獣医師解説!犬のマダニ感染症〜原因、症状、治療法〜

動物病院で、自分の犬がマダニ感染症と診断された...

自宅で、犬にマダニを見つけた...

マダニ感染症と診断されたけど、

  • 病院ではよくわからなかった...
  • 病院では質問しづらかった...
  • 混乱してうまく理解できなかった...
  • もっと詳しく知りたい!

という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?

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例えば...

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これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?

結論から言うと、マダ二はダニ類の中でも比較的大型で、成長や産卵のため脊椎動物の血液を栄養源として利用する吸血性の節足動物です。

マダ二寄生は、動物に貧血や皮膚症状などの直接的な病害を引き起こすほか、マダニが病原体を保有していた場合、動物はマダ二媒介性感染症に罹患するリスクがあります。

マダ二寄生を予防するためには、予防薬とともにブラッシングなどの日々のケアが重要です。

この記事では、マダニ感染症についてその原因、症状、診断方法、治療法までをまとめました。

限りなく網羅的にまとめましたので、マダニがいると診断された飼い主、犬を飼い始めた飼い主は是非ご覧ください。

✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。

今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

✔︎本記事の内容

犬のマダニ感染症〜原因、症状、治療法〜

マダニの形態学的な特徴

マダニの形態学的な特徴
マダニはクモの仲間であるため、歩脚が計8本あります(4対)。

しかし幼ダニの歩脚は2本少ない3対です。

マダニの分類

現在、日本国内には6属40種以上のマダニが生息しており、このうち約10種が犬や猫へ寄生します。

形態学的および遺伝系統学的な分類により、外皮が硬いマダニ科と外皮が柔らかいヒメダニ科に分けられます。

マダニ科は、マダニ属、チマダニ属、キララマダニ属、コイタマダニ属、カクマダニ属に分けられます。

マダニの生態

マダニの生態
マダニには4つの発育期があり、卵、幼ダニ、若ダニを経て、成ダニへと成長します。

このうち、卵以外のすべての発育期で吸血を行います。

卵から孵った幼ダニのサイズは約1mm程度と小さいですが、吸血後に脱皮を行うことで2~3mm程度の若ダニへと成長します。

さらにこの若ダニが吸血後に脱皮を行うことで、4~8mm程度の雌成ダニあるいは雄成ダニへと成長します。

雌成ダニは吸血完了(飽血)後、2週間~1カ月ほどすると産卵を開始し、数百~数千個の卵を産みます。

このようなマダニの生活環は、自然界では約1~3年ほどかけて回ることが多いです。

なお、マダニ属の雄成ダニは吸血を行わず、雌成ダニのみが吸血を行います。

その一方、チマダニ属の雄成ダニはわずかながら吸血を行うなど、雄成ダニの吸血生態は種や属によって多少異なります。

マダニには1世代中に寄生する宿主の数によって、1宿主性、2宿主、3宿主性の3型に分けられます。

このうち、日本に分布するマダニは、オウシマダニ(1宿主性)を除き、すべて3宿主性です。

マダニの生息場所

マダニの生息場所
マダニの生存には適度な温度と湿度、そして吸血源動物が必須です。

その至適温度や湿度、主たる吸血源動物はマダニ種によって異なるため、種によって生息する地域や環境が大きく異なることが知られています。

このため、北海道など寒冷地域に多く生息するマダニ種と、沖縄など温暖地域に生息するマダニ種は異なります。

さらに、同じ地域でも環境によって生息する種が異なることが知られています。

これは、湿度の影響や、その環境に生息している動物種の違いが影響を与えていると考えられます。

マダニは普段、日陰にある草木の葉の裏などで吸血源動物が近くを通るのを待ち伏せしています。

マダニの第一脚には二酸化炭素などを感知するハーラー器官があり、近くに動物が接近するとこの感覚器官により察知し、第一脚を高く上げて動物の体表上に乗り移ることで寄生を開始します。

マダニの吸血生態

マダニは吸血に際し蚊のように短時間で吸血することはできません。

国内に生息する一般的なマダニは、幼ダニで 3~4日程度、若ダニで4~5日、成ダニで1週間程度吸血を行います。

ただし、タカサゴキララマダニの成ダニは1カ月程度吸血する例もあり、非常に大きく膨大する場合があります。

マダニの吸血パターンは特徴的です。

徐々に吸血するのではなく、最初は見かけ上ほとんど変化せずにやがて緩やかに肥大し、 最後の1,2日で急激に膨大して飽血(吸血が完了した状態)に至ります。

このように吸血が長時間行われるため、マダニはまず宿主に固着するためのセメント様物質を唾液腺より分泌します。

その後、抗凝固物質などを皮下に注入し、吸血をしやすくします。

一部の例外を除き、これら唾液腺物質とともに各種病原体が吸血源動物に注入されることで感染が引き起こされます。

マダニによる直接的な問題

マダニによる直接的な問題

貧血

動物が多数のマダニ寄生を受けた際に引き起こされます。

アレルギー性皮膚炎

マダニが吸血時に分泌する唾液成分がアレルゲンとなる場合があります。

痛みが原因で激しく皮膚を描くことにより二次感染を引き起こし、皮膚炎となることもあります。

ダニ麻痺症

海外に生息する一部のマダニ種では、マダニが吸血中に毒素を含む唾液を分泌することによって神経症状を引き起こします。

死亡例もまれではありません。

マダニにより媒介される感染症

マダニにより媒介される感染症

マダニ媒介性感染症は、マダニの刺咬によって病原体が伝播される感染症の総称であり、その発生には地域性および季節性があります。

すなわち、病原体を媒介するマダニの生息地域のみ、そしてそのマダニの活動時期にのみ疾病が発生することが知られています。

犬バベシア症

[病原体]Babesia gibsoni. Babesia canis

[媒介マダニ]主にフタトゲチマダニがB.gibsoniを媒介し、クリイロコイタマダニがB.canisを媒介します。

[分布]B. gibsoniが近畿地方以南を中心に、九州から東北地方にかけて分布します。B.canisが沖縄県に分布し、犬での発症例が確認されます。

また、本州で採集されたマダニ(青森県、奈良県、広島県、大分県)から B. canis DNAが散発的に検出されていることから、本州における症例発生の可能性も示唆されています。

エールリヒア症

[病原体]Ehrlichia canis

[媒介マダニ]クリイロコイタマダニ

[分布]沖縄県と本州一部地域

[症状]発熱、リンパ節腫脹、体重減少、脾腫、肝腫大、髄膜脳炎、出血傾向など。

慢性期には眼症状や骨髄抑制による血小板減少や白血球減少、貧血などがみられることがあります。

ライム病

[病原体]ボレリア属細菌(日本ではBorrelia bavariensis, Borrelia garinii, Borreliα αfzelii)

[媒介マダニ]シュルツェマダニとタネガタマダニが媒介

[分布]北海道、本州の高山地域、本州全域や九州地方にもわずかに分布

[症状]国内では、犬において症状を示す個体はまれです。人においては遊走性紅斑や発熱、関節炎などがみられます。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

[病原体]SFTSウイルス

[媒介マダニ]タカサゴキララマダニやフタトゲチマダニなどチマダニ属マダニの一部が媒介

[分布]関東地方以西。ただし、SFTSに対する抗体を保有した動物は東北地方にも存在

[症状]犬において症状を示す例体はまれであり、多くは不顕性感染です。

発熱、食欲廃絶を示した犬の症例が2017年に報告されました。白血球減少、血小板軽 度の減少が認められています。

人においては発熱、消化器症状、頭痛、筋肉痛、リンパ節腫脹などの症状、および血小板減少、白血球減少が認められます。

日本紅斑熱および極東紅斑熱

[病原体] Rickettsia jaρonica、Rickettsia heilongjiangensis

[媒介マダニ]キチマダニ、フタトゲチマダニ、ヤマトマダニなどが媒介

[分布]日本紅斑熱は西日本が中心、極東紅斑熱は東北地方で発生

[症状]犬は症状を示さないと考えられています。人においては発熱、発疹、頭痛、倦怠感などを認めます。

マダニ媒介性感染症の感染予防

マダニ媒介性感染症の感染予防

前述のように、マダニ媒介性感染症の病原体は唾液を介して動物に伝播するため、その予防はマダニに刺されないこと、あるいは刺されても早期に取り除くことが最も重要です。

蚊と異なり吸血時間が長いマダニでは、刺されてもすぐに病原体が吸血源動物に伝播するわけではなく、数時間のタイムラグがあることが犬のバベシア症およびライム病において知られています。(吸血開始後2日以降)

このため、早期にマダニを除去することで、一部の感染症では感染を予防することが可能です。

薬剤投与

犬、猫の場合は複数の製薬会社から投薬方法、作用機序、そして有効成分の異なる様々なマダニ駆除薬が発売されていることから、動物の体質や目的に合わせて選択します。

具体的には、従来汎用されてきた皮膚滴下投与型薬剤(スポット剤)や、経口投与型薬剤などがあり、前者は投薬が簡便であること、刺咬自体を予防できるなどの利点があり、後者は安定した薬効、皮膚炎症状のある動物にも適応可能といった利点があります。

皮膚滴下投与型 経口投与型
特徴 皮膚の1箇所、あるいは複数箇所に薬剤を滴下

薬剤が動物の体表に分布するものと血中に吸収されるもの

経口投与された薬剤が消化管から吸収され,全身に分布

マダ二が薬剤を含む血液を吸血することで効果を発揮

利点 投与が容易

刺咬予防効果がある製品もある

速効性(特に体の末端への分布が早い)

安定した薬剤濃度(全身にくまなく分布)

シャンプーなどに制限を受けない

欠点 皮膚症状のある動物には適応不可

遅効性(薬剤が血中に吸収されないタイプの場合、全身への分布に時間がかかる)

薬剤濃度にばらつき(足の先や耳の先など休の末端では薬剤の濃度が低い傾向)

シャンプーなどに制限を受ける。

滴下直後に動物を触らないように注意が必要

刺咬予防効果なし(刺咬後に作用)

動物が下痢などを起こしており薬剤の吸収が不可能な場合に適応できない

製品の例 フロントラインスポットオン

フロントラインプラス

マイフリーガード

フォートレオン

コンフォティス錠

ネクスガード

ネクスガードスペクトラ

ブラベク卜錠

シンパリカ

クレデリオ錠

いずれの薬剤も用量と投薬期間を守ることが非常に重要です。

特にマダニ対策において投薬量と期間を間違えると、薬効が低下しマダニを防除できないことがあります。

なお、マダニに対する効果はノミに対する効果と比較して残効性が低く、薬剤だけではマダニの刺咬を100%防ぐことは不可能であることも念頭に置く必要があります。

機械的な除去

仮に体表に吸血前のマダニを発見した場合は、まず作業者のマダニ刺咬からの防護策を講じた後、ピンセットや粘着テープなどで取り除き、逃走防止のため粘着テープで挟んでから捨てます。(チャック付きポリ袋も可)

マダニは病原体を保有している可能性があるため、素手で潰すことは絶対に避けます。

なお、秋に大量発生する幼ダニはクモの子のようにみえます。
このように幼ダニが大量に飼育動物あるいは衣服に付いているのを発見した場合は、時間が経過すると広がってしまうため、可能な限り早急に粘着テープ等で除去します。

すでに皮膚に咬着していた場合で、刺されたと思われる当日であれば、先の細いピンセットなどで除去が可能な場合もあります。

この場合、できるだけ皮膚に近い部分を保持し垂直に引き抜きます。

マダニ刺咬後2日以上経過した場合では、すでに皮下に強固な構造が形成されており、ピンセットでの除去が難しい場合があるため、皮膚切開などによる除去が推奨されます。

衣服やケージに付着したマダ二

衣服やケージ等に付着したマダニは、水による洗浄では死滅しない個体がいます。

マダニは高温と乾燥に弱いため、高音・乾燥処理あるいは、殺虫剤により処理することが望ましいです。

具体的には、熱湯をかける、あるいは対象物をビニール袋などに入れた上で密閉し殺虫剤スプレーを行うなどの対策が必要です。

日頃から注意すべきこと

日頃から注意すべきこと

吸血性節足動物の中でもマダニはいわゆる「待ち伏せ型」です。

このため、適度の温度と湿度があれば長期間の生存が可能です。

種によっては1年間に1度の吸血チャンスだけでその生活環を維持している種や、海外では5年以上吸血をしない状態で生存が可能な種もいます。

このように、長期間生存が可能な生態のため、吸血源動物が生息しある程度の温度と湿度がある場所であれば、長期間にわたってマダニが生息しつづけることが可能です。

このため、野山に行ったときだけではなく、普段の散歩コースや公園でもマダニに暴露される機会があります。

マダニによる寄生は、駆除薬を使用することでかなり防除が可能です。

しかし薬剤だけではマダニの刺咬を100%防ぐことは不可能であると認識する必要があります。

マダニの多い茂みにできるだけ犬・猫を立ち入らせないことや、散歩の後のブラッシングも有効です。

また、マダニに気がついたら早急に除去することが感染症予防の観点からも重要です。

マダニ予防薬





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no life no dogs & catsをモットーに、いつも犬と猫に癒されています。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。
現役獣医師が海外で勉強しながら得た、犬と猫の病気に対する知識とスキルを発信していきます。

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