動物病院で、自分の犬がノミ感染症と診断された...
自宅で、犬にノミを見つけた...
ノミ感染症と診断されたけど、
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結論から言うと、ノミの感染による明らかな症状をみないまま、いつの間にか飼育環境がノミに汚染され、次世代のノミが多量に発生することが多いです。
そのような状況ではノミの駆除は困難となります。
環境が汚染されると、犬や猫の動物以外に飼い主やその家族も刺咬を受ける事になります。
また、ノミは人獣共通感染症の媒介者になる可能性もあります。
外出する機会のある犬は、ノミの感染予防を行う事が望ましいです。
愛犬に必要なノミ予防!徹底解説!
犬との生活で必要なノミの予防とは?獣医師が解説!予防の必要性とそのリスクについてまとめました。犬との生活で推奨されるノミ予防とその理由について徹底解説。犬を飼い始めようと思っている飼い主も、すでに飼っている飼い主も必見です。
この記事では、ノミ感染症についてその原因、症状、診断方法、治療法までをまとめました。
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✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。
臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!
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» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
犬のノミ感染症〜原因、症状、治療法〜
この記事の目次
犬のノミ感染症の病原体
祖先は翅をもっていたが、寄生生活に適応するため後天的にそれを捨て去り、その代わりに宿主への到達手段として独特の跳躍機構を獲得したと考えられています。
犬に寄生するノミは、主にネコノミとイヌノミですが、そのほかヒトノミ、鳥類寄生性のノミ(ニワトリフトノミなど)、および哺乳動物(主にげっ歯類)寄生性のノミを含めると日本国内には70種ほどが分布するとされ、それらが偶発的に感染する司能性があります。
犬のノミ感染症の形態
茶褐色左右扁平、体長2mmほどの成虫です。
ネコノミとイヌノミは、吸血前は雄雌共にほとんど大きさが変わらないものの、雌ノミは吸血して生殖出系が発達すると腹部が膨化して体長が1.5倍ほどにもなり、背線が丸くなります。
この状態の雌ノミはすでに盛んに産卵をしていると判断されます。
雄ノミは吸血しても体長変化はわずかですが、背線は直線状ないしはやや反ります。
ノミは完全変態の昆虫であるため、幼虫の形態は、その姿が広く知られている成虫とは全く異なります。
また、その生息場所が宿主動物から離れていることもあり、見逃される傾向があるため注意が必要です。
幼虫は体長2-5mmほどの疎らな剛毛が派生する無脚のウジ虫であり、脱皮直後、あるいは踊になる前の第3期幼虫は白色です。
多くは環境中に分散しているノミ成虫糞便(主成分は血液)を餌としているため、消化管が透けて赤黒くみえます。
幼虫の尾端部には全ステージで特徴的な尾突起と剛毛列が存在するため、類似幼虫との鑑別に利用できます。
蝋は長径5mmほどの繭の内部に形成されます。
卵は白色で、長径0.5mmほどの滑らかな長円形で、宿主体上の雌ノミから産み出されたそのほとんどは体表から環境中に落下します。
犬のノミ感染症の疫学
犬に寄生するノミ類は、国内に限ればその多くがネコノミで、ほかに頻度はやや低下するがイヌノミがみられます。
前述したように、まれに鳥類や野生哺乳類由来種の寄生を認めることもあります。
かつては一般的であったヒトノミは、現在の日本ではまず見られません。
ネコノミとイヌノミは、日本全国の都市部、郊外を問わず分布します。
地域猫(野良描)は無症状のままノミ寄生を受けていることが多く、その行動圏に次世代の感染源となる卵を散布しています。
室内飼育犬であっても、野外活動や散歩中に偶発的に感染を受け、屋内にノミの発育環を持ち込む可能性があり、マンションの高層階であっても家屋内でノミが大発生することがあります。
犬のノミ感染症の宿主
犬に寄生する主な種であるネコノミおよびイヌノミ成虫は、犬を含む中型の哺乳動物が好適な宿主です。
ウシに寄生し貧血を引き起こした例があります。
人やげっ歯類のような小型哺乳類に一時的に寄生して吸血することがありますが、その場合、寄生は持続しません。
犬のノミ感染症の感染経路
感染はノミ汚染環境への犬の立ち入りによるものが主ですが、ノミ感染動物との接触による成虫の感染も起こり得ます。
ノミの生活環
ノミ成虫は雌雄ともに犬の体表に寄生し、寄生直後から吸血して2日後には産卵を開始します。
ノミは宿主動物が目覚めている聞はグルーミング行動の回避に多くの労力を割いており、吸血、交尾、 産卵などの行動は宿主動物が休息している間に行われることが多いです。
そのため、産み出された卵は、犬の休息場所周辺により多く落下します。
卵は環境条件にもよるが早ければ1日で孵化し幼虫はより暗く、より低い場所を求めて移動します。
幼虫は環境中の有機物を餌として発育しますが、ノミの卵が落下する場所には、同時にノミ成虫の糞便が多量落下しています。
ノミ成虫は1日に体重の15倍の血液を摂取しますが、ほとんど消化吸収しないまま、顆粒状、数珠状、あるいは渦巻き状の糞として排泄します。
落下した糞便は幼虫の発育に必須の餌となります。
幼虫の発育には少なくとも湿度50%以上が必要で、湿度30 % 以下では死滅します。
幼虫は5~11日間で2回の脱皮の後、口から粘着性の糸を吐いて周辺のゴミなどをまといながら繭を形成し、その中で蛹となります。
蛹の時期は最短1週間程度で完了して成虫となりますが、外界からの刺激がなければ繭から脱出せず、 6カ月は飲食のないまま感染チャンスを待ちます。
適切な温度、湿度、二酸化炭素、あるいは一定の圧力などが加わると羽化し宿主を求め跳躍して取り付きます。
上述のとおり動物の休息場所に多くの卵が落下することから、蛹もそこに多く形成されており、動物が休息する際に羽化要件が満たされて再感染が起こります。
ノミ寄生を受けた地域猫や野生動物の休息場所周辺は汚染領域と考えるべきです。
ノミ幼虫が発育し得る草むら、日陰で湿り気のある土や砂がある地面、落ち葉の積もった場所などは、散歩コースとして感染リスクが高いです。
ネコノミは最低13℃あれば生活環が成立するとされています。
ネコノミの成虫は宿主からほぼ離れずに寄生しつづけますが、濃厚な接触があると他動物に移動することがあります。
犬のノミ感染症の感染の特徴
雌のネコノミは、いったん寄生に成功すると1匹あたり1日に最大約30個もの卵を産むとされており、わずか"ひとつがい" のノミの寄生を受けただけで、犬の生活環境中に数百~千匹以上の次世代のノミが発生する可能性があります。
寄生ノミ個体数が少ないと動物が症状を示さないことも多く、結果として次世代のノミが次々と環境で発生して指数関数的な環境の汚染を招きます。
ネコノミ成虫が人に感染した場合、多くはー刺ししただけで脱落します。
しかし生活環境が汚染されていると次々と新規の寄生を受けるため、同居家族は反復して刺咬を受け、重篤な皮膚炎を呈することがあります。
犬のノミ感染症の臨床症状
直接的害
ノミ成虫の刺咬による直接的な掻痒に加え、刺咬時に注入されるノミの唾液成分に対する感作が成立するとアレルギー性皮膚炎が起こります。
これを ノミアレルギー性皮膚炎(flea allergy dermatitis. FAD)と呼びます。
刺咬部位局所の皮膚炎のほか、全身性の発赤や遠隔部位の脱毛が生じることもあります。
感作が強い場合、1匹のノミに1度刺咬されただけで全身性の症状が現れることもあります。
小さな動物に重度のノミ寄生が長期間つづくと、鉄欠乏性貧血となります。
間接的害
犬の赤血球に寄生し貧血の原因となるヘモプラズマ類を媒介します。
そのほか、ハジラミとともに瓜実条虫の媒介者になります。
また、国内の人獣共通感染症としては感染者数が多いと考えられているBartonellahenselaeによる猫ひっかき病の媒介者として重要です。
そのほか発疹熱リケッチア、ペスト菌の媒介者として重要です。
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犬のノミ感染症の診断
ノミ成虫の検索
宿主体表上のノミ成虫を検索する場合、ノミ取りクシを用います。
時間をかけた丁寧な作業が必要となるが、小型短毛犬種以外では必ずしも効率的ではありません。
ノミ糞の検索
一方、多量に排池されるノミの糞便の一部は宿主被毛の根元に貯留していることが多いため、これを診断に利用します。
すなわち、新聞紙などの大きな紙を広げてそこに動物を立たせ、毛を根元から逆立てるようにブラッシングを行うと体表のノミの糞が落下します。
これを集め、濡らして軽く絞ったキッチンペーパーなどの上に広げると、乾燥血液が主成分であるノミの糞であれば、溶血いて赤い染みが広がります。
ノミの卵、幼虫などの検索
室内飼育の場合は、動物の休息場所周辺やクレート内にノミの卵や幼虫が検出されるます。
異物を認めた場合にはセロハンテープなどで採取します。
それをルーペや顕微鏡で観察し、前述のノミ幼虫の特徴の有無を観察します。
犬のノミ感染症の治療
皮膚炎の治療を行うとともに、原因となるノミ成虫感染を迅速かつ完全にコントロールします。
皮膚炎の治療
皮膚炎に対しては症状に応じ、抗炎症薬を局所あるいは全身性に投与します。
殺ノミ剤、シャンプーによるノミの駆除
現在寄生しているノミ成虫に対しては、ノミ予防薬と呼ばれる殺ノミ剤の投与が最も有効です。
シャンプーも一定の効果があり、界面活性剤の長時間暴露でノミは窒息死するため、殺ノミ成分を含まなくても時聞をかけ丁寧に行うと駆除に有効です。
感染犬の生活環境中には、感染の機会をうかがって待機しているノミがおそらく多数存在しており、再感染する可能性が高いです。
そのため後述の「予防」の項にある「環境対策」に準じ再感染防止を行うとともに、感染予防薬の継続的投与が必要です。
犬のノミ感染症の予防
ノミ成虫対策
宿主体表上に取り付いたノミが産卵を開始する前に速やかに殺減すべきです。
犬、猫、あるいは野生動物等が出入りし、一定以上の湿度が保たれノミ幼虫が隠れることができる場所は、すべて汚染の可能性があると考えられます。
散歩道の草むら、ノミ予防していない犬が出入りする可能性のあるドッグラン、地域猫が出入りする庭先などは感染リスクが高いです。
また、動物病院やトリミング施設での感染も皆無ではありません。
そうしたリスクを完全に回避することは困難であり、わずかでもノミ感染の可能性がある犬は感染予防薬を有効期限が途切れないよう投与すべきです。
予防薬の投与
現在、予防を目的とした持続性のある優れた殺ノミ剤が多数開発され、予防薬として販売されているので、その定期的投与により予防が可能です。
有効性は相応に高いものの、新薬であっても市場に投入した直後から薬剤耐性が認められることもあるため、完全な予防薬は存在しないこと注意する必要があります。
予防薬の剤形
剤形については、現在は経口剤、スポット剤およびスプレ一剤が主流となっているほか、シャンプ一、粉剤、首輪なども入手可能です。
またマダニ、犬糸状虫あるいは消化管内寄生性線虫の感染予防成分との合剤も複数販売されているため、適宜使い分けます。
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環境対策
薬剤耐性株の発生、予防薬投与の不備などにより、ノミ成虫感染を受ける可能性があるため、万ーの感染に備え飼育環境を整えておくことが望ましいです。
すなわち、宿主体表上から落下した卵やノミの餌となるノミの糞が環境中に留まらないように動物の休息場所を整え、こまめに清掃を行います。
幼虫の発育には一定以上の湿度が必須であることから飼育環境の乾燥が有効です。
家屋内では部屋中心部の湿度が低くても、微小環境に日を向けると局所的に湿度の高い領域があり、そうした場所でノミが発生することがあります。
例えば新築マンションのコンクリート壁は数年にわたり水分を排出しつづけるため、ペットサークルや家具は壁からやや離して設置するなどの配慮が必要となります。
可能であればカーペットや畳を取り除き、換気を心がけ、必要なら乾燥機設置などを行います。
庭先飼育の場合、敷地内への地域猫の出入り対策を行う必要があります。