獣医師解説!犬のアトピー性皮膚炎治療まとめ

    犬の皮膚病は非常に多く、その中でもアトピー性皮膚炎は難治性の病気として知られています。

    内服でのコントロールが難しく、痒みをなくすことが困難で、治療に苦慮することも少なくないです。

    動物アレルギー疾患国際委員会(lCADA)による犬のアトピー性皮膚炎(AD)の治療ガイドライン2015の内容およびステロイドのProactive療法について解説します。

    この記事を読めば、犬のアトピー性皮膚炎の原因、症状、治療法までがわかります。

    限りなく網羅的にまとめましたので、犬のアトピー性皮膚炎ついてご存知でない飼い主、また愛犬がアトピー性皮膚炎と診断された飼い主は是非ご覧ください。

    ✔︎本記事の信憑性
    この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
    論文発表や学会での表彰経験もあります。

    記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

    » 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

    ✔︎本記事の内容

    犬のアトピー性皮膚炎治療まとめ

    犬のアトピー性皮膚炎

    犬のアトピー性皮膚炎

    犬のアトピー性皮膚炎(AtopicDermatms:AD)は2型ヘルバーT細胞(Th2型)の炎症性疾患です。

    おもにアトピー素因のあるものに生じ、増悪・寛解を繰り返して慢性に経過する掻痒の強い湿疹病変です。

    動物アレルギー疾患国際委員会(ICADA)が作成した治療ガイドラインによると、犬のアトピー性皮膚炎の定義は、炎症性、掻痒性のアレルギー性皮膚疾患で、遺伝性素因が関与しており、IgE抗体に関連した特徴的な臨床症状を呈しています。

    犬のアトピー性皮膚炎に関与するlgEは、もっとも一般的には環境中アレルゲンに対する抗体であるとされています。

    つまり、おもな原因はハウスダストマイト(コナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニ、花粉(スギやヒノキ)のような環境アレルゲンです。

    その感作経路は主として皮膚であり、曝露されたアレルゲンは皮膚の真皮内にまで侵入し、皮膚の樹状細胞などの抗原提示細胞に貪食され、ヘルパーT細胞が活性化し、B細胞に抗原提示されてIgE産生に至ります。

    犬のアトピー性皮膚炎の治療法としては、環境整備、スキンケアを含めた皮膚バリア機能改善、さらには薬物療法が考えられます。

    lCADAは犬のアトピー性皮膚炎の治療ガイドライン2015を発表しています。

    2010年に発表された犬アトピー性皮膚炎国際調査委員会による標準的治療ガイドラインでは、治療に関し大きく急性期と慢性期に分け、最後に新たに再発予防の枠組みが提唱されています。

    このガイドラインに基づき、犬のアトピー性皮膚炎の治療について解説していきます。

    急性悪化症状に対する治療

    急性悪化症状に対する治療

    1)悪化因子の同定と除去

    環境抗原(ダニ、花粉、カビなど)、外部寄生虫〈ノミ)、感染(細菌、酵母様真菌)、食事など、症状を悪化させる可能性のある抗原の同定と除去

    2)皮膚と被毛の衛生状態の管理

    非刺激性シャンプーによる薬浴

    オートミール、麻酔薬、抗ヒスタミン薬を含むシャンプーの使用効果に関する科学的根拠は認められていないです。

    しかし、アデルミル(ビルバックジャバン)デュクソラールシャンプー(日本全薬工業)の2つの脂質系シャンプーは有益であるとされています。

    3)薬物を用いた掻痒と病変の改善

    犬のADの急性悪化症状に対する薬物療法をまとめると、以下の3つです。

    • 経ログルココルチコイド
    • 0.0584%ヒドロコルチゾンアセポン酸エステルスプレー
    • 経ロオクラシチニブ

    ※薬を安く購入する近道
    最近は動物用医薬品もジェネリックも増えており、動物病院で病気さえ診断していただいて、
    必要な薬さえわかれば、動物病院で購入しなくても、オンライン通販で安く購入できます。
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    局所病変に対しては、外用グルココルチコイドを使用します。

    0.0584%ヒドロコルチゾンアセポン酸エステルスプレー(コルタバンス:ビルバックジャパン)

    有用性が確認されているステロイドスプレーです。

    コルタバンス(Cortavance)犬用
    コルタバンス

    犬のアレルギー性皮膚炎による症状を緩和する外用ローションスプレーです。

    合成副腎皮質ホルモン剤であるヒドロコルチゾンアセポン酸エステル(HCA)が、速やかに浸透した後、表皮内に長く留まり、高い抗炎症作用を発揮します。

    乾性でスプレー後の皮膚のべたつきもなく、また副作用発現のリスクが少ないのも特徴です。

    経ログルココルチコイド

    全身性の病変に対しては、短時間作用型経ログルココルチコイド(プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニプロン)を選択することが推奨されます。

    投与量は0.5~ 1.0mg/kg/日で使用し、その後漸減します。

    パナフコルテロンは、有効成分のプレドニゾロンを含有した合成副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤です。

    経ロオクラシチニブ

    米国FDAで承認されたヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬であるオクラシチニブが、今回のガイドラインに新たに組み込まれています。

    経ロオクラシチニプには非常に迅速な抗掻痒効果があり、その抗癌痒効果はプレドニプロンと同程度であり、その発現はシクロスポリンより早いです。

    皮膚病変への効果は、プレドニプロンやシクロスポリンと同程度です。

    投与量は0.4~ 0.6mg/kg、1日2回の投与から開始し、14日後から1日1回の投与に減薬します。

    副作用は最小限です。

    アポキル

    アポクエル(アポキル錠)は、オクラシチニブマレイン酸塩を有効成分とした犬専用の薬剤で、アレルギー性皮膚炎にともなう、かゆみや赤み、腫れなどの症状を緩和するほか、長期的な治療が必要となるアトピー性皮膚炎の症状にも優れた効果を示します。

    一方、今回のガイドラインから新しく犬のADの急性期治療として十分な効果が得られない薬剤療法が2つ示されました。

    掻痒または皮膚病変を治療するには効果が穏やかすぎる薬物療法

    • 1型(HlR)抗ヒスタミン薬

    作用が遅すぎるために効果が得られないもの

    • 必須脂肪酸サプリメント
    • タクロリムス軟膏
    • 経ロシクロスポリン

    慢性症状に対する治療

    慢性症状に対する治療

    1)悪化因子の同定と除去

    急性期と同様に環境抗原(ダニ、花粉、カビなど)、外部寄生虫(ノミ)、感染(細菌、酵母様真菌)、食事など、症状を悪化させる可能性のある抗原の同定と除去を行います。

    とくに非季節性の臨床症状を呈するすべての大に対しては、1回以上の除去食試験および負荷試験を実施したほうが良いです。

    さらに環境アレルゲンに対する血清IgE値が陰性であり、食物抗原に対するリンパ球反応試験が陽性であつた場合には、除去食試験に反応することもあります。

    2)皮膚と被毛の衛生状態と管理の向上

    非刺激性シャンプーや、必要であれば抗脂漏もしくは抗菌シャンプーによる薬浴が推奨されます。

    被毛と皮膚への効果が明瞭に現れるまでに、2カ月程度かかる可能性があります。

    3)掻痒と病変の改善に対する薬物

    犬アトピー性皮膚炎の薬物療法の治療オプションとしては以下の3つのポイントがあります。

    ①外用グルココルチコイドおよびタクロリムス

    ②経ログルココルチコイド、経ロシクロスポリンおよび経ロオクラシチニブ

    経ログルココルチコイドとしては、短時間作用型経ログルココルチコイド(プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニプロン)を選択します。

    0.5mg/kg 1日1~ 2回の投与から開始し、症状が改善するまで継続します。

    最小限の副作用で良好なQOLを維持する投与量まで減薬することが求められます。

    パナフコルテロンは、有効成分のプレドニゾロンを含有した合成副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤です。

    経ロシクロスポリンは、マイクロエマルジョン製剤の経ロシクロスポリンまたは生物学的同等性が証明された薬剤を使用します。

    投与量は5mg/kg 1日1回の投与から開始し、臨床症状が改善するまで投薬します。

    最小限の副作用で良好なQOLを維持するため、可能であれば減薬できます。

    アトピカ

    アトピカ アトピカ25 アトピカ50 アトピカ100

    Atopica(アトピカ)は、犬のアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患や自己免疫症疾患の免疫抑制剤です。

    アレルゲンに対して過剰に反応してしまう免疫系皮膚細胞の働きを抑制し、皮膚の赤みやかゆみなどのアトピー性皮膚炎の症状を緩和します。

    Atopica(アトピカ)は、シクロスポリンを有効成分とした免疫抑制剤です。犬の難治性アトピー性皮膚炎における症状の緩和に使用されます。

    アレルゲンに対して過剰に反応してしまう免疫系皮膚細胞の働きを抑制し、皮膚の赤みやかゆみなどのアトピー性皮膚炎の症状を緩和します。

    有効成分のシクロスポリンは、世界で初めて臨床応用された免疫抑制剤です。

    人のアトピー治療薬として1987年から使用され、犬用のアトピー薬としては日本で2006年から使用開始されています。

    しかし、従来のシクロスポリンは吸収のばらつきが大きくありました。

    Atopicaは、それを解消したシクロスポリンのマイクロエマルジョン前濃縮物製剤で、体内で混合ミセルを簡単に形成し、水溶性と同様の性質を示すことで、胆汁酸分泌量や食餌の影響による吸収率の変動を少なくし、速やかで安定した吸収を可能にしています。

    アトピカ内用液17ml[犬猫兼用]

    アトピカ内用液
    有効成分としてシクロスポリンを含有した、犬猫用の免疫抑制内用液剤です。
    アトピカと同一有効成分です。
    犬の難治性のアトピー性皮膚炎や、猫の慢性アレルギー性皮膚炎の症状を緩和します。

    アイチュミューン

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    有効成分としてシクロスポリンを含有した、犬猫用の免疫抑制内用液剤です。

    アトピカと同一有効成分です。

    犬の難治性のアトピー性皮膚炎や、猫の慢性アレルギー性皮膚炎の症状を緩和します。

    アイチュミューンは、アトピカジェネリックで、有効成分シクロスポリンを配合した免疫抑制剤です。

    犬の難治性アトピー性皮膚炎における症状の緩和に使用されます。

    アレルゲンに対して過剰に反応してしまう免疫系皮膚細胞の働きを抑制し、皮膚の赤みやかゆみなどのアトピー性皮膚炎の症状を緩和します。

    シクラバンス内用液

    シクロスポリン液体

    有効成分としてシクロスポリンを含有した、犬猫用の免疫抑制内用液剤です。アトピカと同一有効成分です。

    犬の難治性のアトピー性皮膚炎や、猫の慢性アレルギー性皮膚炎の症状を緩和します。

    ③注射用組換えインターフェロン

    日本においては、犬アトピー性皮膚炎の治療薬として承認されています。

    インターフェロンーα (組替え型)を有効成分とするインタードッグ(共立製薬)は、投与量5,000~ 10,000U/kg、皮下投与、週3回から開始し、少なくとも4週間以上継続する。

    可能であれば、週1回に減薬することが望ましいです。

    犬のアトピー性皮膚炎の症状の再発予防

    犬のアトピー性皮膚炎の症状の再発予防

    1. 悪化因子の同定と除去
    2. 外用グルココルチコイドによるProactive療法

    犬のアトピー性皮膚炎に対する治療法としては、急性期に抗炎症薬を集中的に使うことにより寛解へ導入し、皮疹がなくなれば投薬を中止します。

    皮膚症状が再燃した時点で抗炎症薬を用いるReactive療法が―般的に広く行われています。

    しかし、―見回復したようにみえる皮膚でも、炎症が完全に治まっておらず炎症の再燃がみられます。

    そこで犬のアトピー性皮膚炎では急性期の治療とは別に、寛解を保つための長期的な維持療法が必要です。

    ICADAの治療ガイドライン2015が提唱するProactive療法では、急性期に抗炎症外用薬を集中的に使用する点はReacuve療法と同様です。

    しかし、寛解導入を図った後は皮疹があった部位に抗炎症外用薬を週1~ 2日程度塗布します。

    すなわち、悪化してから抗炎症外用薬を塗布するのではなく、再燃しないように先手を打っておくのがProactive療法の特徴です。

    ヒトの医学領域においてProacive療法はすでに多くが試みられており、Proactive療法はReacive療法と比べて優位性を示す結果が報告されています。

    獣医領域においても同様に、再燃の多い犬のアトピー性皮膚炎の場合、Reactive療法ではコントロールしにくいため、急性期の炎症を軽快させた後のProactive療法は寛解維持療法として期待できます。

    Proactive療法で重要なことは、それまで炎症があったすべての部位、つまり症状がなくなった再燃しやすい部位にも塗布するのが鉄則となります。

    皮診が略治しても、すぐにステロイドを止めずに、十分に良くなった後も隔日使用し、再燃がなければ週2回、週1回と、ゆっくり減らしていきます。

    Proactive療法の目的は、ステロィドの副作用を軽減できるレベルにまで減らすことで、再燃を抑制し、良い状態を長期間維持することです。

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    no dogs & cats no lifeをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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