急に自宅の犬や猫の首や頭が傾いて、かしげている・ふらついている・・・
愛犬や愛猫の首や頭が傾いているから、調べたら斜頸と出てきた・・・
本記事では遭遇する頻度の多い、首や頭の傾き:斜頸についてお話しします。
- 様子、経過を見てくださいと言われたけど心配...
- 検査してくれなかった...
- 病院ではよくわからなかった...
- 病院では質問しづらかった...
- 混乱してうまく理解できなかった...
- もっと詳しく知りたい!
- 家ではどういったことに気をつけたらいいの?
- 治療しているけど治らない
- 予防できるの?
- 麻酔をかけなくて治療できるの?
- 高齢だから治療ができないと言われた
もしくは、病院に連れて行けなくてネットで調べていた という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?
ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。
中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。
ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、 情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、 その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。
例えば...
- 人に移るの?
- 治る病気なの?
- 危ない状態なのか?
- 治療してしっかり治る?
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結論から言うと、斜頸(捻転斜頸)症状は、前庭系障害に特徴的な症状です。
前庭系は、眼と頭部の位置を正常に保つとともに、身体の平衡を正常に維持するための中枢神経系(延髄内の前庭神経核および小脳の片葉虫部小節葉)と末梢神経系(前庭迷路内の感覚受容器および第Ⅷ脳神経)からなる神経路の総称です。
この記事は、愛犬や愛猫の首や頭が傾いている症状が出ている飼い主向けです。
この記事を読めば、愛犬や愛猫の首・顔が傾いている?斜め?かしげている?斜頸の分類、原因、症状、対症療法、治療方法までがわかります。
限りなく網羅的にまとめましたので、ご自宅の愛犬や愛猫の首が傾いている状態について詳しく知りたい飼い主は、是非ご覧ください。
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通話:現役獣医による犬・猫の病気・治療相談のります 日本獣医麻酔外科学会で受賞した獣医による相談受付:画像に証拠
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この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、 論文発表や学会での表彰経験もあります。
今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。
臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
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✔︎本記事の内容
この記事の目次
犬や猫の首が傾く?斜頸(捻転斜頸)とは
体幹と四肢の正常な位置からずれて、一側の耳をもう片方の耳よりも床に近づけるような体勢で、頭部を傾けるか捻れている状態です。
首が傾く斜頸の分類と問題点
斜頸(捻転斜頸)症状は、前庭系障害に特徴的な症状です。
前庭系は、眼と頭部の位置を正常に保つとともに、身体の平衡を正常に維持するための
- 中枢神経系(延髄内の前庭神経核および小脳の片葉虫部小節葉)
- 末梢神経系(前庭迷路内の感覚受容器および第Ⅷ脳神経)
からなる神経路の総称です。
両側性前庭機能障害でも斜頸の症状を認めることがあるが、病状が対称的に経過していない場合であり、そのような場合は稀です。
首が傾いてしまったとき、斜頸の病理発生
捻転斜頸の症状は、前庭系障害に起因するため、それが末梢性前庭障害か中枢性前庭障害かのいずれによるものかを症状から分類する。
◎斜頸(捻転斜頸)を呈する前庭障害の症状の特徴
- 斜頸(病変側と同側に捻転斜頸)
- 運動失調(病変側への傾き、転倒、旋回運動)
- 平衡障害
- 意識にのぼる固有感覚反応の消失なし眼振を認める場合、水平または回転性眼振
- ホルネル症候群を呈することあり
- 中耳、内耳の疾患に伴い、顔面神経麻痺を呈することあり
- 斜頸(病変側または病変側反対側の両方向に捻転斜頸)
- 運動失調
- 一側性病変では、意識にのぼる固有感覚反応の低下または消失あり。両側性では障害が重い方に神経学的異常が認められる。
- 眼振を認める場合、水平または垂直眼振、振り子様眼振、眼球回転
- ホルネル症候群を呈することは稀
- 顔面神経、三叉神経、動眼神経麻痺を呈することあり
- 昏迷症状を呈することあり
◎斜頸を呈する前庭疾患の原因
末梢性前庭疾患
・外耳炎、内耳炎、中耳炎
細菌、真菌、寄生虫などの感染や炎症が主です。
・鼻咽頭ポリープなどの有茎性の腫瘤
鼓室、耳管、鼻咽頭の内膜から派生することにより、二次性に慢性の中耳炎や内耳炎を起こして症状が発現する。
・特発性
除外診断により他疾患に該当しなかった場合が当てはまります。
・腫瘍
耳の扁平細胞癌、耳垢腺癌、リンパ腫
・耳毒性のある薬物
前庭障害や難聴、聴覚障害を誘発することがあります。
最も注意を要するのは、クロルヘキシジンです。
・外傷
中耳からの出血を伴う外傷は、斜頸を呈し、顔面神経麻痺およびホルネル症候群を伴うことも伴わないこともあります。
・先天的障害
内耳の構造が変性奇形していることによって、末梢性前庭障害が発生します。
両側性に変性奇形を起こしていれば、斜頸や眼振は起こらないが、対称性の運送失調、歩幅が広く、水平方向へ左右に頭を振って歩くこともあります。
聴覚障害を伴うこともあります。
好発犬種はジャーマン・シェパード・ドッグ、ドーベルマン、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、ビーグル、シャム、バーミーズ、トンキニーズ。
臨床症状は、3~4週齢頃から発症します。
斜頸のほか眼振、斜視、運動失調、旋回運動、転倒、回転、異常な頭の動きがあります。
中枢性前庭疾患
・炎症性疾患
ジステンパーウイルス、トキソプラズマ、細菌およびクリプトコックスの感染による脳の炎症です。
多病巣性の中枢神経系に分布し、広範な全身症状を引き起こします。
また、免疫介在性と思われる原因不明の炎症性疾患、肉芽腫性髄膜脳脊髄炎、壊死性髄膜脳炎などが挙げられます。
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・腫瘍
猫では、髄膜腫、小脳延髄橋角部にできたリンパ腫が中枢性前庭障害を呈します。
前脳領域の腫瘍も尾方テント切痕ヘルニアにより二次的に脳幹を圧迫するために、中枢性前庭障害を呈します。
・メトロニダゾール中毒
30mg/kg/日以上の投与が中枢性前庭障害を誘発します。
発症は急性で、高用量を長期に投与されていた場合(7~12日目程度)に起こります。
全身性の運動失調、眼振、食欲不振、嘔吐です。
重篤な場合は、意識障害、発作、後弓反張を呈することもあります。障害が残ることもあります。
・脳血管障害
甚急性の中枢性前庭障害を呈します。
原因は、敗血症、腫瘍、内分泌疾患、高血圧など多岐にわたるが、血栓塞栓症による虚血が最も多いです。
・原因不明
地域によっては、特定の寄生虫が、神経系に異所性に遊走寄生することにより前庭障害を誘発することもあります。
犬や猫の首が傾く斜頸の対症療法
斜頸を呈する特発性前庭症候群では、ジメンヒドリナート(ドラマミン)、塩酸メクリジン(ボナミン)、セレニアなどで平衡障害や嘔吐・吐き気を軽減することができます。
嘔吐すると、ぐったりしたり、逆流性食道炎、電解質喪失、脱水、誤嚥性肺炎を起こす可能性があります。
セレニア(Cerenia)は、犬用の制吐剤です。
嘔吐は、具体的に胃の内容物が食道を逆流し口から排出される症状ですが、この原因はある刺激が嘔吐中枢に伝達する事から起こります。
有効成分・マロピタント(Maropitant)は、嘔吐の原因となるニューロキニン1(NK1)受容体とサブスタンスPの結合を阻止する働きがあります。
その結果、嘔吐中枢に直接働きかけるため、嘔吐を抑制および予防をすることができます。
また、セレニア(Cerenia)は、投与後はおよそ1時間で効果が現れます。
●体重別に下記参照
1.0kg以上~1.1kg未満 8mg 7.6kg以上~10.1kg未満 80mg 1.1kg以上~1.6kg未満 12mg 10.1kg以上~15.1kg未満 120mg 1.6kg以上~2.1kg未満 16mg 15.1kg以上~20.1kg未満 160mg 2.1kg以上~3.1kg未満 24mg 20.1kg以上~30.1kg未満 240mg 3.1kg以上~4.1kg未満 32mg 30.1kg以上~40.1kg未満 320mg 4.1kg以上~6.1kg未満 48mg 40.1kg以上~60.1kg未満 480mg 6.1kg以上~7.6kg未満 60mg 60.1kg以上~80.1kg未満 640mg
症状が激しいときは、苦痛を和らげる目的でジアゼパムを投与することもあります。
ステロイド薬の投与でよい反応がみられることもあります。
パナフコルテロンは、有効成分のプレドニゾロンを含有した合成副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤です。
パナフコルテロンに含有されている副腎皮質ホルモンのプレドニゾロンは、炎症やアレルギー、免疫を抑えたりします。
プレドニゾロンは、抗炎症作用や持続時間が中程度であり、副腎皮質ホルモン剤の標準的な薬剤です。副腎皮質ホルモン剤として最も頻繁に使用されます。
▼アレルギー疾患、抗炎症、過敏性疾患
体重1kgあたりプレドニゾロンとして、0.5~1mgを24時間毎に経口投与します。
犬や猫の首が傾いている?!斜頸の診断の進め方
◎病歴聴取
- 急性非進行性ないし急性進行性か、または慢性進行性か
- 耳感染症の既往歴
- 最近の、耳の治療あるいは洗浄の状態
- 外傷の有無
- メトロニダゾールの投薬歴
- アミノグリコシド系抗生物質の投薬
- 現在服用している薬剤の種類あるいは有無
- その他の疾患の既往歴
◎身体検査
- 耳道の観察
- 咽頭部の観察
◎臨床病理学的検査
- 一般血液検査、血液化学検査、尿検査
- 甲状腺機能検査
- オトスコープ検査
- 頭部、胸部、腹部のX線検査および超音波検査
- CTおよびMRIによる画像検査→鼓室の画像検査は中耳疾患の診断の精度が高い。脳腫瘍
- 鼓膜切開、鼓室胞切開
- 脳脊髄液の分析→細胞診、微生物学的検査
- 脳幹聴覚誘発反応(BEAR)、電気生理学的検査、病理組織学的検査
犬と猫の首が傾く、斜頸の特徴
斜頸の症状自体は、脳幹あるいは末梢系など部位を特定するものではなく、原因を示唆するものでもありません。
そのため、捻転斜頸が認められた場合には、まず神経学的病の部位を特定することが重要です。
首が傾く斜頸の高頻度の疾患
◎特発性前庭症候群
高齢犬と若齢猫で多く認められます。
嘔吐が認められることがあるが、特別な治療を行わなくても治まることが多いです。
激しい症状が落ち着いたところで、神経学的検査を実施し、前庭障害以外の脳神経学的障害や異常を除外鑑別して診断をくだすことが多いです。
- 特発性前庭症候群では、対症療法だけでほとんどの場合発症から72時間以内に症状の改善が認められ、1~3週間で回復することが多いです。
- 稀に、捻転斜頸が固定してしまう症例もあり、また回復後に再発することもあります。
◎耳の治療による医原性前庭症候群
外耳道洗浄後に、一側または両側性の前庭症状が急に発生することがあります。
同時に聴覚機能の消失がみられることもあります。
猫に発生しやすいです。
鼓膜の破裂と内耳の前庭迷路の損傷が考えられます。
犬と猫の斜頸のまとめ
捻転斜頸など前庭障害の症状が現れたとき、それが末梢性か中枢性かを確定診断することが極めて重要です。
原因がわかった場合は、それに沿った治療を施します。
嘔吐が激しければ制吐薬を投与し、点滴などで栄養と水分を補給して、安静にして症状の改善を待ちます。
捻転斜頸が重度の場合、横転しやすいので、短期間入院させて安全を確保した方がよいこともあります。
自宅で看護する場合は、ケージに入れて世話をします。
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