動物病院で、自分の猫が猫胃虫、毛細線虫と診断された...
愛猫が猫の猫胃虫、毛細線虫と診断されたけど、
- 病院ではよくわからなかった...
- 病院では質問しづらかった...
- 混乱してうまく理解できなかった...
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今回は、比較的まれに遭遇する猫胃虫、胃粘膜寄生の毛細線虫、膀胱寄生の毛細線虫について述べます。
この記事を読めば、猫の猫胃虫、毛細線虫の症状、原因、治療法までがわかります。
限りなく網羅的にまとめましたので、猫の猫胃虫、毛細線虫と診断された飼い主、猫を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。
臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!
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» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
猫の猫胃虫、毛細線虫〜症状、原因、治療法〜
この記事の目次
猫の猫胃虫、毛細線虫の病原体
猫胃虫
猫胃虫は雌虫25~60mm、雄虫25~40mmで、世界的に分布します。
国内の猫でもごくまれに感染が報告されています。
虫卵は旋尾線虫科に特有の特徴をもっています。
卵殻は厚く短楕円形で、中には幼虫が形成されます。
幼虫は頭端に3つの微細な鈎を備え、また、頭端部の角皮(クチクラ)には数列の微棘が構成する線条構造がみられます。
毛細線虫
毛細線虫は産毛のように小さく細い白色もしくは半透明な虫体をもち、虫卵はレモン型で両端に栓様構造をもつのが特徴です。
胃粘膜寄生の毛細線虫の雄虫は5~8mm、雌虫で9~l0mm程度です。
膀胱寄生の毛細線虫の雄虫は15~24mm、雌虫で20~35 mm程度です。
猫の猫胃虫、毛細線虫の疫学
世界的に分布しているが、国内の猫での寄生報告は限られています。
猫胃虫
猫胃虫はコオロギ、バッタ、ゴキブリなどの昆虫を中間宿主としているので、これらの摂食機会があるような自然環境で飼育する猫に寄生がみられることがあります。
国内の野生動物ではアナグマに胃虫が高率にみられる地域があり、そのような胃虫の浸淫地では飼育動物に寄生が起こる可能性が考えられます。
毛細線虫
胃粘膜寄生のA.ρutoriiは直接発育をするので、糞便で汚染された土壌に散布された虫卵の経口的な取り込みが感染機会となります。
膀胱寄生のP Jeliscati はミミズ類を中間宿主として利用する間接発育をするので、中間宿主の利用が可能な自然環境とのかかわりがある猫に寄生がみられます。
胃粘膜寄生のA.ρutoriiはタヌキやキツネ、アナグマ、イタチ、外来動物であるアライグマやミンクなど野生肉食動物が広く自然宿主となっており、その糞便で汚染された土壌との接触が感染機会になると推測されています。
膀胱寄生のP.Jeliscatiもタヌキやキツネをはじめとした野生肉食動物が広く自然宿主となっており、中間宿主のミミズ類を介して飼育動物に感染すると考えられます。
猫の猫胃虫、毛細線虫の宿主
飼育猫での寄生は偶発的で、前述したように、Physaloρlera属やP.feliscatiが国内の野生肉食動物に広く寄生しています。
それらが飼い猫の行動圏の土壌から、あるいは昆虫やミミズなどの中間宿主の摂食から寄生する可能性があります。
猫の猫胃虫、毛細線虫の感染経路と生活環/感染の特徴
猫胃虫
糞便とともに外界に出た猫胃虫の虫卵には第1期幼虫がすでに形成されています。
コオロギ、バッタ、ゴキブリ、甲虫といった中間宿主に摂食されると、その腸管内で孵化して腸壁を貰通し偽体腔に出ます。
ここで発育、脱皮して第2期幼虫となり被嚢します。
被嚢した状態で第3期幼虫に発育して、終宿主に摂食される機会を待ちます。
同じPhysaloρlera属の他種でも同様の生活史をたどります。
胃粘膜に接着し複数虫休で1箇所に貫入して、虫体前部が埋まる腫瘤をつくって寄生します。
毛細線虫
膀胱寄生のP.feliscatiの虫卵は両端部に栓様構造をもつレモン形で、尿とともに外界に出ます。
外界に出た虫卵は適温適湿であれば2週間ほどで幼虫形成卵となり、中間宿主であるミミズにいったん取り込まれて幼虫として発育した後に、終宿主に経口的に感染します。
プレパテントピリオドは9週間程度とされています。
胃粘膜寄生のA.ρutoriiにおいては、糞便とともに外界に出た虫卵は、適温適湿でおそらく2週間程度で幼虫形成卵となり、土壌に撒布された状態で終宿主への感染機会を待つことになります。
猫の猫胃虫、毛細線虫の臨床症状
重度の感染でなければ、特に臨床症状はみられません。
胃粘膜寄生のA.ρutorzzは慢性胃炎の原因となることがあり、嘔吐と下痢を繰り返した症例が報告されています。
胃壁の肥厚と胃の蠕動運動の低下が認められました。
膀胱寄生のp.feliscatiは慢性膀胱炎を主徴とする患猫で確認されています。
その主要な原因であるのか、併発所見かは明確ではありません。
猫の猫胃虫、毛細線虫の診断
猫胃虫
猫胃虫では胃のX線造影検査あるいは内視鏡検査、または糞便検査による虫卵検出で診断します。
虫卵は前述したとおり、旋尾線虫科虫卵として特有の構造をもちます。
毛細線虫
胃粘膜寄生の毛細線虫は、糞便の集卵法で虫卵の検出を行います。
膀胱寄生の毛細線虫については、尿を遠心した沈渣内の虫卵の検出を行います。
両者ともに虫卵は両端の栓様構造が明確な細長いレモン型であり、卵殻表面は網目模様をしています。
猫の猫胃虫、毛細線虫の治療
猫胃虫
猫胃中症に対して、イベルメクチン(200μg/kg)の投与で臨床症状が消失したと報告されています。
国内で注射薬の販売はないが、レパミゾール(8mg/kg)の皮下投与で24時間以内に猫胃虫が駆虫されたことが報告されています。
しかしながら、処方された猫の中には皮下投与後2時間までに嘔吐や流涎といった副作用がみられたケースもあるので注意が必要です。
毛細線虫
猫の胃粘膜寄生の毛細線虫症(A. ρulorii による ) に対して、レパミゾール(7.5mg/kg)を初回投与では、12時間間隔で3.75mg/kg用量に分けて投与し、2週間後に2回目の投与(7.5mg/kg)を行ったところ著効がみられたと報告されています。
猫(体重4.3kg)の膀胱寄生の毛細線虫症(おそらくP. Jeliscaliによる)に対してレパミゾール(45mg)を経口投与したところ、9日後には虫卵が陰転し、副作用も特にみられなかったと報告されています。
必要に応じて初回投与1週間後に同量の再投与も考慮すべきかもしれないです。
犬で有効性が報告されているイベルメクチンは効果がなかったと報告されています。
猫の猫胃虫、毛細線虫の予防
コオロギ、バッタやゴキブリ、あるいは甲虫が中間宿主となる猫胃虫、土壌に生息するミミズを中間宿主とする膀胱寄生の毛細線虫では、中間宿主の摂食機会をもたせないことが重要です。
また、土壌に撒布された虫卵を経口的に取り込むことで感染する胃粘膜寄生の毛細線虫の感染を防ぐためには、土壌に触れたものを食べさせないことが予防になります。
国内の野生肉食動物から中間宿主を介して伝播する近縁種の感染も起こり得るので、放し飼いは感染機会をつくる可能性があることを十分に考慮しなければなりません。