犬パラインフルエンザ(Canineparainfluenza)ウイルスは犬の呼吸器病であるケンネルコフの病原体の1つです。
野外ケンネルコフ症例に高頻度に検出されるウイルスです。
実験感染では軽度、短期間の微熱や漿液性鼻汁などを認めます。
野外では、本ウイルス感染の結果、気道上皮粘膜が破壊される事が他の病原体の二次感染を容易にします。
細菌の混合感染により、臨床的に必要と判断された場合は治療します。
ワクチンによる予防が可能で、非常に有効です。
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この記事を読めば、犬パラインフルエンザウイルス感染症の症状、原因、治療法からワクチンの必要性までがわかります。
限りなく網羅的にまとめましたので、犬パラインフルエンザウイルス感染症ついてご存知でない飼い主、また犬を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
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✔︎本記事の内容
犬パラインフルエンザウイルス感染症〜原因、症状、治療法〜
この記事の目次
犬パラインフルエンザウイルスの病原体
モノネガウイルス目 Mononegavirales.
パラミクソウイルス科 Paramyxoviridae
ルブラウイルス属 Rubulavirus
哺乳類ルブラウイルス5 Mammalian rubulavirus 5によります。
別名パラインフルエンザウイルス5 Parainf1uenza virus 5 (PIV 5 )
犬パラインフルエンザウイルス(CPIV)
犬パラインフルエンザは犬の呼吸器病であるケンネルコフの病原体の1つとして認識されています。
健康犬であれば犬パラインフルエンザに全身感染することはないです。
またケンネルコフ以外の特定疾病との因果関係を示す証拠はありません。
犬パラインフルエンザウイルスの疫学
犬パラインフルエンザウイルスは呼吸器病原体として米国で発見されました。
1975年には国内でもウイルスの存在が確認されました。
その後の疫学調査では、ケンネルコフの症例から検出される頻度が最も高いウイルス種として報告されています。
野外のケンネルコフ症例に高頻度で、検出されることから、病因子として重要視されてきました。
急性感染している犬の気道分泌物中に1-2週間ほど排出され、周囲の動物はエアロゾルで曝露します。
犬パラインフルエンザウイルスの宿主
犬パラインフルエンザウイルスの宿主は犬、サル、ブタ、人です。
犬パラインフルエンザウイルスが犬以外の人を含む動物に感染しているかどうかは不明です。
遺伝学的に類似したウイルスが犬だけでなく、サル、ブタ、人などから分離されています。
また、猫やハムスター、モルモットにもウイルスが感染しているとされています。
犬パラインフルエンザウイルスの感染経路
感染源は急性感染犬の呼吸器分泌物です。
くしゃみや発咳によりエアロゾルになったウイルスは近くの犬の気道に吸引され、上部気道粘膜に感染します。
一部は局所リンパ節に感染を広げますが、ウイルス血症へと進むことはまれです。
犬パラインフルエンザウイルスの感染の特徴
- ほぼ上部気道に限定した感染
- 殆んど臨床症状は示さない
- ウイルスによる気道上皮粘膜の破壊が、病原性の弱い他の微生物の混合感染を助長
犬パラインフルエンザウイルスの発症機序
経鼻的に侵入したウイルスは鼻腔、気管や気管支の粘膜細胞を主な標的とし感染増殖します。
その結果として、粘膜損傷が存在する他の微生物の侵襲を容易にし、呼吸器病発現へとつながります。
健常な個体では全身感染は起きない。
犬パラインフルエンザウイルスの臨床症状
ウイルス単独感染の臨床症状は軽微で特異的な臨床所見はありません。
実験感染では、1 ~ 2 日間の軽微な発熱や漿液性鼻汁の排出などが観察されるか、無症状で経過しました。
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野外感染例の殆んどは、他の微生物との混合感染により臨床症状が発現し、ケンネルコフと診断されています。
犬パラインフルエンザウイルスの診断
臨床病理学的に鑑別できるポイントがありません。
犬の上部気道感染症にパラインフルエンザウイルスが関わっているかどうかの確定は病原学的あるいは血清学的に行います。
ウイルス分離、遺伝子検査
鼻汁、 咽喉頭スワブを材料に犬由来細胞を用いてウイルス分離を行います。
しかし時間と手間、そして何より術者の技量に左右されることから、PCR法が汎用されています。
専門検査機関に依頼することになるので、犬アデノウイルス2型、犬ジステンパーウイルス、気管支敗血症菌の検査も同時に依頼するのが好ましいです。
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血清学的検査
血清学的にはペア血清を用いて中和試験や血球凝集抑制試験で行います。
試験と結果の解釈にあたってはワクチン接種歴の確認が必要です。
犬パラインフルエンザウイルスの治療
軽度
軽症の場合、治療は不要です。
ストレスを軽減するような看護や十分な水分補給は、発咳の軽減や肺炎の防止になちます。
咳が酷い場合
咳が酷く罹患犬のみならず同居動物や飼い主の安眠を妨げるほどの場合は、喀痰の伴わない発咳に限って鎮咳薬を指示します。
気管支拡張薬(アミノフイリンやテルブタリン)、中枢性鎮咳薬を内服します。
後者では非麻薬性のデキストロメトルファンとブトルファノールの有効性が高いです。
肺炎を起こしている場合、鎮咳薬は禁忌です。
重度慢性経過
明らかに軽症のケンネルコフの域を超えた全身症状を呈したり、慢性経過を示す場合は、肺炎の防止と治療のために抗菌薬療法を開始します。
特に気管支敗血症菌の管理が重要です。
抗菌薬の選択は薬剤感受性試験に基づきますが、一般的にはクロラムフェニコール、ゲンタマイシン、カナマイシン、テ卜ラサイクリンなどが処方されます。
気道分泌物の軟化や溶解を図るために気管支拡張薬とネブライザー療法が用いられます。
顔面マスクや密閉ケージ噴霧器を用いますが、顔面マスクによる抗菌薬溶液(ゲンタマイシンやカナマイシン)の噴霧が有効です。
犬パラインフルエンザウイルスの予防
ワクチン
非経口投与(注射)型ワクチンと鼻腔内滴下型ワクチンが応用可能です。
犬パラインフルエンザのワクチンは古くから、犬のコアウイルス感染症です。
犬ジステンパーと犬伝染性肝炎の混合ワクチンに、また近年では犬パルボウイルス感染症も加えた5種混合ワクチンの1成分として使われてきました。
非経口投与(注射)型ワクチン
ケンネルコフの予防用にはアデノウイルス2型、犬ジステンパーウイルス、犬パラインフルエンザウイルスに対するワクチンに犬パルボウイルス2型を加えた5種混合ワクチンが国内で広く使われています。
非経口投与(注射)型ワクチンのため、粘膜面での免疫防御が必要なアデノウイルス2型と犬パラインフルエンザウイルスの感染防御には限界があります。
全身感染型のコアウイルス感染症予防用ワクチンと一緒に非経口的に免疫する従来の方法は見直す必要です。
加えて犬パラインフルエンザ感染症そのものに予防接種が必要かどうかの議論も必要である。
感染防御よりも発病軽減ワクチンとして期待すべきです。
鼻腔内滴下型ワクチン
一方、局所投与(鼻腔内滴下)型ワクチンが欧米で使用され評価されています。
アデノウイルス2型、犬パラインフルエンザウイルス、気管支敗血症菌の混合ワクチンで、局所分泌IgA抗体により感染と発病を阻止し移行抗体の干渉を受けません。
投与後速やかにインターフェロンによる非特異的抗ウイルス効果も期待できます。
ただし、免疫持続期間が短いので予防接種のタイミングが大切です。
局所で増殖する生菌の方が効果が高いといわれていますが、ワクチン投与犬から排菌されるため人と動物の共通感染症の観点から懸念されています。
他の犬との接触機会がほとんどない家庭内飼育犬の日常生活には不要です。
国内でも最近になって鼻腔内滴下型のケンネルコフ予防用ワクチン (アデノウイルス2型と犬パラインフルエンザウイルスの不活化 ウイルス、気管支敗血症菌血球凝集素サブユニットの3種混合ワクチン)が市販されています。
ワクチンプロトコル
犬パラインフルエンザウイルスワクチンが入っているコア混合ワクチン、4種あるいは5種混合ワクチンを用いて予防接種をします。
初回免疫処置は、子犬では6-8週齢で接種を開始し、2-4週間間隔で16週齢まで接種し、6カ月または1年後に再接種(ブースター)します。
ワクチン接種歴が不明の成犬(または16週齢以上の子犬)では通常2-4週間間隔で2回接種します。
どちらも初回免疫処置の後は3年以上の間隔で追加接種を行うことが推奨されています。
犬パラインフルエンザウイルス生ワクチン初回免疫処置の効果(免疫持続期間:duration of immunity.DOI)は6年間持続します。
日本ではワクチンに混合されているフラクション(成分)の数ではなく、予防できる病気の数で「○種混合ワクチン」と示す傾向があります。
犬ジステンパー、犬アデノウイルス2型、犬パルボウイルス2型の3種類が入っているワクチンは、犬アデノウイルス2型が伝染性肝炎と伝染性喉頭気管炎の2種類の病気の予防に有効なので4種混合ワクチンと呼ばれます。
愛犬に必要な予防は?飼い主必見!ワンちゃんに必要な予防4種!
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