体調が悪く、最近犬や猫のお腹が張ってきた、腫れてきた・・・
健康診断をしたら、病院でお腹が張っている、腫れていると言われた・・・
本記事では犬と猫のお腹が張ってくる、腫れる病気の原因、検査、治療方法ついてお話しします。
- 様子、経過を見てくださいと言われたけど心配...
- 検査してくれなかった...
- 病院ではよくわからなかった...
- 病院では質問しづらかった...
- 混乱してうまく理解できなかった...
- もっと詳しく知りたい!
- 家ではどういったことに気をつけたらいいの?
- 治療しているけど治らない
- 予防できるの?
- 麻酔をかけなくて治療できるの?
- 高齢だから治療ができないと言われた
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- 人に移るの?
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結論から言うと、お腹が張っている状態は、お腹の中の物理的な圧迫によるものか、お腹の腹筋や腹膜が伸びてしまったどちらかに分類されます。
この記事は、愛犬や愛猫がお腹が張ってくる、腫れていると病院で言われた、自宅で気づいた飼い主向けです。
この記事を読めば、愛犬や愛猫のお腹が張ってくる、腫れる時の検査の重要性がわかります。
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✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、 論文発表や学会での表彰経験もあります。
今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。
臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
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✔︎本記事の内容
この記事の目次
お腹が張っている、腫れている:腹囲膨満とは
腹腔内の内容物などの貯留あるいは増大などにより、腹部が外観的に大きくなってみえる状態のことをいいいます。
お腹が張っている、腫れている:腹囲膨満の分類と問題点
◎内容物の増加による膨満
腹腔内臓器・組織の実質性の腫大による膨満
臓器腫大の原因になる主な異常
▶肝臓:腫瘍、浸潤、炎症、リピドーシス、うっ血
▶脾臓:腫瘍、血腫、捻転、炎症
▶消化管:腫瘍
▶腎臓:腫瘍、浸潤性疾患、代償性肥大
▶子宮:腫瘍、妊娠
▶卵巣:腫瘍
▶精巣:腹腔内精巣の腫瘍化
▶前立腺:腫瘍、肥大
▶脂肪組織:腫瘍、肥満
▶その他腹腔内に発生する様々な腫瘍や肉芽腫
液体貯留による膨満
臓器内部の液体(内容物)貯留の原因になる主な異常
▶肝臓:肺嚢胞
▶脾臓:血腫
▶消化管:腸閉塞、胃拡張、胃捻転、イレウス、便秘(巨大結腸症)
▶腎臓:水腎症、腎周囲嚢胞、
▶子宮:子宮蓄膿症、子宮水腫、子宮粘液腫、妊娠
▶卵巣:卵巣嚢胞
▶前立腺:前立腺嚢胞、偽前立腺嚢胞、前立腺腫瘍
腹腔内の遊離水(腹水)
▶貯留液の種類:滲出液、漏出液、変性漏出液、血液、乳び、尿
気体貯留による膨満
臓器内部の貯留ガス増加の原因になる主な異常
▶消化管:腸閉塞、胃拡張、胃捻転、イレウス
▶ガス産生菌による実質臓器内ガス(肝臓)貯留
腹腔内遊離ガスの原因になる主な異常
▶消化管破裂
▶雌性生殖器の破裂
▶細菌性腹膜炎(細菌によるガス産生)
▶医原性(術後、腹腔内視鏡検査)
◎腹筋の虚弱
腹筋虚弱を起こす主な異常
獣医師解説!犬の副腎皮質機能亢進症:クッシング症候群〜症状、原因、治療、費用〜
コルチゾールをはじめとするグルココルチコイドは生体を維持するために不可欠なホルモンです。ホルモン過剰が持続すると代謝異常、異化亢進や易感染性など、さまざまな負の側面が現れるようになります。これがクッシング症候群(= 副腎皮質機能亢進症)です。犬では、ヒトや猫と比較して圧倒的に発生率が高く、重要な内分泌疾患のひとつになっています。
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コルチゾールをはじめとするグルココルチコイドは生体を維持するために不可欠なホルモンです。ホルモン過剰が持続すると代謝異常、異化亢進や易感染性など、さまざまな負の側面が現れるようになります。これがクッシング症候群(= 副腎皮質機能亢進症)です。犬では、ヒトや猫と比較して圧倒的に発生率が高く、重要な内分泌疾患のひとつになっています。
お腹が張っている、腫れている:腹囲膨満の病理発生
腹部膨満は大きく分けて腹腔内容の増加と腹筋の虚弱の2要因によって生じます。
腹腔内容が増加する原因としては、
- 腹腔内臓器あるいは組織の実質性の増加
- 臓器内あるいは腹腔内のサードスペースへの液体貯留
- 消化管などの臓器内部あるいは腹腔内サードスペースへの遊離ガス貯留
などが挙げられます。
腹筋が虚弱する原因には、犬の副腎皮質機能亢進症などが含まれます。
この場合、虚弱化した腹筋が腹腔内臓器の重さを支えきれずに腹囲が増大します。
妊娠は生理的であるが、胎子の死亡などの異常が起こる場合もあります。
お腹が張っている、腫れている:腹囲膨満の対症療法
まず、緊急処置が必要な状態かどうかを見極める必要があります。
酸素補給
胸部の圧迫が強く呼吸困難がみられる場合には酸素の補給が必要です。必要に応じて気道を確保する。
貯留物の除去
腹腔内貯留物による循環不全や呼吸困難などの改善のため、状況に応じて腹腔内貯留物(ガスや腹水など)を除去し、圧迫の軽減を図ります。
補液(血管確保)
循環不全、血圧低下、脱水、電解質、酸塩基平衡などの異常が生じている場合には血管を確保し輸液を開始し、電解質および酸塩基平衡を補正します。
ショック症状への対処
急性腹症を伴い、ショック症状を呈している動物には、血管の確保による補液、気道の確保、酸素の供給などショックに対する救急治療を行います。
原因疾患の追究
対症療法が必要でないほど動物の状態が安定しているようであれば、原因の追究からはじめることができます。
お腹が張っている、腫れている:腹囲膨満の診断の進め方
腹部の膨満が重度な場合には、呼吸や循環が抑制されている可能性があるので、検査のための保定時であっても状態が急変することがあります。
検査時にも酸素の補給、血管確保など配慮しておく必要があります。
緊急性のある状態なのかどうかを判断
▶腹部膨満を起こし得る疾患は多数存在し、その中には緊急性を要するものも含まれるので、まず最初に急性腹症やショックなどの緊急性のある状態なのかどうかを判断し、的確に対処する。
妊娠と肥満を除外し、疾患であるのかどうかを判断
疾患であれば腹腔内容の増加によるものか腹筋の虚弱によるものかを鑑別
腹腔内容の増加によるものであれば、増加した内容物が実質臓器か液体か気体かを鑑別
問診
急性か慢性か、事故か妊娠などの可能性があるのかなどを確認します。
身体検査
脱水や貧血、腫大した臓器の存在、腹部の波動感、打診による鼓音の有無などの情報は腹部膨満を迅速に鑑別するのに役立ちます。
心音の聴診から心臓性の腹水貯留の可能性が示唆されることもあります。
画像検査
腹腔内の様子を知るには画像診断(X線検査あるいは超音波検査)が最も有効です。
可能なら生検を行いますが、超音波誘導下で実施する方が安全で有意義な材料の採取ができます。
針生検でも化膿性の内容物の漏出や血管肉腫などでは出血する可能性があるので注意が必要です。
血液検査、尿検査、糞便検査は動物の状態の把握に有効です。
液体貯留が示された場合
腹腔穿刺(超音波誘導下で実施するとより安全で確実)により貯留している液体を採取し、腹水を検査します(肉眼所見、蛋白濃度、比重、細胞数、細胞診、必要に応じて生化学検査)。
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続いて腹水検査の結果から疑われる基礎疾患を検出し、動物の現在の状態を把握するために血液検査、尿検査、超音波検査(腹部あるいは心臓)、原因臓器の生検などを実施します。
気体が存在する場合
遊離ガスか臓器内のガスかを鑑別します。
遊離ガスが存在する場合には消化管の穿孔や化膿性腹膜炎の可能性が示唆され、緊急の手術が必要となります。
穿孔臓器、あるいは穿孔部位の確認には、X線造影検査、超音波検査、内視鏡検査などが有効です。
消化管がガスによって拡張している場合
胃拡張や腸閉塞あるいは生理的イレウスなどが考えられ、閉塞の可能性が高ければ手術が必要になります。
閉塞原因や部位の確認にはX線造影検査、超音波検査、内視鏡検査が有効です。
動物の状態の把握や特定臓器の関与を特定するために同時に血液検査、尿検査あるいは腹腔内貯留液が存在する場合には貯留液の検査を実施します。
お腹が張っている、腫れている:腹囲膨満の特徴
肥満や妊娠などでもみられるが、一方では急性腹症に伴って生じ緊急処置が必要になる重大な疾患の症状でもあります。
動物の状態の的確な把握と確実な原因の鑑別診断が重要です。
お腹が張っている、腫れている:腹囲膨満のよくある病気
◎肝腫大
肝臓の腫大を肝腫大というが、炎症、浸潤、うっ血、感染など種々の原因で生じます。
肝臓が部分的に腫大することも全体がびまん性に腫大することもあります。
- 浸潤性、うっ血性疾患、肝細胞腫大、単球-マクロファージ系細胞過形成では肝臓表面は滑らかか、わずかに不規則で、肝臓全体が腫大しています。
- 一方、肝細胞癌、血管肉腫などの転移性あるいは原発性の腫瘍や嚢胞を形成する増殖性の疾患は一葉あるいは複数の葉に発生し、部分的な腫大を引き起こします。
臨床症状は原因となる疾患や経過により種々ですが、食欲不振、沈うつ、運動不耐性、体重減少、嘔吐、下痢、腹水、黄疸などが認められる。
- 増殖、浸潤性疾患:胆管肝炎、慢性肝炎、膿瘍、原発性あるいは転位性腫瘍、髄外造血、単球-マクロファージ系細胞の過形成、アミロイドーシス
- 受動性うっ血:右心不全、心膜疾患、後大静脈症候群、Budd-Chiari症候群、後大静脈閉塞、肝葉捻転
- 肝細胞肥大:リピドーシス(特発性、二次性)、ステロイド肝(副腎皮質機能亢進症)、薬剤性(フェノバルビタール、グルココルチコイド)
- その他:中毒、肝外性閉塞(膵炎、胆石、総胆管腫瘍)、嚢胞
◎腹部腫瘤
臨床症状は種々で、侵されている臓器の種類や全身への関与の程度により異なるが、腹部膨満のほかに、腹水あるいは疼痛などを伴います。
腹部に腫瘤を形成する可能性のある鑑別すべき主な疾患
- 脾臓:血管肉腫、血管腫、線維肉腫、リンパ腫、肥満細胞症、膿瘍、捻転、血腫、うっ血、自己免疫疾患、全身性感染症・炎症など
- 肝臓:肝細胞癌、リンパ腫、血管肉腫、肥満細胞症、膿瘍、血腫、うっ血など
- 膵臓:膿瘍、出血性膵炎、蜂窩織炎
- 腎臓:腎細胞癌、リンパ腫、血管肉腫、腎嚢胞、毒物摂取(エチレングリコール)、腎盂腎炎、水腎症、腎周囲の偽性嚢胞など
- 膀胱:移行上皮癌、膀胱炎、結石など
- 前立腺:肥大、前立腺炎、膿瘍、前立腺嚢胞、傍前立腺嚢胞など
- 卵巣:卵巣嚢腫、顆粒膜細胞腫、腺癌など
- 子宮:子宮蓄膿症、子宮粘液症、子宮水症、捻転、妊娠など
- 精巣:潜伏精巣の腫瘍化(セルトリ細胞腫)
- 消化管:腺癌、腺腫、平滑筋肉腫、平滑筋腫、異物、イレウス、捻転、胃拡張、胃捻転、便秘、巨大結腸など
- リンパ節症:反応性、浸潤性
- 腹膜、腸間膜:癌腫症、中皮腫、脂肪腫など
◎腹水
触診で波動感を感じる腹部腫大を示します。
腹水の発生には、静脈静水圧の上昇、血管内膠質浸透圧の低下、血管透過性の変化などが単独あるいは複合して関与します。
種々の疾患が原因となるので鑑別診断が必要です。
① 漏出液
漏出性腹水は顕著な低アルブミン血症を伴う慢性肝不全、肝内門脈定形成、慢性門脈塞栓症などのときにみられます。
- 肝臓への腫瘍細胞や炎症細胞の浸潤あるいは肝線維症
- 門脈の圧迫や閉塞などによる肝内血管抵抗の上昇
- 主肝静脈や後大静脈の異常による静脈うっ血による肝リンパ液の産生増加などの肝臓や心臓の異常
によって発生します。
② 変性漏出液
変性漏出液貯留には慢性肝不全、右心不全、心膜疾患、大静脈症候群、Budd-Chiari症候群、猫伝染性腹膜炎などで生じる可能性があります。
③ 滲出液
猫伝染性腹膜炎、漿膜侵襲性腫瘍、初期の胆汁性腹膜炎などでみられます。
◎鼓腸
飼い主が気づく臨床症状としては腹部の膨満以外に放屁、腹鳴、おくびなどが含まれます。
貯留が著しい場合には消化管の重度の拡張、疝痛、ショックを起こすことがあります。
消化管内ガス増加の原因としては、短頭犬種や運動が盛んな犬での呑気の増加や、過剰な細菌発酵(食物性物質-非吸収性オリゴ糖)、胃腸疾患(消化不良、吸収不良)などが挙げられる。
お腹が張っている、腫れている:腹囲膨満の要点
- 腹部膨満の場合には、迅速かつ的確な処置を必要とする緊急状態なのか、原因疾患を検査している余裕があるのかを診断する。
- 緊急状態であれば、救急処置を含めた対症療法を行う。
- 緊急状態でない場合には、鑑別診断を進め、疾患・妊娠・肥満なのかを鑑別する。
- 膨満の原因が内容物の増加なのか、筋肉の虚弱なのか鑑別する。
- 内容物増加の場合は、内容物が臓器か液体か気体かを、画像診断、細胞診、腹水検査などを行い、原因疾患を特定する。
- 筋肉の虚弱の場合は、血液検査などを実施し筋肉虚弱を起こす原因疾患を特定する。
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