体調が悪く、動物病院で輸血が必要で、輸血の検査をしましょうと言われた・・・
健康診断をしたら、貧血で輸血が必要だと言われた・・・
本記事では、貧血に対しての輸血の時に行われる血液型の検査、クロスマッチ検査についてお話しします。
- 様子、経過を見てくださいと言われたけど心配...
- 検査してくれなかった...
- 病院ではよくわからなかった...
- 病院では質問しづらかった...
- 混乱してうまく理解できなかった...
- もっと詳しく知りたい!
- 家ではどういったことに気をつけたらいいの?
- 治療しているけど治らない
- 予防できるの?
- 麻酔をかけなくて治療できるの?
- 高齢だから治療ができないと言われた
もしくは、病院に連れて行けなくてネットで調べていた という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?
ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。
中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。
ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、 情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?
など、 その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。
例えば...
- 人に移るの?
- 治る病気なの?
- 危ない状態なのか?
- 治療してしっかり治る?
これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?
結論から言うと、輸血は貧血に対して非常に有効な手段ですが、事前に血液型、クロスマッチを行うことが、非常に重要です。
この記事は、愛犬や愛猫に貧血があり、輸血が必要な血液型、クロスマッチ検査をしましょうと病院で言われた飼い主向けです。
この記事を読めば、愛犬や愛猫の血液型、クロスマッチ検査の重要性がわかります。
限りなく網羅的にまとめましたので、ご自宅の愛犬や愛猫の血液型、クロスマッチ検査について詳しく知りたい飼い主は、是非ご覧ください。
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通話:現役獣医による犬・猫の病気・治療相談のります 日本獣医麻酔外科学会で受賞した獣医による相談受付:画像に証拠
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✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、 論文発表や学会での表彰経験もあります。
今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。
臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】や詳しい実績はこちら!
✔︎本記事の内容
獣医師解説!犬と猫の輸血に必要な血液検査〜血液型 ・クロスマッチ試験〜
貧血症例や外科手術時の出血への対応として、輸血は獣医療で不可欠な手技となっています。
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公的、商業的な血液供給システムはなく、獣医療機関ごとに供血システムを構築しているのが現状です。
血液型について、犬、猫ともに血液型判定キットが販売されており、そのキットを使用した外注検査も可能です。
血液型とは
動物の赤血球表面には糖蛋白や糖脂質が発現しています。
これらの分子の発現パターンは個体ごとに決まっています。
例えば A型のヒトは赤血球に A型の抗原を持ってお り、B型の抗原は持っていません。
A型のヒトは自然にB型に対する抗体(自然抗体) をもっており、A型のヒトにB型の血液を輸血すると、自然抗体が輸血赤血球と反応して副作用が起きます。
犬、猫でも基本的な原理は同じであるが、自己抗体の有無や副作用の頻度や程度などが異なります。
犬の血液型
正確に血液の型式がいくつあるのか不明ですが、臨床的に重要な血液型は DEA1 と DEA7とされます。
このうち、検査されるのは DEA1 の型式です。
この型式では 犬は DEA1.1、DEA1.2、DEA1.3、DEA1 陰性の血液型に分類されます。
- DEA1.1 陽性 とは赤血球 DEA1.1 抗原を持っていること、
- DEA1.1 陰性とは赤血球表面に DEA1.1 をもっていないことを示しています。
しかし、例えば DEA1.1 陰性の犬に DEA1.1 陽性の血液を輸血すると抗体が生じ、輸血血液の半減期が短くなったり、2回目以降の輸血で抗体が産生されて重大な輸血反応が起きたりすることがあります。
そのため供血犬としては DEA1.1 陰性の犬が望ましいです。
院内キットとして販売されているラピッドベット-H (共立製薬)は海外でも使用されているものでDEA1.1の有無を判定します。
- 犬では初回輸血で重大な副作用が起きることは少ない。
- 臨床的な犬の血液型判定キットでは DEA1.1 の有無を判定している。
- 供血犬を確保する場合には DEA1.1 陰性の犬が望ましい。
猫の血液型
猫 では AB型の分類が行われ、A型、B型、AB型に分類されます(ヒトの血液型に似た 呼び方だが特に関係ない)。
最も重大な副作用が起きるのはB型のレシピエントに A 型の血液を輸血した場合で、初回から自然抗体による溶血反応が起きることがあり、 時に致死的です。
A型の猫の30%がB型に対する弱い自然抗体をもつとされ、A 型の猫にB型の血液を輸血した場合には、弱い副反応や輸血血液の半減期の短縮が起きることがあります。
AB型の猫はA型、B型に対する自己抗体をもたないためA型の血液を輸血することが多いです(A型の血液とB型の血液を混ぜて使用してはならない。溶血が起こる可能性がある)。
AB型はまれ。
血液型の判定は院内キットであるラピッドベット-H (共立製薬)が使用できます。
供血猫としてはA型を確保するのが合理的と思われますが、可能ならB型も確保すべきです。
供血動物についてはヘモバルトネラ(ヘモプラズマ)感染の検査も実施した方がよいです。
- 猫では初回の輸血から重大な副作用が起きることがある。
クロスマッチ試験
輸血を行う際にはキットによる血液型の判定だけではなく、実際に症例と供血動物の血液を反応させるクロスマッチ試験が行われることが多いです。
クロスマッチ試験の方法の一例を以下に挙げました。
自己免疫性溶血性貧血などの症例ではもともと自己凝集がみられることもあり、その場合にはクロスマッチ試験が役に立たないこともあります。
クロスマッチ試験の方法
1. 症例および供血動物の血液を 1mL 採血する(ヘパリンか EDTA)。
2. 症例および供血動物の血漿(血清でも可)を分離し、使用までしばらく保存する。
3. 血漿を採取した残りの赤血球を多く含む血液 100uL 程度を 1.5mL チューブに移し、
1mL 程度の生理食塩水に浮遊(ボルテックスなど)する。
4.通常の遠心機で 2,000~3,000rpm、または超小型の卓上遠心機(チビタンなど)で
遠心し、上着を捨てて新しい生理食塩水を加えることで赤血球を洗う。これを合計3
回繰り返す。
5. 新しいチューブを準備し生理食塩水980uL を入れる。そこに洗浄した赤血球 20uL を
加えてよく混合し2%赤血球浮遊液とする。
6.96穴U字プレートを準備し、2で保存しておいた血漿40μL と2%赤血球浮遊液
40uLを各ウェルに加えていく。加える組み合わせとしては以下のとおり。
- 1症例血漿-症例血球(自己凝集確認用)
- 2症例血漿-供血動物 A の血球(主試験)
- 3症例血漿-供血動物 B の血球(主試験)
- 4供血動物 A 血漿-症例血球(副試験)
- 5供血動物 B 血漿-症例血球(副試験)
- 6供血動物 A 血漿-供動物 A 血球(陰性コントロール)
7. ウェルが乾燥しないようにラップ等で覆い、可能なら 37°C、恒温槽がなければ室温
で1時間放置する。
8.溶血の有無と凝集を判定します。
判定方法
以下のように行います。
96穴プレートの各ウェルを下から覗いた時
- 凝集がない場合には赤血球が底の部分にきれいな円形で沈降している(A)。
- 凝集がある場合にはウェルに膜のように広がる (B)。
判定が難しい場合にはと振動を加える。
- 凝集がない場合には沈 降していた赤血球はさらさらと下に落ちてくる(A')。
- 凝集がある場合には底に張り付いたままか、 膜状にはがれ落ちる(B')
輸血の実際
実際の輸血で供血動物から採血できる量の限度は犬で15~20mL/kg、大きめの猫で50~60mL/head 程度です。
通常はヒトの輸血の際に用いるACD液や CPD 液など専用の保存液を用いて採血します。
例えば Ht15%の10kg の犬に輸血してHt を20%に上昇させたいならば、5% (Ht の上昇分)×2(mL) × 10 (kg) = 100mL 程度を輸血することになります。
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