獣医師解説!犬の下痢〜原因から治療法、対処法まで〜

犬が下痢をした!血便をした!血が混じっている!

うんちの色が緑や黄色になった!

犬では消化器系疾患の中で便に関する主訴が多いです。

犬の便の異常は遭遇する機会が非常に高い症状です。

実は、この犬の下痢には、大腸性と小腸性の2種類があります。

また、それにより対処法や疑われる症状、行う検査も異なります。

この違いを病院で教えていただくと、非常に診察もスムーズになり、自宅で判断できると対処法も分かります。

自宅での犬の下痢が小腸性なのか大腸性なのか、緊急性の有無が分かるのは非常に大事です。

本記事では、『犬の下痢』について解説します。

この記事を読めば、犬の下痢の原因、症状、対処法、緊急度から治療法までがわかります。

限りなく網羅的にまとめましたので、犬の下痢について、ご存知でない飼い主、また愛犬の下痢を見つけた飼い主は是非ご覧ください。

✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。

記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

✔︎本記事の内容

獣医師解説!犬の下痢

下痢とは

下痢とは

健康時の便と比較して、水分含量や排便回数の増加・減少、血液の混入や色調の変化がみられます。

下痢になると、 軟らかい便や液体状の便を排泄し、正常時よリ、 1日の排便回数が増加する傾向にあります。

便秘は、便の排泄が困難になっている状態のことで3日以上排便がなかったり、しぶりが続きます。

血便は便表面に血液が付着していたり、便全体に混入することもあります。

また粘液や粘膜が便に付着している場合もあります。

下痢を起こす多くの疾患では、腸の分泌過剰、透過性の亢進、運動性の変化など様々の原因により糞便中に水分が増量します。

分泌過剰は小腸性細菌疾患で大きく見られ、その結果、腸絨毛の分泌と吸収のバランスが崩れ、下部消化管の吸収能を上回る過剰分泌により下痢を起こします。

透過性の亢進は、腸管内腔に非吸収性の物質が増加することにより起こります

本来なら吸収される物質が腸の消化ないし吸収障害により腸管内空に残留し起こります。

運動性の変化は、亢進ならば、水分の吸収が妨げられ、十分な消化が受けられないために、細菌の発酵産物により腸管内容物の浸透圧の上昇や腸管の刺激を招きます。

逆に低下すると消化管内細菌の変化が生じ異常発酵となり粘膜刺激を惹起します。

犬の下痢の分類

犬の下痢の分類

排泄回数の異常

  • 下痢 正常時より頻回
  • 便秘 正常時より減少

形状の異常

  • 下痢の形状:粘膜便 便表面に粘液物質が付着
  • 軟便 形はあるが摘むことができない硬さ
  • 泥状便 形を維持することが出来ない緩さ
  • 水様便 固形物は殆ど無く水の様な便
  • 硬化 水分含量が浮くなく硬い便

色調の異常

  • 血便 血液が混入
    上部消化管(十二指腸、小腸)での出血は黒色便(タール状便)
    下部消化管(大腸や肛門付近)での出血は、潜血便
  • 脂肪便 脂肪が混入
  • 緑便 ビリルビンの酸化による
  • 白色便 胆道閉塞の可能性
  • タール状便 血液が混入
  • 黄色便 膵酵素が減少

犬の下痢の原因

犬の下痢の原因

便の異常の原因は非常に多く、その治療は多岐に渡ります。

下痢は、体液の漏出ゆえ飲水にも配慮しつつ輸液療法が中心となります。

また小腸性下痢の多くは細菌性が多いので抗生物質も併用して二次感染を防ぎます。

消化管の運動機能を正常に戻すために消化管作用薬を使用します。

腸粘膜の保護と修復を目的に整腸剤や消化管用処方食などを与えます。

犬の下痢の検査

犬の下痢の検査

便の異常は、どの品種、年齢層にも比較的多く見られ、多くの原因があります。

品種、年齢、食物内容、経過、既往症を加味するとかなり病気が絞り込めます。

問題の部位が小腸なのか大腸なのかをまず分別します。

便の異常時には、糞便検査と、全身的な検査があります。

糞便検査

  • 一般性状検査:肉眼的形状、色調、臭い
  • 寄生虫検査:直接法、浮遊法
  • 細菌検査:直接塗抹、分離・同定培養検査
    寄生虫検査の精度は、他の検査方法に比べてやや劣るため、精度を上げるには3回連続して行うか、日を改めて3回行う必要があります。
  • ウイルス検査:高原検査、遺伝子検査
  • 消化器系検査(脂肪染色、酵素検出)、特殊検査(潜血反応、ビリルビン検出、細胞診)

超音波検査

腸の分泌過剰、透過性の亢進、運動性の変化を確認します。

内視鏡検査

小腸性、大腸性ともに慢性疾患では内視鏡による生検は非常に有用です。

犬の下痢の診断

犬の下痢の診断

小腸性下痢

  • 糞便量が著しく多く、排便回数も多い
  • 未消化物が見られますが、粘膜便は少量
  • 嘔吐や体重減少、脱水

大腸性下痢

  • 糞便量は正常かやや増加する程度
  • 排便回数が著しく増加し、しぶりを認める
  • 嘔吐や体重減少は少ない

上記の部位の特定と同時に急性症状か慢性症状かの確認が必要です。

  • 急性小腸性下痢
    感染症や中毒(薬剤)、膵炎
  • 慢性小腸性下痢
    膵外分泌機能不全、寄生虫症、甲状腺機能亢進症、脂溶性疾患、免疫介在性疾患、植物アレルギー
  • 急性大腸性下痢
    感染症
  • 慢性大腸性下痢
    寄生虫性、腫瘍性疾患、免疫介在性

犬の下痢の高頻度の疾患

犬の下痢の高頻度の疾患

消化不良

食べ過ぎ、早食い、ゴミ漁りなどが原因で一時的に消化不良を起こし、急性小腸性下痢となります。

多くの場合、全身状態は悪くなく、下痢のみを症状とします。

整腸剤を中心とした治療によく反応します。

吸収不良

牛乳の乳糖分解不全による乳糖不耐性下痢で、摂食中止で良化します

細菌性腸炎

食中毒菌(サルモネラ菌、大腸菌、カンピロバクター菌、エルシニア菌など)や腸内細菌の菌交代症により下痢を起こします。

発熱や炎症性マーカーの上昇が認められます。

治療のために使用した抗生物質が原因で下痢が助長される場合もあります。

ウイルス性腸炎

パルボウイルスやコロナウイルス、ジステンパーウイルスなどが原因で下痢を起こします。

特にパルボウイルス感染症は嘔吐に始まり、激しい下痢と血便を停止、致死的な経過を辿るので注意が必要です。

寄生虫性腸炎

寄生虫
原虫(コクシジウム、トキソプラズマ、ジアルジア、トリコモナスなど)、線虫(回虫、鞭虫、鉤虫など)、条虫(瓜実条虫、マンソン裂頭条虫など)など様々な寄生虫が下痢を起こします。

糞便検査の直接法や浮遊法を行う際には、目的とする寄生虫の適切な検出法か考慮して行います。

食物性腸炎

食物に含まれる特定のアレルゲンで、下痢を起こします。

各フードメーカーから低アレルゲン食が処方されています。

炎症性腸疾患

炎症性腸疾患(IBD)は原因不明の免疫介在性疾患です。

多くの下痢の治療に反応せず、ステロイドなど免疫抑制薬の治療で軽減するのであれば、消化管の生検が有益です。

巨大結腸症、骨盤内腔の減少

猫に比較的多く見られ、結腸の機能的な運動障害により、便が結腸内に多量に蓄積します。

会陰ヘルニア

犬(コーギー、ミニチュアダックス)に多く認められ、解剖学的に腸が湾曲するために、排便困難となります。

膵外分泌機能不全

膵外分泌機能不全とは、何らかの原因で膵臓の外分泌酵素が低下、枯渇した状態で、消化管内の脂質系内容物の消化吸収ができない状態となり、未消化の便が排泄されます。

便は酸臭のある特徴的な色調(黄色から灰色)で多量に排泄されます。

パルボウイルス感染症

子犬に多く、進行が早く命に関わる

糞便中のウイルス抗原検査や白血球数、遺伝子検査が必要です。

自宅でできる犬の下痢対処法

自宅でできる犬の下痢対処法

ガスモチン

ガスモチン(Gasmotin)は、有効成分のモサプリドクエン酸塩を含有した犬の消化管運動機能改善薬です。

上部消化管(胃及び十二指腸)運動機能低下に伴う食欲不振及び嘔吐の改善

選択的に特定部位(セロトニン5-HT4受容体)を刺激することで、消化管運動を促進して、食欲や嘔吐の改善に優れた効果を発揮します。

ビオフェルミン

 

ビオフェルミンは犬でも整腸作用を期待して使われることが多いです。

そのため、腸内の環境が悪くなっている可能性が高い下痢をした時だけでなく、便秘気味の時にも使われることもあります。

自己判断で愛犬にビオフェルミンを飲ませても、それほど問題にはなりません。

すべての下痢に効くわけではありませんが、下痢をしているときにビオフェルミンを与えることは間違ったことではありません。

しかし、あくまで一時凌ぎですので、上記の原因特定することが重要です。

もしもの時のために必要な常備薬

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no life no dogs & catsをモットーに、いつも犬と猫に癒されています。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。
現役獣医師が海外で勉強しながら得た、犬と猫の病気に対する知識とスキルを発信していきます。

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