動物病院で、自分の犬が皮膚病のニキビダニ症と診断された...
ニキビダニ症と診断されたけど、
- 病院ではよくわからなかった...
- 病院では質問しづらかった...
- 混乱してうまく理解できなかった...
- もっと詳しく知りたい!
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結論から言うと、ニキビダ二は皮膚の常在生物で、幼犬では発症しても一過性の部分脱毛を認める程度で軽快します。
何らかの要因により病態が悪化すると薬剤の治療効果が得られにくく、数カ月単位の治療が必要となります。
かつては治療に反応せずしばしば重篤化し、場合によっては安楽死さえ検討される疾患ですが、近年は治療法の発達によって以前より格段に治療成績が向上しています。
成犬での発症の多くには基礎疾患が存在し治療が複雑化します。
この記事では、耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニについてその原因、症状、診断方法、治療法までをまとめました。
限りなく網羅的にまとめましたので、耳ダニ感染症:ミミヒゼンダニと診断された飼い主、犬を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。
臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
犬のニキビダニ症〜原因、症状、治療法〜
この記事の目次
犬のニキビダニ症の病原体
分類
ニキビダニ症を引き起こすのは、前気門類(現在はケダニ亜目とも呼ばれる)ニキピダニ科Demodex属のダニです。
分類が未熟であった過去には、小型のダニの多くが「いわゆる小さなダニ」を意味する「Acarus」属に分類され、それを受けて「アカルス」ないし「アカラス」が病原体名として慣用的に使用された結果、Demodex属ダニによる皮膚疾患が「アカルス(またはアカラス)症」と呼ばれました。
一方、面皰(ニキビ)に一致して本ダニが検出されることが多いことから「ニキビダニ」の名が使用され、それによる疾患はニキビダニ症と呼ばれる。
しかしいわゆるニキビを伴わないDemodex属ダニによる病変(例えば幼犬の部分脱毛や人の酒さ(顔面の毛細血管炎による赤ら顔状態))も知られていることから、ダニの主な寄生部位に由来する「毛包虫」および「毛包虫症」という名称を妥当とする立場もあります。
Demodex属の中には皮脂腺をより好んで、寄生したり、皮膚表面に生息する種も存在することから、この名称も必ずしも適切とはいえず、本疾患の診断名はこれらが入り交じって使用される状況にあります。
犬に寄生するDemodex属ダニとしては、古くからイヌニキビダニDemodex cαnisが知られてきましたが、明らかにこれよりも大きいタイプのダニや小型のダニの存在が知られていました。
それらのうち大きいタイプのダニは、Demodex injaiとして2003年に新種記載されました。
一方、小型のダニはDemodex corneiと呼ぶことがあります。
D.canisとD.injaiは毛包あるいは皮脂腺で認められる一方、小型のダニは体表からのみ検出されるという特徴があります。
犬に寄生する Demodex属のダニはD.canis、D. injai、D.corneiおよびD.cyonisの4種が検出されます。
形態
形態は寄生様式に特化して細長いです。
また、消化管は食道が腸管に入った直後で盲端に終わっており、肛門をもたないことから、栄養摂取量は決して多くないであろうことが考えられます。
それに伴い平時のエネルギ一代謝も低いと思われます。
雄成ダニは雌成ダニと交尾し、雌成ダニが特徴的な虫卵を産出します。
犬のニキビダニ症の疫学
上述の犬に寄生する Demodex属のダニは、すべて日本で認められます。
最も一般的なのはD.canisであり、次いで D.injaiが単独ないし D.canisと混合して全身から検出されます。
D.corneiとD.cyonisはまれです。
犬のニキビダニ症の宿主
Demodex属のダニは宿主特異性が高く、犬に寄生する種が人を含む他の動物に感染することはありません。
犬のニキビダニ症の感染経路
直接的な接触により感染します。
一般的には産後の母犬との接触で、ほとんどの犬が感染を受けると考えられています。
幼若期のダニは運動器の発達が悪く、毛穴から脱出して他の個体の毛包内に侵入できるのは、少なくとも第二若ダ二期以降、おそらくは成ダニが中心になると思われます。
犬のニキビダニ症の感染の特徴
Demodex属のダニは、一般には病原性が低く、特定の条件が整った場合にのみ発症する日和見感染病原体と考えられています。
その一方で感染率は高く、詳細な検査を行えば、ほぼすべての動物に感染していると考えられています。
犬のニキビダニ症の感染の臨床症状
病態発生機序は明らかになっていないが、日和見感染として何らかの宿主側要因の存在が示唆されています。
様々な臨床症状を示し得るため、脱毛や皮膚炎を認めた場合には、鑑別診断候補として本症を常に念頭に置く必要があります。
初発時の年齢から若齢発症型と成年発症型の2つに類別でき、また病変の大きさから局所型と全身型に分けることができます。
若齢発症型
犬種にもよりますが、おおむね1歳半以内に発症するものを指します。
純血犬種での発生が多いです。
眼や口の周囲をはじめとする頭頚部あるいは四肢の限局性脱毛が初期症状となることが多いです。
脱毛は掻痒や肉眼的炎症を伴わないことも多く、無処置のまま自然治癒することもあります。
一方で、一部の症例では脱毛領域の拡大、落屑の発生、あるいは二次感染を合む皮膚炎症状の進行が見られます。
症例の多くは治療に反応し、成長とともに治癒することが多いですが、全身型に移行して治療が長期化することがあります。
局所型と全身型の定義は厳密なものではないです。
初発病変が、例えば頭部全体に拡大したり、2肢以上の複数箇所に病変を認めた場合には、全身型とみなすことが多いです。
成年発症型
初発年齢が4歳齢以上のものを指します。
皮膚疾患単体の場合もありますが、内分泌疾患や免疫を抑制する薬剤治療などに続発して発症することも多く、その場合は治療が複雑化します。
全身型でかつ重篤となることが多く、治療への反応はしばしば思わしくありません。
脱毛、毛包一致性の色素沈着、鱗屑形成、あるいは紅疹などが認められ、さらに二次感染により滲出物、痂皮、膿庖や「せつ」を形成し、強い掻痒や疼痛から動物は強いストレスを受けます。
犬のニキビダニ症の感染の診断
成年発症型の場合は、基礎疾患の存在を想定し、内科的病因、特に内分泌疾患の検索を行う必要があります。
確定診断は顕微鏡による皮膚材料からのダニの検出によりますが、偶発的に検出されただけの可能性もあるため、ダニが一次的病因と判断する際には、成ダニだけでなく虫卵や幼若ダニの鑑別・検出も併せて行います。
すなわち、ダニの増殖状況を評価するため, また治療への反応を経時的に評価するためにも、「卵」、幼ダニから第二若ダニまでの「幼若ダニ」および「成ダニ」とを識別し、これら3者の比率をおおまかに記録するのが望ましいです。
深部皮膚搔爬検査
検査材料採取の最も基本となるのが深部皮膚搔爬検査です。
ダニを検出したい皮膚を毛包内容を絞り出すような形でつまみ上げ、ダニが寄生するであろう毛包根部まで到達するように鋭匙やメスの刃等で皮膚を深く搔爬し、搔爬物を鏡検します。
毛検査(抜毛検査)
深部皮膚搔爬検査は検出率の高い優れた検査ではあります。
しかし、採材部分の出血が避けられず侵襲が大きいことから、それとくらべて動物にストレスを与えにくい毛検査が行われることも多いです。
毛検査は特に眼の周囲や四肢端の検査では有用です。
毛検査は決して検出率の高い方法ではないため、それを補うべく採取する被毛の量と採取部位は極力多くするべきです。
セロハンテープ押捺標本検査
深部皮膚搔爬検査と同程度の検出率をもつ方法としてセロハンテープ押捺標本検査が報告されています。
これは患部に透明粘着テープを貼り付け、その部分の毛包内容を粘着面に絞り出すようにマッサージした後に被毛の派生方向にテープを剥がしそれをスライドガラスに貼付して鏡検する方法です。
これまでの報告は発症犬における比較検証であり、軽度感染での検出率については不明です。
上述の検査法により膿皮症、マラセチア症、あるいは皮膚糸状菌症などが鑑別されますが、治療への反応が思わしくない場合には、診断が困難な皮膚疾患との鑑別のために皮膚生検を行うことがあります。
犬のニキビダニ症の感染の治療
成年発症型の場合には、基礎疾患の治療も併せて、あるいは優先して行う必要があります。
ダニの殺滅に加え、抗菌薬投与による二次感染のコントロールも重要です。
皮膚環境改善のため、症状に応じ脂質除去系および角質除去系のシャンプーも効果があります。
殺ダニ剤
現在はアベルメクチン系薬剤が主に使用されていますが、歴史的にはジアミド系薬剤のアミトラズが使用されてきたほか、近年はイソオキサゾリン系薬剤も使用されつつあります。
いずれの薬剤も国内では効能外使用となります。
マクロライド系薬剤
アベルメクチン系薬剤としてはイベルメクチン200-600μg/kgの連日経口または皮下投与、あるいはドラメクチン600μg/kgの週1回皮下または経口投与が行われます。
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ただしMDR1遺伝子変異犬への投与は禁忌となるため、可能であれば事前に遺伝子検査を行うほか、いずれの薬剤も第1回投与時は50μg/kg程度から開始して神経系への副作用の有無を見極めつつ増量していく必要があります。
ミルベマイシン系治療薬であるミルベマイシンオキシムも有効ですが、0.5-2 mg/kgで連日経口投与が必要となるため、治療費は高額となります。
モキシデクチンのスポット剤は、海外ではニキビダニ症治療薬として認可されており有効ですが、本来の月1回投与よりも毎週投与でより効果が高まります。
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しかし、それでもイベルメクチンの連日経口投与にくらべると効果が劣ることがあります。
ジアミド系薬剤
アミトラスは米国では本症向けに認可されている治療薬ですが、日本国内では効能外処方となります。
アミトラズをダニ寄生部位に十分到達させるためには事前の準備が必要です。
すなわち、中長毛犬種は毛刈りを行い、痂皮は除去し、毛包内の脂質成分をシャンプーにより洗い流した上で皮膚を乾燥させてから外用します。
0.025%に希釈し、2週に1回、スポンジなどを用いて十分量を全身の皮膚に塗布します。
足先は小容器にアミトラズを入れて浸すように施用します。
流涎、沈うつ等の副作用が強く現れた場合には、アチパメゾールの投与が有効です。
チワワやポメラニアンでは中毒が起こりやすいので原則使用しません。
本剤は施用者にも中毒症状を引き起こす可能性があるので、手袋とマスクを着用し、換気に十分注意して使用します。
効果が認められない場合、薬用量を0.05-0.1%に増加したり、施用間隔を1週ごとに短縮することがありますが、副作用への十分な配慮が必要となります。
アベルメクチン系薬剤およびアミトラズによる治療は、ダニが検出されなくなってからも少なくとも1カ月以上治療を継続する必要があります。
イソオキサゾリン系薬剤
近年、ノミ・マダニ予防薬であるイソオキサゾリン系薬剤の常法どおりの投与でニキビダニ症に高い効果が認められています。
すなわち、アフォキソラネルは毎月1回の投与で3カ月後に、3カ月間の効能をもつフルララネルは1回の投与で2カ月後に、各々完全なダニの殺滅が認められ、いずれも同時に比較したモキシデクチンスポット剤の効果を上回りました。
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フルララネルの投与により、治療に反応しがたい肢端に形成された重度の病変を伴う症例も軽快しているようです。
アフォキソラネルやサロラネルと同じイソキサゾリン化合物に分類される薬剤です。
比較的新しく日産化学工業株式会社によって開発・合成された物質で、節足動物の神経系に作用して駆虫効果を現します。
犬や猫に寄生しているノミやマダニは吸血した際に本剤を摂取して死に至ります。
他の薬剤と大きく違う点は錠剤タイプを内服した場合や外用薬を滴下した場合でも、駆虫および予防効果は3ヶ月持続します。
現在この成分が配合されている駆除薬にブラベクト(錠剤、滴下剤)がありますが、基本的に健康な犬や猫に投与することが可能です。
ブラベクトチュアブル錠112.5mg 体重2.0kg~4.5kg 1箱1錠 4,104円
ブラベクトチュアブル錠250mg 体重4.5kg~10kg 1箱1錠 5,007円
ブラベクトチュアブル錠500mg 体重10kg~20kg 1箱1錠 5,373円
ブラベクトチュアブル錠1000mg 体重20kg~40kg 1箱1錠 5,696円
ブラベクトチュアブル錠1400mg体重40kg~56kg 1箱1錠 6,102円
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犬のニキビダニ症の予防
予防法として一般的に受け入れられている方法はないが、ノミ ・マダニ予防薬の一部のものは常用量で治療効果を示します。
好発犬種(シー・ズー、マルチーズ、ウェルシュ ・コーギー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアなど)での使用は一定の予防効果が期待できます。