獣医師解説!犬や猫の皮膚が黄色い!黄疸とは!?〜その原因、症状、治療法まで〜

愛犬や愛猫の皮膚が黄色い!黄疸があるので病院に連れて行ったけど、

  • 原因がわからないと言われた...
  • 様子、経過を見てくださいと言われたけど心配...
  • 検査してくれなかった...
  • 病院ではよくわからなかった...
  • 病院では質問しづらかった...
  • 混乱してうまく理解できなかった...
  • もっと詳しく知りたい!
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  • 治療しているけど治らない

という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?

ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。

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例えば...

  • 人に移るの?
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これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?

結論から言うと、犬・猫の黄疸は、

  • 肝前性黄疸(溶血性黄疸)
  • 肝(実質)性黄疸
  • 肝後性黄疸(閉塞性黄疸)

と大きく三つに分類されます。

血液検査でこれらを鑑別することはできないため、超音波検査やレントゲン検査などの画像診断が重要になります。

治療はそれぞれ異なるため、黄疸と一言で言っても、その種類が非常に重要になります。

この記事では、愛犬や愛猫の皮膚が黄色い!黄疸がある場合について、その理由をアカデミックな面からまとめました。

この記事を読めば、愛犬や愛猫の皮膚が黄色い!黄疸がある際の症状、原因、治療法までがわかります。

限りなく網羅的にまとめましたので、ご自宅の愛犬や愛猫の皮膚が黄色い!黄疸があるところを見つけた飼い主は、是非ご覧ください。

✔︎本記事の信憑性

この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。

今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

✔︎本記事の内容

獣医師解説!犬や猫の皮膚が黄色い!黄疸とは!?〜その原因、症状、治療法まで〜

犬や猫の黄疸の用語の定義

犬や黄疸の用語の定義

血清総ビリルビン濃度の上昇に伴い、皮膚や口腔粘膜、包皮粘膜、陰茎、膣粘膜などの粘膜組織、強膜、血漿などが黄色に着色した状態をいいます。

通常、血清ビリルビン値が2mg/dlを超えた場合、皮膚の変色が顕著になります。

黄疸は、肝臓胆道系疾患および溶血性疾患などの徴候として認められます。

血液化学検査、画像診断などを行って原因を追及します。

犬や猫の黄疸の分類と問題点

犬や猫の黄疸の分類と問題点

犬・猫の黄疸は、

  • 肝前性黄疸(溶血性黄疸)
  • 肝(実質)性黄疸
  • 肝後性黄疸(閉塞性黄疸)

と大きく三つに分類されます。

溶血性黄疸は、赤血球の破壊亢進により、ビリルビン全体の生成量が非常に増加している状態です。

肝実質性黄疸は、何らかの原因により肝細胞が破壊されたため、直接型ビリルビンに変えるビリルビン変換機能に支障をきたし、間接型ビリルビンが増加した状態です。

閉塞性黄疸は、肝管、胆管、胆嚢のいずれかの胆汁の流出路の閉塞によって、ビリルビンが貯留した状態で、増加するのは直接型ビリルビンです。

閉塞より肝臓側の胆道は圧がかかって拡張していることが多いため、超音波検査やCT検査などの画像診断で閉塞部位を特定することができる場合があります。

犬や猫の黄疸の病理発生

犬や猫の黄疸の病理発生

◎ビリルビンについて

約80%のビリルビン(胆汁色素)は、赤血球のヘモグロビンが代謝されて産生されます。

脾臓やリンパ節で、赤血球が壊れてできたビリルビン(間接ビリルビン:非抱合型ビリルビン)は、肝臓に運ばれてグルクロン酸と抱合されます。

抱合されたビリルビン(直接ビリルビン:抱合ビリルビン)は胆汁に入り、胆管を経由して胆嚢に貯留され、十二指腸へと排泄されます。

肝臓に障害が起こり、アルブミンと結合できなくなるか、あるいは赤血球の破壊(溶血)が激しいために、肝臓でのグルクロン酸抱合が滞ると、間接ビリルビンが血中に増加します。

間接ビリルビンは極めて毒性が高く、脳障害をきたすこともあります。

また、肝臓でグルクロン酸抱合がなされても、胆道系の閉塞により胆汁中に流出されなければ、逆流して血中に直接ビリルビンが増加します。

総ビリルビンが増加していて、しかも間接ビリルビンの割合が高い場合、肝臓の機能障害よりも、赤血球が過剰に破壊されている状態、すなわち溶血性貧血の状態が疑われます。

直接ビリルビンが増加する場合は、肝臓が悪くてうまく胆汁に排出できないか、あるいは排出しても胆道が詰まっていて流れないことが考えられます。

◎原因別黄疸の特徴

肝前性(溶血性)
  • 肝臓での代謝・排泄能の限界を超えた場合
  • ほとんどの場合、溶血性疾患の基礎疾患:自己免疫性溶血性貧血、播種性血管内凝固(DIC)、全身性エリテマトーデス(SLE)、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症、犬糸状虫症、レプトスピラ症、活性酸素による組織障害など
  • 黄疸のほか、粘膜蒼白、衰弱、呼吸器障害などが認められます。
肝前性
  • 肝細胞によるビリルビンの異常な取り込み、異常な抱合、異常な分泌
  • ショック、DIC、新生物、薬物、胆管炎、慢性肝炎、肝硬変、猫の脂肪肝、肝壊死など
  • 黄疸のほか、粘膜蒼白、肝肥大、腹水、多尿症などが認められます。
肝後性(閉塞性)
  • ビリルビンの肝内外の胆管からの排泄障害
  • 胆嚢炎、胆管炎、胆管への移送、膵炎、胆管破裂などで起こります。
  • 中程度から重度の黄疸で、粘膜蒼白、腹痛などが認められます。

犬や猫の黄疸の対症療法

犬や猫の黄疸の対症療法

・症例ごとに、血中のビリルビンの排出を図ります。

・肝臓の再生を図るために安静状態におきます。

・肝性、肝後性黄疸では、炭水化物が多く、蛋白とナトリウムを制限した食物を給与します。

・ラクトース、メトロニダゾールなどの投薬。

・肝毒性薬物の使用を避けます。

・輸液(乳酸加リンゲル液、0.45%生理食塩水)

・副腎皮質ホルモン剤の使用には、十分な注意を要します。

・肝後性黄疸では、症例によっては外科的処置が考えられます。

犬や猫の黄疸の診断の進め方

犬や猫の黄疸の診断の進め方

◎臨床検査所見

  • 一般血液検査:貧血の種類と程度を調べます。
  • 生化学検査:総蛋白、アルブミン、ALT、AST、ALP、BUN、コレステロール値、総ビリルビン値(直接型、間接型)
  • 尿検査:ビリルビン、ウロビリノーゲン
  • その他の臨床検査:肝前性のときは、クームス試験、抗核抗体検査

◎画像診断

  • X線検査:肝腫大、腹水、胆嚢や肝実質の無機塩類の沈着、外来金属の有無を明らかにします。
  • 超音波検査:肝内疾患と肝外疾患の鑑別、肝実質の病変の確認、腹水

◎その他の検査

  • 肝生検(超音波誘導下)と細菌培養
  • 原因確定のための試験的開腹

犬や猫の黄疸の特徴

犬や猫の黄疸の特徴

すべての品種、すべての年齢で発症します。

予防接種をしていない犬では、犬伝染性肝炎やレプトスピラ症に罹患する率が高いです。

ベドリントン・テリア、ウエスト・ハイランド・ホワイトテリア、コッカー・スパニエルは銅中毒の危険が高いと言われています。

ミニチュア・シュナウザーは、膵炎と肝外胆管閉塞が多いとされています。

肥満猫は、食欲不振によって脂肪肝症に罹患しやすいです。

犬や猫の黄疸の高頻度の疾患

犬や猫の黄疸の高頻度の疾患

黄疸を呈する高頻度の疾患群は以下のとおりです。

原因に対する治療に加えて、肝臓を保護するための積極的な対症療法が治癒を促進します。

◎溶血性黄疸

  • 免疫介在性溶血性貧血
  • SLE
  • レプトスピラ症
  • バベシア症(犬)
  • ヘモバルトネラ症(猫)
  • FeLV感染症→ヘモバルトネラ症
  • FIV感染症→敗血症、不適切な輸血、各種中毒(玉ねぎ中毒、亜鉛中毒、プロピレングリコール中毒、他薬剤)
  • ビタミンK1過剰投与
  • 脂肪肝(猫)
  • 糖尿病(猫)

◎閉塞性黄疸(肝外)

  • 膵炎
  • 膵臓の腫瘍
  • 門脈狭窄
  • 多嚢性疾患
  • 総胆管嚢胞
  • 胆管炎
  • 胆嚢炎
  • 胆道系の腫瘍
  • 濃縮胆汁
  • 胆石症
  • 胆道の出血
  • 胆道の破裂(外傷、外科手術、肝臓の生検、胆嚢穿刺)

◎肝性黄疸

  • 内毒素血症→溶血→胆汁うっ滞
  • 敗血症→無酸素症→胆汁うっ滞
  • DIC→血栓塞栓症
  • 各種感染症(ウイルス性、細菌性、真菌性)→黄疸を伴う肝内性胆汁うっ滞
  • 食欲不振(猫)
  • 薬剤(特にジアゼパムやメチマゾール〈猫〉)
  • 脂肪肝(猫)
  • 慢性肝炎(犬)
  • 胆汁性肝硬変(犬・猫)
  • 多嚢性疾患(猫:ヒマラヤン、ペルシャ)
  • 様々な原因による肝臓壊死
  • 腫瘍
  • アミロイド沈着

犬や猫の黄疸の要点

  • 黄疸は溶血性疾患、肝胆道系疾患、肝外性疾患で発症します。
  • ビリルビンを抱合型と非抱合型に分けることは原因疾患を識別するのに当てになりません。
  • 確定診断の最初は、PCVと血液塗抹検査で溶血性の疾患を除外します。
  • 生化学検査(酵素など)、尿検査は肝臓疾患の大まかな分類に役立ちます。
  • 腹水貯留は、門脈の高血圧、浸透圧の低下(低アルブミン血症)を示唆しています。
  • 貯留液の生化学性状の検査が必要である。胆汁性腹膜炎を黄疸のその他の原因と識別すべきです。
  • 黄疸の症例で、生検、肝吸引標本採取、栄養チューブ装着、腹水抜去、頸静脈穿刺などを行うときは、ビタミンK1を事前に投与すべきです。
  • 典型的な超音波画像は、鑑別診断の際大いに参考になります。
  • 確定診断には、ほとんどの場合、肝細胞吸引による細胞診と肝生検を要します。

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no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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