獣医師解説!犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常?外耳炎~症状、原因、対症療法、治療方法~

    最近、犬や猫の耳が臭い、匂う、赤い、痒そう、痛そう・・・

    動物病院で、外耳炎と言われた・・・

    本記事では犬や猫でよく見られる、耳の異常、外耳炎、中耳炎についてお話しします。

    • 様子、経過を見てくださいと言われたけど心配...
    • 検査してくれなかった...
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    • 混乱してうまく理解できなかった...
    • もっと詳しく知りたい!
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    • 麻酔をかけなくて治療できるの?
    • 高齢だから治療ができないと言われた

    もしくは、病院に連れて行けなくてネットで調べていた という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?

    ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。

    中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。

    ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、 情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、 その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。

    例えば...

    • 人に移るの?
    • 治る病気なの?
    • 危ない状態なのか?
    • 治療してしっかり治る?

    これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?

    結論から言うと、外耳は耳介と外耳道(垂直耳道と水平耳道)および鼓膜外側面からなります。

    外耳道異常とは、外耳道および鼓膜周辺の分泌異常で、主に外耳の炎症すなわち外耳炎の存在を指しています。

    この記事は、愛犬や愛猫の耳が耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう、外耳炎と病院で言われた飼い主向けです。

    この記事を読めば、愛犬や愛猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:外耳炎のことがわかります。

    限りなく網羅的にまとめましたので、ご自宅の愛犬や愛猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:外耳炎について詳しく知りたい飼い主は、是非ご覧ください。

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    ✔︎本記事の信憑性

    この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、 論文発表や学会での表彰経験もあります。

    今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

    臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

    記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

    » 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】や詳しい実績はこちら!

    ✔︎本記事の内容

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常?外耳炎~症状、原因、対症療法、治療方法~

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎とは

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎とは

    この文章は消さないでください。
    外耳は耳介と外耳道(垂直耳道と水平耳道)および鼓膜外側面からなります。

    水平耳道の終着点に鼓膜があり弛緩部と緊張部からなります。

    外耳道異常とは、外耳道および鼓膜周辺の分泌異常で、主に外耳の炎症すなわち外耳炎の存在を指しています。

    炎症が進むと、耳道内はもとより耳介にまで耳垢や分泌物があふれ悪臭がします。

    罹患動物は、痛みや痒みなどの不快感に苛まれ元気を消失することがあります。

    軽症の場合は、耳を掻いたり、頭部を振ったり、耳を床に擦りつけます。

    しかし、痛みが激しい場合は、むしろ無表情となり沈うつとなります。

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎の分類と問題点

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎の分類と問題点

    分泌異常(炎症)を起こしている部位により以下の3型に分類されます。

    1. 鼓膜
      炎症が細く及び鼓膜周辺部に限られる場合
    2. 鼓膜・耳道
      炎症が鼓膜及び耳道全体に及ぶ場合
    3. 鼓膜・耳道・耳介
      炎症が鼓膜、耳道、耳介まで広範囲にわたっている場合

    鼓膜周辺の炎症を放置すると、炎症は耳道から耳介へと波及し重症化することが多いです。

    慢性化を防ぐためには、初期治療が大切です。

    耳を頻繁に掻く動作が認められたら、耳介や耳道に炎症がなくても鼓膜を精査する必要があります。

    鼓膜と鼓膜周辺を精査することで、初期の外耳炎を発見でき早期に治療できます。

    残念ながら普及している手持ち耳鏡では、鼓膜の死角の部分を見落としてしまい診断が遅れることがあります。

    外耳炎中耳炎とは治療法および予後が異なるため明確に区別する必要があります。

    慢性外耳炎が2ヵ月以上続いている場合は、中耳炎を併発している場合が多いとされていますが、
    罹患期間のみで外耳炎と中耳炎を区別することはできません。

     

    鼓膜および鼓膜周辺を精査することで外耳炎と中耳炎とを区別できます。

    ビデオオトスコープ(耳内視鏡、ビデオ耳鏡)を用いると鼓膜はもちろん耳道も精査でき可視化で治療ができます。

    わずかな鼓膜の亀裂も見過ごすことはないですが、この機械が高価なことが難点です。

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎、なぜ起こる?原因と理由

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎、なぜ起こる?原因と理由

    外耳炎の原因は多因子性であり、素因、原発要因、永続化因子などが複雑に絡み合っています。

    素因としては、

    • 解剖学的特性(狭い耳道、耳道内の被毛、耳道狭窄、垂れ耳など)
    • 過剰な湿気(高温多湿、シャンプーなど)
    • 不適切な治療(機械的外傷、刺激物質、不適切な洗浄など)
    • 全身性疾患(発熱、免疫抑制、衰弱など)

    であり、これらはリスクの増大に関与しています。

    原発要因は、

    • 寄生虫性(ミミヒゼンダニ、ニキビダニ〈毛包虫〉、イヌセンコウヒゼンダニなど)
    • 異物(植物由来、被毛など)
    • アレルギー性疾患(アトピー、食物過敏症、摂食過敏症、薬物反応)
    • 角化異常(原発性特発性脂漏症、甲状腺機能低下症、性ホルモン不均衡)
    • 自己免疫性疾患(落葉状天疱瘡、紅斑性天疱瘡、全身性エリテマトーデス)
    • 耳垢腺およびアポクリン戦の疾患
    • 耳の腫瘍およびポリープ(皮脂腺由来、耳垢腺由来、鼻咽頭、皮膚腫瘍)
    • ウイルス性疾患

    などです。

    永続化因子としては、炎症を悪化させ治癒を妨害するものです。
    細菌、真菌、進行性の病理学的変化(内腔の進行性狭窄、汗腺炎)、中耳炎などが挙げられています。

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎の対症療法

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎の対症療法

    この文章は消さないでください。
    耳道および鼓膜の洗浄を徹底的に行うことが最も重要です。

    全身を精査した後、全身麻酔を施します。

    1. 耳介および耳道入口の汚れを清拭した後、ビデオオトスコープを用いて耳道と鼓膜の検査を行った後治療します。
    2. ビデオオトスコープの画像をみながら、把持鉗子を用いて耳垢・分泌物をできる限り摘出します。
    3. その後、栄養カテーテルと洗浄剤を用いて耳道内部および鼓膜周辺部を徹底的に洗浄します。
    4. 洗浄後は点耳薬を滴下します。

    摘出した耳垢・分泌物を細胞診および細菌培養検査に供します。

    細胞診の結果をふまえ抗生物質や抗真菌薬

    (ケトコナゾール5~10mg/kg/日またはイトラコナゾール3~5mg/kg/日〈全身状態により適宜減量、また投与間隔を工夫する〉)を全身投与します。

    また、細胞診の結果から点耳薬を選択します。

    投薬は、細菌培養の結果が出た時点で再考します。

    耳炎の基礎となっている疾患を考慮し対応します。

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎の診断の進め方

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎の診断の進め方

    耳炎を診断する場合、全身状態を細かく観察することが重要です。

    嘔吐や眼振や痙攣など、耳疾患とは一見かけ離れた症状でも、主因が耳疾患の場合があります。

    見落とすことがないように一つひとつ精査し正確な診断に結びつけることが大切です。

    ◎病歴の聴取

    基礎疾患の有無を精査します。

    基礎疾患がある場合は、耳炎の治療だけではなく同時に基礎疾患の治療を行います。

    特に近年は食物過敏症などのアレルギー疾患が耳炎の原発要因となることが多いです。

    また再発を繰り返している場合は、初発の時期およびこれまでの治療法や治療経過を考慮します。

    ◎一般症状

    • 耳を掻く
    • 首を掻く
    • 頭を振る
    • 耳を床に擦りつける
    • 飼い主に耳を掻くように促す行動がある
    • 皮膚炎がある(非外耳炎性掻痒)
    • 前肢を舐める
    • 特発性の叫び声を上げる
    • 神経症状(運動失調、顔面麻痺、眼振、斜頸または発作)
    • 難聴および嘔吐

    などが観察されます。

    症状は複数組み合わされる場合があり、重度の場合は、むしろ無気力になり沈うつ傾向になります。

    ◎一般的検査

    全身状態を精査します。

    聴診をしながら視診し、行動を観察します。

    怯えていないか、痛がってはいないか、攻撃的ではないかなどの不安行動が観察された場合は麻酔を施すべきです。

    耳炎のための疼痛や不快感のある動物に、獣医師の触診によりさらなる疼痛と不安を与えると、後々の治療に影響します。

    耳炎を患っている動物の耳に不用意に触ることは慎まなければなりません。

    1. まず耳介と耳道入口を観察します。
    2. 耳介が清潔であっても鼓膜周辺に病変があることがあります。
    3. 耳介に分泌物が認められた場合は、耳鏡を用いて耳道および鼓膜を精査します。
    4. 耳介単独の症例もあるが、多くは鼓膜周辺部や耳道に病変があり、耳炎の初期である場合が多々あります。
    5. 初期病変を見逃さないことが最も大切です。

    ◎手持ち耳鏡による検査

    耳介と耳道入口を精査したのち耳道を観察します。

    手持ち耳鏡を右手に持ち(利き手が右手の場合)、左手で患犬の耳を持ち上げて、珠間切痕に耳鏡のコーンを挿入して耳道内部を観察します。

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    垂直耳道と水平耳道を観察します。
    • 鼓膜弛緩部、鼓膜緊張部、鼓膜緊張部から透けてみえるツチ骨柄を確認します。
    • また鼓膜外側面凹部の分泌物や毛を観察します。

    しかしながら、手持ち耳鏡では死角部分が多く鼓膜を精査することは極めて難しいです。

    鼓膜損傷は見落とすことが多いです。

    つまり、手持ち耳鏡で鼓膜を精査することができないので中耳炎を診断することは難しいです。

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    外耳炎と中耳炎を区別することはできません。

    ◎ビデオオトスコープによる検査

    ビデオオトスコープは耳道と鼓膜を精査するのに優れた耳鏡です。

    麻酔をしない場合は、鼓膜周辺部の耳小骨側(耳小骨柄と耳道に囲まれた部分)と鼓膜外側面凹部が死角になります。

    また、耳道が腫脹し鼓膜弛緩部が変形している場合は鼓膜弛緩部と鼓膜緊張部の境、12時方向が死角となります。

    耳道が腫脹している場合は、死角が多く麻酔が必要になります。

    麻酔下で精査すると見落としが少ないです。

    • 患犬を横臥させ、珠間切痕に硬性鏡を挿入して耳道と鼓膜・鼓膜周辺部を精査します。
    • 鼓膜弛緩部の腫大や血管走行、鼓膜緊張部の透明度や線(ホタテガイの殻状)、ツチ骨柄の状態、耳道と線維軟骨輪との接合部、骨性隆起、鼓膜外側面凹部などを観察し、分泌物や耳垢の性状を精査します。
    • 鼓膜周辺部では、鼓膜外側面凹部の耳垢腺の分布および分泌状況、毛の生え方や分泌物の絡まり状況などを精査します。
    • 鼓膜の形態から中耳炎の診断が可能となります。
    • 鼓膜が損傷していた場合、耳管が開いていれば鼓室側から空気が漏れ出ることを観察できます。

    ◎細胞診と細菌培養検査

    細胞診は、耳道内の分泌物をスライドガラスにとりクイック染色して細菌やマラセチアの有無を判定します。

    グラム陰性かグラム陽性かを判定します。

    検査結果を参考にして薬剤を選択します。

    細菌培養検査結果により薬剤を再検討します。

    細胞診は治療のたびに実施し、細菌やマラセチアの有無を判定します。

    耳道内の分泌物をシードスワブに付属する綿棒で採取する際に、分泌物を耳道の奥へ詰め込んでしまうことや綿棒の圧力で脆弱な鼓膜を損傷する可能性があるため、注意が必要です。
    検査を実施することで病変はさらに悪化してしまう可能性があります。

    できれば麻酔下でビデオオトスコープを用いて可視化で採材し、その後、直ちにビデオオトスコープを用いて治療できることが理想です。

    耳炎が改善してきても完治するまで細菌培養は複数回行うべきです。

    特に長期間にわたり再発を繰り返してきた難治性耳炎に対しては、薬剤投与により細菌が変異を起こしている可能性があり、また、治療によりさらなる変化を遂げるからです。

    治療により、細菌やマラセチアの動向が目まぐるしく変化するからです。

    耳道内に腫瘤などの占拠物が存在する場合は、占拠物の前後で細菌培養検査が必要です。

    多くの場合、占拠物の前後で病変に関与している細菌が異なる場合が多いです。

    ◎画像診断

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    外耳道が石灰化している場合は外耳炎だけでなく中耳炎を伴うことが多いです。

    耳道の石灰化や中耳の骨の評価をするには、X線検査およびCT検査が有益です。

    画像診断は、鼓膜の評価には適していません。

    鼓膜や外耳道の評価はむしろビデオオトスコープが優れています。

    外耳道を占拠した腫瘤(耳垢腺過形成、腺腫、耳垢腺癌)には、ビデオオトスコープが有益です。

    外耳炎や中耳炎から波及した皮下腫瘤および鼓室や中耳の液体貯留(中耳炎)には、
    MRI検査が有益であり、骨の変化を確認するにはCT検査が優れています。

     

    鼓膜に損傷がある場合や中耳炎や内耳炎の場合は、MRI検査とCT検査の両方が必須です。

    眼振(横)や斜頸など前庭疾患がある場合は、中耳炎や内耳炎を考慮する必要です。

    この場合はビデオオトスコープによる検査だけでなくMRI検査とCT検査が必須となります。

    また、猫においても、再発性、両側性の外耳炎は中耳炎を伴うことが多く、
    鼓室の状態を把握するために、MRI検査やCT検査が必要です。

     

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎の診断の特徴

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎の診断の特徴

    外耳道異常(外耳炎)の好発犬種は、

    • アメリカン・コッカー・スパニエル
    • フレンチ・ブルドッグ
    • ダックスフント
    • プードル、シー・ズー
    • ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
    • ラブラドール・レトリーバー

    などです。

    性差は顕著でなく、年齢は外耳炎の基礎疾患により様々です。

    アトピーは、1歳から6歳未満で発症し6歳以上での初発は稀です。

    また、食物過敏症は6ヵ月以降に発症することが多いです。

    なお、食物過敏症の好発犬種は、

    • ダックスフント
    • プードル
    • ラブラドール・レトリーバー
    • アメリカン・コッカー・スパニエル
    • ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
    • ミニチュア・シュナウザー
    • ダルメシアン
    • シー・ズー

    などです。

    鼓膜外側面凹部の毛の乱生による外耳炎は、生後3ヵ月齢頃から発症する場合が多いです。

    免疫的素因ではその疾病によりさらに幼少期に発症することもあります。

    また、外耳道異常(外耳炎)の好発品種は、スコティッシュホールドアメリカンカールです。

    ともに解剖学的特性(耳介の形に特徴)があります。

    • スコティッシュホールドは耳介が折れ曲がっており耳道入口が狭いです。
    • アメリカンカールは耳道入口が狭いうえに脂性に富んだ分泌物が多いため外耳炎になりやすいです。

    また保護猫の中にはミミヒゼンダニが寄生していることがあり、適切な処置をしなければ慢性化します。

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎でよくみられる病気

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎でよくみられる病気

    外耳炎は、慢性化する例が多いですが、

    特にアレルギー性疾患、洗浄の不備など不適切な処置が原因で難治性へと移行することがあります。

    ◎アメリカン・コッカー・スパニエルの難治性耳炎

    アメリカン・コッカー・スパニエルの耳炎は慢性化しやすいです。

    耳介は悪臭のある分泌物で満たされ、耳道は閉塞し耳道切開術などによる外科処置が施されることが多いです。

    近年、ビデオオトスコープによる複数回の処置により、丁寧に分泌物が詰まった毛を取り除くことで、耳道閉塞が改善し外科処置を回避できることもあります。

    また慢性化したアメリカン・コッカー・スパニエルの耳炎の基礎疾患として食物過敏症の関与が示唆されています。

    ビデオオトスコープによる徹底した洗浄と食物過敏症などの基礎疾患を治療することで
    好結果を得ることができます。

     

    除去食は少なくとも8~12週間以上与え続けて判定する必要があります。

    ◎洗浄の不備による耳炎

    一般的耳炎の治療法として、耳道内に耳道洗浄液や耳垢溶解剤などを投入し、

    耳をマッサージして振らせる治療法が普及しています。

    さらに耳道の腫れを防ぐためにステロイドを使用していることが多いです。

    しかしながら鼓膜周辺には、粘稠性のある耳垢や分泌物や毛が固着しており、安易な処置により炎症を悪化させてしまう可能性があります。

    すなわち耳垢、毛、分泌物および洗浄液が混じり合い、細菌やマラセチアが繁殖する温床となる場合があります。

    さらにマッサージによる機械的な刺激により耳道が腫れてしまうこともあり、炎症を激烈化させ慢性化させていることがあります。

    ビデオオトスコープを用い、可視化で丁寧に分泌物を摘出し洗浄し、
    適切な抗生物質や抗真菌薬を使用することで炎症は鎮静化し治癒に向かいます。

     

    ◎不適切な治療(機械的外傷、刺激物質など)

    健康な耳道は強く、多少の刺激では発赤することは稀です。

    しかし炎症を起こしている耳道は、わずかな刺激で発赤します。

    特に綿棒やピンセットによる刺激は思った以上に問題であり発赤しやすいです。

    また、耳道内が分泌物で満たされている場合は、分泌物を撤去しようとして鼓膜を損傷してしまうこともあり盲目的な治療は危険です。

    特に耳道内にポリープや腫瘤が認められたり耳道が閉塞している耳炎では、盲目的に洗浄するとさらに悪化する危険があります。

    また、アレルギー性疾患の動物は、洗浄液や耳垢溶解剤および点耳薬などにも過敏に反応し、発赤や耳道の腫脹を引き起こす場合があるので要注意です。

    ◎短頭種の耳炎

    短頭種の水平耳道は短く鼓膜に接する付近は急に狭くなります。

    鼓膜と隣接する耳道には、鼓膜周囲360度にわたり鼓膜側から耳介方向に向かって硬い毛が密に生えています。

    この毛と耳道入口付近の毛が抜け落ちて鼓膜に突き刺さるように耳道を閉塞します。

    毛が耳垢や分泌物と合体し炎症が進み耳道は腫れ、耳道の上皮移動を阻害し、
    耳炎は慢性化し分泌物で充満することがあります。

     

    犬や猫の耳が臭い、痒そう、赤い、痛そう:耳の異常:外耳炎のまとめ

    まとめ
    • 耳道の組織には、皮膚と同様、重層扁平上皮、毛包、皮脂腺、アポクリン腺などが存在しています
    • 治療法は基本的には皮膚の治療と同様である。
    • 耳道・鼓膜および鼓膜周辺を清拭し、清潔に保つことが重要で、安易にステロイドを使うことを慎む

     

    鼓膜の汚れは放射状に周辺に移動し耳道に沿って上皮移動
    この文章は消さないでください。
    正常であれば耳垢や分泌物は上皮移動により耳介側に排出されます。

    しかし外耳炎に罹患している犬の場合、多くは鼓膜外側面凹部に毛が乱生していて、耳垢と分泌物と毛が一緒になり粘稠性となり上皮移動を妨げています。

    また、鼓膜周辺の毛は抜け落ちて耳垢と一体となります。

    これらは鼓膜周辺部における細菌やマラセチアが増殖する温床となります

    このまま放置すると炎症はやがて耳道に波及します。

    これらを撤去し洗浄することが重要です。

    単に耳道の処置にとどまらず鼓膜周辺を精査し治療することで、
    外耳道の分泌異常を改善することができます。

     

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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