスパカール、肝臓サポートなどの栄養食を勧められた・・・
聴き慣れない肝臓の値が、上がっていると言われると心配ですよね。
でも大丈夫です。複雑なように見えても、一つ一つはすごく単純です!
肝臓の数値の上昇は、実際の臨床現場でも非常に多い症状であり、実際に治療が必要かどうかは病気の種類も関係してきます。
- 様子、経過を見てくださいと言われたけど心配...
- 検査してくれなかった...
- 病院ではよくわからなかった...
- 病院では質問しづらかった...
- 混乱してうまく理解できなかった...
- もっと詳しく知りたい!
- 家ではどういったことに気をつけたらいいの?
- 治療しているけど治らない
- 予防できるの?
- 麻酔をかけなくて治療できるの?
- 高齢だから治療ができないと言われた
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結論から言うと、肝臓の酵素はALP、Y-GTP、ALT、ASTと4種類あります。
それに加えて胆汁酸、アンモニアを測定しますが、肝臓の検査では、実施する検査を、
- 肝疾患の存在を示唆する検査
- 肝障害(現在進行形)の程度を示す検査
- 肝機能を評価する検査
に分けると、項目によって見えてくるものが変わってきます。
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この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
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今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。
臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!
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» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
獣医師解説!肝臓が悪い?犬と猫の血液検査を徹底解説!〜肝臓の酵素編〜(ALT,AST,ALP,GGT)
この記事の目次
アンモニア (NH3)
アンモニアは蛋白質分解により腸管で産生され、主に肝臓で代謝された後に尿中に排泄されます。
肝機能が低下している場合や、腸管から肝臓以外に流入する シャント血管(門脈シャント)が存在する場合には、血中のアンモニア濃度が高くなります。
臨床的には、肝性脳症の原因となるような重篤な肝疾患が疑われる場合や門脈体循環シャントの評価に利用されます。
検査のときに気をつけること
汎用されている検査機関・機器でのアンモニアの参照値を下記に示しました。
採血後赤血球からのアンモニア分離があるとされ、時間が経過すると高値になる可能性があります。
猫のサンプルを用いた研究では、血漿分離後-20°Cで48時間は測定値に大きな変化はみ られなかったが、その後4~13倍程度の濃度上昇がみられました。
アンモニアの参照値
検査によってわかること
アンモニアが上昇する疾患を下記に示しました。
小動物領域でアンモニアを測定する機会が最も多いのは門脈体循環シャントを疑う場合です。
門脈体循環シャントでは胆汁酸の測定も一般的ですが、胆汁酸はさまざまな肝疾患で上昇するのに対し、
アンモニアでは門脈体循環シャント以外での上昇は比較的まれです。
- 門脈体循環シャントでの感度は 80 ~90%以上と報告されています。
- 胆汁酸と同様、食後の検出率が高いです。
- ある研究では、食後6時間がピークでした。
アンモニアは、重度肝不全で肝性脳症が疑われる場合にも測定されます。
肝性脳症の原因物質はアンモニアだけではないが、診断や治療効果の判定に有用なことが多いです。
そのほかに、先天性のコバラミン吸収異常でもアンモニアの増加が報告されています。
- 門脈体循環シャント
- 重度肝不全(肝性脳症)
異常値がみられたときどうするか
若齢動物で高アンモニア血症がみられる場合には、門脈体循環シャントが強く疑われるので、超音波や造影 CT 検査などでシャント血管の描出を試みます。
高齢の犬では 重篤な肝不全の可能性も考慮します。
肝性脳症がみられる場合は、ラクツロースや経口抗生剤の投与が行われます。
コラム
門脈体循環シャントの診断と治療
アンモニアを測定できる施設では、診断の最初のステップとしてアンモニア測定を行うべきです。
若齢動物でアンモニアが高値の場合は、超音波検査や CT 検査を行う根拠となります。
門脈シャントでは、貧血や赤血球体積の減少も知られています。
若齢動物でこれらの異常や小肝症がみられる場合には、症状がなくてもアンモニアを測定します。
胆汁酸(TBA)
胆汁酸は、食事刺激などにより胆嚢から腸管に流入し再吸収されます。
肝機能が正常な場合、胆汁酸は門脈を通り血液中から速やかに除去されるため、血中濃度は低値にとどまります。
一方、肝機能が低下している場合や腸管から肝臓を通らない シャント血管が存在する場合には、血液中からの除去が遅延し血中濃度は高くなります。
ALT などの検査が測定時点での肝細胞障害を評価するのに対し、胆汁酸は肝機能の指標として用いられます。
肝酵素が上昇しにくい末期の肝硬変や門脈体循環シャントでも異常値を呈します。
検査のときに気をつけること
食事の影響を受け、空腹時には低値になり、食後は高値となります。
しかし食後でも、 肝機能が正常な場合には参照値の上限を超えることは少ないと考えられています。
そのため、肝機能の異常を検出するためには、空腹時と食後2時間の2点で測定することが多いです。
これまで報告されている犬・猫の 参照値を下記に示しました。
動物 の肝障害にしばしば用いられるウルソデオキシコール酸の使用は、検査値に実質的な影響を及ぼしません。
オーストラリアにおける研究で、マルチーズは胆汁酸値が高いことが報告されています。
肝障害以外で高値となることは少ないですが、胆汁酸は胆汁の分泌や吸収などにより影響を受けるため、半定量的な評価であり、
疾患の重篤度と胆汁酸濃度は必ずしも相関しません。
総胆汁酸の参照値(単位:umol/L)
検査によってわかること
肝機能を評価したい場合に測定します。
ALT や AST などの肝酵素検査では異常はなくても、
- 肝機能不全を疑う症状や所見がみられる場合
- X線で肝陰影が小さい場合
- アルブミンが低い
など臨床検査で肝不全が疑われる場合に検査を行います。
活動的な肝障害を伴わない肝機能不全(肝硬変、門脈体循環シャント)の検出に有効です!
門脈シャントでは食前および食後で9割以上の確率で異常値となる。
一方で、肝臓に異常があっても増加しないことがある。
つまり、胆汁酸が高値の場合には肝障害をほぼ断定できるが、低い場合には肝障害を完全には否定することはできない。
異常値がみられたときどうするか
高値の場合には、通常は肝疾患を疑います。
特にALTなど肝酵素の上昇が軽度で胆汁酸が増加している場合には肝硬変や門脈体循環シャントを疑います。
超音造影CT検査によるシャント血管の描出を試みます。
胆汁酸は、肝機能障害がある場合にも低値にとどまる場合があります。
- 疑わしい場合には、食後2時間で検査を行うか、日を改めて再検査を実施することもあります。
- 胆汁酸の測定は半定量的な検査であり、数値の高低により疾患の重篤度を評価することはできません。
- また、門脈シャントの手術後の予後指標として用いることもできません。
胆汁酸の値は、胆汁の排泄などさまざまな要因に影響されるので、食事前後の変化よりもどちらかで高値となっていることが臨床的には重要である。
- 胆汁酸は肝機能検査に用いられる。
- 胆汁酸が低い場合にも肝不全を否定することはできない。
- 臨床的にはアンモニアの検査と同じような意味をもつ。
ビリルビン
ビリルビンの多くは破壊された赤血球のヘモグロビンに由来します。
遊離へモグロビンは網内系でビリルビンに変換されます。
このヘモグロビンは非抱合型とよばれ、検査では主に間接ビリルビンとして反応します。
非抱合型のヘモグロビンは肝に輸送されて抱合型ビリルビンとなり、胆汁中に分泌されます。
抱合型ビリルビンは主に直接ビリルビンとして反応します。
体内でのビリルビンの貯留は臨床的な黄疸を引き起こします。
ビリルビンの参照値(単位:mg/dL)
検査によってわかること
さまざまな疾患で高ビリルビン血症が生じます。
高ビリルビン血症がみられる場合には臨床的に対応が必要な疾患を有していることが多いです。
そのためビリルビンはスクリーニング検査として測定されます。
また、溶血性疾患や肝疾患など高ビリルビン血症の原因が判明している場合には、病勢判定や予後指標としても利用されます。
異常値がみられたときに疑う疾患
高ビリルビン血症がみられた場合、その原因が溶血性、肝性、肝後性のどれに当たるのか鑑別します。
- 犬ではバベシア症や免疫介在性溶血性貧血で高ビリルビン血症となることも多いです。
- 血液塗抹の観察、クームス試験やバベシアの遺伝子検査などで確認します。
- 免疫介在性貧血では高ビリルビン血症は予後不良因子の一つと考えられており、集中的な治療を行う必要があります。
- 一般に、溶血性の原因では間接ビリルビンが高くなり、疾患初期には間接ビリルビンが80%以上になります。
- しかし、その後の二次的な変化により直接ビリルビンも増加します。
溶血性の病因が除外できれば、次に肝性/肝外性の鑑別を行います。
超音波検査で胆管の拡張の有無などを評価します。
肝外性:胆管閉塞
- 犬・猫ともに胆管の完全閉塞ではビリルビンの上昇は肝疾患が原因の場合に比べ高度なことが多いです。
- 20mg/dL程度まで高度に増加することがあります。
- また、総胆管の再疎通に伴ってビリルビンの急激な低下がみられることがあります。
- 著しい高ビリルビン血症の場合や、ビリルビン値の急激な低下がみられる場合には、胆管の閉塞を考慮します。
- 猫では肝リピドーシスなどの肝疾患で高ビリルビンがみられることが多いが、膵炎による胆管閉塞も重度黄疸の原因になりうる。
胆管・胆嚢破裂
- 胆管・胆嚢破裂などに起因する胆汁性の腹膜炎では、腹水中のビリルビン濃度が血中の2倍よりも高くなります。
- 腹水と血中のビリルビン測定は、胆管・胆嚢破裂を評価するひとつの基準となります。
- 尿中のビリルビンについて、犬では正常な場合でも高頻度にビリルビンが検出されます。
- 特に高濃縮尿でビリルビンが陽性になりやすいです。
- 一方、猫では正常な状態では尿中にビリルビンが検出されることはないと考えられています。
- 猫の尿検査でビリルビン が陽性の場合には原因の探求が必要です。
- 溶血性 バベシア症、ヘモバルトネラ症、免疫介在性溶血性貧血
- 肝性 各種肝障害(肝線維症、肝リピドーシス)、FIP、など
- 肝外胆管性 胆管閉塞(腫瘍、膵炎、など)
異常値がみられたときどうするか
高ビリルビン血症は、溶血、肝障害、胆管障害などにより起こります。
治療法も異なることから、臨床病理学的検査や画像診断により鑑別することが重要です。
自己免疫性溶血性貧血では、高ビリルビン血症は予後不良因子として考えられています。
しかし、治療を中止する根拠にはならないので、通常の自己免疫性溶血性貧血と同じように治療します。
播種性血管内凝固(DIC)等を併発しないように十分注意します。
超音波検査などで胆管閉塞が疑われる場合や胆嚢破裂が疑われる場合には、外科的な治療も考慮します。
- 高ビリルビン血症では、溶血、肝障害、胆管障害を鑑別する。
- 動物では、直接、間接ビリルビンの測定は、原因鑑別の指標にはなりにくい。
肝臓の検査 まとめ
肝疾患の検査は犬や猫の診療の現場で広く行われています。
肝臓の検査では、実施する検査を、
- 肝疾患の存在を示唆する検査
- 肝障害(現在進行形)の程度を示す検査
- 肝機能を評価する検査
に区別して考えるとわかりやすいです。
肝疾患の可能性を示唆する検査
ALP、Y-GTP
これらは誘導酵素です。
肝疾患と関連して上昇することが多いですが、肝細胞から酵素が “逸脱”するわけではないので肝障害の程度を反映しているわけではありません。
薬剤や肝以外の疾患によっても“誘導”されて増加することがあります。
肝障害の程度を評価する検査
ALT (GPT)、 AST (GOT)
“逸脱”酵素と呼ばれるもので、肝細胞が障害を受けると細胞から“逸脱”して血中の 酵素活性が高くなります。
酵素活性の上昇は、現在進行形で肝細胞が障害を受けていることを意味します。
数値が高いほど障害の程度も重度です。
肝機能の代表的な指標
胆汁酸、アンモニア、インドシアニングリーン (ICG)排泄試験
汎用される ALT、AST は現在進行形で肝障害が起きているかどうかを評価する検査です。
そのため、すでにほとんどの肝細胞が障害を受けている場合には、ALT や AST が 正常値でも肝機能が低下していることがあります。
肝機能低下が疑われる場合には胆汁酸やアンモニアなどを用いて肝機能を評価する必要があります。
胆汁酸やアンモニアなどは種々の要因によって変動するため、定量的な評価には限界があります。
その他の指標
肝臓に特異的な検査指標以外にも、総蛋白、アルブミン、ビリルビンなど一般的なスクリーニング検査で異常値がみられた場合に肝疾患を疑うことがあります。
重度の肝障害では凝固系検査に異常値がみられることがある。
- 誘導酵素(ALP、Y-GTP) 肝疾患存在を示唆することがある。
- 肝障害の指標(ALT、AST) 肝臓が現在どれくらい障害を受けているか評価する。
- 肝機能検査(総胆汁酸、アンモニア) 現在の肝臓機能を評価する。
- その他の指標(総蛋白、アルブミン、ビリルビン、凝固系検査) 肝臓に特異的な指標ではないが、異常値が みられた場合には肝疾患の存在を考慮する。
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胆汁酸製剤ウルソのジェネリック薬品です。
胆汁の流れを良くし肝臓の細胞を守ります。主に胆石・肝臓病の治療に用いられています。
1箱100錠
別名
ウルソデオキシコール(全星薬品、全星薬品工業、高田製薬、日医工、沢井製薬、辰巳化学、日本ジェネリック、武田薬品工業、武田テバファーマ、東和薬品)、ウルソ(田辺三菱製薬)
ジェネリックウルソは、有効成分のウルソデオキシコール酸を含有する犬・猫用の肝機能改善薬です。
犬・猫の胆汁性肝硬変、胆汁うっ滞性肝疾患、慢性肝疾患などの治療に用いられます。
ジェネリックウルソは、胆汁の流れを良くする薬です。
ジェネリックウルソに含有されている有効成分のウルソデオキシコール酸は、胆汁の分泌を促すことで、胆汁のうっ滞を改善し、肝臓の炎症を抑えて、肝臓の機能を改善します。
また、膵液の分泌を促すことで、消化吸収を良くして、消化不良を改善します。
使用方法
犬・猫に対して、1kgあたりウルソデオキシコール酸として、10~15mgを1日1回、経口投与してください。
肝疾患を患っている場合は、1kgあたり15mgが推奨されます。