動物病院で、自分の犬が耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニと診断された...
耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニと診断されたけど、
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結論から言うと、0.4mmほどのダニが皮膚に付着し、非常に強い痒みを伴う皮膚炎を引き起こします。
患部を強く掻くことで皮膚が損傷して二次感染を起こしたり、痒みのストレスから食欲減退や元気消失に至ります。
症状が強いもののダニの検出率が低いため、しばしば誤診による誤った治療で症状の悪化を招くことがあります。
ミミヒゼンダニは無症状のまま犬の耳道奥深くに生息していることがり、細菌や真菌の感染による外耳炎を悪化させる可能性があります。
治療への反応が悪い外耳炎では、本症の検査も併せて行うのが望ましいです。
この記事では、耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニについてその原因、症状、診断方法、治療法までをまとめました。
限りなく網羅的にまとめましたので、耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニと診断された飼い主、犬を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。
臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!
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» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
犬の耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニ〜原因、症状、治療法〜
この記事の目次
耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニの病原体
分類と形態
ミミヒゼンダニは、無気門類(現在はササラダニ亜目コナダニ団とも呼ばれる)ヒゼンダニ科に属します。
形態学的にはセンコウヒゼンダニに似ていますが、脚は太く長く、また肢端には短い爪間体とその先に吸盤をもちます。
雄成ダニのみすべての脚先端に吸盤をもちますが、それ以外のステージでは前2対の脚にだけ吸盤をもち、そのほかの脚には2本ずつの長い剛毛をもちます。
雌成ダニの第四脚は発達が悪く痕跡的であり、成虫にもかかわらず脚が3対しかないようにみえることがあります。
雄成ダニ体後部腹側面には明瞭な1対の吸盤があります。
卵は粘液とともに産み出されるため、外耳道内面や耳垢に固定された状態となります。
孵化した六脚の幼ダニは、脱皮して第一若ダニとなり、さらに発育して第二若ダニになります。
この段階まで雌雄差はみられません。
第二若ダニは尾端に2つの突起をもちますが、雄成ダニは第二若ダニに近づき、その尾端の吸盤で第二若ダニの尾端の突起を把持します。
把持された場合の第二若ダニは、雄成ダニに運搬される形で発育します。
第二若ダニが発育して脱皮したとき、雄成ダニが現れた場合には各々別行動をとる一方、雌成ダニが現れた場合には速やかに交尾が行われ、雌はその雄の精子を使って産卵します。
ライフサイクルは条件にもよりますが、およそ3週間程度で完成します。
軽度感染の場合は鼓膜近くの耳道に生息するとされるが、感染が重篤化するにつれ耳道入り口付近まで生息域を拡大し、さらには宿主動物の頭部、背部、あるいは尾部体表を徘徊する個体も認められる。
温度がおよそ13℃、相対湿度がおよそ70%の環境では宿主から離れて10日間以上生存します。
耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニの疫学
日本を含む世界中に分布します。
犬、猫、フェレットおよびキツネから得られたミミヒゼンダニは、形態学的および分子生物学的に同一種とみなされており、おそらくはミミヒゼンダニは宿主が異なっても1種のみしか存在しないと考えられています。
すなわち食肉類の動物同士の接触や行動圏の重複により、相互感染が起こり得ます。
日本における疫学調査では犬1,151頭のうち3.5%で耳道内にダニ寄生が確認されています。
屋外飼育犬よりも屋内飼育の若齢純血犬種、特にブリーダーやペットショップの犬で感染率が高い傾向が示されています。
耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニの宿主
食肉類の動物全般が宿主となり、犬のほか、猫、フェレットあるいは野生の食肉類が感染源となります。
1症例のみではあるが、人の感染例も報告されており、人獣共通感染症としての認識も求められる。
Heyning JV. Otitis extern in man caused by the mite Otodectes cynotis Laryngoscote 87.1977.1938-1941
耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニの感染経路
動物の頭部のみに留まらず、体表同士の接触でも感染し得ります。
また、ミミヒゼンダニは宿主から離れても数日単位で環境中で生存可能なため、動物の体から脱落した耳垢片、ダニの付着した被毛などが感染源となることから、感染動物の行動圏全般に感染リスクがあります。
耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニの感染の特徴
ダニは組織内に侵入せず皮膚の刺咬も行わないため、軽度感染では無症状です。
しかし、感染は持続することから他個体への感染源となるため、ブリーダー、動物販売者、あるいは多頭飼育者は、予防的に治療薬投与を行うことが望ましいです。
耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニの感染の臨床症状
ダニの唾液や排地物により宿主が感作され、外耳道に炎症が起こると考えられます。
軽度感染では症状を示さないか、ときおり耳を痒がる程度に留まります。
感染の重篤化により痒みは強くなり、耳道内に茶褐色の耳垢が形成されます。
外耳炎の進行で耳道粘膜の肥厚から耳道閉塞に至ることもあります。
重症例では斜頚や旋回行動も認められます。
垂れ耳の犬種では、強い捧みで頭を振って耳をぶつけてしまうことで、耳血腫が形成されます。
細菌類や真菌類の二次感染により症状は悪化し、特にマラセチアの感染により独特の甘い臭気が発生します。
耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニの感染の診断
耳鏡検査、耳垢の顕微鏡検査
耳鏡により耳道内で動くダニを検索します。
耳鏡検査の結果にかかわらず、耳垢の顕微鏡検査によりダニおよび卵の検出を試みます。
浅部皮膚搔爬検査
耳周辺の皮膚に病変がある場合、浅部皮膚搔爬検査によってダニを検出できます。
耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニの感染の治療
感染動物は隔離します。
多頭飼育の場合は、無症状の感染同居動物(食肉類の動物全般)が感染源になることもあるので、治療は全頭同時に行うべきです。
ダニの殺滅と同時に抗菌薬投与により二次感染をコントロールします。
耳道内に耳垢が存荘する場合は、薬剤投与の前に十分な耳道洗浄を行います。
国内でミミヒゼンダニ感染に対して認可を受けている薬剤はセラメクチンのスポット剤のみです。
モキシデクチンのスポット剤は海外では認可を受けており、1回ないし2回の投与で治癒が期待できます。
フィプロニルのスポット剤の1回投与も有効とされています。
また副反応に注意する必要がありますが、大動物用アベルメクチン注射剤(イベルメクチン、ドラメクチンあるいはモキシデクチン)の耳道内直接少量滴下も有効です。
経口タイプのノミ・マダニ予防薬として市販されているイソオキサゾリン系薬剤も用法に従った投与2回(フルララネルは1回)により高い治療効果を示すことが報告されています。
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ダニ感染症:ミミヒゼンダニの感染の予防
感染リスクのある動物には予防的投薬を行います。