獣医師解説!犬のアレルゲン特異的免疫療法(減感作療法)

アレルゲン特異的免疫療法(減感作療法)は、ヒトの花粉症の初期療法として、「アレルギー疾患 診断・治療ガイドライン2010」(日本アレルギー学会)にて推奨されています。

一方、獣医学領域においては、大アトピー性皮膚炎国際調査委員会による「標準的治療ガイドライン2010」では、慢性アトピー性皮膚炎の治療に、皮下注射によるアレルゲン特異的免疫療法が組み込まれていました。

しかし、動物アレルギー疾患国際委員会(lCADA)による「犬アトピー性皮膚炎の治療・国際ガイドライン2015」において同療法は、犬のアトピー性皮膚炎(AD)の慢性症状に対する治療からは外され、犬の慢性ADの再発予防治療ストラテジーの1つとしての位置付けが提唱されています。

この記事では、犬アトピー性皮膚炎や食物アレルギー性皮膚炎のアレルゲン特異的免疫療法(減感作療法)の基本事項をまとめました。

限りなく網羅的にまとめましたので、アトピーやアレルギーについて詳しく知りたい飼い主、愛犬が犬アトピー性皮膚炎や食物アレルギー性皮膚炎と診断された飼い主は是非ご覧ください。

✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。

記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

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✔︎本記事の内容

犬のアレルゲン特異的免疫療法(減感作療法)

アレルゲン特異的免疫療法(減感作療法)とは

アレルゲン特異的免疫療法(減感作療法)とは

現在、アレルギー治療としてもっとも汎用されているのは薬物療法であるが、これは対症療法にすぎません。

アレルギー疾患を根本的に治療する方法として、アレルゲン特異的免疫療法があります。

この方法は、原因アレルゲンを低濃度から投与して、徐々に高濃度へと移行させていくもので、アレルゲンに対する過敏症を減弱させることを目的とします。

アレルギー反応そのものを起きにくくするという視点に立てば、アレルゲン特異的免疫療法は唯―根治的治療と認識されています。
ヒトの医学領域において、アレルゲン特異的免疫療法は、IgE介在性アレルギー疾患のための脱感作療法として100年以上利用されており、治癒の可能性を示してきました。

アレルゲン特異的免疫療法を実施するためには、原因と考えられるアレルゲンを明らかにするため、皮内検査(Intradermal Skin Test:lDST)もしくはアレルゲン特異的lgE検査が用いられます。

lDSTとアレルゲン特異的lgE検査のどちらの方法で免疫療法を開始しても、結果に有意な差がないです。

アレルゲン特異的免疫療法を日本で行ううえでは、アレルゲンの入手が重要な問題となります。

日本ではヒト用のアレルゲン(鳥居薬品)が入手可能である一方、

獣医学領域においては

①日本国内で入手可能なアレルゲン(鳥居薬品)の利用

②アールケイベッツサービスもしくはGreer laroratoriesからの個人輸入

③アレルミューンHDM(日本全薬工業)の利用の3つの方法がります。

皮下減感作療法(SCIT)と舌下減感作療法(SLIT)

皮下減感作療法(SCIT)と舌下減感作療法(SLIT)

アレルゲンの投与経路としては、皮下注射もしくは経口投与があります。

ヒトの医療においても、舌下免疫療法(SLIT)のメカニズムは完全には解明されていないが、皮下減感作療法(SCIT)そしてSLITは人医療領域においてもっとも広く使われている減感作療法の投与ルートであり、効果や安全性が比較されています。

ダニのSLITは、臨床的に有効であると報告されており、SLITではアレルゲン高用量投与(皮下免疫療法の100倍以上)の方が低用量(3~ 5倍投与)よりも効果が高いと報告されているため、アレルゲン濃度が臨床効果や免疫応答に影響を与える可能性もあります。
また、最近ではアレルギー性鼻炎の治療に効果があったと報告されています。

一方、獣医学領域においても、ウィスコンシン大学のDr.Douglas DeBoerが、ハウスダスト関連性ADの犬に対しヒトの患者で使用されている既存のプロトコールでSLITの有効性を評価したところ、治験の開始2カ月から治験終了の2カ月前までに平均ステロイド量の減少、重症度指数(CADESI)-03スコアおよび平均痒みスコアの減少、さらに平均コナヒョウヒダニ特異的lgEレベルの有意な減少、平均DF特異的19Gレベルの増加を認めたと報告しています。

これに対し、Marsellaはハウスダストマイトに感作させたADモデルのビーグルに経口免疫療法を行ったところ、よく耐えたが臨床症状を改善するには不十分であったとネガティブな内容を報告しています。

しかし、SLITは、従来のSCITに比べ痛みを伴わないため、獣医学領域においても動物たちの苦痛を緩和するだけではなく、併用薬を減らすことができる可能性があり、代替ルートでのSLITに関するさらなる臨床データの蓄積が期待されています。

実際は、アレルゲン特異的免疫療法は開始後すぐに臨床症状が改善することはないために、アレルゲン特異的免疫療法のとくに初期では、副腎皮質ホルモンを併用しながら臨床症状を観察する必要があります。

日本国内では、スペクトラムラボジャパンでのアレルゲン特異的IgE検査(SPOT TEST)の結果から、オプションでSLITを選択することが可能です。

次世代減感作療法

次世代減感作療法

環境アレルゲンのなかでも、とくにハウスダストマイトに対してアレルゲン特異的lgE値が異常を呈する症例は、その他の環境アレルゲンに異常を示す症状に比べ痒みレベルが高く、さらに痒みが季節性ではなく通年に近くなることが問題です。

屋内性ダニ類のチリダニ科ヒョウヒダニ属のコナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニは、喘息やADなどのアレルギー疾患を引き起こすアレルゲン物質を産生することが知られています。

これらダニの虫体破片や排泄物のなかには、非常に多くのアレルゲンとなる成分が含まれています。

コナヒョウヒダニ由来のDer fタンパクとヤケヒョウヒダニ出来のDer pタンパクは、互いに抗原として非常に高い免疫学的交差性を有していると考えられています。

したがって、臨床的にはヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニは同じ抗原であるとみなすことできます。

これらの抗原はいずれも分子量数万前後のタンパク質で、多くは皮表ケラチンを含むタンパクを破壊するプロテアーゼ活性を有している酵素も含まれる。

つまり、ダニの生存に必須の酵素タンパク質がヒ卜やペットの角層を破壊して侵入し、アレルゲンともなっています。

犬アトビー性皮膚炎における感作アレルゲンの代表的なものとしてチリダニかあげられますが、コナヒョウダニが由来のアレルゲンDer 2はその主要アレルゲンの1つに位置付けられています。

アレルミューンHDMは組換え型Derf 2-プルラン結合体を有効成分とし、犬のハウスダウスマイトのクループ2アレルゲンの感作の認められる大のADの症状の改善を目的としたアレルゲン特異的免疫療法です。

アレルミューンHDMは、ダニアレルゲン(Derf 2)遺伝子を導入した遺伝子組換えハキュロウイルスをカイコに接種し、カイコの体内に発現した遺伝子組み換え型ダニアレルゲンを抽出・精製後、さらにプルラン(多糖類)と結合させたものを有効成分とすることで、アレルゲン生が大きく低減され安全性が高まっています。

アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎の再発

アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎の再発

急性期の治療はうまくいっていても、痒みが再発することはあります。

食物アレルキーム単独のパターンと、犬のADおよび食物アレルギーが併発しているパターンの2つに分けて概説する。

食物アレルギー単独のパターン

犬のADおよび食物アレルギーと診断した症例において、皮診も略治し寛解している状態で、皮膚症状お
よび掻痒レベルの悪化が認められた場合に考えるべきポイントは2つです。

感染(膿皮症およびマラセチア性皮膚炎)による悪化

この場合は適切な抗菌薬の内服に加え、外用薬や薬用シャンプーによるスキンケアが治療の要となります。

盗食したことによる食物抗原が関与した食物アレルギーの悪化

この場合は痒みをリセットするためのグルココルチコイドの投薬が必須となります。

グルココルチコイドの投薬によって掻痒がなくなり、グルココルチコイドの休薬後も痒みの復活が認められなければ、悪化した原因は盗食であったと推測できる。

もしくは、反応することがなかった食物抗原に対してアレルギー反応を獲得した場合も考えられます。

その場合は、グルココルチコイド投与中は痒みが抑えられるが、休薬後に痒みの復活が認められるため、低アレルギー食への変更が治療の中心となります。

食物アレルギーと診断した症例において、皮診も略治し寛解している状態で、皮膚症状および掻痒レベルの悪化が認められた場合に考えるべきポイントは3つあります。

  • 感染
  • 食物抗原:盗食による食物抗原の変化による掻痒の再燃
  • 犬のADの併発

ヒトの医療におけるアレルギーマーチのように、食物抗原だけでなく環境抗原に対してアレルギー反応を獲得した場合は、アレルゲン特異的IgE検査などを行うことによって、環境抗原のIgE値の上昇を確認します。

アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎の傾向

アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎の傾向

ヒトのADは増加傾向にあると言われているが、犬のアレルギー性皮膚疾患も増加傾向にあります。

アレルギー皮膚疾患には、家電製品の普及による室内温度の影響やPM2.5など大気汚染や地球温暖化、とくにジャンクフー
ドなどに含まれる食物添加物や生活環境における電磁波など、さまざまな要因が関与していることが推測されます。

実際、臨床現場では犬のADや食物アレルギーの併発、また感染や外部寄生虫などさまざまな病態が複雑に関わっており、一筋縄では攻略できない症例もいます。

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no life no dogs & catsをモットーに、いつも犬と猫に癒されています。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。
現役獣医師が海外で勉強しながら得た、犬と猫の病気に対する知識とスキルを発信していきます。

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