獣医師解説!犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い〜原因、症状、治療方法〜

    愛犬や愛猫のおしっこがおしっこが赤い、出血、血尿、茶色いので病院に連れて行ったけど、

    • 様子、経過を見てくださいと言われたけど心配...
    • 検査してくれなかった...
    • 病院ではよくわからなかった...
    • 病院では質問しづらかった...
    • 混乱してうまく理解できなかった...
    • もっと詳しく知りたい!
    • 家ではどういったことに気をつけたらいいの?
    • 治療しているけど治らない
    • 予防できるの?
    • 麻酔をかけなくて治療できるの?
    • 高齢だから治療ができないと言われた

    もしくは、病院に連れて行けなくてネットで調べていた

    という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?

    ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。

    中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。

    ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、

    情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、

    その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。

    例えば...

    • 人に移るの?
    • 治る病気なの?
    • 危ない状態なのか?
    • 治療してしっかり治る?

    これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?

    結論から言うと、尿は様々な要因により通常の尿に含まれることのない色素により、赤色、褐色、黒褐色などの異常な色を呈します。

    色素異常のうち最も多く認められるのは血尿で、尿中に赤血球が存在する状態を示します。

    赤血球が破壊されたり、異なる色素により尿が赤い場合は赤色尿といいます。

    すなわち赤色の尿が赤色尿で、赤血球が認められれば血尿です。

    この記事では、愛犬や愛猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い、その理由をアカデミックな面からまとめました。

    この記事を読めば、愛犬や愛猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色いの原因、症状、治療法がわかります。

    限りなく網羅的にまとめましたので、ご自宅の愛犬や愛猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色いの理由を知りたい飼い主は、是非ご覧ください。

    ✔︎本記事の信憑性

    この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
    論文発表や学会での表彰経験もあります。

    今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

    臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

    記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

    » 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

    ✔︎本記事の内容

    獣医師解説!犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い〜原因、症状、治療方法〜

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色いとは?

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色いとは?

    通常、健康な犬猫の尿の色はウロクローム色素により淡黄色から琥珀色を呈しています。

    ウロクロームは黄色の脂質溶解性の物質で血漿中に存在し腎臓から排泄されます。

    正常尿の色の濃さはこの色素の濃度と尿量に依存しています。

    尿は様々な要因により通常の尿に含まれることのない色素により、赤色、褐色、黒褐色などの異常な色を呈します。

    類症鑑別には尿潜血反応検査、尿中ビリルビン検査、尿沈渣検査および既往歴や内服薬および食物の問診が不可欠です。

    最も多く認められる尿外観異常の中で主要な、赤色尿および褐色尿について述べます。

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い分類と問題点

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い分類と問題点

    腎臓は、腎臓に入ってきた血液をろ過し、身体に不要な老廃物を水分と一緒に「尿」として排泄します。

    しかし何らかの原因で身体に異常が起こると尿の性状(色や臭いなど)や尿量が変化したり、排泄機構に支障が起こることがあります。

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い病理発生

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い病理発生

    尿色素異常のうち最も多く認められるのは血尿で、尿中に赤血球が存在する状態を示します。

    赤血球が破壊されたり、異なる色素により尿が赤い場合は赤色尿といいます。

    すなわち赤色の尿が赤色尿で、赤血球が認められれば血尿です。

    通常は尿試験紙による尿潜血反応が行われることが多いですが、尿潜血反応が陽性であるからといって必ずしも赤血球が存在するわけではないので、尿沈渣法によって確認します。

    稀ですが、尿中にビタミンCなどの強力な還元物質が存在する場合、尿沈渣試験で陽性、尿潜血反応試験で陰性の偽陽性を示します。

    尿沈渣試験で陰性、尿潜血反応試験陽性の場合は溶血性疾患によるヘモグロビン尿や心筋および骨格筋などが何らかの原因により障害され、ミオグロビンが尿中に排泄された状態などが考えられます(泌尿器系由来の血尿ではない)。

    血尿なのか血色素尿なのか、まず確認したうえでこれら病態の把握をすることが大切です。

    尿沈査試験において遠沈後の尿が血尿においては上清が淡黄色であるのに対し、ヘモグロビン尿、メトヘモグロビン尿やミオグロビン尿においては上清が赤色のままであることも鑑別の一つです。

    血尿を大きく分類すると

    • 肉眼的血尿
    • 顕微病学的血尿
    • 腎臓の糸球体由来性血尿
    • それ以外に由来するもの

    に分類されます。

    糸球体性血尿では尿沈渣中に尿円柱をはじめとする蛋白性物質を伴うことが多く、大小不同性の赤血球が多く確認されます。

    一方、糸球体以外の原因による血尿においては尿中蛋白は陰性で大小不同のない均一な赤血球の形態を示すことが多いです。

    肉眼的血尿の場合、排尿時間中のどの時期に血尿を呈するかで病変部を推測できる場合があります。

    排尿開始から終了まで全体的な血尿の場合は腎臓あるいは膀胱、

    排尿初期の血尿は外陰部や膣など前立腺部尿道より末梢、

    排尿の終わり頃の血尿では膀胱頸部から前立腺部尿道にかけての出血

    が予測されます。

    血尿は泌尿器あるいはそれ以外の臓器の様々な疾患において臨床徴候の一つとして発現するものです。

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い対症療法

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い対症療法

    尿の色素異常は様々な原因が存在するため、これらの徴候そのものに対する治療法はないです。

    尿検査、血液検査、血液化学検査、微生物検査、細胞診あるいは画像診断などを順次実施して病因を究明します。

    もちろんこれらの検査処置は治療の一環となることもあり、尿カテーテルによる尿路通過確認や無菌的尿採取などは正確に診断するのに重要です。

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い診断の進め方

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い診断の進め方

    はじめに既往歴、現在の病状、排尿状態の観察結果、尿色などについて詳しく問診します。

    尿の色調異常は飼い主にもわかるが、同じような色調においても様々な原因が存在するため、問診のみで原因を特定する情報は得られないことが多いです。

    その後、一般的な身体検査に加えて泌尿器(腎臓、膀胱、前立腺、子宮)を触診あるいは内診してその形状、大きさ、硬さ、疼痛の有無などを確認します。

    その後、詳細な尿検査をはじめとする各種検査を行います。

    ◎尿検査

    • 尿試験紙検査
    • 尿沈渣による顕微鏡学的検査
    • 尿中微生物培養検査
    • 尿中アルブミン検査

    ◎尿検査以外の検査

    • 血液検査
    • 血液化学検査
    • X線検査(単純または造影)
    • 超音波検査
    • CT検査
    • MRI検査
    • 免疫学的検査(クームス試験、抗核抗体検査など)
    • 血液凝固検査

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い原因の特徴

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い原因の特徴尿外観異常の原因は、泌尿器、生殖器および肝臓の疾患や免疫性と多岐にわたるため、その異常そのものにおける特徴づけは困難です。

    例えば、細菌性尿路感染症においてはそのほとんどが上行性感染であることから生殖能力の活発な若齢動物において発症数が多く、

    前立腺疾患では機能低下に伴う障害が多いことにより老齢の未去勢雄に多いです。

    ヘモグロビン尿を排泄する疾患で多い溶血性貧血では

    ・ピルビン酸キナーゼ欠乏症がバセンジー、ビーグル、ウエスト・ハイライト・ホワイト・テリア、アビシニアンで確認されており、

    ・ホスホフルクトキナーゼ欠乏症はスパニエル種に確認されています。

    メトヘモグロビン尿においては

    • チャウ・チャウ
    • ボルゾイ
    • イングリッシュ・セター
    • テリア種
    • プードル
    • ウェルシュ・コーギー
    • ポメラニアン
    • 短毛腫猫

    においてメトヘモグロビン還元酵素の欠乏が認められています。

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い高頻度の疾患

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い高頻度の疾患

    ◎尿路感染症

    尿路感染症(UTI)は犬において非常に多い疾患であるが、猫では比較的少ないです。

    ほとんどのUTIは外陰部から菌が侵入する上行性の細菌感染であり、細菌の感染力が宿主の感染防御力に勝ったときに発症します。

    UTIは単純性と複雑性に分類され、単純性UTIは若齢の成犬動物に多く血尿、頻尿、排尿痛を呈します。

    その起因菌には大腸菌を代表とする腸内細菌属が50%を占め、後はブドウ球菌や連鎖球菌があります。

    診断は尿沈渣に細菌を確認することや尿培養検査で菌分離を行うことで確定できます。

    主な治療は安静、保温、水分摂取や食物の改善を行い起因菌に効果のあるβラクタム系、ニューキノロン系、ST合剤およびセフェム系の抗生物質を投与します。

    複雑性UTIは幼齢期と老齢期に多く、幼齢期における基礎疾患は尿路奇形が、老齢期では前立腺疾患、腫瘍、神経性、糖尿病などが基礎疾患になることが多いです。

    起因菌は単純性では腸内細菌属が多いのに対し、複雑性においてはブドウ球菌、緑膿菌など日和見感染が多く、これらの菌が複数分離されることもあります。

    複雑性尿路感染症の治療の原則はこれら尿路の基礎疾患の把握と除去であり、抗生物質の投与はこれらの疾患を考慮したうえで選択する必要があります。

    ◎犬糸状虫症

    犬糸状虫症は世界中で発生が認められる線虫類のDirofilaria immitisの感染による疾病です。

    犬が蚊に吸血されることにより感染し、成虫になると肺動脈と右心室に寄生します。

    多数の成虫が血流を障害することによって血液の乱流が生じて機械的に赤血球を破壊し血管内で溶血が起こります。

    後大静脈の閉塞によって生じる後大静脈症候群(VCS)と静脈の閉塞により肝不全および赤血球の断片化(分裂赤血球増多症)、ヘモグロビン血症およびヘモグロビン尿症が起こります。

    典型的な例では元気な犬が突然虚脱し、赤褐色の尿を排泄したとの主訴で来院します。

    尿検査では尿潜血反応陽性であるが、尿沈渣による赤血球は陰性の血色素尿を呈します。

    尿蛋白は陽性でビリルビンも陽性の場合があり、尿沈渣ではビリルビン結晶や尿円柱などとともに若干の赤血球も存在します。

    確定診断には血液中のミクロフィラリアあるいはフィラリア成虫抗原反応試験、超音波検査を行います。

    治療においては外科手術による虫体の吊り出し術、循環不全改善のための補液と必要に応じて利尿薬、ACE阻害薬などの使用が考えられます。

    ◎タマネギ中毒

    タマネギ中毒はタマネギ類(ニンニクやネギを含む)の採食により起こる溶血性貧血のことです。

    一時期はドッグフードの普及により少なくなったが、最近では室内飼育犬の増加により、ヒト用に調理加工されたタマネギ入りの食品を犬が盗食あるいは誤食して起こることが多いです。

    タマネギ成分による赤血球の障害はin vitro試験において、猫>犬>草食家畜>げっ歯類>ヒトの順であることが確認されています。

    中毒の機序としてはタマネギ類に含まれる酸化物アリルプロピルジスルファイドがヘモグロビンを酸化するが血管内における赤血球の断片化、脾臓における血管外貧食などにより赤血球の破壊を誘起し、最終的に赤血球数が減少して貧血を起こします。

    血漿中に流出したヘモグロビンが腎臓を通過することにより尿中に排泄されて血色素尿が観察されることになります。

    タマネギを食べたことを知らない飼い主の訴えは貧血よりも血色素尿であることが多いです。

    診断は飼い主への問診、尿検査および赤血球内のハインツ小体、偏心性赤血球の確認などにより確定します。

    治療には本症における特異的な解毒剤が存在しないため、摂食直後であれば催吐剤により嘔吐させたり、症状に応じて補液や輸血を実施します。

    また赤血球の酸化障害を改善するためにビタミンCやEといった抗酸化剤や網内系機能を抑制し貧血の進行を防止するコルチコステロイドを投与することもあります。

    ◎泌尿器系腫瘍

    泌尿器系腫瘍は以前はそれほど高頻度ではなかったが、犬猫の高齢化により年々増加傾向にあります。

    泌尿器系腫瘍は犬猫ともにほとんどが悪性の場合が多く、

    膀胱腫瘍では上皮由来の悪性腫瘍である移行上皮癌が最も多く、ほかに扁平上皮癌や腺癌があります。

    腎腫瘍は最も多いのが腎癌と腺癌、

    前立腺腫瘍は前立腺癌や移行上皮癌ですが、多くの場合で臨床症状はなく難治性の血尿やほかの疾患に対する画像検査で発見されます。

    主な臨床症状は血尿や排尿障害であるために膀胱炎と診断されてしまい、長期間にわたって内科的治療が行われることが多いため早期診断が難しく、詳細な画像診断や細胞診により確定診断されたときにはかなり進行している場合も多いです。

    よって老齢で内科的治療に反応しにくく、あるいは再発を繰り返す症例には腫瘍を疑って画像診断を行うことが必要です。

    治療はほかの腫瘍と同じく外科的切除および化学療法などがあります。

    ◎胆管閉塞

    十二指腸近くに開口する胆管が閉塞すると胆管内圧の上昇から胆汁構成成分の肝細胞間への逆流が生じ、生体内の血清や組織が過剰の胆汁色素(ビリルビン)によって黄染すると黄疸となります。

    犬においては健常動物でも尿試験紙による検査でビリルビンが陽性に出ることもありますが、2+以上あるいは視覚的に色素が確認できる場合には肝胆道系疾患を疑います。

    ビリルビン尿は高ビリルビン血症や臨床症状として皮膚や粘膜の黄色化に先行して発見されることが多いので重要です。

    ◎猫の多発性嚢胞腎(PKD)


    腎臓に嚢胞が両側性に多数形成される先天性腎疾患で、ペルシャの家系で遺伝的背景が証明されており、両親猫のどちらかが常染色体優性遺伝子を保有している場合、その子猫の2/3が発病するとされています。

    下記は正常な腎臓の構造。

    ペルシャ以外にもペルシャとの長毛種やエキゾチックショートヘアーなどの短毛種の猫の交雑子猫で発症することが明らかになっています。

    初期には無症状であるが、嚢胞が増え増大することで負担が過大となり、腎機能障害が起こります。

    PKDの徴候として血尿、体重減少、沈うつ、嘔吐、多飲多尿および尿路感染症が認められます。

    確定診断には超音波検査にて嚢胞の大きさや個数を確認するが、生後1~2ヵ月齢から診断が可能であり、生後10ヵ月以降では98%正確に診断することができます。

    また口腔粘膜スワブによる遺伝子診断も実施されており、この場合検査精度は99.9%といわれます。

    この疾患に対する根本的な治療方法はないですが、腎障害が進行し尿毒症を発症するので臨床症状に応じて対症療法を行います。

    基本的には血管拡張薬による腎血流量の増加や脱水に対する補液療法、高リン血症に対する吸着剤や食物療法など、基本的には猫の慢性腎不全(CKD)に準じます。

    この疾患に対応するにはすべての繁殖猫に対してPKDの有無を検査し、保因が疑われる個体は絶対に繁殖に供さないことが重要です。

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い要点

    犬や猫のおしっこが赤い、出血、血尿、茶色い要点

    ・血尿=血色素尿ではないです。
    ・尿潜血(+)=尿沈渣中の赤血球(+)ではないです。
    ・尿検査や血液検査において明確な診断ができない場合や鑑別診断が必要な場合には画像診断は欠かすことができません。

    尿の量に異常がある場合は下記の記事を参考にしてくてみてください!

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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