愛犬や愛猫の呼吸が荒い、早い、フガフガして変なので病院に連れて行ったけど、
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- 病院では質問しづらかった...
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結論から言うと、犬や猫の呼吸異常は、努力性呼吸が持続する場合、緊急に対処が必要となります。
異常呼吸音を聴取した場合、気道の閉塞部位と状態を考察します。
よくある病気としては、短頭種気道症候群、気管虚脱、喉頭麻痺、喉頭虚脱、肥満、慢性気管支炎、肺気腫があります。
この記事では、愛犬や愛猫の呼吸が荒い、早い、フガフガして変な理由ついて、その理由をアカデミックな面からまとめました。
この記事を読めば、愛犬や愛猫の呼吸が荒い、早い、フガフガの原因、症状、治療法がわかります。
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この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
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今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。
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» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
犬や猫の呼吸が荒い、早い、フガフガして変!?〜原因、症状、治療法〜
この記事の目次
犬や猫の呼吸が荒い、早い、フガフガの用語の定義
気道が閉塞したり、気道内で気流の流速や乱流が増加したりしたときに気道周囲軟部組織の振動を伴って異常呼吸音が生じます。
聴診器を使用せずに耳で聞こえる異常呼吸音と聴診器で肺野に聴取される副雑音の二つに分類できます。
耳で聞こえる異常呼吸音は、
「スースー」「ズーズー」など鼻腔または鼻咽頭の閉塞で生じるStertor(スターター)、
「ガーガー」「ヒーヒー」など口咽頭、喉頭、気管上部の閉塞で生じるStridor(ストライダー)、
「ヒューヒュー」など胸腔内気道の閉塞で生じるWheezing(ウィージング、呼気性喘鳴音)に分類されます。
ガチョウの鳴き声様または「ブヒブヒ」はStridorの一種ですが、犬の気管虚脱の際に生じる典型的な異常呼吸音です。
いびきは、睡眠時に鼻咽頭の閉塞が、ときに鼻腔の狭窄を伴って生じる音です。
喘鳴は、StridorもWheezingも指し、呼吸相にかかわりない気道狭窄音を意味し、特異的表現ではありません。
聴診器で肺野に聴取される副雑音は、連続音はWheezesとRhonchi、断続音はCracklesと定義されています。
Cracklesは高温調のFine Cracklesと比較的低音調のCoarse Cracklesの二つに分類されています。
犬や猫の呼吸が荒い、早い、フガフガの分類と問題点
◎聴診器を使用せずに耳で聞こえる異常呼吸音
Stertor(スターター、鼻詰まり音/鼾声)
鼻腔の閉塞によって生じた場合は「スースー」「キューキュー」など高音調で吸気または呼気時に生じます。
鼻咽頭尾側部の閉塞で生じた場合は「ズーズー」「ブーブー」などと低音調で吸気時のみに生じます。
鼻呼吸中に生じる音なのでどちらも閉口時に生じます。
低音調のStertorは横臥にすると明瞭に現れます。
咽頭の閉塞が著しい場合、入眠時に咽頭気道が完全に閉塞し窒息に陥るので睡眠不能となります(睡眠時無呼吸発作)。
Stridor(ストライダー、上気道性喘鳴)
「ガーガー」などと通常大きく開口して荒々しく、耳障りな音が生じます。
吸気時に吸気努力に伴い異常音が発生します。
急性喉頭炎や咽喉頭炎でみられ、これらは一過性である。喉頭麻痺は特徴的なStridorを示します。
嗄声(声帯の炎症や弛緩によって、高音量で響く声が出ずに「ハフハフ」などのしゃがれた音になること)から症状がはじまり、中程度までは頻呼吸時に大きく開口し高音調の嗄声状の音を示します。
重度になり吸気時に完全に声門裂は閉塞すると、むしろ音量は小さく、さらに高音調となり、「ヒーヒー」などと口は大きくは開かず頸を伸展し吸気努力は著明となります。
Stridorの多くは吸気に強く音量が増大します。
喉頭腫瘍も初期は嗄声様のStridorを示し、鑑別を要します。
Wheezing(ウィージング、呼気性喘鳴音)
「ヒューヒュー」などと高音調で呼気時に強く音が生じます。
呼気努力に伴ってみられます。
開口していることが多く、呼気時にみられるので発咳と見誤りやすいです。
◎聴診器で肺野に聴取される呼吸副雑音
Wheezes(ウィーズ)
「ビュービー」などと聴取される高音調の連続音。
比較的大きな中枢気道(直径2mm以上)の固定性狭窄で生じます。
呼気時に増強し、1回の音の持続時間は100msec以上、周波数は300Hz以上とされます。
Rhonchi(ロンカイ)
「ブーブー」などと聴取される低音調の連続音。
いびき様や飛蚊音と比喩されます。
比較的大きな中枢気道(直径2mm以上)に柔軟なポリープが存在していたり、粘稠粘液が貯留していたりするときに生じます。
1回の音の持続時間は100msec以上。周波数は300Hz以下とされます。
Crackles(クラックル)
1回の音の持続時間が20msec以下の断続音。
多くの末梢気道で多源性に生じます。
Fine Crackles(ファインクラックル)
「プチプチ」などと、高音調で小さく小気泡が弾けるような音。
吸気時後期で聴取され、捻髪音や乾性ラ音などともいわれます。
マジックテープをはがすときの音に例え、「ベルクロ ラ音」と呼ばれます。
ベルクロとはマジックテープを開発したオランダのベルクロ社(VELCRO)にちなんだものです。
比較的細い末梢気道(直径2mm以下)で安静時は虚脱していたところに吸入気が流入し弾け、それが肺胞内で共鳴する音と理解されています。
したがって、安静呼吸時にのみ聴取され、パンティング時には聴取されなくなります。
慢性気管支炎や肺線維症のときに聴取されます。
Coarse Crackles(コースクラックル)
「ブチュブチュ」などと、低音調で泡の膜が破れるような音。
湿性ラ音とも呼ばれます。
末梢気道内の分泌物や実質領域から滲出液がバブリングを起こしていると考えられています。
したがって、吸気時も呼気時も聴取される。心原性肺水腫のときに聴取されます。
犬や猫の呼吸が荒い、早い、フガフガの病理発生
上気道および気管上部の閉塞性疾患による吸気性のStertorやStridorは、
- 解剖学的問題
- 悪性腫瘍
- 良性腫瘤状病変
- 異物
- 気管虚脱
- 気道外からの圧迫
- 良性腫瘍
- 膿瘍
- 咽頭麻痺
などによります。
特に、重度の短頭種気道症候群では4歳を超えると咽頭気道を拡張させる上気道拡張筋に変性や線維化が生じて吸気時の咽頭気道を確保できにくくなったり、喉頭虚脱を生じ安静時でも努力性呼吸が生じてきたりします。
これらのことが体温調節能を阻害し、わずかな興奮や気温上昇でパンティングが生じてそれが持続するため上気道粘膜に腫脹が生じ上気道閉塞がさらに増悪します。
重度気管虚脱の犬も同様です。
吸気努力を伴うStertorやStridorが6時間以上放置されると陰圧性肺水腫が形成され救命が困難となることがあります。
胸腔内気道の閉塞性疾患による吸気性のWheezinngは
- 慢性気管支炎
- 肺気腫
- 猫喘息
- びまん性の末梢気道病変
などによる気流制限が最も多いです。
Air trapping(呼気不十分による空気蓄積)によって過膨張肺になり、肺伸展受容体を刺激しへーリング-ブロイエル反射により呼気努力が生じると考えられます。
これらはⅡ型呼吸不全の病態を示し、血液ガス分析では低酸素、および高炭酸ガス血症を生じている可能性があります。
犬や猫の呼吸が荒い、早い、フガフガの対症療法
努力性呼吸が持続する場合、緊急に対処が必要となります。
Stertorのみで緊急処置となることはないが、重度の運動不耐性を示した場合は気管切開の対象となることがあります。
咽頭気道が最大限広がるよう頸部を伸展し、伏臥体勢を維持し安静にし、補助的に酸素投与をします。
Stridorで吸気努力を伴う場合、高体温により増悪していることが多いので、初期治療では外部冷却を徹底します。
短頭種気道症候群、気管虚脱、喉頭麻痺ではこの外部冷却が奏効することが多いです。
水をかけたり、冷やしたタオルで身体を覆ったり、団扇で扇いだり、風通しのよいところに移動したり、密閉環境から開放環境に移動したり、気温や床の冷たいところに移動したりします。
15分間で改善が全くみられない場合、抗炎症量のステロイド(例えば、プレドニゾロン1mg/kg、IMあるいはSC)を単回投与します。
酸素投与は補助的に行います。
それでも進行性に呼吸困難が悪化する場合は、一時的気管切開を行います。
Wheezingが持続する場合、25~30%の低濃度の酸素吸入を開始し、気管支拡張薬を投与します。
高濃度酸素吸入から開始するとCO2ナルコーシスを生じ意識障害に陥る可能性があります。
犬や猫の呼吸が荒い、早い、フガフガの診断の進め方
閉口しているか、開口しているかでまず分類し、次に異常音が吸気性か呼気性かを観察します。
その次に異常音が高音調か、低音調かを聞き分け、閉塞部位を同定していきます。
犬や猫の呼吸が荒い、早い、フガフガの特徴
パグ、ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグ、ペキニーズ、狆などの短頭犬種や肥満犬は構造的に上気道が狭くStertorやStridorを起こしやすいです。
中高齢の大型犬、特にラブラドール・レトリバー、セター種は喉頭麻痺の後発犬種であるので、嗄声や興奮時にStridorを起こすことがあります。
ヨークシャー・テリア、チワワ、ポメラニアンは気管虚脱を起こしやすい代表犬種であり、気管閉塞時にはガチョウの鳴き声様のStridorを示します。
犬や猫の呼吸が荒い、早い、フガフガの高頻度の疾患
◎短頭種気道症候群
日常的にStertorやStridorを示します。
さらにいびきや睡眠時無呼吸なども起こしている場合があります。
慢性進行性疾患があり、若齢時より睡眠時無呼吸を示した症例では4歳から肺機能低下などを示すようになり、6歳から運動不耐、8歳で突然死を起こすといわれています。
ブルドッグでは1歳以下ですでに喉頭虚脱を発症することがあります。
外鼻孔狭窄整復術や軟口蓋切除術は1歳未満までに行うと安全性と有用性が高いと報告されています。
少なくとも4歳までに外科整復術を行うようにします。
◎気管虚脱
すでに気管扁平化を起こしていた動物が、暑熱環境や興奮で呼吸数が増加し気管粘膜炎症により気管閉塞が増加して、「ガーガー」や「ブヒブヒ」というStridorが生じます。
◎喉頭麻痺
反回咽頭神経障害によって吸気時に声門裂が開かなくなる疾患です。
初期段階で声の変化や嗄声を示します。
散歩などの運動時や暑熱環境時のパンティング時に、吸気時に声門裂が閉鎖し、吸気努力を伴って「ヒーヒー」という高音調のStridorを示します。
◎喉頭虚脱
短頭種の上気道閉塞構造、またはヨークシャー・テリアやチワワなどの小型犬種において喉頭麻痺に伴って、声門裂部分が内転し不可逆性変形を起こします。
吸気、呼気努力を伴って「ヒューヒュー」という高音調のStridorを示します。
◎肥満
咽頭気道の軟部組織過剰により気道が閉塞し、覚醒時に「ズッズッ」という低音調のStertorを示します。
ポメラニアンやチワワなどに多いです。
◎慢性気管支炎
2か月以上続く慢性の痰産生咳を主徴とします。
末梢気道内の過量分泌物が原因となります。
ヨークシャー・テリア、チワワ、ポメラニアン、シー・ズー、パグ、ミニチュア・ダックスフンドなどの中高齢犬に多いです。
進行すると気流制限を生じ高炭酸ガス血症となります。
発咳に伴い「ヒューヒュー」という高音調のWheezingを示すことがあります。
◎肺気腫
肺胞壁の破壊がびまん性に進行し、肺コンプライアンスが異常に低下し肺過膨張を起こします。
細気管支は周囲の肺胞壁弾性壁構造の支持を失い収縮し、肺過膨張も加わり呼気障害は重度となり気流制限を生じます。
常に呼気努力があり、急性増悪時に「ヒューヒュー」というWheezingを示すことがあります。
犬や猫の呼吸が荒い、早い、フガフガのまとめ
異常呼吸音を聴取した場合、気道の閉塞部位と状態を考察します。
吸気性の場合には、上気道閉塞を示唆する所見であり、音調によって部位を鑑別し診断を進めます。
呼気性の場合には、末梢気道病変を示す慢性肺疾患のことが多いです。
呼気性の場合の方が予後要注意です。