【獣医師解説】子犬の心臓の発達と子犬の健康診断:心臓奇形(静脈管、卵円孔、心房中隔欠損、動脈管)

子犬の心臓の発達

犬新生子の心および循環器は、胎子循環系から成犬循環系への転換によって特徴づけられます。

胎子循環系

分娩まで、酸素供給は胎盤循環経由で行われます。

左臍静脈は肝臓に酸素に富む血液を供給します。

臍静脈と下大静脈の間での血管吻合である静脈管(アランチウス管)の形成によって、肝類洞が迂回されます。

臍静脈と静脈管における酸素充填は、成犬における肺静脈でのそれに比べ、著しく少ないです。

ガス交換に使用されない胎児の肺は虚脱しています。

相対的に少ない肺の血流は、この器官への虚脱供給のためにのみ利用されます。

こういった理由から、出生前にはさらに2つの短絡(シャント)が存在します。

これはそれぞれ、心臓の左右の間での心臓吻合と、肺小循環と全身大循環の間での血管吻合です。

  • 下大静脈の出口に向きあって心房中隔に卵円孔があり、その弁は左心房へ開きます。
  • 胎子の小循環と大循環を結ぶ第2の結合は、動脈管(ボタロー管)であり、肺動脈への分岐部と下行大動脈の開始部の間に存在します。

胎子の発育中は、右心室の血液排出量の約70%が動脈管経由で胸部大動脈へ流れます。

これらの両シャントによって心臓の左右両側は並行して働きます。

血液は両大静脈から肺を経由せず直接大動脈へと送り出されます。

供給領域が同一であるため、左右心室の心筋層および心室中隔は、ほとんど同じ強度に形成されます。

 

 

分娩中の循環転換

新生子の心循環器系は、胎子のそれから成犬のそれへの過渡期にあります。

出生前後の循環の転換には、以下の内容が含まれます。

  • 胎盤と臍の血流の停止
  • 静脈管の閉鎖
  • 肺の拡張と血液供給
  • 卵円孔と動脈の機能的閉鎖

 

胎子における心臓の左右の並列循環は、成犬における左右両心系の直列循環へと移行します。

 

静脈管(アランチウス管)

この文章は消さないでください。
生後最初の数日に静脈管(アランチウス管)は萎縮し、閉鎖します。

静脈管の閉鎖は、臍帯切断の際に臍血流が突然停止することで始まり、門脈経由の肝臓血流の増加によって促進されます。

この血管の完全な解剖学的閉鎖はあとで起こります。

特に大型犬種の場合には、先天性肝臓内門脈体静脈シャントの特殊形態としての静脈管開存(PDV)がみられます。

いわゆる、左側分裂シャント(left divisional shunt)である。

多くの先天性門脈体静脈シャント、すなわちこれ以外の肝内ならびにすべての肝外シャントは、さまざまな血管異常の結果として生じます

ほとんどの門脈体静脈シャントの診断は、一般に8週齢以上、1歳齢以下の子犬について行われます。

 

卵円孔

この文章は消さないでください。
卵円孔の機能的開鎖は、2つの主要な要因によって分娩時に生じます。

ひとつは胎盤および臍血流の停止によって、下行大静脈経由で右心房に流入する血液量が低下することによります。

そのため、卵円孔の弁、すなわちー次中隔に当たる血液量もまた減少します。

もうひとつは、最初の呼吸および肺の拡張とともに、肺血管圧力が低下することによります。

肺の血行は増加し、肺静脈経由で左心房へと流れる血液量は増大します。

同時に右心系全体の圧力が下がります。

このため、弁を左心房へ押す負荷が小さくなり、弁は機能的に閉じます。

弁の解剖学的閉鎖はあとで起こります。

左右シャントを伴う卵円孔開存は、弁の開放による右心房から左心房への血流を意味しますが、

これは、右心室と右心房における圧力が出生後に非生理学的に高い状態にとどまる場合に限って生じます。

たとえば重度の肺動脈狭窄の場合です。

卵円孔開存は犬においては非常にまれな先天性心奇形です。

 

心房中隔欠損

この文章は消さないでください。
卵円孔開存よりも頻繁に生じるのは、胎生期の先天異常に起因する心房中隔欠損(ASD)です。

これによって、卵円孔の形成前段階に生じる二つの生理学的退化、すなわち、

心房間一次孔あるいは心房間二次孔の閉鎖のいずれかが妨げられます。

犬の場合、先にニ次孔欠損が発生しますが、これは心房隔の中部あるいは上部に位置します。

これは一次中隔が短すぎる、あるいは二次中隔の欠損の結果です。

一般に左右シャントが存在し、血液が左心房から右心房へと流れます。

臨床症状は、重度の肺うっ血および慢性の右心不全を伴う右心房と右心室の容量負荷が大きくなります。

ただし、これらの症状は、しばしば子犬の段階に達してから、つまりほとんどの場合8週齢以降になって初めて発現します。

 

動脈管(ボタロー管)

この文章は消さないでください。
動脈管(ボタロー管)の生理的閉鎖は多くの要素からなる現象です。

これはすでに分娩の前に始まり、個体により、生後数時間、数日間、あるいは数週間以内に終了します。

  • 出生前後の肺および全身の血行力学の変化
  • 肺呼吸の開始に伴う血液の酸素充填レベルの上昇
  • 神経ホルモンメカニズム
  • 遺伝的要素

が動脈管の閉鎖に影響を与えます。

すでに分娩前に内膜板結合組織の増殖が始まります。

最初の呼吸によって肺が拡張され、肺動脈幹および肺動脈内の圧力が下がり、胎子期の圧力の約半分になります。

動脈管を流れる血液は、分娩前の状態に比べると、分娩後に明らかに減少し、さらには、血流の向きが逆転します。

胎子発育の間は血液は肺動脈幹から動脈管を通って胸大動脈へと流れるのに対して、
分娩後は逆方向に、すなわち大循環から小循環へと流れます。

 

すでに出生前に始まっていた動脈管の閉鎖は、生後は血管の収縮と結合組織の増殖の進行によって完結します。

閉塞は生後2週間前後で完了します。

動脈管が、成犬の短い動脈管索へと解剖学的転換を遂げるのは更に後です。

 

動脈管開存(PDA)はしばしばみられる犬の先天性心疾患です。

幼犬期には臨床症状が欠如しており、また、聴診の最大点が頭側に遠く離れて(肩甲骨下)いることにより、
個体によっては雑音がまったく聞こえない、あるいは聞こえてもわずかであるため、
子犬の定期検査では聞き逃され、見過ごされてしまう可能性があります。

 

臨床症状は、犬によっては中年期の成犬になるまで現れてこないですが、

これは重度の肺うっ血および慢性の左心不全を伴う左心房と 左心室の容量負荷によります。

この時期には、頭側聴診領域で、犬に特徴的な収縮期と拡張期にまたがって生じる連続性機械様雑音が聞こえます。

動脈管開存は、Bモード心エコー像とドップラー法によって診断されます。

 

新生子と子犬の心臓

この文章は消さないでください。
新生子の脈拍数は胎子に比べて少ないですが、36時間以内に毎分200まで上昇します。

その後8週間で、脈拍は明らかに減少します。

高い脈拍数が計測されるケースは、主に子犬の不安によるものであり、呼吸性洞性不整脈ではありません。

心職全体の大きさと重さは、心臓の各部分の容積同様、発育が進むにつれ、はっきりと増加します。

  • 心臓の大きさは、犬種、犬の大きさ、体重、週齢の影響を受けます。
  • 心臓の成長は、心筋の細胞増殖、肥大、肥厚によって起こります。

 

心エコー検査の特徴

この文章は消さないでください。
新生子の心臓の顕著な特徴のひとつは、右側心筋の肥大です。

これは右心系と左心系との並列循環を伴う胎子の血行力学の結果です。

右心室の肥大は、心エコー検査によって確認できます。

  • 新生子においては右心室の心筋と心室中隔は、乳頭筋と同じ高さで、左心室壁とほとんど同じ厚さか、それよりも厚いです。
  • これに続く時期に、右心室の心筋の厚さは、心室筋の他の部分と比べて薄くなります。
  • ただし、8週齢の子犬の中には、まだ肥厚した右側心筋が観察されるものもあります。
  • 新生子および幼犬のほかの特徴は、心筋組織の不均質性です。

 

パルスドップラー法で記録された心臓の血流速度は、分娩から8週齢まで増大し、成犬の血流速度とほぼ同等になります。

大動脈弁と肺動脈弁の高さでのパルスドップラーの血流パターンは、成犬同様となります。

しかし、房室弁経由の血流は子犬、特に新生子における特徴です。

すなわち、拡張早期の右心室または左心室への受動的な血液流入の速度は、拡張後期期の心房収縮の間に心室へ流入する速度と同じ、もしくはそれと比べてより速いまたは遅いです。

健康な成犬の場合、この拡張早期の受動的流入の速度は、心房収縮の間の拡張後期の血流速度よりも常に早いです。

 

心電図の特徴

この文章は消さないでください。
右心室肥大は、新生子犬における典型的な心電図上の変化を示します。

I誘導から第Ⅲ誘導におけるQS波および/または深いS波、ならびにaVR誘導におけるR波が、右軸偏位を示しています。

  • 心臓の発育の間、個別で単頂の、ほとんどは心室性の期外収縮(VES)が起こることがあります。
  • これは、場合によっては聴診でも認められますが、心電図では必ず確認できます。
  • 期外収縮は一般に一過性のもので、定期的な検査では記録されません。

ただし、電極クリップや電極針を子犬にがまんさせるのは難しいことが多く、強い抵抗や著しい不安をもたらします。

それゆえ心電図検査は、律動異常が根拠を伴って疑がわれる場合に限り行われます。

また、心エコー検査においても、成犬であれば通常、心電図の同時記録を行いますが、子犬の場合には諦めたほうがよいです。

獣医療で扱われる犬の心疾患の約1015%は、先天性心奇形です。

ほとんどの先天的心疾患は生後数週間の間、臨床症状がまったくないか、あってもわずかであすが、子犬を入念に聴診することによって、心奇形の仮診断を下せる場合もあります。

疾患が疑われる聴診所見を最終的に解明するためには、

  • Mモード心エコー
  • Bモード心エコー
  • カラー
  • 従来型
  • パルスドップラー法
  • 連続波ドップラー法

と組み合わせます。

その際は、上述の新生子および子犬に特有の心エコー検査上の特徴を考慮する必要があります。

関連記事一覧

Life with dogs & cats のロゴ

vet1013


no life no dogs & catsをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

このブログについて お問い合せ プライバシーポリシー

sponser

この文章を書いた獣医師に質問!

現役獣医に直接相談!犬・猫の病気・治療相談のります 日本獣医麻酔外科学会で受賞した獣医による相談受付:画像に証拠

PAGE TOP